現代艦しか建造されない鎮守府(仮)   作:秋月艦隊

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プロローグ

 

「はぁ…」

 

早速だが俺は転生者だ。

死後によくある?不思議空間で神様っぽいのに出会って艦これ世界に転生させてもらった一般提督の1人だ。

 

これと言って特筆することもない。

普通の社会人で、会社勤めのサラリーマンだったくらいだ、何か特別な資格を持っているとかそう言うのじゃない…せいぜい英検3級を高校の頃取ったくらいだろう。

典型的な非モテの陰キャで社会人になってからも艦これを続けてプレイしていたことくらいだろう、それも誇れることでは無いが…。

 

まぁ、艦これをプレイしていたと言っても、俺はガチ勢ではなくエンジョイ勢だったからイベントもほとんどせず自身の艦隊の子達に癒してもらいながらのんびりと育成していた。

上司からの嫌味を受け続けてきた俺からしてみれば艦これは唯一と言っていい癒しだったんだ。

 

だから俺は生まれ変わるなら、と頼んだのが事の顛末だ。

 

「だが…いったい何処で間違えたんだ?」

 

狭い船室で頭を抱えうずくまる男が1人…もちろん俺だ。

 

転生後、俺はこれまでの人生以上に頑張って生きてきた。

今世は前世と違って両親や友人にも恵まれていたし、前世の記憶のおかげで勉強にも困ることは無かったからな…それでも、最初は艦これの文字どころか艦娘も深海棲艦も存在しなくて焦ったが、そういう物かと納得して自分に言い聞かせた。

 

───そして、転生してから早20年、大学が休みの日曜日それは起こった。

 

『未確認生物が沿岸の都市を攻撃しています!!』

 

けたたましい警告音と共にテレビから聞こえてきたアナウンサーの驚きに満ちた声を聞き、俺はハッとした。

 

──もしや、艦これが始まったのか?と俺自身も驚愕を持ってニュースの続きを見ると真っ青な死人のように白い肌色をした10代半ばほどの少女が禍々しい武装を背負って都市を攻撃する様がカメラに映された。

 

そこからはあっという間だった。

カメラを乗せたヘリコプターが墜落し日本中…いや世界中で大混乱が起こった。

日本では自衛隊がすぐにスクランブル出撃して迫り来る少女達…深海棲艦に対する攻撃を実施することになった。

勿論、在日米軍もこの攻撃には参加し横須賀・佐世保・沖縄から陸海空の部隊が展開された。

 

しかし、この攻撃は日米連合軍の壊滅で幕を閉じた。

 

特に海自と空自…そしてアメリカ第七艦隊の被害はほとんど全滅と言って差し支えないものだった。

帰還した艦艇が"ゼロ"と言う歴史上類を見ないほどの大損害だったらしい。

 

その後は【妖精さん】と呼ばれる不可思議な存在を見ることが出来る特殊な人間が【提督】となり艦娘を建造する様になって事態は一応の終結を見せた。

 

「そして、俺は検査を受けて【提督】になる…はずだった」

 

艦娘を建造する方法は幾つか存在するが、最もメジャーなのはその艦娘の元となった船の一部を媒体として狙った艦娘を建造する方法だ、この方法だとまず間違いなく建造できる。

 

──それこそ、とんでもなく相性が悪くない限りは。

 

そして、俺はどうやら艦娘を建造するのにとんでもなく相性が悪かったらしい。

基本的にそういう人は性格が最悪だったりすると言った特徴があるのだが、俺は何故か建造出来なかった。

 

俺に近しい人達は励ましてくれたが…軍の上層部は俺がとんでもなく性格が悪く醜悪な存在として認知したらしい。

 

そして、俺は名目上は【栄転】する事になった。

 

場所はソロモン諸島ショートランド泊地、最前線も最前線の何にもない無人島だ。

いや、深海棲艦が来る前は人が住んでたんだが、内陸に避難するために放棄された島だ。

 

俺がこの島でやる事はただ1つ、深海棲艦の接近を大本営に知らせること、それだけだ。

一応、鎮守府として最低限の設備は整っているが、あくまでも本命の提督が着任するまでの厄介払いとして送り込まれたため、俺は何もすることは無い。

 

「──おいっ!着いたぞ!!」

 

「…あぁ、分かった」

 

「早く降りろッ!!ただでさえここらは危険海域なんだぞ!!」

 

ここまで運んできてくれた船の船長が扉を開けて怒鳴りつけてくる。

その目には明らかに憎悪と軽蔑が混じっており、俺みたいな存在を運ぶのが嫌だったと簡単に分かった。

 

俺はまとめてあった荷物を右手に持つと、早歩きで階段をおり、これから数年お世話になる島に上陸した。

 

「───これで俺も終わりか」

 

砂浜に座り込み遠ざかっていく船を見つめ呟いた。

俺の後ろには、即興で作ったであろうコンクリート作りの建物があり、ここが最前線だと否が応でも分からされた。

 

