廃人の義姉を名乗る戦闘狂   作:6Vワナイダー

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年末年始休み終わっちゃった……
間違いなく今以上に遅筆化するけど許して♡


罠韋駄亜に日和ってる奴いる?いねぇよなぁ!!?

 

 日本男児たるもの、一度は不良に憧れるものである。……いや、最近はめっきりそう言うの減っていると言うか、大人しくて賢い子どもたちの多い世代になってしまったので、ヤンキーが喧嘩しまくるような漫画も数を減らしているのかもしれない。

 

 だが、ぶちのめされた親友の仇を討つべく不良高校に単身で乗り込み殲滅する俺、ある日当然異能に目覚めて謎の研究機関や政府関係者に追われる俺、謎のテロリスト集団に教室を占拠されるもなんか格好いい武術で制圧してクラスのアイドルに惚れられちゃう俺……あらゆるレパートリーが存在しているかもしれないが、とにかく多勢に無勢の状況で無双する妄想に浸る事くらいは、絶対に誰しもが経験しているはずである。主に中学二年生の時に。

 

 ハルトもそう言う時期なのだろうか……スター団と言う不登校集団のアジト前でウロウロしているのを発見。こんな所でハルトきゅんを傷物にされる訳にはいかないので慌てて現場に急行。モトトカゲをAKIRAのバイクみたいな……いや、金田のバイクか。違う、金田が誰かから盗んだバイクか。誰かのバイクみたいな止め方をする。誰かのバイクみたいな止め方……?

 

「おっとハルトくん、ならず者達に一体何の用があるんだい?悪いけどここは通せないね」

 

 ハルトはキッと俺を睨むとモンスターボールを構える。あ、そういやこの前泣かせた時にスター団の挨拶してたっけ……彼の視点だと俺のムーブは完全に門番役の噛ませ犬そのものだわ。

 

 とは言え、このショタを不良集団に差し出すのは論外なので輝石ラッキーをぶん投げて彼のパーティをちきゅうなげだけで壊滅させる。君の使命を思い出すんだハルトくん……君の歩んでいる物語は不良集団にカチコミをかけるヤンキー漫画ではなく、孤高の生徒会長を振り向かせるラブコメ漫画なんだ。

 

 そんなこんなでまたしても泣いてしまうハルトきゅん。てめぇ……俺がショタの涙で揺らぐような男に見えるのか?よく分かってるね♡

 

 ハルトは梃子でも動きそうになかったので、ちゃんとポケモンを強くしてから挑む事、保護者同伴(俺)で挑む事を条件に、カチコミを仕掛ける事を許す事にした。もう全部ネモに任せようよ……あいつ血に飢えてるし丁度良いじゃんか。

 

 と言う経緯もあり、現在はカチコミ前の仲直りピクニックを敢行している所だ。なかなか泣き止まなかったハルトだが、サンドウィッチを振る舞うとすっかり機嫌を直してくれた。食べ物で懐柔できるとか一番攻略難易度低いやつじゃん……本当に大丈夫この子?

 

 手持ちのポケモンを見せて貰ったが、わざマシンが不足しているように見受けられたので、じしんやエアスラッシュなどのわざマシンをハルトに譲る。また、ハルトにものまねハーブを渡して、マリルリにはらだいことアクアジェット、ドオーにじこさいせい、アチゲータになまけるを遺伝させる。タマゴ技の遺伝も随分と楽になったものである。

 

 それにしてもこのアチゲータ……最終的にはラウドボーンと言うポケモンに進化するのだが、レート戦があったら間違いなく環境入りしているレベルで強い。

 

 夢特性は『てんねん』、耐久寄りの種族値、『おにび』や『なまける』のような受けを安定させる技を覚える事、極めつけには『フレアソング』と言う殴りながら火力を上げられる専用技と、受けポケモンに欲しいもの全てを持った最強格の御三家だ。ほのお/ゴーストと言う複合は受けに向いたタイプではないが、パルデアにはテラスタルがあるのでその辺りはいくらでも誤魔化せてしまうと言う隙の無さである。

 

 もうノータイムで貴重なとくせいパッチをハルトくんにあげちゃったよね。こんなん生徒会長を義姉化させる為に生まれてきたようなポケモンでしょ……『なまける』も遺伝させたし、これからどう育てたらいいか、ハルトくん分かってるよね……?

