廃人の義姉を名乗る戦闘狂 作:6Vワナイダー
俺がグレープアカデミーに編入してから既に一ヵ月が経っていた。月日の流れは早いものだ……なんて1ミリも思っていない。胃もたれするレベルで激重な一ヵ月だったと言えよう。
社会人は得てして「大人になると時間の流れが早くなる」と口を揃えて言うが、まさにその逆の事象を俺は体感している。
社会人と言う生物は、朝起きて飯食って会社行って帰ってきて風呂入って飯食って歯磨いて寝るをただひたすらに繰り返すという、スッカスカな毎日を便所のタワシみたいなツラをして過ごす。昨日何やっていたか覚えてない事などザラで、絶対にこなせるはずのないタスクが何故か片付いていて首を傾げる事もしばしば。ヤバイわよ!!
その点、学園生活は濃密なんてものではない。
まずネモの抱き枕にされている状態から一日は始まるのだが、ヤツを起こさないようにベッドから脱出する必要がある(8敗)。また、ネモが先に起床するような事があってもいけない(2敗)。この第一関門を無事に突破できなければ「おはようのバトルしよっか♡」と、起き抜けから拘束されてしまう事が確定してしまう。
因みに、しくじった時のリカバリーとして『さいみんじゅつ』をネモにかけて無理矢理昏睡させると言うゴリ押し戦法を試みた事がある。害意を持って人間にポケモンの技を撃つのは常識的に考えて御法度だが、相手が常識の範疇超えているのにそんな悠長な事を言ってられるかという話である。
そんなこんなで意気揚々とスリーパーを投げる俺。しかし、知っていましたと言わんばかりに控えていたモロバレルが『いかりのこな』をぶっ放してくるという絶望しかない展開が待っていた。義弟に昏睡させられる事を予め想定してくる義姉とか、全国津々浦々探してもこの女しかいないだろ……お前の精神状態おかしいよ。
「なんでおねえちゃんにこんな酷いことするの……?」
と、目からハイライトを消したネモに捕獲され、いつも以上に激しくシボられたのは言うまでもない。ネモに対して正攻法以外の無力化を図ると、手痛いしっぺ返しが待っているという教訓を得た一幕である。固定9999ダメージを与えてくるエレベーターガールか何かか?
フロムゲーみてぇなモーニングルーティーンを乗り越えたら、ようやく自分の教室へと向かえるようになる。だが、なまじネモから逃れる為に早起きしているので、点呼まで時間は沢山余っている。エントランスホールの図書館でポケモンに纏わる文献を読みつつ時間を潰す。
この時、レホール先生に捕まると勝手に蘊蓄を垂れ流し始めたかと思えば、
「エリアゼロは貴様が想像するより何倍も奥深い。こんな所で片手間に聞き齧った程度で理解した風な顔をされては甚だ業腹だ。ついて来い」
と、職員室に連行されてしまう。業腹ってなんだよ。お前が始めた物語だろ。
また、ミモザ先生に捕まると、
「ん〜?疲れが取れてないって顔だ!またあたしに隠れて無茶してたでしょ?せんせーのリンパマッサージが必要だねーこれは♡」
と、やはり医務室に連行されてしまう。リンパの流れは良くなったとしても、血流の方が大変な事になってしまうんだが?淫靡という言葉が人の形をしている。
学生の本分は先生のクソ長い話に付き合わされる事でも、えっちな施術を受ける事でもないので、教員の風上にも置けない連中は捨て置き、さっさと受ける授業を選択する。授業は専らポケモンに因んだ物が多く、数学ですらポケモンバトルに関わる内容が大半を占めている。
「……このように、命中安定のなみのりを選ぶか、威力重視のハイドロポンプを選ぶか……というのは、昔から議論が交わされて来た内容です。みなさんはどちらを選びますか?」
こちとらポケモン歴二十余年、ゲームボーイの時代からポケモンを楽しんできた純度100%のポケモン廃人だ。タイプ相性から学び直してるようなキッズたちとは格が違いますよ。耳の穴かっぽじって良く聞くんだな。
