※pixivにも投稿しています。
いつも通り即興ネタなので、細かいところは気にせず雰囲気で読んでいただけると嬉しいです!
先生、ちょっとお時間いただけますか?
十二月二十五日──その日は世間全般で言うクリスマス。世の中は聖夜を共に過ごす友達、家族、仲間と盛り上がり、浮かれていることだろう。……もっとも、かくいう私も、この日ばかりは浮かれていた。昨日あったシャーレのクリスマスパーティに続き、今日は私だけが先生を独り占めできる日。ずっと前から
「今日、決めないと」
じゃなければ、自分の想いを押し殺して、私の背中を押してくれた
そのために、完璧なプランを練った。お昼に集合して、ショッピングセンターへ。ウィンドウショッピングをしつつ、先生が以前観たいと言っていた映画を観に行き、その後は喫茶店で小休憩。映画の感想を話し、のんびりし終わったら、雰囲気もレビューも良かったレストランでディナー。締めは、ミレニアムが誇るクリスマスイルミネーションを見に行き──告白。
情報を漁りに漁り、辿り着いたデートプラン。……きっと、このプランニングでも告白の成功率は五割を切る。先生は、そういう人だ。飄々としているようで、優しくて。子供っぽいようで、しっかりと大人で。領収書を忘れることはあるのに、
「大丈夫……だい、じょうぶ」
自分に言い聞かせるように、自分に喝を入れるようにそう言って、家を出る。時刻は九時五十五分。集合予定の二時間前だった。
◇
時間は過ぎる。
楽しい時間も、嫌な時間も残酷に過ぎていく。例えば、最高の計画がハプニングに続くハプニングでグダグダにされたとしても、残酷に過ぎていく。
ウィンドウショッピング。
訪れた洋服店でゲヘナとトリニティの生徒による年末セールを巡る闘争に遭遇。終末かと錯覚する店内の状況に加え、ヴァルキューレ警察学校やその店の店長に仲裁を求められ、対応。映画に遅れる。
映画鑑賞。
冒頭十分を見逃したが、予約していたこともありスムーズにシアターの中に入り、ゆっくりと見ることができた……けど、見逃した十分に重大な伏線があり最後の展開にモヤモヤながら退出。喫茶店での小休憩も盛り上がらなかった。
ここまで、ここまでならよかった。なのに、頼みの綱であるディナーにいった店はお昼時に爆破されたらしく閉店。近くにやってきていた屋台のラーメン屋で、先生イチオシのラーメンを啜った。……味は美味しかった。美味しかったということしか、覚えていない。
ロマンチックな雰囲気やムードはなくて、グダグダと続いてしまうデートごっこが……苦しかった。
「……今日は忙しい一日だったね」
励ますような先生の言葉も遠くて、適当な相槌しか返せない。色んなパターンを考えてきたのに、頭に思い浮かぶのは後悔だけで、気の利いたセリフは言えなかった。言いたかった言葉も、出てこない。
「ほら、ユウカ。イルミネーション、綺麗だよ?」
「……当たり前ですよ。このシーズンのためだけに、ミレニアムが作ったんですから」
「でも、ちゃんと見ないと、楽しめないでしょ?」
「見ましたよ──もう何度も」
何回も下見して、焼き付けた光景は簡単に脳裏に浮かぶ。本当は、こんな嫌な気持ちで見るはずじゃなかったのに。本当は、ここで想いを告げるはずだったのに。
今の私にはそれすら眩しい。
眩しくて、辛くて。
眩しくて、悲しくて。
こんなことになるんだったらって、思ってしまう自分が……嫌だった。
「……先生、すみません。今日はドタバタしてしまって。ちゃんと、ケース分けして考えてたんですけど、ここまでプランが崩れることは計算外で……」
「だろうね。ユウカはしっかり者だから」
「……なんで、こうなってしまうんでしょうか。がんばって調べて、仕事も前倒しして、先生の時間までいただいたのに。誘わないほうがよかったですよね? クリスマスですし、ゆっくりしたかったですよね?」
振り絞った声で、涙が出そうになるのを必死に押えて、先生にそう問いかける。いっそ、「そうだね」と肯定して欲しかった。私を拒絶して欲しかった。なのに、いつだって先生は、私が一番欲しい言葉を──一番して欲しい行動をしてくれる。
「そんなことないよ」
一言そういって、優しく抱き締めて、胸を貸してくれる。痛いのに、離れたくない温もりがそこにあった。
「私は、ユウカがもしいいなら。来年もこうやって過ごしたい。君と二人で」
「……いいん、ですか?」
「もちろん。君が望むなら、それに応える。私は、いつも真面目で、時々不器用で、真っ直ぐなユウカが──好きなんだ」
「……私も……私も、好きです」
「ふふっ、じゃあ私たち、両想いだね」
柔らかく微笑む先生は子供っぽくて、そんな表情すらキラキラと輝いていて、イルミネーションの光が霞んでいく。
嫌なことはたくさんあって、でもそれを乗り越えられる良いことがたった一つだけあった。その一つで、どんな壁も乗り越えられる気がした。
だから、私は言うんだ。
「先生、来年の今日も──お時間いただけますか?」
笑って。
おしまいおしまい。