 

 順調にハルトが実りつつあり、つつがなく仲直りピクニックを終えられそうだった所に、ハルトのスマホロトムから着信音が鳴る。

 

『……こちらカシオペア。ハルト、聞こえるか?』

 

 何の躊躇いもなく怪しい着信に応答してしまうあたり、やはりこの子は野放しにしてはいけないようだ。お母さん、あなたの息子さんの教育方針についてお話があります。

 

『アジトが近いようだが……誰か近くにいるのか?』

 

 ハルトが急に俺を真っ直ぐに見てくるので、俺は慌てて首を横に振る。びっくりした……いきなり見つめてくるからえっちなおねだりかと……恐ろしいショタだ。

 

『誰もいないなら良い……ハルトがボスを一人倒した事で、スター団は警戒を強めている。アジト攻略は一筋縄ではいかなくなるだろう』

 

 おい、何知らない間にカチコミ仕掛けてんだ!?てっきり今回が初めてだと思ってたぞ……これが叙述トリックって奴か。多分違う。

 

 俺が無言の叱責をすると、ハルトは悪戯がバレた子どもの様に、少し後ろめたそうな媚びた表情で許しを請う。ガキがよ……なんだその態度は!?可愛いから許す♡

 

『くれぐれも注意してくれ……健闘を祈る』

 

 カシオペアとやらがどこのどいつだか分からんが、こんないたいけなショタを非行少年にしてしまった罪は重い。必ずどこかで罰を受ける事になるだろう。今までしてきた行いは全部自分に返ってくるのだ。

 

 特大ブーメランを投げてしまった気がしなくもないが、レジャーシートを畳んでいざスター団アジトにカチコミをかける準備をする。あくまで俺は保護者枠なのでただの同伴でしかないが、可能な限り手持ちもレベルが高くて対面性能も高いポケモンで固めている。レベルが低いポケモンはボックスで控えていてもらおう。ただしワナイダー、テメーはダメだ。

 

 後方保護者ヅラの準備が整ったのでいざアジトへ。無骨なバリケードの前には見張りと思しきスター団の下っ端が腕を組んで立っていた。

 

「おい、ここはスター団ほのお組のアジトだぞ!何しに……ひぃ!」

 

 スター団員は俺を見るなり顔を青ざめさせて腰を抜かす。おい、人様の顔を見といて何だその態度は。今はワナイダーの仮面つけてないだろ。

 

「お、お前は……同胞たちをボコして回っている『スターアサルト』じゃないか!ボ、ボスに知らせないと……」

 

 待てやコラ。何、俺そんな大層なあだ名つけられてんの?こんなしょうもない事に専用技の名前使われるネギガナイトくんの気持ちも考えてやれよ……何にせよ戦わずしてアジトに侵入できるようになったので前向きに考える事にしよう。

 

「おーい!ハルト!」

 

 不意に背後から声をかけられ、俺とハルトは同時に振り向く、こちらに駆けてくるのはグレープアカデミーの制服を着た……いや、ちょっと待て。なんだあの絶望的に似合ってない短パンとグラサンとリーゼントは。

 

「ほのお組アジトの調査をカシオペアに任されたんだ。む、君は……?」

 

 いや、お前が誰だ……って、校長じゃねぇか。ハッコウシティでの一幕と言い、何やってんだこの人……

 

「そんな格好で何してるんですか?校長先生……」

 

「ネルケだぜ」

 

 校長はリーゼントを撫でつけると、キメ顔でそう名乗る。そのクラベル顔でネルケは無理があるでしょ……

 

 俺は助けを求めるようにハルトの方を向くが、ハルトもネルケだよと頷くだけだった。え、何?俺がおかしいの?これが集団同調性バイアスってやつか……

 

「ボウー!」

 

 突如、微妙になってしまった空気をぶち壊してくれるかのように、1匹のカルボウが俺たちの目の前を駆け抜けていった。

 

「あれは……もしやボウジロウでは!?」

 

「知っているんですか?」

 

「アカデミーの敷地内でお世話をしているポケモンなのですが……何故ここに?」

 

 丁寧語が出てんぞ校長。

 

「行ってしまった……ほのお組と何か関係があるのかもしれませんね。私はあの子を追いかけますので、二人は先にアジトに行っていてください」

 

 どこかで見たような綺麗なフォームで走り去るネルケはどう考えても校長だったが、ハルトが白だと言ったら黒は白になるし、ハルトがネルケと言ったら校長はネルケになるので、気にしてもしょうがない。

 

 ここで再びハルトのスマホロトムが着信を知らせる。発信者はまたしてもカシオペアだった。

 

『……門番のしたっぱは対処できたか?』

 

 ハルトはピクニックの時と同じように俺を見つめてくる。だからそれやめろって。性癖が歪む。

 

『そこで(たむろ)しているのはスター団ほのお組……チームシェダルだ。ボスのメロコはスター団きってのなんでも屋……あらゆる問題を強引に解決してしまう』

 

 半グレかな?それにしてもこのカシオペア……やけに内部事情に詳しいな。スター団の内通者か?

