鎮守府の片隅で   作:ariel

104 / 106
今回の話は、前話での宣言どおり英国戦艦Warspiteさんが主役のお話です。そして金剛さんの友人+生粋の英国艦娘とくれば、もうどうなるのか決まっている訳でして…。久しぶりのドタバタコメディーとなりました。料理の方は、少し時期がずれていますが、もうすぐ来る土用丑の日を考えて、『日本』の鰻料理としました。


第八九話 Warspiteとう巻き(土用丑の日のライバル対決II)

司令部 居間 Warspite

 

 

「ちょっと、金剛?今日は鳳翔の所でSea eelを食べる日だったわよね?早く行くわよ。私からお願いしていた事だけど、貴方が計画してくれたのでしょう?」

 

「Ah…Warspite、ちょっと待つデ~ス。私達二人だけで行ったらサ~、あの鳳翔はWelcomeしてくれないネ。もう二人、道連…ではなくて、friendsを連れて行くから、ちょっと待つネ。」

 

まったく…金剛にも困ったものだわ。貴方は鳳翔に睨まれているからWelcomeしてもらないのかもしれないけれど、私はそんな事ないのよ?私は、普通に鳳翔のお店で食事をしているし、表向きは友好的に会話もしているのだから。第一、Admiralを『取』られたのは貴方の油断みたいだし…普段から鳳翔と敵対しても意味はないと思うわ。…そう、最後の最後で『盗』ることが出来れば、その手段は後からなんとでも正当化出来るのだから、それまでは私のように大人しくしていれば良いのに。

 

と言っても、たしかに金剛と私の二人だけで行けば、いくら鳳翔でも警戒するでしょうし、金剛は言わないけれど、もう一つの理由を作る事も難しいでしょうね。そういう意味では、金剛の言うとおり、Scapego…ではなく、鳳翔が警戒しないfriendsを誘ったほうが良いわ。それにしても金剛は一体誰を連れて行くつもりなのかしら。たしか比叡も含めてSister達には全て逃げられたという事だし…あ~、あのBlack angelsの子達ね。今夜は楽しい一日になりそうだわ。

 

「金剛さん、本当に初霜達にも鰻を食べさせてくれるの?後から、自分で代金を払え!は無しよ?」

 

「ウフフフ、鰻、鰻♪ 夕雲にもツキが回ってきたみたいだわ…ウフフフ。」

 

この鎮守府に赴任してきた時は、どうしてこんな素直そうな子達が、あの金剛の下で仕事をしているのか不思議だったのだけれど、あやうくあの笑顔に騙される所だったわ。もっとも、よく見ていれば時々黒い尻尾が見え隠れしていたし、金剛との会話を聞いていれば直に化けの皮は剥がれたから、今はあの笑顔には騙されないわよ。第一、生粋の英国艦娘である私Warspiteを騙せる訳ないでしょう?とはいえ、Admiralや他の多くの艦娘達には、この子達の本性はばれていない様だから、敵対したら私が一方的に悪者になる可能性もあるし…扱いが難しいけれど、面白い子達だわ。

 

「あら、初霜と夕雲も一緒にSea eelを食べに行くのね。今日は『全部』金剛が奢ってくれるのだから、遠慮しちゃ駄目よ。」

 

「Hey! Warspite何言っているネ!流石に初霜と夕雲の分は、私が出すけどサ~、自分の分は自分で払うネ!」

 

「あら?司令部の交際費は、何時から貴方のお金になったのか説明してくださる?私も司令部の一員のようなものだし、私の分も交際費で落としてくれればいいじゃない。」

 

「What? 提督の邪魔しかしていないWarspiteの何処が司令部の一員ネ!?」

 

私だって時々提督のためのお夜食に、ハムサンドイッチを作ってきているじゃない。たしかに、普段から提督の部屋に居座っているけれど、あれだって昔からの顔なじみの私が部屋に居る事で、他の海外艦娘とのコミュニケーションを円滑にしている役割が…。

 

「あの…金剛さん?それ程額が変わる訳ではないですし、Warspiteさんの分も一緒に『経費』で落としてしまったほうが、後々面倒にはならない気がするわ。」

 

「それに…口止めに丁度良いと、夕雲も思うけれど…。」

 

