後輩の元ギタリストのライブハウスの店長に拾われた話 作:星ノ瀬 竜牙
喜多ちゃん登場です。
きくりちゃん出せないと
主人公くんの話あんまりできなさそうなのでハイペース気味に。
本音はもっと星歌さんとイチャイチャさせたいだけなんですけどね。
ちなみに拙作は多分不定期更新です。
原作途中から買えてないのじゃ……(増刷分が並ぶの待ち)
ある晴れた昼下がり、商店街へ続く道。なんか赤っぽい髪色のギターケース背負った女の子がSTARRY付近で土下座かましてた。しかもなんか虹夏ちゃんたちはエナドリ持ってるし。よくわからん。え、なに、ドナドナするんですかこれ?
「────で、これどういう状況?」
「かくかくしかじか」
「それで通じると思ってんのリョウちゃん」
場所を移してSTARRY店内。
「……まあ、事情はわかった。
「…………」
あ、ひとりちゃんが通じてるじゃないですかって顔で見てる。リョウちゃんの場合ニュアンスでわからないと苦労することの方が多いのよ。いずれ分かるよ、ひとりちゃん。
……しかし、ギター弾けないのに弾けるって虚言吐いちゃったのかァ……それはうん、弁明のしようがないね。よくないことだ。実際、迷惑をかけてしまったわけだし。
「突然音信不通になったから心配してた。……死んだかと思って最近は毎日お線香炊いてた。南無」
「いや勝手に殺さないであげて?」
しかも絶対炊いてないなこれ。息をするように嘘を吐くじゃん。リョウちゃん。
「お、怒らないんですか……?」
「まあ、気付かなかった私たちにも問題はあるし……それに、あの日はなんとかなったし! ね!」
結果的にはそうだ。ひとりちゃんを拾ってきたことでなんとか首の皮一枚繋がった。とはいえ、さすがに大人として、ミュージシャンの先輩としてはこのままなあなあで終わらせるのはとも思う。……でも、結局は当人たちの問題だ。俺が首を突っ込むことでもない。1ファンが首を突っ込むとかただの厄介オタクすぎるし。
彼女たちが件の少女、
「で、でも! それじゃあ私の気が収まりません! なにか、なにか罪滅ぼしをさせてください!」
「うーん、そう言われてもなぁ……」
困った素振りをみせるのは虹夏ちゃんだ。おそらく、虹夏ちゃんやリョウちゃんの間では既に解決した話になったのだろう。虹夏ちゃんは星歌に似て優しい子だし、リョウちゃんは……うん、そこまで考えてなさそう。
「じゃあ、今日一日ライブハウス手伝ってくんない? 忙しくなりそうだから」
そこで助け舟を出すのは我らが店長、伊地知 星歌であった。一番ばっくれたギターに怒ってたというのにこの甘対応。相変わらず優しいというか、虹夏ちゃんが許したなら良いと判断できるのは大人の器量だろうか。……いや違うなこれ、ただ虹夏ちゃんに甘いだけのシスコンだな。うん。
「じゃあ、こっちでちょっと着替えて~」
「え、着替え……?」
────
「ふんふふーん……♪」
鼻歌まじりにモップ掛けをする少女、喜多ちゃん(E:メイド服【英国風仕様】)
……人の趣味をとやかくは言わんけど、歳下の女の子にメイド服着せてるの犯罪臭すごいよ星歌さん??
「アイツ臨時なのに使えるなぁ」
「ほんと、喜多ちゃん手際いいねえ!」
「惰眠を貪る時間までできてしまった……」
「時給から引いとくぞ」
確かに、いざ頼まれるとそつなくこなす子だ。優等生の具現化と言ったところだろうか。……なんでばっくれるようなことをしたのか、引っ掛かる程度には真面目な子だ。
実際お試しで受付とか覚えてみるか、と言われたら率先して覚えに行っているし要領も悪くはない。接客業において必須と言えるコミュニケーション能力や笑顔であればおそらくこのSTARRYの誰よりも凄い子だろう。
「喜多ちゃん上手いねぇ」
「私、人と関わるのが大好きなので!」
「いつも受付はリョウなんだけど目が死んでて困るんだよねぇ。無表情怖くない?」
「リョウ先輩はあの顔がいいんですよ!」
そんな風にニコニコと談笑をしている喜多ちゃんと虹夏ちゃん。
一方その頃、ひとりちゃんはというと……
「ぼっち、そんなところで何してるの?」
「あ、アイデンティティの喪失中です……では、聞いてください……
『その日入った新人より使えない駄目バイトの
ゴミ箱の中で器用に……というか魂だけになってギター弾いてた。悲しい音色が伝わってきてちょっと涙出てきた。大丈夫だよひとりちゃん。君だけにしかできないことは必ずあるから……だから最終回を迎えようとしないでね?? エンドカードとか用意しちゃダメだよ?
