陰の右腕になりまして。   作:スイートズッキー

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12話 こうして勘違いは加速するのか

 

 

 

 

 

「さて……どうするかな」

 

 シェリーを護衛しに行ったシドを見送り、俺は部屋を見回す。至る所が血で汚れており、完全に殺人現場にしか見えない。

 俺がここに残った理由は一つ、ギリギリで治療が間に合ったグレンさんとマルコさんを避難させるためだ。

 

「──ニュー、居るか?」

「はい。ここに」

 

 俺が誰もいない空間に向かって声を掛けると、俺とシドが侵入した窓から一人の女性が飛び込んで来た。

 茶色の髪を団子状にまとめ、眼鏡で制服のいかにも大人しそうな女子生徒だ。しかしその正体は【シャドウガーデン】の新たな戦力であり、頼りになる仲間だ。

 

「お呼びでしょうか? ライト様」

「ああ、少し頼みたいことがある。平気か?」

「もちろんです。そのために待機していたのですから」

 

 俺の言葉に軽く微笑んだニュー。美人さんだな、こんな子が拷問得意とか誰も思わんだろう。

 

「そこで倒れてる二人を外に運びたい。手伝ってくれ」

「……了解しました」

「ん? どうした? 知り合いでも居たか?」

 

 グレンさんとマルコさんを見て、表情を強張らせたニュー。面識でもあったのかと訊ねれば、その予想は当たっていた。

 

「……マルコ・グレンジャー。私の婚約者だった人です」

「えっ、マジか」

「はい。私が『悪魔憑き』となる前の話ですが」

 

 うわ、呼ぶ人間違えたな。わざわざトラウマを刺激してしまった。

 

「すまん。知らなかった」

「あ、頭を上げてください! ライト様が謝罪されることなど何もありません!」

「別の人に頼む。ニューはまた待機しててくれ」

「いえ、私にお手伝いさせてください。それが今の私に与えられた役目であり、生きている理由なんです」

 

 相変わらずウチの子達は重いわぁ。別にその在り方を否定する気はないし、矯正しようとかも思わないけど、やっぱり俺は慣れない。ただ『教団』がクソだって事を再認識するだけだ。

 

「分かった。じゃあ頼むな」

「はい! お任せください!」

 

 マルコさんを運ばせるのはどうかと思ったが、グレンさんを担がせるのも何か頼み辛い。ニューへの配慮は足りないが、軽い方であるマルコさんを担当してもらった。

 

 流石に大男を背負ったまま高速で移動するのに魔力無しは厳しいので、吸収される量を上回る魔力を展開。筋力を底上げし、グレンさんを運んだ。

 

「……敵の気配はないな」

「はい。問題ありません」

 

 移動中で何人か黒ずくめを背後から始末したので、敵に見つかることはなく無事に門の近くまで辿り着くことが出来た。外からは何やら多くの声が聞こえてくる。どうやらアレクシア王女はしっかりと騎士団を呼んでくれたらしい。

 

「ニュー、頼む」

「はい」

 

 移動中に説明した通り、ニューが行動を起こす。スライムに魔力を通し、それを自分の顔へとくっ付けた。拷問と同じくニューの得意分野──『変装』だ。

 

「も、申し訳ありません。ライト様。やはり……崩れます」

 

 どうやら魔力阻害の影響で、スライムが上手く操れないようだ。顔の形が安定せず、液体に戻りかけてしまっている。顔を作るという繊細な作業が求められる以上、吸収される魔力も多いようだ。

 

「すまん、ニュー。少し触るぞ」

「えっ、ラ、ライト様……!」

 

 顔を触られるとか嫌だろうけど、少しだけ我慢してもらう。俺はニューの顔に付いているスライムへ手を当てると、魔力を少しばかり過剰に注入。これだけ魔力を使えば、吸収されたとしても数分は形を維持出来る筈だ。

 

 アレクシア王女と居た時には魔力阻害は起きていなかった。つまり効果範囲は学園の敷地内ということだ。後は門から外に出るだけだし、数分待てば十分だろ。

 

「これで良い。……ニュー?」

「あっ、いえっ、ありがとうございます……」

「よし、ちゃんと()()()()()()()()()。流石だ」

 