この時点では、このBlack angelsの子達は私の味方のようね。大方、下手に揉め事が起これば、自分達もSea eelが食べられなくなると考えているのでしょうけれど。まぁ内心はどうであれ、今は私の味方をしてくれているのだから、ここはこの二人の言葉に乗るべきね。それにこの子達、『経費』で落す事の意味と問題点を理解した上で、自分達も甘い汁を吸う気満々じゃない…やっぱり、面白い子達だわ。

 

「そうよ、金剛。私の分も一緒に経費で落としなさいよ。Admiralには黙っていてあげるわよ?」

 

「Shit! 初霜も夕雲も余計な事を言わなくていいデ~ス!あ~、もう分かったネ。これ以上面倒が起こる前に、早くあの女の所に行くネ。」

 

うふふ、どうやら私も只でご相伴に預かれそうだわ。私の国にもSea eelの料理はあるのだけれど、あの料理はJapanではあまり受けないようだし、今日はJapanのSea eelの料理を楽しまないと。ただ…鳳翔には多少の我侭を言ってあげようかしら。金剛ではないけれど、鳳翔は『現時点』でAdmiralを独り占めしているのだから、生粋の英国艦娘として嫌がらせの一つはしておかないと…。それに私が突けば、どうせ金剛も乗ってくるだろうから、鳳翔の攻撃は金剛が引き受けてくれるし、いざとなればこのBlack angelsの子達をScapegoatにすれば…うふふ。

 

「Thank you very much indeed 金剛。それでは、早速鳳翔のレストランに行きましょう。みんな、Follow me!」

 

 

 

小料理屋「鳳翔」 鳳翔

 

 

今年の土用丑の日も忙しいですね。毎年の恒例行事ですから流石に私も慣れて来ましたが、忙しさは最初の頃からあまり変わっていません。いえ…赤城さんや瑞鶴さんも頑張って私を手伝ってくれるのですが、年々私のお店で鰻丼を注文する艦娘の数も増えていまして…。とはいえ、艦娘の子達も私に配慮してくれまして、最近は鰻丼以外の注文が入る事はなくなりました。あの金剛さんも、ここ数年は大人しく姉妹艦と鰻丼を注文していますし(いろいろと文句は言っていますが…)、これならば今年も乗り切れそうです。

 

…しかし、今年の土用丑の日は珍しいですね。例年であれば金剛さんと一緒に来店していた比叡さん達高速戦艦四姉妹なのですが、今年は金剛さん抜きの三人で来店です。特に喧嘩をしている…との話は聞いていませんので、何か一緒に来る事が出来ない急用でも出来たのでしょうか。…あらっ?

 

ガラッ

 

「Hey! 鳳翔、邪魔するネ。四人デ~ス。Oh…丁度カウンターに四人分席が空いていますネ。今日はそこにシマ~ス。」

 

「鳳翔さん、こんばんは。今日は金剛に誘われて、JapanのSea eelの料理を食べにきたわ。美味しい料理を食べさせてくださる?」

 

金剛さんはWarspiteさんと来店ですか。それと一緒に初霜ちゃんと夕雲さんを引き連れていますが、司令部の面子で食べにきたという事でしょうか。しかし、Warspiteさんと一緒という所が少し気になるところです。普段はとても友好的に振舞ってくれているWarspiteさんなのですが、あの金剛さんの旧友、そしてあの人とも古くからの知り合いという事でどうしても身構えてしまいます。いえ、流石に私の考えすぎだとは思いますし、初霜ちゃんや夕雲さんも一緒に居ますから、大丈夫だとは思うのですが。

 

「いらっしゃいませ、金剛さん。Warspiteさんや、初霜ちゃん達も一緒ですか。鰻料理という事ですから、今年もいつものあれにしますか?」

 

「Yeees! 鳳翔。今年も鰻丼を注文するネ。あと初霜と夕雲の鰻丼は、御飯部分は少し少な目にしてくださ~い。」

 

数年前は、わざわざ難しい注文を連発して私を困らせた金剛さんですが、あの時の注文に対応してからは、やっても無駄だと悟ったのか、定番の鰻丼を注文しています。そして、初霜ちゃんと夕雲さんの鰻丼については、御飯を少し少なめにして欲しいというのは、初霜ちゃん達の食べる量を考えれば、非常に妥当な注文です。金剛さんも、初霜ちゃん達にはきちんと気を使っているのですね。初霜ちゃん達が司令部で、金剛さんに無茶を言われていないか心配していましたが、どうやらその心配は杞憂だったようです。

 