さすがにこのままアイデンティティ喪失し続けられても困るし心配だ。無理矢理でも意識をこっちに戻してあげよう。
「そうだ、ひとりちゃん。喜多ちゃんにドリンクを教えてあげてみたらどうだい?」
「ぇっ……い、いや、でもそれ副店長が……」
「まあまあ、これも経験だと思って。ファイトッ!」
「は、はひ……」
うーむ、我ながらちょっと強引すぎただろうか。心配だ。……傍目から見守る程度にしておこう、あまり見られるの好きじゃなさそうだし。
そう思って見守っていたのだが……喜多ちゃんが多分、ひとりちゃん視点だとキラキラに目を輝かせてドリンクを覚えようと観察していたのだろう。緊張のあまり身体が硬直して、見事にコーヒーを溢れさせていた。って……
「「
慌てて保冷剤とタオルを用意してひとりちゃんの介護にまわる。
「うん……とりあえず
「よかった……大事にならなくて」
「い、いいイキってすみません……ありがとうございま……」
ほっと、俺と喜多ちゃんは胸をなでおろす。ギタリストにとって手の火傷は致命的だ。しばらく使い物にならなくなる、ということはつまり演奏ができないということ。バンドとしてもミュージシャンとしてもかなり大きな怪我になる。当然ブランクは生まれるし、演奏技術もある程度衰えてしまうだろう。
……もちろん、彼女に怪我をさせてしまえばこちらの責任だ。彼女の両親にも連絡を入れないといけない。
「ひとりちゃん、お父さんとお母さん、いつ頃なら連絡つくかな?」
「ぇ……あ、あのわたしなにか粗相をっ!?」
「してないから大丈夫。こっちの落ち度で危うく火傷させかけちゃったんだ。親御さんにその辺り謝らないといけないからさ」
「そ、そんな……私が悪いのに……」
「部下の失敗は上司の責任だからね、ひとりちゃんを怪我させちゃったのは俺の責任でもあるってこと。だから気に病んだりしないで?」
「は……はい……」
少し落ち込ませてしまっただろうか。けれどここでなあなあに済ませてしまうわけにもいかないのは事実だ。しっかりと彼女のご両親には謝罪をしておこう。まだお客さんも入る前、今のうちにしておくべきだし。
『はい、もしもし。後藤です』
「あ、急なお電話申し訳ございません。後藤 ひとりさんの勤め先のライブハウス、STARRYの副店長の────」
ひとりちゃんのお母さんとの話は意外とすんなりと終わった。娘であるひとりちゃんのことをすごく気に掛けている良い母親だろう。それどころか、あの子のことをしっかり見てくれている人でよかったとか、あの子のことをこれからもよろしくお願いします。と言われてしまった。
……怪我に関して病院で診てもらおうという話も切り出したのだが、あの子怪我に関しては意外と丈夫な子なので気にしないでください。って言われてしまった。それでいいのか後藤家。
まあたしかにひとりちゃん、たまに人間じゃない生命体みたいな生態してるけど……怪我再生でもするのか……? なんかしそうな気配がしてきた。魔人ブウかな。
「……電話終わった? それで……ぼっちちゃんのお母さんは……なんて?」
「気にしないでくれ、って。それとこれからもちゃんと見ててくれってさ。お咎めなし。……完敗だったよ、色々と」
「……そっか、今度なんかお詫びに送らないとな」
星歌も店長としての責任を感じているのだろう、申し訳なさそうにこちらを見る。最初は私が謝るって、電話とろうとしたしな。星歌。俺が悪いってのに。
「だな……星歌たちのお母さんに似て、すごく立派な人だったよ」
「…………そっか」
少ししみじみとしてしまう。娘への思いやりとか、すごくあの人によく似ていた。顔は見たことはないのに、すごくできた人なんだろうな、と感じてしまうほどだ。
「辛気臭いのはなしなし。ひとりちゃんには俺から言っておくよ」
