現代艦しか建造されない鎮守府(仮)   作:秋月艦隊

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第7話 静寂【提督side】

 

静かだ…ただただ静かな静寂が鎮守府内の作戦室を包み込んでいる。

ブルーリッジとキーロフの艦隊が出撃して早20分…作戦室の長机で周辺の海図と懐中時計を眺めていた俺は作戦の進捗報告を待ちながら訓練生時代のことを思い出していた。

 

訓練生の頃、俺は提督の適性検査に受かり複数人の同期と共に専門の訓練を受けていた。

その時の教官は身体中に傷を負った御年配の軍人で深海棲艦の特徴や習性について説明された。

 

…と、言ってもだ、まだ出現してから1年程度しかたっていなかった頃の話だからな、あくまでも青白い肌をしているとか人の姿に見合わない力を持つなどだ。

 

「…」

 

俺がその教官についてしっかりと覚えているのはただ一つ…戦場における心持ちについてだった。

彼が教官として俺たちを教えてくれたのはほんの数週間程度だったが、彼はその最後の日に俺たち全員に向けて決して冷静さを失わず全体を見て行動するよう激励していた。

老兵の迫力は凄まじく、かなりの衝撃を受けたことは今でも鮮明に思い出せる程だ…その時、俺は何を思ったのか彼の後を追って、その言葉の真意を確かめようとした。

彼はそんな俺の姿を見ても全く不思議そうにせず…それどころか待っていたとばかりに俺の名前を呼び空き部屋に入って行った。

その後をおった俺は彼から聞かされた数々の経験談を自分自身の未来のように感じてしまった。

 

なんてことは無い、ただの軍人の話だ…深海棲艦が現れた時慌てて指示を出すのが遅れたこと、その結果自身が指揮していた船が沈んだこと、燃え上がる復讐心のまま行動して着いてきた一人息子を死なせ1人生き残ってしまったこと…死に損ないの老兵は静かに、だが未だ衰えることの無い声色で俺に言った。

 

『後は任せたぞ』

 

この時既に落ちこぼれの烙印を押されつつあった俺に、一体何を求めるのか?俺がいくら聞いても曖昧に笑ってはぐらかすだけの老人は憂いを絶ったように安らかな表情を浮かべ俺の肩を叩くとそのまま去っていった。

 

…しかし、彼が去るその瞬間、振り向きざまに彼が『──似ている』と呟いた事を俺は確かにその耳で聞いた。

 

あの老人が今どうしているかは知らない、何処かで静かに暮らしているのかもしれないし、未だ前線で活躍しているのかもしれない…だが、不思議と彼の戦いはあの時、確かに終わったように感じた。

 

「──冷静さを失わず全体を見よ…か、敵の本当の目的はソロモン諸島なのか?」

 

今更ながら浮かんでくる疑問の数々。

何故、敵艦隊は現状戦略的価値の欠けらも無いソロモン諸島に攻め込んできたんだ?将来的には脅威となるにしてもひと足早くトラックやサイパンを叩く方がより戦略的だ…少なくとも上手くやれば日本だけじゃなく内陸国の1部ですら脅かせる戦力をこちらに差し向けてくる理由はなんだ?

 

「…分からない」

 

…少なくとも彼女たちが今戦っていることに変わりは無い、たとえこれが敵の大規模侵攻作戦の準備段階だとしても、今の俺が指揮できる艦娘はたった2人だけなのだ…一応、大本営に報告はするがそれをどう扱うかは上層部の話で決して現場の話では無い。

 

───ならば『ブーブーブー

 

「ッ!…こちらショートランド泊地」

 

『──はっ!提督、敵艦隊の殲滅完了しました、こちらの損害は無し!これより帰還します!』

 

「…うむ?」

 

損害無し?殲滅完了?いやいや、いやいやいやいや!!俺はあくまでも敵艦隊に手傷を負わせて撤退出来れば御の字と思っていたんだがな…いくらミサイルでもそこまでやれるものなのか?…ふむ、後でブルーリッジに詳しい報告書をまとめてもらうとしよう。

 

「ブルーリッジ」

 

『はいっ!』

 

「十分な対潜警戒を行いながら帰還しろ、おそらく深海棲艦の潜水艦部隊が一部突破している可能性がある」

 

浸透戦術は深海棲艦の十八番だからな。

確か…第一次ソロモン海戦においても日本側の損出は潜水艦による雷撃で重巡洋艦が1隻沈没したらしいからな、このソロモン諸島で再び同じことが繰り返されないとは限らない、警戒しておくに越したことはないだろう。

 

『ッ!は、はいっ!』

 

「?…では帰還せよ」

 

『はぃ、失礼します

 

何故か覇気がなく、心なしか涙声のブルーリッジからの通信を切り一息つく。

とりあえず、だが危機は去った…ショートランド泊地は防衛され敵艦隊は殲滅された、ソロモン諸島防衛は成功し大本営の無理難題も完遂した。

 

無論、いい事ばかりでなく課題も多い。

一番の問題は俺が艦娘の能力を把握しきれておらず、最適な作戦を立案できなかったことだ、いくら時間が無かったとはいえ直感でソロモン海方面に展開させて索敵と攻撃を一緒に行わせるなんて無理があった。

今回は運が良かったが敵が南太平洋方面から来た場合、丸裸のショートランド泊地は敵の総攻撃を受けて壊滅していただろう。

…とにかく、次がいつになるかは分からないがその時までに自分のできる最大限の努力をしよう。

 

───彼女たちが誇れる提督になるために───

 

発 ショートランド泊地 提督

宛 大本営 軍令部 伊藤直也中将

 

八月七日深海棲艦中規模艦隊ヲ撃滅セリ。

サレド敵ハ大規模侵攻ノ予兆ヲ見セツツアリ、大本営ノ指示ヲモトム

 




なんか気に入らかなったので書き直してたら時間がかかりました。
次回は再びの艦娘視点ですね。

太字や点滅などのフォント関係

  • これまで通りで大丈夫
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  • 更新速度あげるんだよあくしろよ
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