転生メジロと新人沖野Tによる楽しいトレセン協奏曲☆(なお第3者視点)   作:はめるん用

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※本作を閲覧するときは、頭の中を明るくして現実から離れてお楽しみください。


ほんへ。
いちわめ。


 貴方の前世の性別は男性ですが、なんの因果かわかりませんが無事ウマ娘として生まれ変わることになりました。

 

 この世界で転生者として二度目の人生を歩むことになった貴方に与えられた名前は『メジロヴェンデッタ』です。メジロの冠に関しては前世でウマ娘という作品のファンだった貴方には説明の必要はないでしょう。

 ちなみにヴェンデッタとはイタリア語で『復讐』を意味します。自分の生活している空間が陰気で澱み母親の瞳に狂気しか見つけることが出来ず不思議に思っていた貴方が自分の名前の意味を知り「クッソ面倒なことになりそう」と嘆いたのも当然というものです。

 

 どうやら貴方の母親はメジロのウマ娘ではあるものの、性格に問題がありすぎて追放されてしまったとのこと。事実として、貴方から見てもこの女性をメジロ家から追放した当主の判断は完璧であると評価できます。

 とはいえ、母親は母親であり自分はその息子……ではなく娘です。ひとりぐらいは味方となる存在がいてもバチは当たらないだろうと、貴方は母親の復讐に付き合うことにしました。

 

 本家のウマ娘よりも先に、天皇賞を春秋連覇する。ぶっちゃけますと貴方はチート転生者なので片手間でも余裕で達成できる目標でしかありません。

 お情けで与えられた財産はありますが、それもいずれは消えてなくなるモノです。ここはひとつ、トゥインクル・シリーズを遠慮無く蹂躙して賞金をがっぽり頂いてしまおうと貴方もやる気は充分です。

 

 

 案外、復讐を完了したら母親も前向きに人生をやり直せるかもしれない。ダメならそのときはそのとき、ぶん殴ってでも矯正してやる。あとは賞金を切り崩しながらのんびり余生を楽しもう。

 

 

 こうして貴方は夢も希望も特に抱くこと無く中央トレセン学園に入学することを決めました。

 ちなみに中身が男性である貴方は化粧やお洒落の類いを一切嗜まずに中央へ向かうつもりでしたが、淑女としてあり得ないと母親にガッツリ説教されて渋々スキルを身に付けることになりました。どうやらメジロ家やレースさえ絡まなければわりと普通の母親として振る舞うことができるようで、とりあえず貴方も一安心といったところです。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 中央トレセン学園で生活するために、そしてトゥインクル・シリーズを走るために貴方は「メジロルイヴュール」と名乗ることになりました。国際的競技であるウマ娘レースに元の名前で登場するのはさすがに不可能だったからです。

 本来であればその辺りのやり取りだけで視点別のワンセットぐらいの物語があるのかもしれませんが、本作は短編として投稿する予定のものを管理しやすく分割したものですので当然ながらカットします。

 

 

 そんなことよりも、いま、貴方の目の前で貴方の脚を真剣な表情で撫で回している男性のほうが何倍も重要です。

 

 

 中身が男性である貴方にとって、ウマ娘たちに常に囲まれた生活というものは想像を絶するストレスでした。親子ほど年の離れた学生たちに異性としての魅力を感じるようなことはありませんのでそちら方面のトラブルはありませんが、それでも性別と年齢が原因でとにかく価値観の共有ができないのは頂けません。

 そんな貴方がひとりで静かに過ごせる場所へ避難するようになったのは自然な流れでしょう。今日もいつものように交流を試みるクラスメイトに適当な返事だけを残して逃げてきた貴方はお気に入りのベンチでお日さまの光を浴びながらオレンジジュースを飲んでいたところ──どうにも記憶に存在する人物とそっくりな男性が堂々とセクハラを行い始めました。

 

「……コイツはまた、とんでもない脚をしてるなお前は。芝でもダートでも、短距離だろうと長距離だろうと通用する才能の塊としか言いようがない」

 

 その男性は棒付きキャンディーこそ咥えていませんが、貴方の記憶を頼りに判断するのであれば。

 

「っと、すまんすまん。あんまり見事な脚をしていたもんだから、つい。俺はここでトレーナーやってる()()ってモンだ。と言っても、まだひとりもウマ娘を担当したことがないペーペーだけどな!」

 

 

 ◇◇◇

 

 

「メジロルイヴュール、ね。はぁ~、メジロ。なるほど、そりゃ新入生にしちゃ見事な脚をしてるとは思ったが、メジロのウマ娘ってんなら納得だ。なぁ、次の模擬レース、もちろん出るんだろ? どんな走り方をするかは決めてるのか? 新人とはいえこれでもトレーナーだからな、優秀なウマ娘がどんなレースをするのかってのは興味が尽きなくてね」

 

 楽しそうにケラケラと笑う沖野トレーナーですが、貴方はそんな彼の様子を見て「これは……チャンスだな?」と考えました。

 トゥインクル・シリーズを走るためにはトレーナーとの担当契約が必要です。本来であれば才能を引き出してくれるような相性の良いトレーナーとの出会いを求めるところですが、チート転生者である貴方にはそのようなロマンスは必要ありません。

 

 貴方の知る“沖野トレーナー”と、目の前にいる“沖野トレーナー”が同じという保証はありませんが、もしも期待通りの人物であればこちらの意見を尊重して自由に走らせてくれるでしょう。

 あるいは、とことん指示に忠実に従って走るのも悪くはありません。どのようなトレーニング、どのような作戦だろうともチート能力を使えば完璧に遂行することが可能です。新人だろうともプロフェッショナルである以上、自分よりはレースについて詳しいはず。ならば、チートによるゴリ押しよりもスマートに勝利を掴むことも可能かもしれません。

 

 母親の復讐は、貴方がメジロのウマ娘として活躍することで完遂されます。ならば、天皇賞を走るときまでにはそれ相応の“王者の走り方”を身に付ける必要があるでしょう。

 

 貴方は沖野トレーナーに『取り引き』を持ちかけました。そんなに気になるなら次の模擬レースまで自分を指導してみればいい。それでお互いに納得のできる走りができたら、そのときは『担当契約』をしようじゃないか。

 まさかそのような提案をされるとは思ってもいなかったのでしょう。沖野トレーナーは一瞬だけ呆気にとられた表情になり、そして実に楽しそうに笑いだしました。

 

「ハハッ! こりゃまたなんとも面白いウマ娘に出会えたモンだな俺はッ! よぉ~し、いいだろう! その提案、ありがたく受けさせて貰う。と言っても、お前さんの脚は現状でもなかなかの仕上がり具合だし、模擬レースまで俺がしてやれることなんて限られてるけどなぁ~」

 

 若干気まずそうに話す沖野トレーナーに対し、こっちはその限られた部分を必要として取り引きを持ちかけたのだと貴方は言いました。

 それで多少は気が楽になったのか、沖野トレーナーは改めて名乗り貴方に握手を求めます。もちろん貴方がその手を拒むようなことはありません。

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