 ニューに変装してもらったのは俺の顔だ。これで俺の身代わりとして『紅の騎士団』に保護されてもらう。制服は男物に変えたし、体格もスライム盛って俺と揃えた。これで準備万端だ。

 

「マルコさんを頼む。外に出たら声は出さなくて良い、そのまま倒れて誤魔化しときな」

 

 変装してもニューは声が変えられる訳じゃない。倒れ込んでおけば、グレンさんとマルコさんを助けるために力を使い切ったとでも思われるだろう。

 

「分かりました。お任せください」

「任せる。じゃあいくぞ。……んんっ」

 

 喉を整え、外に居るであろう雇い主に向かって叫んだ。

 

 

──アイリス王女! 聞こえますかっ!?

 

 

 振り絞るような声を、門の外にギリギリ聞こえる音量で。シドと関わってからというもの、演技力が身に付いてしまった。流石にあのアホほど上手くはないけど。

 

「その声はライ君ですね!? 無事なのですか!?」

「一緒に居るグレンさんとマルコさんが瀕死の重体です! 今から残りの力を使ってグレンさんをそちらへ投げます! どうにか人数を集めて受け止めてください!!」

「わ、分かりました!! いつでもどうぞ!!」

「いきますよ!! ……オラァッ!!」

 

 宣言通りグレンさんを、門を越える高さでぶん投げる。死にかけた人間にする仕打ちじゃないけど、緊急事態だし許してくれるよな。

 

「──受け止めました!」

 

 よーし、オッケー。上手くいったみたいだ。

 

「ニュー、後は頼む」

「了解しました。ライト様」

 

 ニューが居てくれて助かった。アレクシア王女に学園へ入る所を見られている以上、シドと一緒に行動するためにはこうしておかないとな。

 

「アイリス王女! 自分もマルコさんを担いでそちらへ行きます!」

「分かりました! 手当の用意は出来ています!」

「……行ってくれ

 

 俺の小声に頷き、マルコさんを抱えて門の上へ飛び上がったニュー。無事に学園の外へと脱出完了だ。

 

「ライ君! よく無事で……ライ君? ──グレンとマルコを治療室へ運びなさい! ライ君も意識が安定していないわ! 急いで!!」

(おっし、狙い通り。悪いなニュー、後はゆっくり休んでてくれ)

 

 ドキドキしながら壁に耳を当てていたが、作戦通りにいったようだ。これで俺は自由の身となった。どこで何をしていても、顔さえ見られなければ『ライ・トーアム』であるとは思われない。『ライト』となっても問題無しだ。

 

(さて、戻るか)

 

 縛られていた行動制限を無事解放し、俺はシドの魔力を強引に探知しながら学園へと戻った。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「……派手にやったな。シド」

「あっ、ライ。おかえり〜」

 

 徘徊していた『教団』の奴等を片付けながらシドの魔力を追って来た結果、辿り着いたのは副学園長の部屋だった。

 確かシェリーの父親である『ルスラン・バーネット』という人が副学園長だった筈だ。

 

 俺はそんな部屋のソファーで脱力しているシドを見て、呆れているのを隠すこともなく声をかけた。

 

「なんだよ外のやつ。てるてるボウズかよ」

 

 俺と同じく『教団』の奴等を片付けてたんだろうけど、死体を吊るしておくのはやめとけよ。あんなに怖いてるてるボウズ初めて見たわ。

 

「シェリーが警戒心0でさ。ガードするの大変だったんだよ」

「それはお疲れさん。手間かけたな」

「いいよ。彼女が今回のメインキャラってのは確定っぽいし。ただ相棒キャラが居ないのは不満点だね。シェリーだけで乗り切れるイベントじゃない」

 

 そんなもん居ねぇよ。

 俺が相変わらず能天気なシドにため息を溢すと、床の方から小さく可愛らしい悲鳴が上がった。

 

「えっ!! だ、誰ですか……?」

 

 怯えた表情を見せたのは、何やら熱心に分厚い本を漁っていたシェリー。どうやら俺が部屋に来たことだけじゃなく、シドと会話していたことにすら気付いていなかったらしい。

 なるほど、これは護衛するのも大変だ。まさかその足元にあるペタペタうるさそうなスリッパ履いて逃げてたんじゃないだろうな? 

