闇堕ちした初代ギターヒーローを二代目が救う話   作:火内coach

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いよいよオレンジバーに変わってしまった………評価は嬉しいけど。


突撃ぽやぁの晩御飯

「鶏肉………? 結構あっさり目なのね」

 

「鳥の胸肉にはイミダペプチドって栄養素が取れるんだ。効能は脳疲労の回復と心地よい眠りを約束するよ。最近、まともに寝れていないだろう? 化粧で隠してても分かるよ」

 

「うっ………締め切りが、締め切りが近いのよ。最近、ライブもあんまり行けてないし」

 

「ならたっぷり栄養とって頑張らないとね。座ってていいよ。直ぐに持ってくから」

 

「ギターヒーローにだけ手伝わせるわけには行かないわよ! 気分転換にもなるし、手伝うわ。あ、でもあんまり難しいのはやめてよ? フランベとかポワレとか」

 

「そんな難しい調理はしないって………じゃあまずは鶏肉にフォークで穴を開けてくれるかな? 終わったら耐熱皿に入れて、塩と日本酒を振りかけてレンジでチンしておいて」

 

 佐藤愛子の家に来た時には必ず、ミナは料理をする。自慢ではないが、それなりに料理は出来るのだ。母も父も作りたがらず、コンビニ弁当に味気なさを覚えた日から。

 

 愛子がストレス発散とばかりにフォークで穴を開けている間、ミナは袋から豆苗を取り出すとざっくばらんに切り、ごま油でニンニクととき卵を強火で軽く炒めて、味覇と胡椒で味をつけて、さっと炒めたら完成。

 

 そのまま、ネギの小口切りパックを取り出すとごま油と塩、ブラックペッパーを入れて5分ほど置く。その間にレンジから鶏肉をとり、粗熱が引いたらスライスして付け合わせのトマトを添える。

 

「最後に豆腐にネギを乗せて、耐熱皿に残った蒸し汁をご飯と混ぜたら完成っと。ミナ特性、お手軽エスニック料理3選だよ」

 

 頂き物のビールと合わせて机に並べればそれなりのご馳走に愛子のテンションもちょっと上がる。最近はコンビニ弁当ばっかりだったのだ。うきうきで発泡酒ではない缶ビールのプルタブを開ける。

 

「「乾杯!」」

 

 早速とばかりに口に運んでいく愛子。何せ、推しの手料理。余す事なく味わうべきだと急いで口に運ぶ。

 

「これシャキシャキしてて美味しいわね! ニンニクが聞いてるのもビールがすすむ〜!」

 

「豆苗だね。因みに根元を水を張ったお皿にいれておくと1週間くらいで元の大きさまで戻るよ。栄養もあるし、安いから買うといい」

 

「このネギ塩奴もいいわね。塩気が聞いてて、体に沁みるわ。ごま油の香りも食欲誘うし、ちょっと食欲不審気味だっだけど箸が進むわ」

 

 酒のアテの2種で缶ビールを開けた愛子は頂き物の日本酒を開けてもらい、ミナから尺をしてもらいご満悦。そのまま、締めのチキンライスに箸を伸ばした。

 

「ケチャップ使わないチキンライスなんて初めてね。タレにつけて食べたらいいの?」

 

「海南鳥飯って言うシンガポールのチキンライスなんだ。残暑が残るくらいだから、湿度が高い国の料理で元気出してもらおうと思ってね」

 

 タレをつけた肉をおかずにライスを口に運んでいく愛子の顔から笑みが溢れる。いい大人になるとこうやって甘やかしてくれる人のなんてありがたい事か。

 

(あの事がなかったら、もう少し気楽に食べられてたんだけどね……)

 

 ちびちびと日本酒を口にしながら、ミナの料理全てを楽しんでご満悦な愛子は彼女との出会ったきっかけを思い出していた。

 なんて事はない。初代ギターヒーローを追っかけして、解散間際のSIDESOSから彼女をスカウトしただけ。

 

 今のレーベルに紹介したのは彼女の尽力であり、ミナにとっては恩人だった。愛子はそれを周りから褒められる度に、針を飲むような感覚に襲われていたけれど。

 

「所で、この間、結束バンドを見に行ったらしいね。どうだった? 所詮は学生バンドだったろう? ぽやあ、からしたらお遊びと言うしかない酷い出来だったろう?」

 

 けらけらと、自分の弟子が所属しているのに辛辣な意見を飛ばしてくるミナに愛子は眉を顰めた。それは自分の耳や音楽の知識を信頼しての言葉だろうが、あまりにも配慮に欠けていたから。

 

()()()()()()

