後輩の元ギタリストのライブハウスの店長に拾われた話   作:星ノ瀬 竜牙

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きくりちゃん我慢できなくて出しました。

星歌さんって独占欲強そうだよね。って思ってたら
ちょっと今回は湿度が上がったかもしれない。

(本音を言うともうちょっとしっとりさせたかったけど自重しました。
この二次創作はあくまでギャグ寄りのコメディです)


酒カス後輩が来てた話

「…………朝か」

 

 もそ、と寝転んでいたソファから起き上がる。結局またベッドで寝るのを忘れていた。

 分かってはいるのだが、身についてしまった習慣というのはなかなかに変えられない。酒に溺れて、ソファの上に寝てしまう日々が一年も続いていたのだ。すぐに直せないのはダメだな、まったく。

 

 まあ、もっとも……今日に限ってはそれだけが理由ではないのだが。ソファで寝る原因を作った主犯をわざわざ自室に戻って起こしに行く。顔まで隠してスヤスヤ寝ている。めちゃくちゃいい御身分だなコイツほんと!! 

 

「ぅー……あとごふん……」

 

「お前にこのベッドで寝ることを許可した覚えはないし、五分も延長させるつもりはないぞ俺は」

 

 布団の中に潜っていた女から布団をひっぺがす。紫の乱れた髪に着崩れた衣服。……見る人によっては勘違いされそうな絵面だが別に俺は何もやっていない、コイツの寝相が悪いだけである。酒癖が悪いせいで。

 

「ぅぁー……あれぇ~? しぇんぱいだぁ~、なんでわたしのいえにぃ……?」

 

 コイツ、マジで絞めた方がいいかな。寝ぼけまなこでこちらを見つめてくる後輩……廣井(ひろい) きくりを見ながらそう思う。彼女は俺と星歌の大学時代の後輩であり……『SICKHACK(しくはっく)』というバンドのベースボーカル兼リーダーをやっている酒カスである。

 

「そもそもここは俺の家だし、お前が酔い潰れて訪問しにきたんだが?」

 

「んぅ~……? …………あれ~、そうでしたっけぇ?」

 

 コイツやっぱ絞めよう。俺はそう誓いながら前日の夜まで記憶を遡る。

『結束バンド』のある意味では再スタートが始まり、俺はギターとボーカルを務めることになった喜多ちゃんこと、喜多(きた) 郁代(いくよ)ちゃんにボーカルを教えることになったのでそのための教科書作り、のようなものを夜遅くまでやっていたのだ。

 

 そこにやってきたのが何を隠そうこの女。廣井 きくりである。べろんべろんに酔ってるわ、マイベース、スーパーウルトラ酒吞童子EX(本人命名)を何処かの居酒屋に置いてきたらしいわ、でいつものごとく俺は頭を抱えた。

 本当ならすぐにでも追い返したかったところだが……後輩……しかも歳下の女(しかも酔い潰れてる)をそのまま追い返せるほど、俺は心を鬼にできなかった。まあ、結果としてはコイツを介抱してしまい……こうなっているのである。

 

「……何を食いたい」

 

「えー? それはもちろん、お酒とおつま───「却下だふざけてんのか」ちぇー」

 

 まったく、どうしようもないぐらい酒カスだ。……本当に、仕方のない。

 

「しじみの味噌汁と大根のみぞれ雑炊でいいな?」

 

「おー、さすが先輩~……気が利きますなぁ~」

 

 誰のせいだ誰の、この呑んだくれベーシストが。……また星歌に拗ねられて説教されるの俺なんだぞコラ。ため息を吐きつつ、俺は厨房へ向かうことにした。くそうまた余計な食費での出費が……!! 