「──よしっ!切り替えていこう!とりあえず建物内をチェックするぞ!」

 

両頬を軽く叩くと俺は立ち上がり、鎮守府内を歩き始めた、人っ子一人いない無人島で否が応でも数年暮らさなければならないのだ、多少無理やりにでも声を出さねばやってられないだろう。

 

「───何やってんだ、俺」

 

執務室・艦娘寮・入居施設・食堂…鎮守府内を歩き始めた俺は色んな場所を見ては段々と寂しさが溢れてきた。

前線でポツリと孤立する絶海の孤島、未だにフィリピン近海で激戦を繰り広げている事を考えればこのショートランド泊地は深海棲艦の進撃ルート上にあることを除けば何にもない、ただの無人島だ。

 

誰もいない孤島で数年何もせずに暮らす…最悪な【栄転】…いや【左遷】だな。

 

「…歩くか」

 

俺は砂浜の波打ち際をとぼとぼと歩き出した。

本来ならば綺麗なはずの砂浜には大量のゴミが打ち上げられていた。

だが、俺はそんなゴミの中に興味深い物を見つけた。

 

「ブルーリッチ?いや、ブルーリッジか?」

 

俺が見つけたのは【Blue Ridge】と書かれた救命浮輪だった。

所々焼き焦げているのは戦闘があったからだろうか?おそらく英語圏の船なんだろうがどんな船なんだろうか?俺は不思議に思った。

 

「──持っていくか」

 

捨てようか迷ったが、その場に捨てるのは不法投棄になるからと、何故か目が離せなかったから俺はそのボロボロの浮き輪を持って最後に残った工廠を見に行った。

 

「ここが工廠か…ここだけはしっかりした作りになってるな」

 

最前線とは思えぬほど綺麗な作りをした工廠内部を歩いて回る。

 

「おわっ!」

 

「どうもこんにちは!」

「はじめまして〜!」

「あたらしいていとくさんですね!」

 

「はぁぁぁ、なんだ妖精さんか」

 

突然出てきた事に驚いたが、この鎮守府に到着して初めて出会う意思疎通可能な存在に俺は確かな安心感を覚えながら大きな息を吐いた。

 

「…それで、どうしたんだ妖精さん」

 

俺は呼吸を整えると、改めて妖精さんにそう聞いた。

 

「ていとくさん!けんぞうしましょう!」

「けんぞう!けんぞう!」

「かいはつもー!」

 

「ハハッ…残念ながら俺は建造が出来ないし、そのために必要な媒体も無いんだ」

 

俺は軽く笑いながら妖精さん達を宥めるように言った。

元より、何か言われるのには慣れてるから、変な顔をせずに笑えたはずだが妖精さん達は不思議そうな顔をして言った。

 

「もってるじゃないですか」

 

「は?」

 

「ほらっ!」

 

妖精さんは俺が持つ救命浮輪を器用にも奪い取るとそのまま工廠の奥の方にある建造ドックに走っていった。

 

「は?ちょっと待て!」

 

「けんぞうかいし〜」

「「おー」」

 

「待てよ!!」

 

俺が急いで追いかけたが、時すでに遅く妖精さん達は俺の制止も聞かず鈍色の液体で満たされる建造ドックに浮輪を投げ込み建造を初めてしまった。

 

「はぁぁぁ、始末書だな…」

 

「だいじょうぶ!だいじょうぶ!」

「いけるいける!」

「もんだいなし!」

 

呑気に言える妖精さん達が羨ましい。

基本的に建造に失敗すると鉄屑が出来上がって資源の無駄遣いだからやりたくないんだよ。

はぁ、優秀な提督なら一切そういう事が無いらしいけど残念ながら俺は相当艦娘に嫌われてるらしいからな…妖精さんには結構好かれてるんだけどな。

 

「…あれ?」

 

─3:00:00─

 

「建造、出来てるのか?」

 

「ほらほらー」

「いったでしょ〜」

「じゃあ、こうそくけんぞうのじかんです!」

 

俺の足元で妖精さん達が何か言っていたが、呆然としていた俺には全く聞こえてなかった。

視界が炎で埋まりドックが満たされていく。

 

「できたー」

 

「マジか」

 

なんで建造できたんだ?俺は艦娘に嫌われてたんじゃないのか?疑問は尽きないがドックから現れようよしている艦娘の姿を見て近ずき声をかけた。

 

「大丈夫か?」

 

「───貴方は?」

 

「俺は───」

 

今まで俺は艦これの世界に転生した事に意味があるのかどうか分からなかった。

いや、今でも分からないが──それでも、こうやって彼女たちに出会えるなら間違いじゃなかったと…そう思えるんだ。

 

「俺は───提督だ

 

その日、俺は本当の意味で提督になった。




思いつきで書いた艦これ×現代艦の話です。
好評なら続けます。
…好評じゃなかったら?放置。

太字や点滅などのフォント関係

  • これまで通りで大丈夫
  • 無くて良い
  • 更新速度あげるんだよあくしろよ
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