 

 だから、正直に答える事にした。ミナの目が一気に剣呑なものに変わっても、自分の音感に関しては絶対の自信があったから。

 

「まだまだ発展途上、だけど()()()()()()()()()()()()()()()()。そう思わせる演奏だったわ。特にサビの盛り上がりだけなら、SIDEROSにだって負けてない」

 

「随分と………甘い採点だね。よりによって、SIDEROSと同じ? ははっ、酔ってるのかい? 愛子」

 

「冗談で言ってるわけじゃない。確かにギターヒーロー頼みな引き込み方やまだ技術的に安定してないけど………でも、ラストに関しては全員がギターヒーローと同じ位置にいた。10秒程の短い時間でもね」

 

 そのライブは異様だった。皆が皆、結束バンドを見に来ていたわけではない。動画で語るギターヒーローの演奏を聞きに来ていたのだと分かるくらいに雰囲気に呑まれていた。

 

 なのに、彼女達4人は逃げ出さなかった。期待を裏切るかもしれない、実力が及ばないかもしれない。だけど、自分達は結束バンドだと高らかに歌うようで愛子は自分が取材に来ていた理由を忘れていた。

 

 そして、最後。本当に最後の10秒間。何かしらの歯車が噛み合ったかのように音の暴力で殴られた。やっぱり大した事ないのか、と諦めかけた観客達の度肝を抜いたのだ。

 

「その10秒が最後のサビ、全体と伸びていくなら私の見立ては間違えてないと思う。それにインタビューした時、彼女達なんて言ったと思う?」

 

「『結束バンド、メジャーデビュー出来るんですか!?』とか砂糖より甘い言葉じゃないかな」

 

「『メジャーデビューに向けて、路上ライブ及びライブハウスでライブをしていきます。加えて、未確認ライオット出場を目標にしています』ってしっかりした答えも帰って来たのよ? というか」

 

 愛子は日本酒一気に飲み干すと、指先をミナに突きつけた。

 

「アンタの結束バンドに対する態度は何よ!? プロが学生バンドに対して嫌な言い方して! 自分の環境が悪いから、弟子を取られたからって当たるんじゃないわよ!」

 

「別に………八つ当たりをしているわけじゃない。ただ、これくらいの試練でやめるならバンドが続かないだけだろう?」

 

「だとしても、あの子達に執着しすぎよ。むしろ、SIDEROSに関してはかなり手厚くサポートしてるわよね? 新しい仲間に声かけて、誘導したのも貴方でしょ?」

 

「タイプが違う。SIDEROSはリーダーの性格からして、サポートされても道筋を整えられても現状には甘えず、自分で突き進むタイプだ。だけど、結束バンドは良くも悪くも未熟だから、周りからの優しさに甘えてしまうだろう。そう思って厳しく接してるだけで」

 

「どうだか。私には自分が上手くいかなかったから、弟子にも上手くいかないようにやってるようにしか見えないけど?」

 

「………………」

 

「漸く黙ったわね。でも、残念。多分、アンタの望み通りには絶対にならない。逆境を越えるたびにあの子達は強くなってる。次のライブは文化祭らしいわ。学外の入場も許可されてるし、動画としても上がる。あの子達をもうアンタは止められない」

 

「そんなの、分かってるよ………あの子が自分とは違うって」

 

 うつらうつらとし始めたミナ。そこまで酒に強いわけでもないのに、嫌なことがあったら平気でキャパを超えるだけの酒を飲み、気絶するように眠るのだ。

 

 そうじゃないと、悪夢を見る。仲間や家族から置いて行かれてしまう夢を──1人になってしまう辛さにミナは耐えられないから。

 

「あの子は………私より凄いギタリストに、なる。必要なのは………他者と合わせる経験………バンドに入ったら、あの子はどんどん上手くなって………私から離れちゃうから………だから、だから」

 

「飲みすぎよ。もう寝なさい。布団出してあげるから」

 

「わかってるよ………わかってるけど、どうしたらいいか。わからないんだ………助けを求めちゃいけない………だって、自分で選んだんだから…」

 

「いいのよ………助けを求めて。誰だって選択を間違える時があるの。大人だってそう。私が貴方を引き抜きしたのも………今なら、間違いだったって思ってるんだから」

 

 若さ故の過ちなんて、耳障りのいい言葉で片付けるつもりはない。ライターとして追っかけとして初代も二代目のギターはずっと聞いて来ていた。

 

 しかし、師匠は環境が代わり、自分の音を見失った。逆に弟子は自分の音を主軸に仲間達が次のステージへあがろうとしている。

 どうして、ここまで差が出てしまったんだろうなんて、考えても答えは出ない。巡り合わせが悪かった。間が悪かったとしか言えないから。

 