「あの、鳳翔さん。ちょっと待って欲しいのだけれど。私は、御飯は苦手なのよ。だから、御飯なしで食べられるSea eelの料理にしてくださる?」

 

「御飯無しで食べられる鰻料理ですか…。分かりました、なんとかしますので、少しお時間をください。」

 

注文は鰻丼が四つだと思っていたのですが、Warspiteさんから『待った』がかかりました。たしかに、あの人からも司令部での様子を聞いていますが、Warspiteさんは普段はサンドイッチを食べていますし、鎮守府食堂でも、御飯物の料理を食べている姿をほとんど見ないようです。ただ…私の料理屋では、それなりに御飯を食べている気がするのですが…。ひょっとして、鰻と御飯の組み合わせが想像出来ないため、警戒して先程の理由を告げのかもしれません。

 

ドイツ艦娘であるビスマルクさん達を筆頭に、多くの海外出身の艦娘達は、この鎮守府に赴任して長いため、丼物にも慣れ鰻丼も普通に食べていますが、赴任してそれ程時間が経過していないWarspiteさんは、そこまで丼物に慣れていないと思います。そして、こればかりは文化の違いもありますから致し方ありません。そうと分かれば、土用丑の日に私のお店に来てくれたWarspiteさんのためにも、御飯を使わない日本の鰻料理をご馳走してあげないといけませんね。

 

しかし、何を作ってあげましょうか…。たしかWarspiteさんの故郷英国には、『鰻のゼリー寄せ』という伝統料理があります。あの料理はたしか、酸味とアクセントのある辛味で構成された料理ですから、鰻と酸味の組み合わせには慣れているでしょうから、鰻ときゅうりの三杯酢で和えた『うざく』を出してあげましょうか…。

 

いえ、実際の味はかなり違いますが、鰻のゼリー寄せと同じように酸味との組み合わせでは、日本らしい鰻料理…という新鮮さが足りない気がします。そういえば、Warspiteさんは以前私のお店で、アナゴの蒲焼をお酒の肴にして美味しそうに食べていましたから、和風の甘辛さは好きなはず。そうなれば、鰻料理定番のあのタレは間違いなく気に入るでしょう。ただ…あのタレでは、御飯無しでは濃すぎ…いえ、御飯に拘る必要はありませんね。

 

そうです。御飯ではなく、鰻の蒲焼を出汁巻きで巻いた『う巻き』。これでしたら、あの甘辛いタレで味を付けた鰻を、御飯なしで楽しめます。それに…英国の料理は、テーブルの上で、自分で味を調整する事が多いという事も聞きます。ですから、う巻きに辛味大根の大根卸を添えて、ピリ辛度を自分で調整してもらえば…きっと気に入ってくれるのではないでしょうか。それでは早速作ってしまいましょう。

 

まずは、鰻の蒲焼ですが、こちらは私のお店で毎回出している物をそのまま使用します。「串打ち3年、裂き8年、焼き一生」と言いますから、私などではまだまだですが、それでも昔に比べてだいぶ上手になったのではないでしょうか。さて、それでは鰻の蒲焼を作っている間に出汁巻き部分の準備をしてしまいましょう。

 

まずは溶き玉子を準備したら、ここにだし汁と塩を混ぜます。私のお店でいつも出している出汁巻きは、注文した艦娘の好みに合わせて、砂糖などを入れる場合もありますが、今回は甘辛い鰻の蒲焼を巻くため、甘味が少なく少し薄味の出汁巻きを準備します。

 

それでは、卵焼き用の調理器具に油を引いて、準備した出汁巻きの素を流し込みます。後はここに、大きさを揃えた鰻の蒲焼を上半分に乗せて…さわやかな香が楽しめるように、青じその葉を下半分に敷き詰めます。これで準備完了ですね。

 

それではいつもと同じやり方で、鰻の蒲焼を巻き込むような形で、出汁巻きを作っていきます。ヨッと…。いい感じに巻き込めて来ましたね。少し玉子の層が薄いですから、もう少し厚みを追加させる必要がありますね。…もう一度、出汁巻きの素となる玉子汁を入れて…巻き込んだ『う巻き』の下にも玉子汁が入るように持ち上げて。…さぁ、もう一度巻き込んでいきますよ。…エイッ。いい感じになりましたね。

 