 

 ───────

 

「ぷはぁ! ごちそうさまでしたあ!」

 

「……おそまつさまで」

 

 綺麗に完食完飲しやがって……食べ残しひとつない綺麗になった茶碗を二つ視界に入れる。コイツマジでバンドメンバーがいないとそのうち何処かで死にそうなんだよなァ……。

 

「あれー、先輩はそんな少なくていいんですか?」

 

 まじまじと机の上に並んだ皿……というか、市販で売っている薄皮のあんぱんを咥える俺を見てきくりはそんなことを告げてくる。誰のせいだと思ってんだ。

 

「……お前の朝飯作ったら正直もう面倒くさくなったんだよ」

 

 1日1回自炊するだけでも面倒くさいってのに。朝まで作ったら本気でダルいに決まってんだろうが。紙パックのコーヒー牛乳をストローで飲みながら俺はそんなことを考える。……しかし、紙ストローはやっぱ慣れないな。飲み心地が悪くて仕方ない。

 

「あはは~……ごめんなさい……」

 

「……その様子じゃアルコールはちゃんと抜けきったし、ある程度冷静になったみたいだな」

 

 徐々に萎れて……というかしょんぼりし始めたきくりを見てため息を吐く。そうなるなら最初から飲むなよお前はよォ……。

 

「ぅぅ……だってやっぱりステージにでるのこわいんですよぅ……」

 

 知っている。コイツが酒に逃げた理由だ。まあ、酒に逃げるなとは言わんが……

 

「それで人に迷惑かけてたら世話ないだろうに」

 

「ごもっともで……」

 

 まあ本人も反省"は"できる人間なので俺もクドクド説教はしない。まァ、コイツの場合反省しても繰り返すので質が悪いんだけども。

 

「……で、今日はベースどこに置いてきたんだ」

 

「えーっと……」

 

 うーん、と唸って頭をひねり始める。あっ、これ絶対覚えてないパターンだな。

 

「……とりあえずレシートは持ってるだろ、それみせろ。しらみつぶしに当たる」

 

「ごめんなさい……」

 

 財布からレシートを受け取り、居酒屋の名前を見る。……またコイツ飲み歩きやがったな。

 

「車出すから乗れ、ベース回収ついでにお前をFOLT(フォルト)まで送り届ける」

 

「はーい」

 

 そう言うときくりはどこからともなく紙パックのお酒を取り出し────

 

「おいこら、そのおにごろしどっから取り出した。飲もうとするな。おい」

 

「んぇ~?」

 

 …………コイツほんと絞める。一発でできあがったバカを見ながら俺はそう誓うのだった。

 

 ────

 

「おかえり~、我が半身~! スーパーウルトラ酒吞童子イーエックスゥ~!!」

 

「……朝から5件も居酒屋に行く事になるとは思わなかったわクソが」

 

 助手席で酔っ払ったまま黄色のベースを抱きしめるきくりを横目に俺は運転席でため息を吐く。

 

「このままFOLTまで連れてくからなお前マジで」

 

「おー? ごーごー!」

 

「────誰かこの酒クズを真っ当にしてくれないかなぁ」

 

 俺はそんな淡い願いを抱きながら、SICKHACKのメンバーの1人でありドラムの岩下(いわした) 志麻(しま)に電話をかける。

 

『もしもし、花岸(はなぎし)先輩? こんな朝からどうしたんですか?』

 

「お前んところの酒カスベーシスト拾ってる」

 

『あっ……すみません、いつもうちの廣井が……』

 

 状況をなんとなく察したのだろう、めちゃくちゃ申し訳なさそうな声で謝ってくる。別に岩下は悪くないし、悪いのはこの酒カスなんだから気にしないでいいのに。

 

「いや、謝んなくていいよ。俺が勝手にやってるだけだし。とりあえずFOLTまできてこのアホを回収してくれ」

 

『分かりました。今から向かうので、先に待っててください』

 

「おう、あとついでにシジミの味噌汁と水買っといてくれ。俺が代金出すから」

 

『……了解です、お気を付けて』

 

「ん、サンキュー。お前も気を付けてな」

 

 電話を切り、助手席で自分のベースに頬ずりしているきくりを見る。

 

「お? 先輩、お話終わりました~?」

 

「見りゃわかるだろ、このままFOLTまで行くからちゃんとシートベルトしとけよお前」

 

「わかってますよぉ~、私そこまでバカじゃないですってぇ」

 

 馬鹿じゃなくても酒のせいで動きがおぼつかないから言ってんだよなァ!!! お前が一回助手席でシートベルトしてなかったせいで俺が警察に注意されたの忘れてねえからな!!! 