 

「初めまして。『紅の騎士団』所属、ライ・トーアムといいます。シェリーさんの護衛を引き継ぎました」

「あっ……でも、私さっき……」

「ご安心を。グレンさんとマルコさんは生きています。ここからは自分が二人の代わりに、貴女を護ります」

 

 こういう時、顔合わせをしてなかったのが面倒だな。シェリーにアーティファクトの解析を頼んだ段階じゃ、俺はまだ入団してなかったからな。

 

「シ、シド君……」

「平気だよ。ライは僕の親友でもあるから」

「あっ、そうなんですね! よ、よろしくお願いします!」

(シドの言う通り、警戒心0だな)

 

 シドの言葉を聞いた瞬間、シェリーはパァッと顔を輝かせた。どういう経緯かは知らないがシドと知り合っていたらしいし、彼女から信用はされているみたいだ。

 

「親友ではありませんが、知り合いではあります」

「シド君の親友なら……わ、私ともお友達になってもらえ……ますか?」

「いや、だから親友じゃ……まあ、友達は別に良いですけど」

「わわっ! や、やりました! シド君! お友達がまた出来ました!」

「そだねー、よかったねー」

 

 なんだこの空気、すげぇ緩いじゃん。やっぱ類は友を呼ぶか。シェリーも大分変人寄りだな。ペースが乱されるって意味でも少し似ている。

 

「それで、今は何を?」

「そ、そうでした! 現在学園全体にとあるアーティファクトの効果が発動しています」

「それは魔力阻害に関してのことですか?」

「はい。その通りです」

 

 流石は国一番の頭脳を持つとも言われる少女。ぽわぽわふにゃふにゃしていても、やるべき事はやっていてくれたらしい。

 

「使われているアーティファクトの名前は──『強欲の瞳』です」

「……聞いたことないな」

「僕も」

 

 まあ、俺達が知ってる訳もないけど。

 

「『強欲の瞳』は効果範囲にある魔剣士や魔力体から魔力を吸収して、一時的に溜め込むことが出来るんです」

「そうか、やっぱり吸収されてるって感覚は間違ってなかったか」

「でも黒ずくめの奴等は普通に魔力を使ってたよね?」

「ああ、そうだったな」

 

 魔力使われる前に殺してたから気にならなかったけど、言われてみればそうだよな。効果範囲に居るのにおかしな話だ。

 

「吸収させたくない魔力の波長を記憶させることも出来るんです。そうでなくては『強欲の瞳』を使用している本人の魔力まで吸収されてしまいますから」

「「あ〜、なるほど〜」」

 

 簡潔で分かりやすい説明。顔も声も可愛いし、シェリーが塾とか開いたら人気出そうだな。

 

「面白いねぇ。じゃあ覚えさせてない魔力は何でも吸収しちゃうんだ」

「どうでしょう……感知出来ない程の微細な魔力や、容量を超える強大な魔力なんかは吸収出来ないと思います。まあ、普通の人間にそんな魔力は使えないんですけどね」

「……だよねぇ。ライ」

「……そうだな。シド」

 

 シドに任せると『強欲の瞳』どころか学園が吹き飛ぶから、いざって時は俺が爆発させるか。いや、爆発させたらさせたでヤバいのか? 分からん。

 

「『強欲の瞳』の厄介なところは、魔力を溜め込むだけ溜め込むと一気に解放してしまう点にあるんです。膨大な魔力は爆弾と同じ、解放されてしまえばこの学園は跡形も無く消えてしまうでしょう」

 

 うん、やっぱゴリ押しはやめよ。流石に魔剣士学園を消し飛ばす訳にはいかん。

 

「そんな危険性を考慮したからこそ、お父様は『強欲の瞳』を国に預けて管理を依頼したんです。……それなのに」

「盗まれたか。もう一つあったとか?」

「……まあ、今は考えても意味の無いことだ。魔力を吸収することが敵の狙いだとすると、『強欲の瞳』が置いてあるのは──」

「生徒の皆さんが集められている『大講堂』ということになります」

 