「技を使うポケモンとその仮想敵によるとしか言えないですね。期待値と試行回数の問題です。なみのりの期待値はE[X]=90×1……つまり威力そのままの90です。しかし、ハイドロポンプは命中率が80ですのでE[X]=110×0.8+0×0.2……なみのりより僅かに低い88となります。期待値の高さだけで技を採用するならなみのりと言う事になります。……が、ポケモンバトルにおいて最も重要なのは、いかにして効率よく敵を倒せるか否かにあります。期待値の高いなみのりを当てたとしても、威力が僅かに足りないが為にもう一度当てないと敵は倒せない……そう言った場面では話が変わってきます。ハイドロポンプの期待値は88だと言いましたが、そもそもの威力は110ですので、なみのりでは一発で倒せない敵をハイドロポンプなら一撃で倒せるという状況が往々にしてあります。最初の一発で倒せる確率がなみのりの場合0%であるのに対して、ハイドロポンプなら80%の確率で倒す事ができるので、どちらを採用すべきかは自明の理でしょう。仮にハイドロポンプを外してしまったとしても、2回撃たなくてはならないのはなみのりも同じ事なので。2発目もハイドロポンプが当たらなかった場合については気合いが足りていないと言わざるを得ないので、理屈ではなくトレーナーの問題と言えます」
「素晴らしい論理を早口で展開していただきありがとうございます。やはりポケモンバトルの上手な方の意見は大変参考になりますね。それだけに最後が根性論なのは数学の先生としては非常に残念です。それはそれとして言いたい事が山ほどあるので後ほど職員室に来てください」
このあと命中不安技について熱弁するタイム先生に付き合わされる事となった。教師陣営みんな俺の事好きすぎだろ。
∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮
「それでは、これから課外授業の説明を行います」
何やら校舎前に生徒達が集められ、壇上の校長先生が直々に課外授業の説明をするようだ。はぁ〜頼むぞ校長、話の長さと校長に対する好感度は反比例しているからな?
「課題のテーマは……『宝探し』!」
バァン!と効果音が聞こえて来そうなキメ顔で校長が言葉を切ると、生徒たちは互いに顔を見合わせてどよめき始める。いきなりこんな面白そうな課題を提示されては無理もない。
俺は「今からみなさんでデスゲームを始めてもらいます。さあ、最初の犠牲者は誰になるでしょう?」とでも言い出すんじゃないかと思って気が気じゃなかったよ……あせあせ。
「これからみなさんには世界中を旅して、自分だけの宝物を探してもらいます。授業でたくさんの事を学んで貰いましたが、これからは外の世界へ出て、より一層見聞を深めていただきたいのです」
その後も校長は何やらパルデアの自然や文化がーだの、人々との出会いがーなどと、のべつ幕なしに語り続けているが、要約すると自由に何しても良いけどちゃんと何らかの成果をもって帰って来てね……というのが今回の課題という事だ。これ適当な成果を持って帰ってきたら、卒論の如く先生にボコボコに処刑されるとかないよね?レホール先生のゼミ生にだけはなりたくない。
「それでは宝探し開始!行ってらっしゃい!」
校長がそう締めくくると、はやる気持ちを抑えられなくなった生徒達が歓声と共に散り散りになっていく。探せ!この世の全てをそこに置いてきた!
宝探しか……どうしたものか。とりあえず成果を出せばいいんだろ?図鑑埋めるなりチャンピオン倒すなりすればこれ以上になく分かりやすい成果になるでしょ。パルデアのポケモンリーグには一次試験の面接を突破できれば挑戦できるらしいので、いちいちジムなど寄らず直行してみるのもありかも知れない。俺ポケモンガチ勢だし、面接なんて余裕やろ!
方針が固まった俺は駐輪場に置いてきたモトトカゲを取りに向かうが、ふと視界に入ったバトルコートにネモがいる事に気づき、慌てて身を隠す。無限宝探し♡編に突入する所だったな、危ない危ない。
「ハルト!新しいポケモンはもう捕まえた?ホゲータがどれだけ強くなったか見たいし、早く
まーた性懲りも無くポケモンバトルを強要しているようだ。最近俺が露骨に避けまくってるからフラストレーションがとんでもない事になってんだろうな。
そんなやばやばな状態にあるネモに捕まってしまった可哀想な男子はハルトと言う名前のようだ。ネモよりも一回り身長は低いが、ため息が出てしまうほどの美少年である。プラチナブロンドのサラサラヘアー、宝石みたいなマリンブルーの瞳、絶対に柔らかいのが確定している唇、無駄にえっちな涙ボクロ……こんなに可愛い子が女の子なわけがない。
「準備はいい?それじゃ、実りあるバトルにしよう!」
ネモがモンスターボールを構えると、ハルトもコクリと頷き臨戦態勢をとる。可愛い顔をして意外にも好戦的な性格をしているようだ。あ、言うまでもないがハルトの方な?ネモは意外でも何でもないだろ。
ネモの先鋒はトロッゴン、ハルトはマリルリだった。んん〜?トロッゴン?てっきり俺の時のようにイワンコを投げると思っていたのだが……どういう心境の変化だ?