 

『恐らくメロコは我々の宣戦布告で荒れているはず……したっぱ達が必死でメロコを宥めている事だろう』

 

 ハルトきゅん宣戦布告とかしてて草。間違いなく不良漫画に影響されてんじゃん……あのクッソ美人なママもこんな純真なショタがグレたと知ったらショックで寝込む事だろう。お母さん、あなたの息子さんは俺が正しい道に導きます。オレが変わらないと何も変えれない。

 

『そこでハルト、君がしたっぱ達を片っ端から倒していけばいい。宥めるしたっぱがいなければ、彼女は姿を現すだろう』

 

 モブをボコボコにして本命を引きずり出すって、どう考えても敵側の不良がかましてくるテンプレムーブなんだけど、その辺ハルトくん的にどうなん……?

 

『準備ができたらゴングを鳴らして大作戦開始だ。チーム・シェダルにカチこんでくれ』

 

 なぜゴングをならすのか1ミリも分からないが、こちらのヤンキー界隈では常識なのだろう。ハルトはカシオペアとの通話を切ると、バリケードに併設されたゴングを鳴らす。

 

 間髪入れずにアジト内のスピーカーからハルトのカチコミを知らせるアナウンスが入り、フェス会場などで使われるようなテントからワラワラとしたっぱ達が出てくる。

 

 したっぱはドンメルやデルビルといったほのおタイプのポケモンを矢継ぎ早に投げてくるが、ハルトはドオーやマリルリといったタイプ有利のポケモンで蹴散らしていく。30匹近くにも上るポケモン達による四面楚歌をモノともせず無双する姿は、中学二年生がする妄想をそのまま体現させた物と言えよう。

 

 大人になったハルトは間違いなく今の状況を武勇伝として「俺も昔はワルだったんだよね』と隙あらば語る事だろう。あれ回避する方法を誰か教えてくれ。

 

「守りきれませんでした……ボス、あとはよろしくお願いします!」

 

 ポケモンを繰り出せる者が居なくなったのか、したっぱは一際大きなテントへと駆け出し、スター団のロゴがあしらわれた垂れ幕を開く。ガレージのようになっているテントの中から、魔改造されたブロロロームが出てくる。原型ないやん……それ車検通る?

 

 あちこちにブッ刺さった旗を翻しながら、魔改造ブロロロームはゆっくりと進んでくる。ブロロロームのルーフはド派手な装飾が施されたステージとなっており、何者かが素晴らしい美尻をこちらに向けてて立っている。プリケツダァ…

 

 違法改造ブロロロームが俺たちの目の前まで来ると、車上の人物はこちらを振り返る。真っ赤に染まった癖っ毛、金髪のアホ毛、サディスティックな猫目、どう考えても歩き辛そうなブーツを履いたそいつは、小柄な少女だった。

 

「チーム・シェダル、メロコだ。テメーかオレらにケンカ売ってんのは……細けぇ事はどうでもいい。ケンカ売られたら買う……それだけだ」

 

 やっぱり不良漫画じゃないか……

 

「……爆ぜろや」

 

 敵意を剥き出しにしたメロコちゃんはクイックボールをぶん投げる。中から出てきたのはダブルではお馴染みのせきたんポケモン、コータス。相対するハルトはマリルリを投げる。

 

「テメーはオレが……はっ倒す」

 

 大変威勢の良いメロコちゃんだったが、コータスはマリルリのアクアテールで瞬殺されてしまう。最初から投げるタイプが相手にバレてるのって辛いよな……強く生きろ。

 

「……チッ!オレはまだ燃えッカスになってねぇんだよ。いくぞ、シェダル・スターモービル」

 

 コータスを撃破されたメロコちゃんは乗っている魔改造ブロロローム改めシェダル・スターモービルで戦うようだ。交通事故だけは起こさないでね。

 