 

 はぁあ……と大きくため息を吐きながら、車を出してFOLTまで向かう……のだが。

 

「ぉえ……せ、せんぱい……はきそぅ……」

 

「は? いやまてお前ぜったいここで吐くなよ!? コンビニで車とめるから絶対吐くなよお前っ!?」

 

「ぅぅ……むりです……」

 

「やめろっ!? おまえ吐いたら絶対しばくからなっ!? 我慢しろ!!」

 

「あっ……むり……げんかい……もうだめ……」

 

「きくりいいいいいいいっ!!!!!!」

 

 良い子のみんなは泥酔状態の酒カスを車の助手席には乗せないようにしよう。助手席に虹色を吐かれたくなかったらな!! 

 

 ◇

 

 その後無事、FOLTまできくりを送り届けたのだが……俺の車は大惨事であった。洗車で中も洗ってくれねえかなぁ……。めちゃくちゃフローラルな香りが漂う羽目になった。

 

 岩下がめちゃくちゃ謝り倒してきたが、悪いのはアイツだし乗せた俺も悪いので気にするなとだけ言っておいたが。はぁ……朝から本当に疲れた。

 

「おはよう……」

 

「おはy……どうしたんですかその顔」

 

「副店長さん朝からおつかれですね……?」

 

 STARRYに訪れれば早々に星歌とPAさんに心配された。やっぱ俺めちゃくちゃ疲れた顔してんのか今。

 

「めんどくさいアル中に朝から振り回されたんだよ……昼にはいつも通りになるからしばらく休ませてくれ……」

 

「…………へぇ」

 

 なんか面白くなさそうな声が星歌から聞こえてきたが、俺はそれに返すほどの気力がなかった。

 

「………………人の気も知らないで、歳下の女を誑かせてばっかなんだから……」

 

「んぁ……? なんか言ったか、星歌……?」

 

「別に、なにも言ってないですけど」

 

「…………そうか?」

 

 なんか少し離れたところからPAさんがこちらを見てクスクスと笑っているがいったいなんなんだろうか。いや、というか何も言ってないならなんで隣に来るんだ星歌。俺今疲れてるって言ったよね……? 

 

「……疲れてるならそのまま私の膝で休んでください。幸い今日は忙しくはならないと思いますし」

 

「え、いやさすがに」

 

 それはいろんな意味でどうかと思う。困るぞ、主に俺が。

 

「……いいから、寝てください」

 

「あっはい」

 

 やだ今日の店長押しが強い。やっぱきくりを介抱したの星歌的にはNGだった!? 

 

「…………やっぱあのバカの面倒みてたんですね」

 

「……まあ、外で放っておくのも忍びなかったんだよ」

 

「先輩は私のなのに……」

 

 ボソッと呟いた彼女の小さな声が耳に入ってくる。……ほんと、付き合ってた頃と同じぐらい独占欲が強いヤツだ。膝上に寝転んだまま苦笑いして手を挙げ、そっと星歌の白い頬に添える。

 

「ん、先輩……?」

 

「心配しなくとも、ここまで気を許せるのはお前しかいないっての」

 

「ぅ…………」

 

 バレてた。というように顔を赤くして星歌は俺から視線を逸らす。あいにく俺は難聴系主人公じゃあないからな。家だったら襲ってたかもしれん。ほんとにいい女すぎる。……なんで俺なんかに惚れてくれたんだよコイツは。

 

「お二人とも~、私がいるの忘れてないですか~?」

 

「「あっ」」

 

 PAさんの声でふと我に返る。そういや二人きりじゃなかったね!!! 