「ん、すみません。先輩……ホントは私がやらないといけないのに」
「いいのいいの、俺の監督不行き届きが原因だしね。副店長としてこれぐらいはさせてくれ」
それに……ひとりちゃんすっごく気を病んじゃいそうだしなァ……その辺りサポートするなら俺の方がいいでしょ。多分。
そう思って、カウンターに戻ったら────
「存在しててすみません……迷惑かけてごめんなさい……私という存在は……」
「ご、後藤さん!? そ、そろそろ戻ってきてー!?」
案の定ひとりちゃん死んでた。めちゃくちゃ魂が口から抜けてた。
「ひとりちゃん」
「あっ……ふ、副店長……ご、ごごごめんなさいっ!」
「わー! 謝らないで謝らないで!! むしろ俺の方こそごめんね! ひとりちゃんに危うく火傷させるところだったんだし!!」
「ぅ……や、やややっぱり私……」
「……大丈夫だよ。ひとりちゃん」
やめます、と続きそうだったその言葉を遮るように俺は彼女に告げる。
「ぁぇ……な、なんで……」
「初めてのバイトなんだ、失敗なんてたくさんあるさ。むしろ失敗してなんぼだよ。俺だって初めてのバイトの時は色々やらかしたからねぇ。大人になった今でも失敗することなんてたくさんあるよ?」
この子は優しい子だ。多分、自分が誰かに迷惑をかけてしまうことが嫌で怖いんだろう。そうなってしまう自分が容易に想像できるから、といったところだろうか。
「だから、少しずつ慣らしていけばいい。最初のうちは迷惑をかけてなんぼだよ。そのための俺たち大人だしね。ひとりちゃんは充分できる子だ。だから少しずつ少しずつ頑張っていこう?」
「ぅ……は、はぃぃ……」
うーん、やっぱりひとりちゃんはもっと自己肯定感を高めさせてあげた方が良さそうだな……少しでも高くなれば、ギターの音から不安も消えるだろうし。先輩としてしてやれることはしてあげよう。
それから、客入りが始まってライブを見ながら喜多ちゃんとひとりちゃんの談笑を聞いていたのだが、そこで喜多ちゃんが相当やばい子だということが判明したのは本人の名誉のために黙っておこう。
なんかDV男に心許しちゃう感じが漂っているが大丈夫だろうか、喜多ちゃん。心配だ。
「────だからこそ、もうバンドには入らないけどね」
「え?」
「一度逃げ出した私みたいな無責任な人間はダメよ、バンドなんてしちゃ」
ふと入ってきた言葉はなんとも、耳が痛いモノだった。確かに、逃げ出したことは無責任だ。そこは言い逃れできない。……なら、俺はどうなんだろうか。全部投げ捨てて、ギターもやめて……ミュージシャンとしての道も捨てた俺は。いったいなんなんだろう。────ああ、なるほど。喜多ちゃんに感じていたモノの正体はアレか、同族嫌悪か。無責任に全部投げ出して、ここにいる自分という惨めな姿。それを喜多ちゃんに重ねてしまったのか。……なんて醜い、憐れなヤツなんだろうか、俺は。
何にも関係ない女の子に、自分を重ねて嫌悪感を抱くなんて。本当に酷い話だ。ああ、ほんと……どうしようもないぐらい救いがない。
本当なら、ここでそんなことはないと一言言って彼女の罪悪感を吹き飛ばしてあげるべきなんだろう。先輩として、してやれることをしてあげるべきなんだろう。……けど、俺にはその資格はない。もちろん、結束バンドのメンバーじゃないからというのもあるけれど……先輩として言える言葉すら俺にはない。だって、俺が一番彼女によく似ているんだから。
────
「じゃあ今日はお疲れ様、あがっていいよ」
「「「おつかれさまでした!」」」
「お、おつかれさまです!」
ライブも終わり、残っていた掃除も完了してあがりの時間になる。すると、真っ先に喜多ちゃんが帰ろうとする。
「今日はありがとうございました、これからもバンド活動頑張ってください! 陰ながら応援してます! それでは……!」