最後は大根卸の準備です。これは通常の大根卸でも勿論美味しいのですが、今回注文したWarspiteさんは、意外と強いアクセントとなるような辛味も好きな艦娘です。ですから、辛味が非常に強い大根卸の方が好みだと思いますので、小振りの辛味大根を用いて大根卸を作ります。…これくらいの量で良さそうですね。あとは盛り付けをして…これで出来上がりです。

 

丁度金剛さん達用の、鰻丼も準備が出来ましたので、一緒に出してしまいましょう。

 

「金剛さん、Warspiteさん、初霜ちゃん、夕雲さん、料理が出来上がりましたので、どうぞ。Warspiteさんには、鰻の蒲焼を出汁巻きで包んだ『う巻き』を準備しました。日本の鰻料理の美味しさが詰まっていますので、どうぞ楽しんでくださいね。それと一緒に、非常に辛い大根卸も準備しましたので、自分の好みに合わせて、味を調整してください。それでは、めしあがれ。」

 

 

 

英国戦艦 Warspite

 

 

くっ…嫌がらせをした筈が、全然嫌がらせになっていないなんて…。鳳翔の料理の腕を甘く見過ぎていたという事ね…。以前金剛が『鳳翔に料理関係で嫌がらせをするなら、余程準備を整えてから挑戦しないと、無駄に終わるデ~ス』と言っていたけれど、まったく間違っていなかったという事だわ。道理で私の嫌がらせに、今回金剛が乗ってこなかった訳ね。

 

Japanの伝統的なSea eelの料理に、『Una-don』という物があって、御飯と一緒にSea eelの蒲焼を食べるという事は知っていたわ。だからこそ、御飯無しで食べたいと言えば、混乱すると思ったのだけれど、こんなに見事な料理を出してくるなんて…これじゃ、厭味の一つも言えないじゃない。

 

私は料理がそんなに上手じゃないから、自分がこんな注文されたら困るだろうな…と思ったけれど、鳳翔の料理の腕だと、こんな程度では全く困らないのね。どうやら、鳳翔にはあまり料理で喧嘩を売らない方が良さそうだわ。まぁ、私は金剛とは違って、表立って鳳翔とは対立していないから、今回の注文も好意的に見てくれているようだけど、これからは少し注意した方が良さそうね。

 

さて…それじゃ、折角鳳翔が作ってくれた『U-Maki』を食べてみようかしら。玉子焼きに包まれたSea eel。以前このお店で、玉子焼きは注文した事があるけれど、あの甘味のある玉子焼きにSea eelの蒲焼…蒲焼も甘味が強いでしょうから、少ししつこい甘さがあるように思うのだけれど…どうかしら。

 

んっ…美味しい…美味しいわ。これ…以前、このお店で食べた玉子焼きとは違うのね。そう…わざと甘味を抑えて、少し塩辛さが感じられる…そして噛むと薄く旨味だけを感じる事が出来る見事な玉子焼き。そして、中心部分の甘辛さが際立つSea eel。私の祖国英国のSea eelの料理も悪くは無いのだけれど、今回のJapanのSea eelの料理も絶品。ジュワッと脂の乗った美味しいSea eelの身。そして私の祖国のSea eelの料理は少し泥臭さを感じる事があるのだけれど、このSea eelの蒲焼には、全く泥臭さが無いわ。勿論、この甘辛いタレのせいもあるかもしれないけれど、Sea eel自体が違うのかしら。

 

それに…この玉子焼きとSea eelの蒲焼の相性は良いわね。わざと味を薄めに作っている玉子焼きの味が、Sea eelについた濃い甘辛さを吸収してくれるし、玉子焼き部分だけを食べても、美味しく食べられるように旨味はしっかり入っている。こんな料理があったのね。あら?…この玉子焼きに入っている緑の葉…なるほど、これは青ジソの葉。だから、少しすっきりする味が出ていたのね。Sea eel自体が、かなり脂が乗っているから、これを食べやすくするために青ジソの葉を入れたという事、こんなPerfectな料理があったのね。

 

そういえば鳳翔は、辛い大根卸を一緒に出してくれたけれど、これで自分好みに辛味をつけろという事かしら。私の国では、お皿の上で自分が好きなように味付けする事が多いけれど、それをrespectしてくれているという事ね。たしか…大根卸は醤油をたらして食べたと思うから、この大根卸に少し醤油を落として…辛いと言っていたけれど、どれくらい辛いのかしら。いつもの大根卸と見た目は同じように見えるのだけれど。

 

