TS転生女神だけど、臣民達がもっと搾取して欲しいって目で見てくる 作:銀幕の臣民
一応我らが【銀幕】の政略は上手くいっていると思う。
政治的不満を抱く者はいないし、ていうかなんなら私の為に命を捧げようとするものまでいる始末。
あの、生贄はいらないんで。
むしろテンション下がるのでやめてもろて。
とはいえ、【銀幕】には致命的な欠陥があるのも事実だ。
これは私が転生者であるからこそ発生した事であり、だからどうやってもそれを改善したりする事は出来ない。
それは、魔法への理解だ。
不思議エネルギーを消費して発生させる事が出来る摩訶不思議な現象。
そしてこの世界ではとても一般的な技術でもある。
……私は神様パワーに関しては感覚で行使する事が出来ているが、しかしそれは魔法ではなく神様全員が標準装備している技術である。
そして人間が扱う魔法に関してはさっぱりであり、だからこそ人間に魔法の技術を与える事が全くできない。
例えば戦神【シンソウ】が治める【フハ】。
あそこでは【シンソウ】が臣民に『神器』と呼ばれる武装を与えている。
『神器』というのはマジックアイテムだ。
魔力を与える事によって摩訶不思議な現象を引き起こす事が出来、それを用いて国防を行っているのだ。
それらは人によっては悪龍すら滅ぼす事が可能だとも聞く。
その悪龍の知識はないのだが、兎に角強力なモンスターなのだろう。
対し、我らが【銀幕】の自衛手段はどうなっているのか。
完全に現代武装である。
戦車、航空機、銃、爆弾、その他いろいろ。
物理攻撃であり、だからゲーム的に言うのならば『物理無効』効果を持った敵が現れたとすれば確実に終わる。
とはいえ現状例によって【銀幕】は島国なのでこれら戦力を100パーセント行使する機会はない。
それは不幸中の幸いと言えよう。
まあ、100パーセント使うような事態になった時点で我らが【銀幕】の敗北とも言えるが、それはさておき。
兎に角、自衛手段を強化しなくてはならない。
まず、何を中心に強化しなくてはならないのか。
――私はこれに関しては対空戦力と対海戦力を率先しなくてはならないと思っている。
これはとても単純な理由で、この国にやって来る為の手段が主にそれらだからである。
魔法に関しては完全にさっぱりなのでノータッチ。
兎に角物理で殴る事を優先する。
……対海戦力として、私はまず戦艦を生み出した。
世の中は今、大艦巨砲主義ですぜ兄貴。
というのは冗談として、その戦艦は航空機を飛ばしたり魚雷を撃ったりする事が出来る特別仕様。
あの戦艦大和やアイオワのサイズを軽く超える400メートル級!
名前は『素戔嗚』!
どうしてそれだけ大きいのに平気な顔して浮いて、そして動く事が出来るんだと思うかもだが、それに関しては例によって神様パワーである。
神様パワー、しゅごい。
そして対空戦力。
それに関してはとても単純に対空ミサイルを配備する事にした。
名前は『八咫』。
一応理論上は大陸まで届くようになっているが、果たして本当かどうか……
とりあえず試験として時折【銀幕】の上を通過する謎のドラゴンを撃ち落としてみたが、うん。
しっかりと機能している。
とはいえガチの対空兵器の目標は私と同じ神様パワーの宿っている攻撃だろう。
それに私の『八咫』はしっかり効いてくれるのか、それはそれこそやってみないと分からない。
あー、不安だ……
■
貿神【クイント】が曰く。
「かの国の特異性に関しては貴方も知っているでしょうけど。
特に件の『八咫』に関しては驚きの一言に尽きますわ。
一射が瞬く間に大空へと舞い上がり、悪龍『アビス』を撃ち落とす様を見た時は思わず絶句してしまった事をここに白状しましょう。
普通、あれってそう簡単に撃ち落とせるものではないと思うのですが。
そしてそれを一秒間に何発も撃ち出せるというのだから驚きです。
……ですが、彼女は自身の特異性に関して全く無自覚。
それが唯一彼女の欠点であり、突くべきセキュリティホールでしょう。
特異性は時に武器となりますが、それを自覚していないのならば宝の持ち腐れも良いところ。
むしろ自身の足を引っ張る枷にすらなりえる。
いえ?
わたくしは彼女とは長く良い付き合いをしたいと思っていますよ?
だって、馬鹿な子ほどかわいいと言うでしょう。
それに、彼女はとても、とても利益をもたらしてくれますから。
精々、わたくしの【グローリア】の為に働いてもらうとしましょう」