 ブロロロームははがね/どくタイプなのでマリルリで相手をするのは少々厳しい。それが分からないハルトではないので、マリルリを引っ込めてドオーを繰り出す。

 

「燃えちまえ、バーンアクセル!」

 

 バーンアクセル……?聞いた事のない技だ。バーンアクセルとやらを受けたドオーのHPは赤ゲージまで削られている。技の威力は分からないが、等倍で入ってこの火力……コータスのひでりによる晴れ補正が乗っていると考えるのが自然だろう。技の名前を考慮してもバーンアクセルはほのお技である可能性が高い。

 

「……ブロロロームが覚えるほのお技はオーバーヒートだけだったと記憶しているんだが?」

 

「……チッ、テメーらは知らなかったか。騙すようなシャバい真似はしたくねぇから教えてやるが、シェダル・スターモービルはほのおタイプだ。ピーニャのスターモービルもあくタイプだったろ?」

 

 メロコちゃんと俺が同時にハルトに視線を向けるが、ハルトはわざとらしくサッと目を逸らす。絶対に忘れてましたねこれは……

 

 メロコちゃんのシェダル・スターモービルはとくせい『かそく』なので、鈍足のドオーではどう足掻いても上から動かれてしまう。だが、ハルトは後出しの負担を嫌ってそのままドオーを居座らせる。ポケモンを『切る』という判断をするのも、ポケモンバトルをする上で重要な事だ。

 

 ハルトは瀕死になったドオーを引っ込めて、マリルリを繰り出す。

 

「……ハルトくん。マリルリを失ったらこのスターモービルを止められなくなる。ひざしが強い状態ではタイプ有利でもマリルリの負担は増えるしアクアテールの威力も下がってしまう。一旦他のポケモンでお茶を濁してからマリルリを投げた方が安全だ」

 

「横からごちゃごちゃとゴタク並べてんじゃねぇぞスターアサルト。コイツは今、オレと戦ってんだ。おら、バーンアクセル!」

 

 ……メロコちゃんに叱られてしまったので、大人しく観戦するとしよう。どうやらハルトのマリルリはバーンアクセルの追加効果でやけどを負ってしまったようだ。マリルリのアクアテールは余裕を持って耐えられてしまう。ハルトはせめてもの抵抗で、先ほど遺伝させたばかりのアクアジェットを指示する。

 

「ハルトくん、もう先制技のアクアジェットを的確に使いこなせているじゃないか……ぼくは嬉しいよ」

 

「黙ってろって言ってるのが分からねぇのかテメーは!燃やすぞ!」

 

 割と本気で怒られたのでマジで黙る事にした。どうやらオタクに優しいギャルなんてものは幻想だったようだ。ギャルと言うよりヤンキーだけど。

 

 ドオーとマリルリを失ったとなると、ハルトは割と詰みに近い状態になる。バーンアクセル連打マンと化したスターモービルをどうする事もできず、ハルトは手持ちを壊滅状態にさせられてしまう。

 

「はっ……オレのしたっぱ達とやってた時の威勢はどーしたよ?あぁ!?」

 

 勢い付いたメロコちゃんは手持ちを失ったハルトに凄むと、ハルトはまたしても泣いてしまう。今日は泣いてばかりだなハルト……かわいいね♡

 

 保護対象のハルトが泣いてしまったので、俺は大義名分を得たとばかりしゃしゃり出る。

 

「メロコちゃんキミ……大変な事しちゃったねぇ」

 

「お、おい……違ぇよ。オレだって泣かせるつもりでやったわけじゃねぇよ!」

 

 なんか急にあわあわとパニくるメロコちゃんがかわいいのでそのまま意地悪するとしよう。うん、それがいい。

 

 俺はげんきのかけらとキズぐすりがいくつか入ったカバンをメロコちゃんに投げて寄越す。

 

「ほら、タイマンしようぜメロコちゃん。それでコータスを回復させたらぼくと戦おうよ」

 

「……テメーの施しなんざいらねぇ。オレのポケモンはオレが治す。そいつのポケモンに使えや」

 

 メロコちゃんは俺のカバンを投げ返すと、自前の道具でコータスを回復させる。なるほど、メロコちゃんはスジの通ったヤンキーのようだ。ならば、こちらもスジを通すとしよう。

 

