転生メジロと新人沖野Tによる楽しいトレセン協奏曲☆(なお第3者視点)   作:はめるん用

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さん。

 自然と離れるタイミングは完全に逃した。

 

 セクハラを理由に張り手のひとつでも顔に見舞ってやれば追い払うこともできるかもしれない。だがヴェンデッタにそのつもりはなかった。何故なら塩対応することすらなんだか面倒になってしまったからだ。

 

「初犯ということでオレの脚を撫で回した無礼は特別に赦してやろう。それで? オレに近付いた目的はなんだ? まさかオマエの特殊性癖を満たすためではないだろう。下心が無いことぐらいはわかるからな」

 

「っと、悪い悪い! いや~、ここまでレースの才能が……いや、なにも知らずに才能の一言で括るのはお前さんに失礼だったな。とにかく、まぁ、なんだ。トレーナーとしてはあまりにも魅力的だったもんで、つい。これぞまさに原石って感じだよ」

 

「ほぅ? 原石ときたか。これでも学園の模擬レースでは無敗なんだがな」

 

「知ってるよ。だが走り方が荒すぎる。新人の俺から見ても、な。()()()()()()()()()()()()ずいぶんと我流なレースをするじゃないか。なんだ、その辺りのトレーニングとかはサボりの常習犯だったのか?」

 

「物怖じせずハッキリと言う。気に入らんな」

 

「そりゃどうも」

 

 盛大に勘違いされているのはともかく、それなりに“記憶にある”沖野トレーナーらしさに近い雰囲気の言い方にはヴェンデッタもニッコリである。やはり沖野Tはこうではなくては。まだ自己紹介すらされてないけど。

 対する沖野(新)もヴェンデッタが怒っていないことに内心では胸を撫で下ろしていた。割と本気でアウトな行為だと自覚しているが、何故こんなことをしてしまったのか自分でもわからなかったのだ。

 

(いやいやいや、どう考えてもいきなり脚に触るとかダメだろ俺ッ!? マジでこの子が大声で悲鳴とかあげてたら、トレーナーをクビどころか社会的に終わるっての!)

 

 別に大声でなくとも泣きながら誰かに報告された時点で沖野の物語は早くも終了である。

 

「どうした急に黙り込んで。なにか重要な用事でも忘れていたのか?」

 

「いや、少しだけ未来を憂いてた」

 

「……? よくわからんが……まぁいい。どうやらオレのことは知っているようだが一応自己紹介ぐらいはしておこう。高等部1年のメジロ()()()()()()だ。今年からトレセン学園に通うピカピカの1年生だ、眩しいだろう?」

 

「目立つ、っていう意味じゃいま学園に在籍してるウマ娘の中でもトップクラスだろうな。沖野だ。俺もお前さんと同じ、トレーナーとしてはピカピカの1年生だよ。よろしくな」

 

「ふむ、なるほど……。それで、新人なら有望なウマ娘を探すのに忙しくてオレのようなサボり魔に声をかけてるヒマなどないハズだが」

 

「そのサボり魔に聞きたいことがあったもんでな。お前さん、ベテランのトレーナーからのスカウトも断ってるそうじゃないか。中には『天皇賞ウマ娘』を育てたトレーナーだっていただろうに、なんで受けなかったんだろうと思ってな」

 

 やはり来たかその質問。学園側からの提案で物騒な本名の『ヴェンデッタ』ではなくリングネーム的扱いとして『ルイヴュール』で登録したものの、冠となる『メジロ』はそのままであるため天皇賞の話題がトレーナー側から出てくることは想定済である。というかスカウトの誘い文句としてすでに何度も言われていた。

 だがヴェンデッタ──改めルイヴュールに天皇賞に対する拘りなど存在しない。なんなら祖母の憎悪に付き合うつもりもない。祖父から聞かされた話が真実であるなら追放されたのは祖母自身の人間性……ウマ娘性? に問題があるが故の自業自得だからだ。

 

 そもそも現在の祖母はメジロ憎しを拗らせ過ぎた結果“メジロ以外ならオールオッケー! ”という、ある意味超ポジティブライフを満喫しているようにしか見えない。

 辛いこと、悲しいことがあって落ち込んだときもメジロさん家に相談に行けば立ち直れるとご近所さんでも評判の全肯定おばさんとして有名なのだ。

 

 ちなみに『お婆さん』じゃないのは祖母の見た目がバリバリに若いのが理由である。常に憎しみの炎が内側で燃え盛っているため新陳代謝が良好なのか、母娘の3人で歩いていると『母・姉・妹』の組み合わせに間違えられるぐらい若い。

 なので、少なくともアンチエイジングの分野では圧倒的に復讐は成功しているな……とルイヴュールは確信していた。

 

 さて、そんな家庭の事情をわざわざ初対面のトレーナーに話す必要などない。というかいきなりそんなこと言われても沖野だって困るだろう。ならば素直に目的を話してしまったほうが面倒が少ない、そうルイヴュールは判断した。

 

「オレの目的はなぁ……金、だよ」

 

「かね?」

 

「そう。お金、日本円、マネー賞金袖の下。いや、最後のは意味が変わってしまうが……ともかく、オレは名誉だの使命だのには興味が無いんだよ。だがオマエたちトレーナーはそうではない。ウマ娘のレースに金では買えない価値を求めているハズだ。否定はできまい?」

 

「それは……そうだが……」

 

「だから断ってるのさ。オレが望むのはレースに勝利すること、対価として得た賞金を糧として生きること。それだけが望みなのさ。メジロ家の事情など知ったことではないな」

 

 血は繋がっていてもほぼ他人なのでウソではない。母親だって自分や娘が事実ガチ名門の血統だとは知らないし、それどころか本物のメジロのウマ娘と会ったら感想を聞かせてくれと言ってくるぐらいだ。

 あとはこの話を聞いた沖野トレーナーがどう反応するのか、ルイヴュールは少しだけ楽しみながら待っていた。こんなのでもウマ娘の価値観を尊重するのか、それともレースに対して誠実ではないと失望するのか。果たして。

 

 

 

 

 

 

(メジロ家とは関係なく、自分で稼いだ賞金で生活したい。……つまりメジロ家の、実家の資産に頼らない自立した暮らしができるようになりたい、ってコトか? 言動のわりに考え方は堅実というか真面目というか、なんだか想像よりもずっと()()()()()()かもしれないな、コイツは)

 

 沖野の受け取り方は当たっているようで微妙に外れている、そしてルイヴュールにとって良いのか悪いのかすらも判断に困る内容であった。




もしかしなくてもワイ(登場人物の賢さが下がるという意味で)頭の悪い作品しか書けへんかもしれんな……。
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