ウッ…これは…これも美味しいじゃない。いえ、涙が出てくるくらいパンチの利いた辛さだけれど、味のアクセントという意味で、これは素晴らしい大根卸だわ。しかもSea eelの脂を一気に消し去ってくれるような辛さとあっさり感。この辛さの大根卸でしたら、これくらいの量を一緒に食べれば…ウッ…美味しい、美味しいわ!さっきのU-Makiの美味しさに辛さのアクセントが追加されて…これならドンドン食べられるじゃない。

 

あっ、そうだわ。この料理でこれだけ美味しいのであれば、金剛達が頼んだ正規の料理でもあるUna-donの美味しさは、どうなのかしら。さっき御飯は苦手と言ってしまったから、今更Una-donを食べるなんて言えないし…。いえ金剛ではなく、初霜か夕雲に頼めば…。

 

「初霜、私のU-maki食べてみない?これも美味しいわよ。それと折角だから、初霜のUna-donも少しだけ食べさせてくれるかしら。」

 

「勿論OKよ、Warspiteさん。でも鰻の蒲焼部分はWarspiteさんの『う巻き』と全く同じだから、御飯の部分だけで良いかしら?」

 

な…なんてケチな子なの。御飯部分だけとU-makiでは、まったく割に合わないじゃない。こうなったら夕雲に…。

 

「夕雲、貴方の料理も味見してみたいから、少しもらえるかしら。」

 

「あの…Warspiteさん、夕雲としてはあげたい所なのだけれど、もう全部食べてしまったから…。」

 

ちょっと!貴方食べるのが早すぎるわよ。かといって、ニヤニヤしている金剛にお願いはしたくないし。第一、金剛にお願いしたら、何を言われるか…。

 

「Hey! Warspite。こっちの鰻丼も食べたそうですネ。御飯は苦手だったのではなかったデ~スか? Hmm…私はもう一杯鰻丼を追加注文する予定デ~ス。Warspiteが私にお願いするなら、Warspiteにも注文してあげるネ。」

 

うっ…金剛にこの私が頭を下げなければいけないの!? そんなの嫌よ! それに、金剛に奢ってもらう訳でもないのに! でもあっちの料理も食べてみたいし…。し…仕方ないわ…ここは断腸の思いで…。

 

「金剛、私もその料理を食べてみたいわ…Please。鳳翔さん、この料理美味しかったわ。だから、お米は少し苦手だけれど、そっちの定番料理も食べさせてもらえるかしら。」

 

 

 

航空母艦 『鳳翔』

 

 

急遽準備したう巻きでしたが、Warspiteさんに気に入ってもらえたようですね。以前金剛さんが土用丑の日に、私を困らせるため八幡巻きを注文した事がありましたが、鰻を使った巻物を作ったのは久しぶりでした。今回のWarspiteさんの注文も、八幡巻きを一瞬考えましたが、特に欧州から派遣されている多くの艦娘達は牛蒡に慣れていないので、う巻きにして正解だったようです。

 

それにあの時の金剛さんは、八幡巻き以外に蒸篭蒸しも頼んでいましたから御飯物もありましたが、今回のWarspiteさんは、う巻きのみの注文です。八幡巻きも美味しいですし、牛蒡の甘味はたしかにありますが、単独で食べるのであれば、玉子が味をまろやかにしてくれるう巻きに軍配が上がりそうです。いずれにせよ、私の予想どおりに日本の鰻料理を堪能してくれたようで、私も作った甲斐がありました。金剛さんがニヤニヤしていた事は少し気になりましたが、結果的にWarspiteさんは喜んでくれていますし…何かあるのでしょうか。

 

しかし結局、鰻丼も注文するようですね。御飯物は苦手だと言っていましたが、う巻きを食べ、鰻の蒲焼の味を理解して、これなら御飯と一緒に食べられそうだ…という判断なのかもしれません。実際、異国に来て初めて見る料理の場合、いろいろと慎重に行動をしますから、序々に味を理解しながら進んでいく…というやり方も、十分に考えられる訳です。

 

いずれにせよWarspiteさんから…そして金剛さんからも、鰻丼の追加注文が入りましたから、急いで二人分の準備をしてしまいましょう。金剛さんはともかく、Warspiteさんには是非日本の鰻料理の定番料理を楽しんでもらいたいですし、折角日本に赴任してきたので、いろいろと経験してもらいたいですから。

 

