「ん…夢…か…」
そう呟きながら布団の中でもぞもぞと動く
あの日、引き取ってくれてからというものの、世界が変わった
自分の知っていた世界より、眩しすぎるぐらいに
何もかもが違い過ぎて、本当にここは同じ世界なのかと疑ったぐらいには
引き取ってくれた人たちも凄く優しくて、本当の家族みたいに扱ってくれた
ただ、少し過保護気味な気がしなくもないけど
特にお義姉ちゃんはそれが顕著だった、ちょっと咳き込んだだけで医者呼んだりして大騒ぎするもん
…いや、よくよく考えたら皆そうだったな、メイドさんや執事さんもそうだったし
「唯葉?起きてる?」
そんな言葉と同時に部屋の扉が開く
「夏葉お姉ちゃん…おはよ…」
「ええ、おはよう、今日も可愛いわね」
そう言いながら優しい手つきで頭を撫でてくるのは、私の義姉である『有栖川夏葉』
『放課後クライマックスガールズ』っていうユニットで活躍している現役バリバリのアイドルだ
因みにこの家に引き取られてからの私の名前は、『有栖川唯葉』
元々戸籍が無かったから色々手続きが大変だったというのは義父の話だ
と、話が若干それた
頭を撫でてくる義姉はと言えば、シャワーでも浴びたのか結構さっぱりしたような感じ
基本的に義姉の方が先に起きてランニング、帰ってきてシャワーを浴びた後に私を起こすというのが日常
因みに義姉は今まで一度も風邪とかに罹ったことがないらしい、まぁ空いてる時間には筋トレをしているから当たり前か
それはそれとして、義姉には少し問題がある、それは…
「んー…40分52秒48ぶりの唯葉…」
「何でそんなに細かく数えてるの…というか寝るときも抱き締めて寝てたじゃんか」
「私にとっては死活問題なのよ」
そう、私に対して異常なまでの溺愛ぶりだ
少しでも平熱より高ければ病院に連れて行こうとしたり、呼吸がちょっと違うだけでこの世の終わりみたいな顔するもん
因みに病院の件は私が必死に説得&実力行使(仮)を使ってからはなくなった、それでもすごく心配してくるあたりは変わってないけど
一回風邪をひいたことがあるけどその時はまさに阿鼻叫喚だった、何があったかは言うまでもない
因みに義姉が所属している事務所の人達も義姉に負けず劣らずなんだけど…それはまた今度でいいだろう
あの後、ずっと抱き締めてくる義姉をあの手この手で何とか引っ剥がして朝飯を食べた
凄く美味しんだろうけど、味覚が死んでいる私には美味しいかどうかは分からない
それにそもそも、世界全てが
ただ白が明るい色で、黒が暗い色なんだろうなって思うぐらい
これに関してはいくつもの病院で診てもらった結果だからどうしようもない
「所でお姉ちゃん…そんなに心配しなくても歩けるから」
「駄目よ、貴女そう言いながら一回階段から転げ落ちかけたじゃない」
何年前の話をしているのかと思ったけど、まぁ実際その通りだからどうしようもない
まぁ今の会話からも分かる通り、私はまともな歩行が困難だ
一応リハビリとかはしてもらったんだけど、医者曰く「辛うじてまともに歩ける」らしい
薄情な医者だと思っていない、その医者は文字通り身を粉にしてくれたんだから
寧ろそんなに働かせて申し訳なさがあるし
歩けるには歩けるんだけど、人より比べたら兎と亀ぐらいの差がある
何でもずっと監禁されてたり、あのマッドサイエンティストにアキレス腱や足の筋肉、足の筋などをえぐられたりしたのが原因らしい
そして一回だけ、本当に一回だけ階段から転げ落ちそうになって以来は誰かが支えてくれる
義姉に至っては現場にいた当事者だからか特に凄くて、お姫様抱っこしてきた時もあった
流石に恥ずかしいからやめてと言って以来はたまにしかやらないが
それと階段から転げ落ちかけた時は義姉が辛うじて引っ張ってくれたから助かった
そんなことを考えながら義姉の前に座って、髪を整えてもらう
何回か自分でやったことがあるけどまぁ悲惨なことになった、まぁ当然の結果だけども