「いつか、アンタが『助けて』と言える日が来たらいいわね」

 

 その髪がまだ出会った時の黒髪だった頃のように、彼女が彼女らしく奏でられるバンドを愛子は待ち続けている。

 

 

 

 

「え、何これ。地獄絵図?」

 

 飲み会から数日後、休日にSTARYから弟子から呼び出しがあったので向かってみれば、そこには机で寝ているリョウ。顔が真っ青な虹夏と喜多。そして、赤点のテストを抱えたひとりがいた。

 

「助っ人きたー!! ミナさん! 期末テスト出る場所教えてください! 通っていた筈なんだから、わかりますよね!」

 

「ええ、いや通ってたの、3年前………というかテスト? え、それバンドに関係ある?」

 

「ありますよ! いいですか? 中間テストで赤点とると補修のせいで文化祭ライブが………ライブが!!」

 

「ああ、何となくわかったけど………そのお姉さんと君達って別にそこまで仲良くないよね。君のお姉さんやPAちゃんに頼った方がいいんじゃあ」

 

 虹夏が無言で指を刺した先、3人が頭を突き合わせて悩む姿。すたすたと近づいて問題を見ると、ノートを差し出して来たので、確認。そんなに難易度は高くはなさそうなのを見て、計算。

 

「えーと、この左辺全体をMとおいてこっちに代入。それを後は計算して………」

 

「と、解けました!」

 

「マジか!? 私らが3人かかって出来なかった問題を一瞬で!?」

 

「さっすが〜学生時代は優等生なだけある〜!」

 

「いや、これ公式覚えてたら出来る問題だから。それにバンドマンだからって頭が悪いのは致命的でしょう。ねっ? ひとりちゃん?」

 

「し、師匠ごめんなさい!」

 

「おっと、お姉さんも頭悪いって思われてたなこれは」

 

「見た目からして東横キッズみたいな感じなのに………できる!」

 

「アホな事言ってないでリョウも勉強しなさい!」

 

「ひとりちゃんも。とりあえず何が分からないか、見せてみて」

 

「あ、分からないところがわからないです………」

 

「………まずは範囲の問題、全部解いてみてそこから調べようか」

 

 開店前のSTARYでミナを交えた勉強会が始まる。ミナも思い出せない箇所が何ヶ所はあったが、今回の場合、それ以上に出来ないひとりの指導なのでそこまで困る事はなかった。

 

 一通りの範囲を終えて、リョウが自宅じゃないと勉強できないと帰ろうとした時、漸くひとりの分析が終わり、ミナは大きく肩を回す。

 

「結局のところ、ひとりちゃんは焦ると途中式がすっぽぬけたり、覚えるべき場所ではなく、関係ない場所を覚えていたり………つまり、要領が悪いのか」

 

「ご、ごめんなさい………」

 

「いいよ。気にしないで。じゃあ、お姉さんが言った場所だけ絶対に覚える事にしよう。他は気にせず、基礎だけしっかり固めようね。暗記は登下校の時間を使って………最後の3日間は泊まり込みでやろうか」

 

「すいません、うちの後藤さんが迷惑かけて………」

 

「いいよ。文化祭ライブに出られない方が厄介だ。なんせ、お姉さんもゲストとして出ることになってるんだから」

 

「え、ええ!? 師匠!? 文化祭出るんですか!?」

 

 ひとりの言葉がSTARYの総意だったのだろう。緊張が高まる中で、虹夏が手を挙げ、ミナがどうぞと促す。

 

「何処で出るんですか?」

 

「スケジュールの都合で、学生達の出し物が終わってからになるね。つまり、君達はお姉さんの前座って事になる。プレッシャー感じるかい? 気にしなくていいとも。どーせ、最後はお姉さんが持っていくから」

 

 ミナの煽りに圧が高まる。それでも、質問した当の本人は緊張感高まる顔でも笑っていた。

 

「ミナさんも気をつけてくださいね。前座が一番盛り上がった! なんて言われても知りませんから」

 

「言うねえ………まあ、いいよ。でも、覚えておいてほしい」

 

 虹夏の啖呵に彼女は挑戦的に笑う。つけあがらせないように、そして弟子達へと発破をかけるように。

 

「私の前座をやるんだ。無様な演奏は見せるなよ。結束バンド」

 

「「「「はいっ!」」」」

この小説はどこで終わるべき?

  • 文化祭ルート(新宿FOLTでミナと勝負)
  • 未確認ライオット
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