それにしても…今回の勘定は全て金剛さんが払うようなのですが、とても気前が良いですね。初霜ちゃん達の分も含めてお勘定となりますと、結構な金額になると思うのですが…。まぁ、金剛さんは色々と羽振りも良さそうなので、いらない心配のような気がしないでもありませんが…。

 

 

「Hey 鳳翔。今日は鰻を堪能したネ! 偶には、鳳翔の料理を食べにくるというのも悪くはないデ~スネ。それじゃ、会計をよろしくお願いしマ~ス。あっ、領収書を忘れたら駄目ネ。宛名は『呉鎮守府司令部様』でお願いしマ~ス!」

 

なっ…金剛さん…まさか経費で全て落す気だったのですか!? これは…ちょっと今夜にでも、あの人に確認を取らないといけませんね。金剛さんの発言に、初霜ちゃんや夕雲さんは驚いたような顔をしていますから、この二人は全く事情を知らずに金剛さんの計画に巻き込まれたようですね。

 

…そしてWarspiteさん。何食わぬ顔で、退店していきましたから…こちらは金剛さんと同じで計画を立てた側のようです…。Warspiteさんは金剛さんとは昔からの友人ですし、あの人とも、あの人が未だ佐官だった頃からの知り合いのようですし…。金剛さん同様に油断したらいけない艦娘なのかもしれません。これから要注意です。

 

 

 

翌日 司令部提督室  提督

 

 

「金剛それとWarspite、ちょっとこっちに来い。」

 

「What? どうしたネ、提督ぅ~。難しい顔してサ~。」

 

「Admiralどうしたの?」

 

まったく…こいつらと来たら。いや…どうせ言い訳はもう考えているだろうし、金剛がそう簡単に尻尾を捕まれるような事はしないだろうから、おそらく逃げられるのだろうが、多少なりとも釘を刺しておかないとな。

 

「お前達。昨日、あいつの店で鰻を食べたようだな。大淀から、その時の飲食費が司令部の交際費として処理されていると報告が上がっているんだが、これはどういう事だ?」

 

「Ah、それは当然デ~ス。昨日の夕食は、司令部メンバーの懇親会ネ。こうやって司令部に居る艦娘の親交を深める事も仕事の一環デ~ス。」

 

「ほぉ…それにしては、お前達二人と…あぁ、初霜と夕雲は連れて行ったみたいだが…他の面子はどうしたんだ?」

 

「それが、提督ぅ~。比叡と大淀には、所要があって同行出来ないと言われてサ~。仕方ないから、その四人で行ったデ~ス。」

 

「そうよ、Admiral。それに、例え四人でも司令部の重要なメンバーだから、懇親会は必要だと思うのだけれど…違う?」

 

普段は口喧嘩が絶えないこの二人だが、こういう時は共同戦線か…まったく。俺の予想どおり、言い訳出来るだけの理由はちゃんと準備していたか。金剛達は昔からの知り合いで、色々と俺と一緒に苦労してきた仲だから、あまり強くも出られんが…ここは変化球で攻めるしかなさそうだな。

 

「そうか…懇親会か。その割には、上司たる俺には誘いの一つも無かったようだが?どうやら俺は、部下に嫌われているようだな…。仕方ない、本当は今日仕事が終わったら、久しぶりに鎮守府の外で、司令部を構成する艦娘の納涼会を開こうと思っていたんだが、お前達二人は俺の事が嫌いなようだから、他の面子だけ誘って行ってくる。」

 

「What!? Hey! 提督ぅ~。私も連れて行くネ。昨日の事は、日本の鰻が食べたいと我侭を言ったWarspiteが全て悪いネ!私は止めたんだけどサ~、Warspiteに嵌められただけデ~ス!そうデスネ、初霜?」

 

「ちょ…ちょっと金剛!? 何勝手な事を言っているの!? Admiral、昨日の事は全てこの金剛の発案よ。私は乗せられただけよ。そうよね、夕雲?」

 

「あの…初霜は、よく分からないのだけれど…。でも酷いわ、金剛さん。また初霜を騙したのね?」

 

「え…えっと、夕雲も初霜さんと一緒に、Warspiteさんに騙されたって事?」

 

「Hey! 初霜。な~に被害者ぶっているネ!貴方も私達の仲間デ~ス。今更いい子ぶっても駄目デ~ス!」

 

「夕雲、まさかこのタイミングで裏切る気?私の祖国も真っ青な二枚舌じゃない!」

 