「ホゲータが苦手な岩タイプに強いマリルリ!しっかり考えてパーティを作ってるね!やっぱりハルトはセンスの塊だよ!わたしも最近はおとうとくんのお陰で色々考えるようにしてるんだ!今回の戦いでその成果が確認できたら嬉しいな」
当たり前のように俺の話をするんじゃない。ついげきのグランドヴァイパでさらに俺の悪評は加速した。
「トロッゴン、戻って!」
ネモはツッパらずにトロッゴンを引っ込めた。特性が『じょうききかん』*1だとしても、マリルリに4倍弱点を突かれてはひとたまりもないからな。
ネモが引き先として繰り出したのはドオーだった。ハルトのマリルリが叩きつけて来たアクアテールをトロッゴンの代わりに受ける形となったが、本来なら効果は抜群となるみず技でも平然としていた。間違いなくとくせいは『ちょすい』だろう。
なかなか面白い戦いをするじゃないの。これはお手本のようなサイクル戦が見られるのでは?と、期待をしてはみたものの、ハルトはマリルリを居座らせて『たたきつける』を指示してしまったようだ。まあポケモンを始めたてではポケモンを交代させながら戦うってのはなかなか意識できないか。
「ドオー、ダストシュートでマリルリの弱点を突くよ!」
ダ、ダストシュート!?ずいぶんと大味な技を採用しているな……いや、ダストシュート自体は威力120と強力な技なんだが、いかんせん命中80と安定性に欠ける。
そこまで攻撃種族値の高くないドオーにこのような高火力技を採用するのは珍しいというか……いや、火力が無いからこそ技の威力でリーチを伸ばして、相手の意表をつく事もできるか。なるほど、ネモも色々と考えているようだ。
しかし、先述した通りダストシュートは命中率に難がある。今まさにドオーはダストシュートを外してしまい、マリルリのたたきつけるを食らう形となってしまった。技を外してもイライラしないあたり、ネモは人間ができているようだ。いや、それが普通か。
にしても、全然効いてないな……ドオーの特殊耐久は高くても、物理耐久は突出しているわけじゃない。ハルトのマリルリが理想個体じゃないにしても、もう少しダメージが入っても良いと思うんだが……まさか、ネモが耐久に努力値振ってんのか?
ハルトはさすがに、このまま悪戯に攻撃を続けて、マリルリを失っては不味い事に気づいたのか、マリルリを手持ちに引っ込めた。
ハルトが代わりに繰り出したポケモンはビビヨン……むし/ひこうの複合タイプを持つりんぷんポケモンである。あの火力のダストシュートを受けられるだけの耐久があるとはお世辞にも言えないが、運良く再びダストシュートを躱して無償降臨に成功している。気合いが足りて無いぞ生徒会長。
「ふふ、わたしのドオーは止まらないよ!こんなに楽しいポケモンバトル、久しぶりだ!……何でおとうとくんはわたしから逃げるのかな」
はしゃいでる最中にいきなりハイライト消すのやめろや。見てみろよ、ハルトくんめちゃくちゃ困った顔してるじゃねぇか。かわいいね♡
それはそれとして、俺目線で見てもなかなかに面白い試合展開なので、ネモもさぞやテンションぶち上げ状態だろう。俺と戦ってる時と同レベルでノリノリに見える。
「ふふ、このストーンエッジはハルトのビビヨンに効くよ?」
また命中不安高火力技か……物理で使っている以上『じしん』は絶対覚えさせているはずなので、じしん、ダストシュート、ストーンエッジ、あと1つ何かという技構成になるのだが……まさか『じこさいせい』や『どくどく』は抜いてフルアタ*2にしているのだろうか?
