頑張ったのに。

期待に応えたのに。


もう忘れられるんだ。


もう意味なんてないんだ。



I'm Dead



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白と黒に還る

吹雪く白銀の世界の中、二つの人影は対峙していた。

 

過酷な環境によるものだろうか。二人は見るに堪えない重傷を負い、今にも倒れそうになっている。

 

「………………」

「………………」

 

互いに無言。

致命傷としか見て取れないほどに血と肉を顕にしてなお、嘔吐きも悲鳴も出さずに見つめあっている。雪が積もり、肌の色はもはや青白く。

 

まるで……そう、まるで死人の様にその場に立ち尽くしていた。

 

しばらく続いた静寂であったが、吹雪以外に音の無い世界を破ったのは片腕を失い血も凍った少年の方であった。

 

「君は……輝かしく立ち上がって、その物語を…後から来た僕が、加工した…」

 

黒い帽子から除くひび割れた口から、暗く湿った声が温い湯気となり吐き出される。

それと共に血が飛び散り、雪を汚しては新たなゆきに埋もれていった。

 

去れ、早く……

 

それを無表情で眺める少年は、目から血を流しながらため息をついた。

 

「だから、君が惨たらしい最期を迎えても……誰も心配なんてしない…」

 

もう一方、赤い帽子を目深に被った少年も口から血を吹き出す。それはすぐ側にあった、黄色い相棒に新たな赤を付け足した。

 

「君の目的は…全てを無に帰すことだ。新しいものを出して……古いものを消していく…いつ死ぬとか、自分の運命とかは会議してみなきゃわからないもんさ……結局、僕たちじゃ決められないから」

 

どこからか暗い音が聞こえる…。

 

彼らの周囲には、共に旅をしてきた仲間たちが転がっている。

皮膚は裂け、臓物が筋肉の隙間から見えている。

 

それらを一瞥して、未だ小さく火を出している最高の相棒の背を撫でた。

 

彼は死んだ。

 

「『僕は長い間、ずっと死んでいる』って…金と銀の山の頂上を目指した人が言っていたんだ……お前たちのレッドに…侵されていくんだって」

 

ゆっくりと、顔が向けられる。

その眼孔に目玉は無く、その中にある暗闇から微かに赤い光が覗いている。

 

すぐにひきかえせ…、

 

「金に溺れて…神々と悪魔達に挑んだ君たちの物語は、さぞかしつまらないんだろうな。君たちは…人生を棒に振ったんだよ……」

 

赤い帽子の少年が膝をつく。その傍らに、未だ息がある電気ネズミが寄ってくる。

 

その顔に眼球は無く、大きく裂けた口が少年の腕に噛み付いた。

 

「その腐りきった上から見下ろしてご覧……僕が、近くにいるかもよ…?」

 

少年の腕が引きちぎられる。ネズミは憎々しげに吐き捨てた後、余力が尽きたのかその場に倒れた。

 

「時が流れて…栄光の輝きは失われてしまうってさ……」

 

また、不気味な音色が聞こえる。

 

いつの間にか色の違う妖精が、彼の傍で、腕を失ってしまった少年と対峙している。

 

「『ほろびのうた』の3カウントで…僕らの時間は止まるんだ……」

 

この旋律が怖いよ……

 

ちぎれかかった耳を引きちぎって立ち上がるネズミ、その目は妖精ではなく少年へと向けられていた。

 

「定められた道は…世界中の……誰もが主張するものだよ……」

 

何かが折れる音がする。

 

妖精の後ろで、言葉を発していた少年の足がグチャグチャに潰れてしまっていた。

 

「二人のチャンピオンや、正された伝説……僕は迫り来る闇から世界を救ったのに……ねぇ…その時流した血や汗はもう…、意味が無くなっていたの…?」

 

 

 

 

 

神になりたい

 

 

 

 

「ちょっと待ってよ……時は進んで英雄は倒れ…細くされちゃって、闇に消えたんだ…」

 

赤い帽子の少年。

 

血走った目は黒く染まり、残っていた腕は根元から無くなっていた。

 

死んでいる……?

 

「だけど、時代は変わる…灰が無くなるまで全部を無に帰す…」

 

そして、次世代の子たちは僕らを忘れていくんだ。

 

 

 

お前らがやった

 

 

 

「ルビーにサファイア…ダイヤモンド、パールは…作り直され世に出された。……ブラックホワイト、XY…サン、ムーン、ソードとシールド……スカーレットにバイオレット…」

 

目の前で白黒がチカチカしてるよ。

 

 

不吉な音が3度目。

 

 

グチャッと妖精は雪に落ちて埋もれてく。ネズミは後ろに倒れて……少年は道ずれにされた。

 

首を失い倒れた少年。それをただ見てるだけの少年は血を吐いて死体に吹きかける。

 

でも、死体は吹雪に飲まれて。後は彼以外いなくなった。

 

「このストーリーは本物と違うって……?聞こえてはいるんだろうけど理解してないだろお前。……金はもう輝くことないって、頭ん中に叩き込んでおけよ……?」

 

相棒の火が消える。雪の中に消えていく。

 

冷たい闇の中で、もう誰からも思い出されることはない。

 

「君は遊ぶのが目的だ。……葬式で言われたことが頭で渦巻いてる…原点(伝説)も、後続者(輝き)も、君に固執した栄光は全部、終わりを迎えた…」

 

肉のちぎれる音がする。

 

暗号が辺りを飛び回っている。

 

骨と一緒に筋肉が裂かれて、首が離れた。

 

「…もういいよ……」

 

口から、目から、暗号が除く。

 

赤い光となって、たくさん、たくさん。

 

 

 

 

「僕、死んだみたい」

 

 

えいえんに、さようなら ……。

 





やすらかにねむれ……

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