「…違う、これも違う」
資料が保管されている鎮守府の一室で取っては捨ててを繰り返す。
――違う、これじゃない!今必要なのは深海棲艦云々では無く、かつて国を守った戦船の戦歴…彼女たちの過去だ。
―バサバサッ―
床にまとめられた資料が散らばる。
足の踏み場も無くなって、床の感覚も薄れていく。
「こんな物じゃない!!」
―ダンッ!!―
すっからかんになった棚に拳を叩きつける。
何もなかった、艦娘や深海棲艦について書かれた書類はあったが【ブルーリッジ】【キーロフ】【インディペンデンス】に該当する艦娘に関する情報は無かった。
「はぁはぁ…」
いや、正確に言えばこの鎮守府に所属する艦娘の装備・戦歴・艦名が1945年以前には存在しない。
艦名だけなら無いことはない、しかしミサイルは積んでいないし近代的なジェット戦闘機なんてものは積んでいない。
「はぁ…」
赤くなった拳をさすり息を吐く。
ここまでくれば、俺も彼女たちの特異性に気付かされる。
「本来存在しない艦娘」
戦後の艦艇…より正確に言うならば戦後に建造された艦艇は艦娘として原則現れない。
そして、元々の艦に搭載が現実的でないものは搭載できない、仮にできたとしても本来の性能を活かしきれない。
駆逐艦に46cm砲が載せられないように、戦前の艦艇に突然ミサイルを載せることなどできないのだ。
「―とんだ思い違いだ」
真剣に考えてこなかったつけが回ってきただけだ。
降って落ちてきた幸運を当たり前だと思っていた、だがそんな事は無かった。
彼女たちに甘えて、自分に甘えて、環境のせいにしてきた。
「とんだ馬鹿野郎じゃないか」
そりゃあ、艦娘達が答えてくれないはずだ、こんな逃げてばかりの人間についてくるわけ無い。
自分の果たすべき責任から逃げてばかりの…大人のフリした子供に命を預ける事はできないもんな。
「ちがいます」
「妖精さん?」
部屋中に集まった何十もの妖精さんたち。
彼らが一様に自分を見てくる。
「われわれは、どんなかんきょうでも、まっすぐなていとくについていこうと、そうおもったからいるのです」
「「「そうだそうだー」」」
「それはただの”こううん”などではありません」
「あなただから、わたしたちはみんなついてきたんです」
「だから、なかないでください」
「わたしたちもついています」
「妖精さん…でも」
みんなに嘘をついて演じて、変えようとしなかった自分が本当に変われるのか?
「これからです」
「イチから…いえ、ゼロか「「「そうだそうだー」」」―うるさいです!いま”きめゼリフ”だったんですよ!!」
「プッ!は、ハハハハっ!!何だそれ!」
俺はただただ笑った。
真剣に考えていた自分が馬鹿らしくなって、まだやり直せると思って。
童心に帰って、声を上げて笑った。
「わらわないでください!!」
つられて全員が笑った。
「――あぁ、もう少しだけ頑張ってみるよ」
提督らしく…いや、もっと自分らしくやっていこう。
「行ってくる」
「はい!がんばってください!」
部屋を出て駆け足で鎮守府を回る。
廊下に軍靴の音が響いて艦娘達が現れていく。
「提督!!」
「提督!」
「提督さん!」
「ブルーリッジとインディペンデンスを叱りに行くぞ!全員続け!!」
鎮守府を走り回る。
いつの間にかその集団は艦娘達だけでなく妖精さんも取り込んで、相当な大きさになっていた。
「提督!どういうことだ!」
「提督!なぜ我々も!」
「私は別に‥」
「ごーごー」
「とつげきー」
「くうぼがりじゃぁぁ!!」
背後から聞こえてくる声に笑みをこぼしながら鎮守府の端っこで海を眺める件の彼女を見つける。
その少女とも大人の女性とも言えぬ背に全力で飛びかかる。
「ブルーリッジィィぃl!!!」
「‥え、あ―――きゃぁぁぁぁぁ!!」
飛びかかった衝撃で二人は空を飛び…海に落ちた。
―――ザバァァァン!!!―――
「はぁはぁ…――ようやく捕まえたぞブルーリッジ」
ずぶ濡れの二人。
獰猛な笑みを浮かべ少女を抱きしめる。
「もう離さないからな」
「―――は、はいぃ」
二人は幸せなキs「強引ですね、指揮官」…あ。
「ブルーリッジの事はそんなに心配していたのに、私には何もなしですか?」
「は、ハハハ…すまん」
「もう少し、ロマンチックに現れると思っていたのですが…これはこれでありですね」
インディペンデンスが笑う。
それはもう、皮肉たっぷりな笑みで。
「提督、いきなり走り出した事と、その状況を説明してもらおうか?」
「いや、これしか無いと思ってな…」
「そうですか。では、いつまでブルーリッジと抱き合っているのですか?」
二人に言われ、このままでは不味いと手を離し陸に上がろうとする。
しかし、どんなに力を抜いてもブルーリッジとの距離は一向に離れない。
――万力の力で抱きしめられている――
「ふふ…キーロフ、私と提督に妬いているんですか?」
「あ?」
「残念ですね、この通り私と提督はすでに…「
ブルーリッジとキーロフが殴り合いを始めた。
拳と拳では無く、ミサイルと艦砲で。
「提督、今のうちに」
「こっちだよー」
いつの間にか艤装を展開し、水上に立っている護衛艦の二人に向かって泳ぐ。
このままでは巻き込まれかねないと思ったからだ。
「…細かい話は二人が落ち着いてからだな」
なんとかなって良かったと思う気持ちと、今後の不安感を感じながら鎮守府に戻る。
彼女たちの過去も、抱えている物も何一つ分からなかった。
…だが、なんとなくこんな最前線でもどうにかなりそうな気がして笑みがこぼれた。
過去と未来。
それが収束する日を私達は望む。
たとえ、その行く末にどれほどの悲劇が待っていようとも…私は進み続ける。
それが
次、建造する艦艇
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アーレイ・バーク(イージス艦)
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タイコンデロガ(巡洋艦)
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ワスプ(強襲揚陸艦)
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ジャン・バール(戦艦)
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アドミラル・ゴルシコフ(フリゲート)
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バージニア(原子力潜水艦)