現代艦しか建造されない鎮守府(仮)   作:秋月艦隊

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第14話 現れた艦娘【トラック泊地side】

薄暗く、どこか年季を感じさせる机と無線機が壁に設置されているトラック泊地・作戦室…そこにはボロボロになりながらも何とか帰還した艦娘数名が提督へ詰めかけていた。

 

「提督!!時雨が戦っているんです!!」

「提督さん!」

「早く助けに行かなきゃ!」

「司令さん!」

「提督…!」

「司令!」

 

「…」

 

扶桑・山城・最上・山雲・満潮・朝雲、6人の艦娘が提督に支援、あるいは再びの出撃を求めて声を上げる。

その声に、提督は額に深いシワを作り黙り込んだ。

 

「…皆さん、少し落ち着いてください」

 

「ですがっ…」

 

「提督も同様に考えています」

 

提督の後ろにたっていた大淀が全員を落ち着かせるための声をだした。

その声に扶桑は何かを言おうとしたが、立て続けに声をだした大淀の言葉によって遮られた。

 

「…すまない」

 

「なっ提督!!」

 

「もう、救援に回せる艦隊はひとつとしてないのだ…」

 

提督は頭を机に擦り付けるように下げ謝罪と理由を述べた。

 

ここトラック泊地は日本防衛の為に必要不可欠な要衝であるが所属する艦娘の数は40人程度と少なかった、これは資源不足などの根本的な問題ではなく、大本営が最前線よりも大陸からの物資輸送を重視しているからであり、そのために建造された艦娘の多くは日本近海や中国・タイ・インド方面に派兵しているからである。

そして、この鎮守府において重要な打撃力を持つ戦艦は現在中破している扶桑・山城の他には金剛・比叡の2人しかおらず、その2人も現在は空母翔鶴・瑞鶴と20人余りの駆逐艦を護衛として引き連れてソロモン諸島を大きく迂回して現れた深海棲艦の大艦隊と戦闘中であり、今この鎮守府に残されているのは大淀や扶桑たちと同じように損害を受けた艦娘が数名いるだけであった。

 

「…そんな」

「うそ…」

「じゃ、じゃあ時雨は…」

 

「──すまない」

 

山城・満潮・最上の3人が認めたくないと声を漏らし、他の3人はただ呆然と立ち尽くしていた。

提督はそんな艦娘たちの姿に泣きたくなるのを堪え再び頭を下げた。

 

「───提督さーん!

 

「…どうした、夕立」

 

完全にお通夜状態の作戦室にドタドタと扶桑たち以上にボロボロの夕立が駆け込んできた。

提督は重々しくも顔を上げ夕立の方を見た…その表情は傷つく前とほとんど変わらず、晴れやかでどこか犬っぽさが滲み出ている。

 

…どうして、どうしてそんな楽しそうなのッ!!

 

「ぽい?」

 

山城が堪えきれないとばかりに叫ぶ。

本来ならば止めるであろう周りのもの達も放心状態か同様の怒りを燃やしているかで決して止めない、唯一大淀だけは止めようとしたが提督が手で止めた。

提督としては夕立の話を早く聞きたかったのと、多少のガス抜きは必要だと考えたからであったが、大淀は少し不満そうにしていた。

 

「どうしたっぽい?」

 

時雨がっ!時雨がっ!!

 

──沈んだ──

 

そう言おうとして山城は口を詰まらせた。

認めたくないのか、はたまた未だに希望を捨てていないのか…その本心は本人ですら分からなかったが、とにかくその後に続く言葉を発することは無かった。

 

「?時雨がどうしたっぽい?」

 

ッ!時雨はもう!

 

「ん?時雨ならついさっき帰ってきたっぽい?」

 

夕立の一言で山城の言葉が止まる。

それどころか、作戦室にいるすべてのものが夕立のことを見た。

 

「―――勝手に死んだことにされたら、流石に僕も困っちゃうかな?」

 

開きっぱなしのドアの向こうから聞き覚えのある声が聞こえてきた。

全員が夕立から目を離しその声の主を見た。

 

ッ〜時雨〜!!