どうせこんな事だと思ったよ。さしずめ、金剛とWarspiteが組んで今回の事が計画され、自分達だけでは言い訳がつかないため、初霜と夕雲が巻き込まれた…という事だろうな。まぁいい、この二人には今日は留守番させて、残りの面子と一緒に今日は外に出るぞ。

 

「あ~、お前達二人は、今日は留守番な。駆逐艦の二人に何言っているんだ。どう見ても、初霜と夕雲はお前達の計画に巻き込まれただけだろう。少し頭を冷して来い…まったく。」

 

この二人、昔からそうだったが本当に仲が良い…というか、似たもの同士だよな。その分、Warspiteが着任してから俺の苦労は二倍増しだが…。とはいっても、この雰囲気がこいつらの魅力の一つでもあるわけだし…戦力も大幅にアップしているからな。上手に俺がコントロールしていくしかないって事か。俺のこの苦労…誰かに押し付けたいよ、本当に。




一ヶ月ぶりになりましたが、次話を投稿する事になりました。土用丑の日から少しだけずれているのですが、折角の機会なので鰻ネタで物語を作る事になりました。そしてどうせ鰻ネタをやるのであれば、かなり昔に投稿した『土用丑の日のライバル対決』に近い話にしてみようかな…と思い、外伝ではなく本話のナンバリングとしましたが、副題として『土用丑の日のライバル対決II』としてみました。ただ今回のライバルは、鳳翔VS金剛ではなく、金剛VS Warspiteになりましたが…。

ちなみに…今回のお話のネタは…実話だったりします(笑)。昨年だったと思うのですが、私の英国の知り合いが来日しまして、その際に鰻料理を食べに連れて行ったのです。そうしますと奴さん曰く『どうも、ライスはあまり好きではないから、ライス無しの料理が食べてみたい』などと、おほざきになりました。

お前…鰻丼食べに鰻屋に来て、今更ライスは無しって、どういう了見よ!と、実に英国人らしい英国人の友人だった訳です。ただ幸いな事に、連れて行った鰻屋は馴染みの鰻屋だったため、急遽『う巻き』を作ってくれまして、その友人はその料理を肴に日本酒を楽しんでいました。そして…

我々日本側の人間が、美味しそうに鰻重を食べているのを見ていたその友人、『やっぱり、それも食べてみたい!』などと、おほざきになり、追加注文。勿論、ぺロリと平らげまして…『日本の鰻料理も上手いものだな』と、実に英国人らしく二枚舌の感想をおほざきになった訳です。ですからこの事件、何時か時間が出来たら自分の物語に取り入れてみたいと考えていまして…今回その念願がかなった次第です(笑)。あっ、ちなみにその時のお代ですが、勿論今回のお話と同様に『経費』です(一応、仕事ですし…)。

う巻きを食べた事がない方も居るかもしれませんが、これはかなり美味しい料理です。京都の錦小路でも販売していますので、機会がありましたら是非購入して食べてもらえると、今回のWarspiteさんのような感想になるかと…(辛味大根の大根卸は別途準備が必要ですが…)。

今回、ようやくWarspiteさんをお話に出す事が出来ましたが、私この艦娘は大好きです(勿論、戦艦としての戦歴も好きなのですが)。そのため、このお話の外伝版の方にも登場させていますが、金剛とお友達という設定にしており、英国艦らしく『とっても腹黒』な艦娘として、金剛と共に活躍してもらう予定です。…しかし、提督の周辺に居る司令部所属の艦娘達、大淀達も真っ黒ですが、皆一癖も二癖もある艦娘ばかりで…提督の胃が心配になってきます(笑)。

また今回は、提督からの問答無用な攻撃が金剛さんに直撃し、提督と一緒に食事に行ける機会を、Warspiteさん共々逃してしまった訳ですが、これで懲りるような金剛さん達ではありません。そして小悪党の二人(初霜&夕雲)は、無知を装って上手に逃げをうつ事に成功していますが…Warspiteさんには本性がばれているようですし…。これから鳳翔さんのお店でドタバタが増えそうです。

今回も読んでいただきありがとうございました。




う巻き(3~4人分)

鰻の蒲焼:1尾 (作るときは1/2尾ずつに切り分けて調理)
玉子:6個
だし汁:150 mL
塩:3 g程
青シソの葉:10枚程
辛味大根:適量(好きなだけ)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。