 ──仲良く黒歴史を1つ、俺は星歌と共に生み出したのだった。

 

 ────

 

 夕方、バイトのない日にSTARRYにひとりちゃんと一緒にやってきた喜多ちゃんに俺は予定通り歌の指導をすることになる。

 

「────というわけで、改めて喜多ちゃんの歌の先生を俺がすることになったんだけど」

 

「はい、よろしくお願いします! 先生!!」

 

 おお、気合入っとるねぇ……めっちゃ目がキラキラしてるよ。

 

「ぶっちゃけ喜多ちゃんって歌どれぐらい自信がある?」

 

「えーっと……そうですね……カラオケは友達とよく行くので人並みにはできると思います!」

 

「ふむ……ジャンルはどんなの歌う感じ?」

 

「売れ線のバンドの曲とか……アニメのオープニングとか、一通りは?」

 

 なら、歌唱力の方はある程度は問題なさそうかな。実際はきはきしてるし、通る声だ。ここに関しては下手に指導しない方がいいだろう。喜多ちゃんの持ち味でもあるし。

 

「と、なると……うん、やっぱり基礎的なところを重点的にした方が良さそうだね」

 

「基礎的なところ……ですか?」

 

「うん、まあ早い話……発声練習と、滑舌を鍛えることを重点的にするって感じだね。はいこれ」

 

 予め作っておいた、紙束を喜多ちゃんに手渡す。

 

「……これは?」

 

「一応、教科書……って感じかな。発声練習用のワードをコピーしたやつと、こっちが滑舌を鍛えるために作ったやつね。詳しくは知らなくても、テレビの特集とかでやってたりするからちょこっと知ってる内容だったりはするんじゃないかな?」

 

「あ、この『あ・え・い・う・え・お・あ・お』とかは見たことあります!」

 

「おーそれそれ、発声練習によく使われるやつだね。まあこっちは、今の喜多ちゃんの声量なら殆ど必要ないとは思うけど……歌手って基本的にボイストレーニングは毎日やってるからね、そういうことも考えて一応あったら日頃から練習はできるかなーと思って」

 

「なるほど! ありがとうございます!!」

 

 おおう、めちゃくちゃキターンってしてるね。おめめとオーラがピカピカだ。

 

「で、俺が喜多ちゃんに指導したいのはこっちの滑舌の方だね」

 

「滑舌……ですか……?」

 

 きょとん、と喜多ちゃんは首を傾げる。まあ歌手で滑舌っていうとピン、とはこないよね。

 

「まあもちろん、今は大丈夫だと思うよ? 作詞作曲は身内でやる以上、喜多ちゃんが言いにくそうなワードとかは極論控えめにはなると思うし……でも、この先売れていこうと思うなら……滑舌は大事になってくる。

 ……ライブとか、テレビでの歌手の歌とか見てると分かると思うけど……プロの人って基本的に歌詞を噛まないんだよね」

 

「あ……」

 

 そう、ここはもっとも大事な所だ。もちろんプロの人間でもミスはある。歌詞が飛んだり一番と二番の歌詞を間違えて歌ったり。それでも、決して歌う時に歌詞が詰まったりはしないのだ。

 

「歌詞が詰まるって、早い話リズムが狂う原因にもなるからね。とくに、ギターボーカルみたいな、楽器と歌唱を並行して行う人にとって致命的なミスにつながるんだ」

 

 詰まったという現実を実感すると頭が真っ白になる。それは演奏にも響いて音をぐちゃぐちゃにしてしまう切っ掛けにもなり得る。

 

「だから、極力歌詞は詰まらないようにしたい、それには何が必要かってなると滑舌の良さが必要になってくる。もちろん、極度に緊張しないこととかも大事だけどね」

 

 そのために、用意したのが喜多ちゃんに渡したプリントだ。

 

「あめんぼあかいなあいうえお、とか……早口言葉、隣の客はよく柿食う客だ。とかは滑舌を鍛える時に使われるんだよ。アナウンサーとか、声優さんがよく特訓に使う手法だね」

 

「なるほど……つまり、これを繰り返し練習すれば……!」

 

「うん、滑舌は鍛えられるしちょっとやそっとじゃ歌詞も詰まらなくなると思っていいよ。ただし、これは基礎編だ。喜多ちゃんはまだ初心者だし、ギターのこともあるから……今はこの基礎編だけでいいけど……この先、バンドを続けていくなら応用編もしてほしいんだ」

 

「応用編、ですか?」

 

「そそ、応用編……『ういろう売り』って知ってるかな?」

 

 滑舌を鍛えるために使われてたりするもともとは歌舞伎のお話なんだけど……と、『応用編』と表紙に書いたプリントを喜多ちゃんに手渡す。

 

「……これ、すごく難しいですね」

 

 読み込んだであろう喜多ちゃんからのその言葉に俺は満足気味に頷く。

 

「うん、理解できるなら喜多ちゃんはすごいね。そう、ういろう売りをいざ口に出して読もうとすると簡単に見えてすっごく難しいんだよ。少なくとも初見じゃ噛みまくっちゃうレベルだからね」

 

 けど、これをやってきた人の滑舌がよくなっているのは実際証明されているわけで。

 

「まあいきなり『ういろう売り』マスターしてこい! なんて言うほど俺も鬼じゃないよ? 