 

「おわっ!」

 

満潮が他の仲間たちを押しのけてボロボロになりながらも普段通りの微笑みを絶やさない時雨を抱きしめた。

少し涙声になり、鼻をすすりながら抱きついた満潮に感化されてか、山雲・朝雲・最上と続々と飛び出していき、何故か夕立も抱きついた。

そんな姿を扶桑・山城は安堵の気持ちで息を吐いた…最も山城は後で夕立に謝らなければという気持ちになっていたのだが…不幸だ。

 

「──そろそろ、良いですか?」

 

「…あ、ご、ごめん」

 

そんな中、提督は他の艦娘たちを差し置いていち早く時雨の背後にいる艦娘と思しき2人の姿を認識していた。

こちらから話しかけるべきかと提督が思考している最中に向こうから時雨に話しかけてきた。

 

「んっんっ…みんな紹介するよ、僕を助けてくれたショートランド泊地の艦娘【ブルーリッジ】と【インディペンデンス】だよ」

 

ッ!!

 

「え?提督?」

 

ブルーリッジとインディペンデンス…その名前を聞いた提督は目を見開きガタッと言う音を立てながら立ち上がった。

背後にいた大淀が驚いたような声で自身のことを呼んでいたが、この時の提督には聞こえていなかった。

 

「【ブルーリッジ】…第七艦隊の旗艦だった?あのブルーリッジか?」

 

「えぇ、第七艦隊元旗艦【揚陸指揮艦・ブルーリッジ】ですよ」

 

「───そうか…そうか」

 

提督は彼女、ブルーリッジの言葉を聞くと酷く疲れた様子で席に着いた。

ただ事ではないと提督を見た周囲の艦娘たちも事態を把握しきれていなかったが、第七艦隊と言えば太平洋戦争中、自身たちとも戦ったような艦隊だったと思い出し眉をひそめた。

 

「それはそうと、私達は提督からこの様な物を預かっていまして…」

 

「…」

 

トラックの提督は黙ってその手紙を受け取ると、丁寧に封筒を開くと中にあった数枚の書類を見た。

 

宛 トラック泊地 石川哲治中将殿へ

 

我がショートランド泊地は現状、深海棲艦との最前線にもあるにも関わらず多くの資源が不足しつつあり、戦時物資並びに日常に必須の資源も不足すれば、決戦は成されず。

よって、艦娘を思いやるのであれば僅かばかりの資源の融通を願う。

 

人事を尽くして天命を待つ。

 

ショートランド泊地 提督 短国 眞久佐少将より

 

筆だろうか?見事な達筆で書かれた自身への手紙と、同様に筆で書かれたのであろうショートランド泊地の現有戦力と資源や施設についての事細かな書類があった。

 

「…はぁ」

 

提督は深海棲艦以上の厄介な話が自分に来たと、頭痛を感じながら目の前に現れたショートランドの艦娘を見た。

明らかに他の艦娘とは違うレーダーやミサイル発射機にヘリコプター、隣のインディペンデンスと言う艦娘に至ってはアングルド・デッキを持っており、目に見えるだけでもトムキャットとヘリコプター数機がふわふわと浮かんでいる。

 

「──分かったとショートランドの短国提督には伝えてくれ…君たちの補給に関しても数時間以内に用意する」

 

これでは砲艦外交では無いかと短国提督に怒りを抱きながら、言われた通りの事を行おうと行動を開始した。

下手な行動をとっては自分だけではなく艦娘たち…ひいては日本という国が危険にさらされかねない。

…そう考えてみればここで恩を売っておくのもありか、と石川提督は考えながら辞めておこうと思った。

 

──彼女たちの怒りを買うのは得策では無い。

 

提督は重々しくも大本営への報告のため書類を書き始めた。

 

無能と聞いていたが…短国少将とはどんな化け物だ?

 

彼の疑問に答えるものはいなかった。。




感想・評価ありがとうございます!
提督の名前に関しては思い浮かばなかったので夢野千鶴さんという方に提案された名前をそのまま使用しました。
感謝します。

太字や点滅などのフォント関係

  • これまで通りで大丈夫
  • 無くて良い
  • 更新速度あげるんだよあくしろよ
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