「え、あ、あのっ……!!」
喜多ちゃんは帰ろうとした。けど、それを引き留めようとしたのは意外にも……ひとりちゃんだった。
「ふぎゃんっ!?」
「ぼっちちゃん!?」
おもいっきりこけて顔面からぶつかってしまっていたが。……冷えピタ用意しておこう。
「後藤さん大丈夫!?」
心配して駆け寄りながら、はっ、となったように喜多ちゃんはひとりちゃんの顔を見た。
「もしかして……まだ、私のことを……
────ごめんね、さっきも言った通り……私は『結束バンド』には入れないわ。ギターは弾けないし……それに……一度逃げ出した人間だし」
「ゎ……わたし、もライブ前に逃げ出して……ゴミ箱に、隠、れて……! あ、あとっ……!」
「ぼっちちゃん起こすよー?」
「虹夏ちゃん、これ冷えピタ。貼ってあげて」
「お、ありがとう! 副店長!」
ぼっちちゃんを起こしたあと、虹夏ちゃんに俺はそっと冷えピタを託す。頭からいったから少なくとも腫れてそうだな……大丈夫だろうか。
「き、喜多さんの左手……! 指の先の皮が硬くて、それ……は……!」
「……かなりギターを練習してないとならない」
……そうだ。指の先の皮が硬くなるってことは、それだけ必死に練習したということだ。彼女は逃げ出してはいなかったんだ。練習して練習して練習して、それでも上手くならなくて。……虹夏ちゃんたちに迷惑をかけたくなかったんだろう。逃げ出したことは、確かに許されなかったことかもしれない。それでも、この子は……ギターに向き合おうとしていたんだ。それは……本当に凄いことだ。逃げ出したままじゃない、謝るためかもしれない、動機は不純だったかもしれない。それでも、この子は必死に練習を重ねていた。……贖罪のためだったとしても、向き合おうとするのは本当にすごいことなのだ。
「……喜多ちゃんも! これから『結束バンド』を一緒に盛り上げてほしいな!」
「え、なんで……なんで私にそんな……」
「え? だって、喜多ちゃんが逃げ出してなかったらぼっちちゃんとも会えてなかったよ?」
「っ……! っ……!!」
そこで、手を差し伸べたのは虹夏ちゃんだった。……ああ、うん。そうされてしまったら、誰にも文句は言えない。言わせない。一番困っていたはずの少女が、許してしまって、もう一度、一緒にやりたいなんて言ってしまえば。
────本当に強い子だな。虹夏ちゃんは。こういう時に真っ先に手を差し伸べることができる。強い子だ。
「私も、ずっとバンドやりたかったからさー……引け目を感じちゃうのも、でも……まだ憧れちゃうのも……気持ちが分かるんだよね」
「わ、私もでーすッ!!」
「うぉう、びっくりした」
「ぁ……ご、ごめんなさい……思ってた以上に声がでちゃって……」
ひとりちゃんもそうして声を上げていた。これは、もう大丈夫そうだな。カウンターから見守っていたが……少し安心した。
「リョウも戻ってきてくれたら嬉しいよね?」
「スタジオ代もノルマ代も四分割」
「素直な言い方しなよっ!?」
さすがリョウちゃん、クズベーシストの鑑みたいな言い方だ。見習いたくない。
「はっ……先輩分のノルマ……貢ぎたい……!!」
「爛れた関係が爆誕しそうなんだけどっ!?」
「喜多ちゃんホントにダメな男に引っ掛かりそうだけど大丈夫??」
思わず声に出てしまうぐらいには不安な要素であった。大丈夫じゃないかもしれない。
「で、でも私……ギター、弾けないし……」
「大丈夫! ぼっちちゃんが先生をしてくれるよ!!」
「……え?」
「うんうん」
「うぇえっ!?」
ひとりちゃんが私聞いてないですけど!? みたいな顔してる。ほんと分かりやすいなこの子。
「いい、の?」
「……あ、はいっ」
あ、断り切れずに頷いちゃった。……俺もある程度フォローしてあげよう。謝罪もかねて。