 ……なんか納得出来ないな。学園を吹き飛ばすために襲って来たんだとしたら、どうにも大掛かり過ぎる。わざわざ『強欲の瞳』を爆発させる意味はない筈だ。

 

「シェリーさん、対処方法はありますか?」

「は、はい! これです!」

 

 小さな手を前に差し出すシェリー。その掌の上には銀色のアクセサリーのような物が乗っていた。

 

「これは?」

「『強欲の瞳』の制御装置です。解析した事で分かったんですが、本来『強欲の瞳』はこのアーティファクトを使い、魔力を長期保存するための物だったんです」

「「長期保存?」」

「魔力の解放を止められるってことです。凄いんですよ! この性能が実用化されれば、現存する様々な技術の発展に繋がって──」

「つまりそれが今回の事件を解決するための切り札ってことですね?」

「あぅ……そ、そうです」

 

 ごめんね。気持ち良く話してたのに。

 その話はまた今度どこかの機会でちゃんと聞かせてもらうから。

 

「やることは決まったな。その制御装置を使って、『強欲の瞳』の効力を封印。魔力阻害を解除してから、敵の排除だ」

「す、すみません! まだ完全に解析が終わってないんです……」

「いえ、俺の方こそ焦りました。何か俺達に手伝えることはありますか?」

「……あの、実は制御装置の調整に必要な道具を研究室に置いて来てしまって……」

 

 急に襲撃を受けたんだ、無理もない。シェリーを護ってくれたグレンさんとマルコさんには感謝だな。

 

「分かりました。俺とシドで取って来ます」

「えっ? シド君もですか……?」

 

 ああ、そうか。シェリーはシドのこと普通の一般学生だと思ってるのか。俺はシドにアイコンタクトし、上手いこと言い訳しろと促した。

 

「大丈夫だよ、トイレ行きたかったし。ついでさ」

「……シド君」

 

 なんかシェリーの頬が赤い気がするけど、まさかシドのやつシェリーにもフラグ立てたのか? 誰が誰を好きになろうと自由なんだが、この男だけはやめておいた方が良いと思う。アレクシア王女にも言えることだけど。

 

「シド。シェリーさんに魔力糸を付けとけ」

「うん。手を出してもらえる?」

「は、はい!」

 

 シドによって細く加工された魔力糸がシェリーの手へと付着。こうしておけばシェリーに危険が迫った時、すぐに駆けつけることが出来る。

 本当なら一人は部屋に残って護衛していた方が安心なのだが、【シャドウガーデン】としての事情があるためこういう形を取らせてもらう。

 

「周りに敵の反応は無いので大丈夫だと思いますが、念のため静かに作業していてください。危なくなったら叫んでください、それで俺達に伝わります。──行くぞ。シド」

「へーい」

 

 俺とシドによって赤く染まってしまった廊下を走り、二人でシェリーの研究室へと向かった。

 

「お前、本当にトイレ行きたいんだろ?」

「あははっ、バレた?」

 

 本当に緊張感のない奴だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは?」

「それは『海竜の骨の粉末』だ。必要なのは『地竜の骨の粉末』。おいシド、そこにある『ミスリルのピンセット』取ってくれ」

「これ? はい」

「ん、サンキュー」

 

 二人でしゃがみ込みながら、シェリーの研究室で物を漁る。小さな棚の中を探しているので、肩がぶつかって鬱陶しい。

 

「ほれ、『灰の魔石』。これで全部だ」

「よし、じゃあ戻ろうか」

「ちょっと待て。──『オメガ』か?」

 

 いつの間にか時間が経っていたらしく、俺が声を向けた窓からはオレンジ色の夕日が差し込んでいる。

 そんな穏やかな光を切り裂き、窓から部屋に漆黒のスーツを纏った女性が音もなく侵入して来た。

 

「はい、ライト様」

 

 黒髪に褐色の肌をしたエルフ──『ナンバーズ』のオメガ。【七陰】第五席・イプシロン直属の部下であり、実力は折り紙つきだ。

 そろそろ状況報告に来る頃合いかと予想してシドと二人だけになっていたのだが、見事に当たったらしい。

 