高い耐久、優秀な耐性で相手の攻撃を受けて、相手には返しの高火力技を押し付ける……どこかで見たような戦術だが、まさか……ね。
しかし、そんなゴキゲン生徒会長のストーンエッジを咎める一手が飛び出る。ハルトはビビヨンに『ねむりごな』を指示し、ドオーにストーンエッジを撃たれる前に上から眠らせる事に成功する。複眼眠り粉とはこの子もなかなかやりおる。
ネモが一目置くのも納得できてしまうほどのポテンシャルがハルトにはある。のびしろ○、センス○、容姿◎……お前がパルデアの主人公や!
ドオーを眠らせたハルトは、サブウェポンのサイケこうせんでドオーを突破する。これにより、一気にハルトの方へと流れが変わって来た。BGMが流れてたら変化していることだろう。
「タイプ相性も完璧にマスターしたみたいだね!やっぱり、ハルトとのポケモンバトルは楽しいね!」
ドオーを倒されたネモは再びトロッゴンを繰り出す。対面不利を悟ったハルトは、ねむりごなでトロッゴンを一旦眠らせてからマリルリに引く。凄い……ねむりごなと言う技が出し得である事に気づいているし、有利対面を作りに行っている。こいつ、戦いの中で成長している……!
その後、マリルリのアクアテールをネモはニャローテで受ける。ニャローテのタネばくだんをハルトはアチゲータで受けるというサイクルで試合が進んでいく。まさかこの世界でもサイクル戦を見ることができるとは……パルデアの歴史が動いた瞬間かもしれないぞこれ。
しかしながら、ビビヨンで上からねむりごなを撃てるハルトの方が圧倒的に有利である。眠りこけたトロッゴンが出て来た時点でサイクルは崩壊し、マリルリがトロッゴンを倒す、ニャローテにマリルリを倒される、ニャローテをアチゲータが倒すという完璧な詰め切りでハルトが勝利した。
「すごい!一ヵ月でハルトがこんなに成長してるなんて……次の戦いがもう楽しみだよ!」
生徒会長もご満悦の試合展開だった。ネモがこんなに楽しそうにバトルできる相手が俺以外にもいたとはな……ん?
………ッ!?
ははっ……気付いちまったよ、俺………
∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮
そこは人目の少ないテーブルシティの裏路地。俺は目当ての人物を見つけると、外壁に預けていた背中を離すと、ゆっくりとそいつに近づく。
「ハルトくん……で、良かったかな?ちょっとツラ貸して欲しいんだけど」
そう俺が声をかけると、ビクリと身を固めた美少年が不安気な表情で俺を見つめる。小動物みたいで可愛いね♡
「まあそう警戒しないでくれ。別に取って食おうだなんて趣味、ぼくにはない。どこぞの保健師とは違う」
俺が一歩、また一歩と近づくと、彼はその警戒心をさらに露わにする。ダメじゃないか……ヤバいと思ったら背中を向けて全力疾走!じゃないとこのグレープアカデミーでショタが生き残ることはできないゾ?
「お昼の生徒会長とのバトル、お見事。賞賛に値する実に素晴らしい内容だったね」
パチパチとわざとらしく乾いた拍手をハルトに送ると、少し照れくさそうに困った顔をする。素直さの塊みたいな生き物を前に、俺の良心が黒ひげ危機一髪みたいな有様になる。多分もう剣刺さってない穴二つくらいしか残ってないレベルにグッサグサ。
「でもね……この程度で満足されちゃ困るんだよねぇ。今の君じゃ生徒会長の相手は務まらない……それをぼくが今から嫌と言う程わからせてあげるよ!」
より正確に言えば、ネモの語尾に♡がつくくらいでないと話にならないという事だ。極めると「醤油とって♡」みたいな感じに♡を垂れ流しにしてくる。極めるってなんだよ。
俺がモンスターボールを構えると、ハルトも慌ててボールを構える。そして、戦いのスイッチが入ったようにこちらをキッと睨む。いいねぇ、いいねぇ、最高だねぇ!
行け!ワナイダー!これより『ハルトきゅん実らせ♧大作戦』を開始する!
そう、何を隠そう俺はあのネモとハルトの戦いを見ていて思いついてしまったのだ。
あれ、この子を俺と同程度に強くしたら、義姉化状態のネモをなすりつけられるんじゃないか?ってね。
思わず自画自賛してしまうほどの発想にウキウキが止まらない。こんな美味しそうなショタがあんなポケモンバトルをしていたら。身代わりにしてくださいと言っているようなものである。ハルトが悪いんだよ。
と言うわけで、これからハルトきゅんにみっちり稽古をつけてやろうって寸法である。流石にガチパでボコしたんじゃ成長につながらないので、ネモがしているようにレベルの低いポケモンや未進化ポケモンを使うし、ワナイダーも使う。俺が弱くなったところで、別にお前が強くなった訳じゃねェだろォがよ、あァ!?
