私が書く事がない
バッドエンド物語
ただひたすらに手を伸ばす。
「届いて」
そんな思いで手を伸ばす。
しかし、運命とは残酷なものだ。
この願いは届かない。
頑丈な体を持ってしても…。
戦うための力があったとしても…。
鋼鉄の羽根を備えていても…。
目の前にあるものには届かない。
全て深い海の底へと沈んでいく。
無線の向こうに沈んでいく…。
私の近くで沈んでいく……。
目の前で沈んでいく………。
轟音と爆炎が広がる海の上。
そこにあったものが全て……。
何もかも………………。
気づけば私は海の上に立っていた。
辺りに見えるのは黒煙と残骸。
そして生き残った数少ない仲間。
さっきまで戦っていた。
しかし、どう戦ったか覚えていない。
記憶がはっきりとしない。
誰と一緒に戦い、どのような作戦か。
その記憶があいまいな状態だ。
そう言えば、鎮守府は
どうなっているのだろうか?
急いで戻らなくては……。
しかし、体は思ったように動かない。
私はそのまま膝から崩れた。
周りの仲間たちが肩を貸してくれる。
しかし、自力では航行できない。
私は仲間に曳航されて鎮守府に戻る。
目の前に移る光景に私は絶句した。
あるはずの鎮守府が無い。
目の前にあるのは残骸だった。
鉄筋はむき出して電気は漏電。
工廠は黒煙を上げ、地面にクレーター。
所々に血の海と死体が転がっている。
そう言えばあの人はどこに……?
私に生きる意味を教えてくれた人。
人としての生き方を教えてくれた人。
私のことを支えてくれた人。
私が愛したあの人は……。
私はただただ歩いた。
崩壊した鎮守府を歩いた。
そして提督の部屋だったはずの
壁の無い部屋に付いた。
扉は役割を果たしていない。
必要がないほど崩壊している。
その部屋に残る机。
今は亡き妖精が作った机。
鎮守府がこの有様でも残っていた。
しかし、鍵は壊れていた。
引き出しは簡単に開けることができる。
そこにあったのはケースと手紙。
私はその手紙を読む。
私は手紙を読んだことを後悔した。
途端に涙が溢れ出す。
そして頭の中を記憶が巡る。
あの人と初めて出会った時。
一緒に食事をしたとき。
笑いあい、喜び合い、時に喧をした。
今までの幸せが頭を巡る。
頭がおかしくなりそうなほどに。
しかし、次第にそれも止む。
そこに彼女がいたから。
あの人に選ばれた私じゃない彼女。
傷だらけで自分も辛いはずなのに
私の心配をしてくれる彼女。
そんな彼女を見ていると
憎くて憎くてたまらない。
私はその手紙を彼女に渡す。
そのまま横を通り抜けて部屋を出る。
私は涙を流しながら走る。
今にも漏れ出そうな声を押し殺して。
ただ離れたい。
そんな気持ちで走った。
そしてたどり着いたのは自室。
ここもほとんど崩壊している、
扉を開けてもその先に何もない。
そう……何もなかった。
「ッ!ああああああああ!」
その瞬間、再び頭を記憶が巡る。
いつも隣にいたあなたがいない。
自分にも他人にも厳しいあなたが…。
素直な一面が素敵なあなたが…。
陰で支えてくれたあなたが…。
大切なあなたが……ここにいない。
記憶が忙しく頭を巡る。
私は声を押し殺すことができない。
私の中にある何かが崩れていく。
ガラスのように砕ける。
シャボン玉のように儚く……。
私の意識はそこで途絶えた。
あれからどれだけの時間が
経ったのだろうか。
全てを思い出した私は
軍の病院のベッドに横たわる。
提督は死んだ。
あの戦いで一般人を庇って。
元軍人で屈強の身体でも
敵の砲撃の前では肉片に過ぎなかった。
鎮守府にいた仲間はほとんどいない。
軽く200を超える大艦隊。
それが今は立った数隻。
私を含めて10隻もいない。
仲間は他の鎮守府に行った。
あの子は…………自殺した。
あの部屋で自分の頭を撃って。
左の薬指に指輪してから。
手紙には返事が書かれていた。
「私も愛しています。
今から貴方の元へ向かいます。」
血に濡れた手紙にそう書かれていた。
鎮守府は再起不能。
もう、あの場所は元に戻らない。
私はここで生かされる。
戦えない艦娘は必要ない。
解体するぐらいなら
実験体になれと……。
私はそれに返事をすることは無い。
もう、生きる意味を感じないのだから。
食欲が沸かない。
あの温もりも感じられない。
あの人とあの人の温もりも。
食事は喉を通らない。
まるで拒んでいるかのように。
それ故に体は衰弱していく。
体は沢山のチューブに繋がれた。
私はこれから生かされる。
流す涙はない。
深い悲しみも絶望もない。
私の心は既に乾いた大地そのものだ。
否、大地ですらないだろう。
草木1つ生えない荒野。
先には何も見えない。
隣にも何もない。
前まで見えていた青い光も。
暖かいオレンジ色の光も。
私はただ茫然とする。
うつろな目でただ海を見る。
その目には白い翼の鳥が見えていた。
Twitterでジュウネンセイさんに
送ったやつをそのまま小説にしてみた。
赤城さん視点です。