 まずはそっちの基礎編で滑舌を確実に鍛えていって……最終的にこの『ういろう売り』を噛まずに言い切れるようになるのがまず最初に喜多ちゃんに教えるモノになるね。……ギターボーカルである以上、喜多ちゃんはひとりちゃんからのギター指導と、俺からの歌唱方面での指導を同時並行でこなしてもらうことになる。ほかのみんなより倍過酷な練習量になるよ、それでもやるかい?」

 

「……私、もう逃げ出したくないんです。だから、お願いします! 先生!!」

 

「…………うん、いい返事だ。なら俺も遠慮なしにビシバシ指導するよ? いいね?」

 

「はい! よろしくお願いします!!」

 

「ようし! じゃあ今日は滑舌トレーニング基礎編から始めようか!!」

 

 こうして生徒喜多ちゃん、先生俺。という少し不思議? な組み合わせでの歌の指導が始まったのだが……喜多ちゃんは意外と吞み込みが早かったのは俺としてはすごく衝撃的だった。ほんとにベースを間違えて買ってしまったところ以外残念な要素がない子だ。

 

 ギターに関しても、ひとりちゃんの指導が良いのか少しずつではあるが着実に進歩している。

 

「そこ、ギターの音と歌詞がズレてる」

 

「っ、はいっ!」

 

「片方が疎かになったらいけない以上難しいけど、ボーカルとギターをやる以上一音もミスは許されないと思わないといけない。そこの音と声はしっかり合わせられるよう意識して」

 

「わかりましたっ!!」

 

 俺がこうして誰かに指導する、というのは随分と懐かしい感覚だ。

 以前にも、きくりや星歌に色々と教えたことはあるけど……ここまで歳の離れた少女に教えるというのは初めての経験だ。教え甲斐のある後輩が久しぶりにできて俺としてはなんだか、ちょっと楽しくなっていた。

 

「……副店長、なんだか楽しそう」

 

「し、新鮮ですね……」

 

「だね、私としてはあんな副店長見るの久しぶりで……なんか懐かしいなぁ」

 

「そういえば、虹夏と副店長は昔からの知り合いだっけ」

 

「え? そ、そうなんですか?」

 

「うん、そうなんだよねー。……あれだけ生き生きとして誰かに教えるお兄さんを見るの……本当に久しぶりなんだ。だから、ちょっと安心しちゃった」

 

 虹夏ちゃんが、本当に安心したように……そんな言葉を口に出していたことに、俺は気付いてはいなかったが。

 まあ、もっとも……俺が聞いたらただひたすらに罪悪感を感じていたんだろうけど。

 

 後日、『結束バンド』で撮ったアー写……アーチスト写真といわれる宣材写真……早い話、そのバンドがどういうグループかを1枚で表現するモノができたらしい。

 そのきらってしてそうなジャンプに意味はあるのだろうか、そう思わずにはいられなかったが……まあそれもバンドらしさということでいい味になっているとしよう。それはそうとアー写でもひとりちゃんは顔が暗いな……と思う俺であった。




主人公

花岸という苗字がある。後輩のきくりには辛辣な言葉を浴びせることもあるがなんだかんだ対応が甘い。
星歌のことは今なお好きであり、完全に心を許している相手。
まあ最も、星歌の幸せを誰よりも願っているが故にヨリを戻す気はない。
「俺よりお似合いの人絶対いるんだよなぁ」とのこと。
バイクと車の免許は既に持っており、通勤には車を使っている。
別に電車でもいいのだが「通勤ラッシュで人混みに揉まれるのしんどいし……」とは本人の談
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