こちらの先発はワナイダー、相対するハルトの先発はビビヨンだ。ハルトは先ほどの戦いで味を占めたのか、ねむりごなを指示する。
「Lesson1……ポケモンのとくせいを覚える事。この醜悪な見た目をしたポケモンは『ふみん』というとくせいを持っている。読んで字の如く、このワナイダーと言うポケモンは眠らないんだ。そのとくせいを知らなかったばかりに、君は1ターン損をした」
タダで貰えた1ターンを使い、ワナイダーに『ねばねばネット』を指示する。これによりハルトには、ワナイダーという何もできなさそうなふざけたポケモンに最低限の仕事をさせてしまった、という精神的ダメージを与えられた事だろう。
ねむりごなが効かないと分かればハルトは普通にひこう技で殴って来るだろう事も分かる。仮に『しびれごな』をビビヨンが持っていても負け筋を作らないために、でんき/ひこうタイプのカイデンを繰り出す。
後投げの為、カイデンはビビヨンのエアカッターを受けてしまうが、ひこう技は半減で受けられるので問題はない。
「さあ、このカイデンは『ふうりょくでんき』と言うとくせいを持っている……君のビビヨンのエアカッターを受けて『じゅうでん』状態になった。これで次に使うでんき技の威力は2倍になる。さあ、どうする?」
追い詰められたように唇を噛むハルトは、ねむりごなを指示する。こちらのカイデンより先に動く事に賭けたのだろう。
「Lesson2、素早さはポケモンバトルにおいて非常に重要なステータスを担っている。一般的にはビビヨンの方がカイデンより早い……一般的には、だ。ぼくのカイデンは『おくびょう』な子で、他のカイデンよりも素早さに自信があるんだ。更にはパワーアンクルという素早さが伸びやすくなるアイテムを持たせてて育てている……だからこの通り」
ハルトのビビヨンはねむりごなを撃つ事は叶わず、先に動いたカイデンの10万ボルトで瀕死となった。
みずタイプのマリルリを出すわけにもいかず、ハルトは苦し紛れにアチゲータを繰り出す。もうビビヨンのねむりごなをケアする必要はないので、適当に相手に負担をかけていけば勝てる事だろう。
「Lesson3、相性補完というものを学びなさい。君のパーティはでんき技の通りが良すぎる。それでは今回のカイデンのように止められなくなってしまう。じめんタイプを1体は入れた方が良いだろう」
選出ミスってクッソ重くなったポケモンがどうにもならなくなるのはガチ勢でもよくある事。ラッキーが倒せない事に気づいた時の絶望感は異常。
「まずはポケモンを6匹揃える事だな。対戦ありがとうございました……ん?」
バトルの終わりをハルトに告げるが、反応が帰ってこない。どうしたものかと彼の顔を覗き見れば、固く口を結び、声はあげず、ただ悔しさを耐え忍ぶかのような表情で、涙を頬に伝せていた。男の子だから泣かないもん!といった顔で、それでも流れる涙の不甲斐なさに、フルフルと肩を震わせている。
ショタ泣かせちゃった……
「いや、うん……センスあるよハルトくん!普通ポケモン覚えたてでこんな勝負できないから!生徒会長とのバトルもすごくカッコ良かったよ!あんな美しいサイクル戦ぼく見た事ない!パルデア
バシバシとハルトの背中を叩きつつ彼の事をべた褒めするが、彼は控えめにコクコクと頷くだけで、泣き止んではくれなかった。不味い、マジでこのままだと二度とテーブルシティの地を踏めなくなるぞ……
「お、おつかれさまでスター!!」
こうして、不良集団どもに全責任をなすりつける事により、俺の市民権は保たれたのだった。
路地裏の物陰には、大量の鼻血を流して倒れ伏した生徒会長の死体が……!!
ハルトきゅん近影
【挿絵表示】
誤字報告、感想、☆5以上の評価、たくさんありがとう
2022/12/10 v1.0.1 ショタの一人称を「ぼく」に変更
細かいバトル描写需要ある?
-
いる
-
いらない
-
そんな事よりおねを供給しろ
-
もっとネモネモしろ