「遅くなって申し訳ありません」

「謝らなくて良い。ニューには俺が別の頼み事をしちゃったからな。来てくれてありがとう、オメガ」

「も、もったいないお言葉です……!」

 

 オメガは強気で男勝りな性格だけど、喜んでる顔は年相応に可愛らしい。髪を伸ばしてみたらどうかと言ってみたこともあるが、速攻で断られた。

 

「……報告します。現在【シャドウガーデン】は学園の周囲に潜伏して待機。シャドウ様とライト様からのご指示があれば、いつでも動けます」

 

 全体指揮はガンマだったな。流石に準備が早い。

 

「『教団』側に動きはありません。魔力を使えるという有利を活用し、防衛体制を構築しています。恐らく、籠城しようとしているのかと」

「外に居る騎士団の動きは分かるか?」

「はい。戦力になりそうなのはアイリス王女と増援の部隊長ぐらいでしょう。指揮官の問題で口論しているらしく、役には立たないでしょうね」

 

 おお、言うなオメガ。ウチの子達の特徴の一つに、他所への当たりが強いってのもあるんだよな。

 アイリス王女達には悪いけど、事件の解決は俺達でやらせてもらう。『紅の騎士団』には後処理を頼むさ。

 

「よく分かった。ありがとう、オメガ。指示があるまで、お前達も待機していてくれ」

「了解です。……ところで、シャドウ様が持っていらっしゃる箱に入っている物は何ですか?」

「ああ、これは──」

アーティファクトの調整をしているんだ

 

 軽く省いて説明しようかと思った瞬間、今まで口を開かなかったシドが意気揚々に答えを返した。

 俺はすぐに補足しようとしたが、オメガの驚いた顔を見て手遅れであると諦めた。

 

「アーティファクト!? そのような知識まで……」

 

 案の定オメガはシドに向かってキラキラとした視線を向けた。違うよ、ソイツにそんな知識ないよ。海竜の素材と地竜の素材を間違えるぐらいだから。

 

「今魔力を阻害しているのは『強欲の瞳』というアーティファクトでね。それを無効化するアーティファクトのサイシュウチョーセー段階なんだ」

(シェリーがな)

「国家最高峰の知識が求められる作業では……?」

「そうだねー。夜になる頃には完成すると思うよ」

(シェリーがな)

 

 凄いな。ここまで悪意なく自分のことのように語れるって。言葉足らずってレベルじゃねぇぞ。

 

「わ、我々もそれなら合わせて動けるように準備しておきます!」

「よろしくね。楽しみだなぁ。戻ろうか、ライ」

「……そうだな。オメガ、ありがとう」

「はっ! 失礼します!」

 

 こうして勘違いは加速するのか。

 

 止める暇もないし、訂正する気も起きなかった。流れるようなすれ違い、コントであればさぞ優秀なネタになるんだろう。まあシド自体がネタみたいなもんだし、別に良いか。気にするだけ損だ。

 

「……はぁ。話は聞いてたな? シド」

「うん。面白くなりそうだ」

 

 多分数分後には大して覚えてないんだろうな。頭は悪くないのに自分の興味が無いことにはとことん無頓着。ここまで力を持たせてはいけないバカも珍しい。

 

「陰の実力者〜♪ 颯爽登場〜♪」

「どっかに足の小指ぶつけるか、突き指すればいいのに」

「いきなり酷くない?」

 

 酷いのはお前だ、アホ。

 

 

 

 




 【事件の関係者】

 『シド・カゲノー』
 ・学園がテロリストに占拠されるという状況にウキウキが止まらない。

 『ライ・トーアム』
 ・ウキウキしているリーダーにストレスを溜める副リーダー。【シャドウガーデン】と『紅の騎士団』の二つの立場に挟まれているが、こうなったのは普通に自業自得。

 『シェリー・バーネット』
・父親を助けるために頑張る良い子。二人目の友達が出来て嬉しい。

 『事件の首謀者』
 ・アーティファクトの回収に向かわせた半袖勇気のソックス……ではなく叛逆遊戯のレックスが戻って来ないことに苛立っている。
 ・アニメではボイスチェンジャーを貫通して、視聴者に呆気なく正体はバレた。

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