「……まあ、いざって時は俺も手を貸すよ。なんか分からないこととかあったら聞いてきてね」
「え、いいんですか……?」
「『結束バンド』のファンだしね。俺も、四人の音が合わさった音楽を聞いてみたいし」
「……! やったね、リョウ! 副店長が私たちのファンだって!」
「アルバムができたときはぜひ観賞用、布教用、保管用として三つ買ってほしい」
「俺から金を巻き上げる気満々だね??」
ぷっ、と俺のリョウちゃんへのツッコミで虹夏ちゃんや喜多ちゃん、ひとりちゃんが噴き出す。
「ふふふ……ありがとうございます……! 私、頑張ります……! 『結束バンド』のギターとして……!」
まあなんとか、ひと段落つきそうで安心だ。これからの結束バンドに幸あれ。なんてね。
「あ、でも先輩たち、今のパリピバンド路線はやめたほうがいいですよ。毎晩踊り狂ってるんですよね?」
「それ何処情報!?!?」
多分、ひとりちゃんが見栄はって発信した噓情報だろうなァ……なんかちょっと申し訳なさそうな表情浮かべてるし……
「あ、じゃあ私はお先に失礼します……」
「あー! ぼっちちゃん待って待って! 今日一番の功労者なのにっ!?」
「はぇ?」
「うん、ぼっちのおかげで復活できた」
「後藤さん、ありがとう!」
「い、いやぁ……私なんか全然大したことはぁ……うぇへへへ……」
絶対大したことしたって思ってる顔だね。めっちゃ褒めてオーラ出てるよひとりちゃん。
「よしよし、ひとりちゃんよく頑張りました」
「ぇへへ、副店長さんしゅきぃ……」
頭撫でたら速攻堕ちた。さすがにチョロすぎるよひとりちゃん。おじさん心配になっちゃうからね?? あと、そこで冷ややかな目を向けないで虹夏ちゃん???
「でも、私……本当にギターが弾けなかったのよ? いくら練習しても《ボン、ボン》って低い音しか鳴らなくて……」
「え?」
「……それ、ベースじゃない?」
低いボンボンって音ってベースしか鳴らない……いやそんな素人によくあるやらかしをするはず……
「さすがに私もそこまで無知じゃないですよ! ベースって弦が4本のやつでしょ?」
そう言いながら彼女が開いたギターケースから出てきたのは弦が6本の……多弦ベースであった。……oh……my……god……神は死んだ。
「ほら、ちゃんと弦も6本ある────」
「あ、えっと……弦が6本の、ベースも……あ、ります……」
「それ多弦ベース」
「え?」
「「「?」」」
二、三回ベースと虹夏ちゃんたちを見返す喜多ちゃん。
「こふっ……」
あ、血反吐吐いた。
「お、おとうさんに、おこづかいとおとしだま……にねんぶん……まえがりしたのに……」
彼女はそのまま安らかに息を引き取った。南無三。
「喜多ちゃああああああんっ!?!?」
みんなは楽器などの高いものを買うときはお店の人や知識がある人にちゃんと聞こう!! おじさんとの約束だぞ!!!
ちなみにこれは本当に余談だが……さすがに憐れすぎたのでベースは買い取って、俺が過去に使っていたギターを貸してあげることにした。それぐらいの金はあるし……埃をかぶっているだけよりも、弾いてもらえる子の手に渡った方が、ギターも本望というものだろう。
それとなんかリョウちゃんが転売計画……とか呟いてたのは聞かなかったことにしておこう。うん。本当に聞かなかったことにしよう。
主人公くん
割と性格がヘタレ気味のクズ。
自覚はしているのだが性分のためどうしようもない。
とはいえ、この作品内の大人の中じゃ1番まとも。
金銭感覚も酒に溺れたりして逃避してない限りは
しっかりしてるし高校大学もちゃんと卒業している。
最近の悩みは前より視力が落ちてきたり、
眠りが浅くなったり、身体が重くなってきたこと。(年齢による老化である)