 俺はメロコちゃんに受け取り拒否されたげんきのかけらとキズぐすりをハルトのマリルリに使う。そして『沙斬竜(サザンドラ)殺し』と書いたちからのハチマキを巻きつけてやる。

 

「メロコちゃんの相手はぼくのワナイダーとハルトのマリルリだ……正々堂々といこうか」

 

「スターアサルト……明日の朝刊載ったぞテメー!」

 

 激昂したメロコちゃんは回復させたコータスを投げる。俺も『特攻隊長』と書かれたきあいのタスキをかけたワナイダーを繰り出す。

 

「コータス、かえんぐるま!」

 

罠韋駄亜(ワナイダー)、スレッドトラップ」

 

 ワナイダーはコータスのかえんぐるまを防ぎ、スレッドトラップの追加効果でコータスの素早さを下げる。

 

「チッ、守るだなんてナヨナヨした真似しやがって……日和ってんじゃねぇぞ!おら、爆ぜろや!」

 

「罠韋駄亜、ねばねばネットだ」

 

 ワナイダーはきあいのタスキでコータスのかえんぐるまを耐え、ねばねばネットを撒く。

 

「おら、かえんぐるまでとどめだ!」

 

「罠韋駄亜、もう一度スレッドトラップだ」

 

「さっきから小賢しい真似を……っ!?まさかテメー……コータスのひでりターンを枯らすつもりか!?今度こそ燃えちまえ、かえんぐるま!」

 

「もう遅いよ。罠韋駄亜、おきみやげ」

 

 ワナイダーはコータスの攻撃と特攻のランクを2段階下げ、特攻隊長の役目を終えて瀕死になる。

 

「さあ魔凛瑠璃(まりるり)、お膳立ては済んだ……はらだいこだ!」

 

「コータス、オーバーヒートで焼き尽くせ!」

 

 HPが半分削れた状態でも、急所を引かない限りハルトのマリルリはコータスの晴れオーバーヒートを耐える事ができる。

 

「魔凜瑠璃、コータスのひでりが終わった……反撃の狼煙が上がったぞ。テラスタル……そして、アクアジェットだ。これはハルトのポケモンたちの分……!」

 

 ハルトのマリルリはコータスを一撃で瀕死に追い込み、残るはシェダル・スターモービルのみとなる。だが、ブロロロームは先制技を覚えないし、何かの間違いでスターモービルが先制技を持っているとしても、ワナイダーがねばねばネットを撒いているので、マリルリのアクアジェットより速く動く事はできないはずだ。

 

「魔凜瑠璃、アクアジェット!これは瀕死になった罠韋駄亜の分!」

 

「ワナイダーはてめぇが——」

 

 どれだけ強力なエンジンを積んでいようと、マリルリのアクアジェットに追いつく事などできない。マリルリのアクアジェットを受けたスターモービルはプスプスと黒煙を上げて動かなくなってしまった。"事故(ジコ)"る(ヤツ)は"不運(ハードラック)"と(ダンス)"っちまったんだよ……

 

「燃えて、燃えて、燃え尽きちまったか……ここまでだな」

 

 どこか吹っ切れたような表情になったメロコちゃんは、ブーツのせいで膝が曲げられずヘンテコな歩き方でハルトに近づく。

 

「テメーのマリルリ、マジで気合い入ってたぜ。このオレに勝ったんだ……胸張ってダンバッジ持ってけ」

 

 メロコちゃんはハルトにダンバッジとやらを渡して互いに握手を交わす。ただ、メロコちゃんの力の制御がイカれているのか、ハルトは死ぬほど痛そうな顔をする。その状況でもツーショットを撮るハルトくんの執念はどこから来てるんだ?

 

 メロコちゃんはダンバッジだけではなく、ニトロチャージのわざマシンをハルトに渡す。

 

「勘違いすんなよ……泣き虫なテメーにやるんじゃねぇ。テメーのマリルリにやるんだからな」

 

 マリルリはニトチャ覚えないんだけど、そこんとこどう思う?そんな事を言ったら間違いなくメロコちゃんに殺されそうなので聞かないでおく。

 

 そんな事より完全に俺とワナイダー居ない事にされてて草なんだが。まあスレッドトラップ、ねばねばネット、スレッドトラップ、おきみやげ、の陰キャコンボなどヤンキーの理解から最も遠い所にあるだろうし致し方ない。主人公は絶対にしないムーブである。

 

「用は済んだろ。ひとりにさせろよ」

 

「待ってくれ、スター団のメロコ……会って欲しいポケモンがいる」

 