義姉曰く、『何かの亡霊が出てきたのかと思った』とのこと
で、それ以来は義姉に整えてもらったり、他の人に整えてもらっている
というかストレスで髪が白くなるってことがあるんだね
そんなことを考えていると、髪の手入れが終わったらしい
「終わったわ、私も準備があるからちょっと待ってて頂戴」
「ん」
そう言ってリビングにあるソファに沈み込むと義姉の愛犬であるカトレアが隣に上ってくる
初めて会った時は凄く怖かったけど、何故か私にも懐いている
今日は義姉が事務所でレッスンだから、それについていく感じだ
学校は今日は休みだし、家にいても一人で暇だから
このマンションには義姉と自分二人で住んでいる
義姉が大学に進学する際に一人暮らしをするようになったから、私もついてきたって感じ
というより義姉が私と一緒がいいって言ってくれたから一緒に住んでる
…いや、暇って言うよりかは単に何をすればいいのか分からないだけ
基本的に寝るか、義姉と一緒に過ごすか、事務所の人達と過ごすか、それだけだし
学校でも基本的に一人…いや基本的に事務所の人達がいるから一人ではないか
「お待たせ、それじゃあ行きましょうか」
「ん、分かった…」
そう言って義姉の手を握って、私は立ち上がった
「…今日も一緒に入るの?」
「当然でしょ、離れてた分の唯葉ウムを補充しなきゃいけないもの」
なんだその変な名前の成分
そう思いながらも、こういう時の義姉はどんなことがあろうと意見を変えないことは分かり切っている
だから大人しく一緒に風呂に入ることになった
世間の家族は知らないけど、22にもなって義妹と風呂に入るなんてうちの義姉ぐらいじゃないだろうか
そんなことを考えながらも服を脱いで、義姉に抱きかかえられる形で風呂に入る
一人暮らしには大きすぎるぐらい、しかし二人で入ると少々手狭に感じる、そんな広さ
「ん…」
「ふふ、気持ちいい?」
「うん、だけど…二人だと狭い」
「確かにそうね、まぁこうして密着させれば済む話よ」
そう言ってさらに抱き寄せてくる義姉
髪洗う時も、体洗う時も義姉がやるからぶっちゃけやることがない
一人でもできなくないんだけど、洗ってる最中に転倒して怪我したら大変なことになるって言われた
まぁ普段からちょっと躓いただけで大袈裟になる家族が言うことだから説得力があって、以来義姉に洗ってもらっている
「事務所どうだったかしら?変なことされてないわよね?」
「ん、大丈夫…樹里ねえと小糸ねえとプロデューサーさんがいたから…というか休憩時間に度に来てたじゃんか」
「ちゃんと汗は拭いてたわよ?」
違う、そう言う問題じゃない
けどまぁ義姉に行っても多分分からないだろうから言わないでおく
普段は凄く頭がいいのに、私の事になると極端に知能レベルが低くなる
勿論義姉だけじゃなくて、義姉が所属してる事務所の人達や、他の事務所の人達全般に言えることだけど
「じゃ、そろそろ上がるわよ」
「はーい」
何というべきか…少し私に構いすぎやしないかなとは思う
頭を撫でてくるのは序の口で、餌付けや抱き締め、人によっては持ち帰りしようとしてる人もいるし
因みに持ち帰ろうとしたら、義姉とのファイトが始まる、筋トレによるね
そのお陰かどうか知らないけど、アイドル達のパフォーマンスがかなり上がったってプロデューサーさんが言ってた
特にダンス関連の技術がとんでもないレベルで上がってたんだって…凄いな義姉の筋トレ
因みに今まで義姉が負けたことはない、というか負けたらもれなく私がお持ち帰りされるから義姉は本気と書いてマジでやってるから当然と言えば当然か
そのせいか最近義姉の体がますます引き締まっている気がする…気のせいじゃないだろうけど
因みにだけど義姉が筋トレ勝負をしている間は、プロデューサーさんか、他のアイドルの人達が構ってくれている
それを見た義姉が何故か更にパワーアップするみたいだけど…何でだろ
プロフィールはその内出します