 いつからそこに居たか分からないが、校長が先ほど逃げていったカルボウを連れて立っていた。

 

「誰だテメーは。そのカルボウがどうか……っ!おまえ……ボウジロウか。おまえどうして……」

 

「この子はあんたを探してアジトに来たみたいだぜ」

 

「ボウ!」

 

「おまえ……」

 

「懐かれてるみたいだな」

 

「アカデミー行ってた頃はコイツと毎日遊んでたからな。火のゆらめき見てりゃ考えてる事くらい分かるぜ」

 

「ボウジロウは何を思ってここに来たんだろうな」

 

「…………」

 

 不思議そうな顔でボウジロウがメロコちゃんを見上げると、メロコちゃんは後ろめたそうに顔をそらす。そんな彼女を元気付けるかのように、ボウジロウは全力でメロコちゃんに甘える。

 

「ボウジロウ……」

 

「オレにはボウジロウがあんたに戻ってきて欲しいと言ってるように……」

 

「……ウゼぇ」

 

「スター団はアジトでアカデミーを襲う計画を立てているとか?」

 

「そんな噂あんのかよ。あの頃から何も変わってねぇな。マジでありえねぇから」

 

「そうだぞ校長。悪質なデマを吹聴する連中を許すな!」

 

「ネルケだぜ」

 

「スターアサルト、話がややこしくなるからテメーは黙ってろ!」

 

 ガチのマジで嫌われてて草。泣いていい?

 

「……では、さっきまで改造車を乗り回してたのは……?」

 

「スターモービル……昔ケンカ用に作ったんだ。実際に使ったのはさっきが(はつ)だけどな……スター大作戦って知ってるか?」

 

「スターダスト大作戦ではなく、スター大作戦……?初耳だな」

 

「そうか、知らねぇよな……オレらスター団にとっては宝物みたいな思い出だったんだ」

 

 物憂げな表情でそう呟くメロコちゃんだが、一体スター団の過去に何があったと言うのだろうか。黙ってろと再三に渡ってブチギレられているので聞くに聞けないのがもどかしい。

 

 ちょっと哀愁漂う感じになってしまったが、これにて一件落着だな!と、帰途につこうとする俺を、ハルトがぐいぐいと俺の服を掴んで止める。

 

 何事かと振り返る俺に、ハルトは先ほどメロコちゃんから受け取ったほのお組のダンバッジを押し付けてきた。

 

 いつか強くなってあなたに勝つから、その時まで持っていて欲しい……そんな言葉を残してハルトはアジトを後にしてしまう。

 

 

 拙者、お前の中に勇を見た。

 

 

 

∮∮∮∮∮∮∮∮∮

 

 

 

 

「ちゃんと見とったかポピー?笑えるくらい強いやろ、彼」

 

 先日、ナンジャモが配信した『【VS】ジムリーダーナンジャモが!めったに見れない本気出してみた!【ワナイダーマン】』を見終わったチリは、ご満悦の表情でポピーに感想を求める。

 

「ポ、ポピーのポケモンも つよいとおもいますけど……」

 

「そかそか、どっちが強いんやろなぁ……?」

 

 チリが柔和な笑みを携えながらもポピーを煽ると、ポピーは意地になったように少年への対抗心を剥き出しにする。

 

「えーと えーと!ポピーはしてんのうなので ポピーのほうがすごいのです!」

 

 ポピーが導き出した稚拙極まりない結論に、チリは困ったような表情で微笑む。不思議そうな顔で首を傾げるポピーの髪を、チリはくしゃくしゃと撫でつける。

 

「……せやな。ポピーは四天王やからポピーの方がエラいで。やけどなポピー……覚えときや」

 

 チリは身を(かが)めてゆっくりとポピーを抱きしめると、優しい美声でポピーの耳元に囁きかけた。

 

 

「ワナイダーマンはな……チリちゃん達がするようなバトルなんてしないんや」

 

「ワナイダーマンはな」

 

「人の言う事なんて聞かんし」

 

「常識を弁えんし」

 

「やる事全部がめちゃくちゃでなきゃアカンのや」

 

 

 恐怖と興奮が入り混じったチリの鋭い目は、その場にいない彼の幻影を追いかけていた。

 

 

(チリちゃん こわれちゃった……)

 

 




スター団最大の功労者は、メロコとビワ姉にえっちな格好させてるシュウメイという風潮
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