鎮守府の片隅で   作:ariel

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少し時間が空いてしまいましたが、次話を投稿したいと思います。今回は戦艦娘が少し続いてしまいますが、ソ連艦のГангутさんにしてみまいた。ゲーム中の台詞では、とても勇ましい彼女ですが、鎮守府ではいろいろと大変なようです。そして同じくソ連艦のТашкентさんからの視線が…。


第九一話  Гангутとビーフストロガノフ

鎮守府某所   Гангут

 

 

はぁ…偶には良い物が食べたいものだな。奴が着任してくるまでは、普通に食べる事も出来ていたのだが、奴が着任してからは…。奴があれ程、融通が利かないとは思ってもいなかった。奴はチェーカー(秘密警察)か?…そうだった。奴はソ連邦になってからの生まれだったな。それに対して、私はロシア帝国時代の生まれ。あの華やかだったロシア帝国時代を知る私にとって、ソ連邦の質素すぎる食事はちょっとな…。良い物を帝国時代に知り過ぎてしまった…ということか。

 

しかし…折角の日本帝国への赴任。しかも外交的問題により、五月蝿い政治将校も居ないのだ。なんとかして奴の目を掻い潜って、奴が着任してくる以前の楽しさを取り戻さなくてはいかん。まずは、同志鳳翔の店での食事の復活…この辺りからだな。それにしても、折角の機会だと思ったから、奴がこの鎮守府に着任した時に、同志鳳翔の店で食事をさせてやったのだが、あの言い様は無いだろう。

 

『同志 Гангут、こんなにブルジョワな食事をこの鎮守府で楽しんでいたのかい?これは党に報告しなくてはいけないね。』

 

あわてて、『今回は歓迎会だから特別だ』と誤魔化したが…。あれ以来、奴の私に対する監視が始まり、私は同志鳳翔の店にも行けなくなってしまった。しかも奴は、『ブルジョワな食事は革命精神を駄目にする。』などと言い出し、本国に食料の補給要請まで…。本国の食事も悪いとは言わないが、三食あのような粗食ではな…。しかも周りの他の戦艦娘達は、良い物を食べている…。特に同志Richelieuからの哀れみのこもった視線を受けた時は…屈辱だった。いや…もう我慢の限界だ。今日こそ私は、鳳翔の店に行くぞ。

 

 

 

小料理屋『鳳翔』  鳳翔

 

 

あら?この封筒は…。今日の仕込みを始めようと、自分のお店に来たのですが、扉の所に封筒が挟まれていました。ほとんどの艦娘は直接私にお話を持ってきますので、このようにわざわざ封筒に…しかも差出人も無い封筒は珍しいですね。…いえ、封緘がロシア帝国の紋章になっていますので、おそらく Гангутさんからの物ですね。それにしても、最近私のお店に来店してない Гангутさんからとは、珍しい事もあるものですね。

 

Гангутさんは、Ташкентさんが赴任してくるまでは、ほぼ毎日私のお店に来て、様々な食事を楽しんでいたのですが、ここしばらく来店していませんでしたね。駆逐艦寮に居る初霜ちゃんの話によると、なんでもТашкентさんが直接祖国に食料の補給を依頼したようで、二人で…いえ、時々それに響ちゃんも含めて三人で、本国の食事を楽しんでいるそうです。やはり、食べ慣れた祖国の食事の方が良いのでしょうね。それにしても…一体何かあったのでしょうか。

 

『同志鳳翔殿

本日、同志のロシア料理が食べたいため、閉店後に店に行く。閉店後で申し訳ないが、よろしく頼む。ロシア料理の種類については同志に一任するが、ロシア帝国時代に作られていたロシア料理をお願いしたい。またこの件については、くれぐれも同志Ташкентには、内密に頼む。』

 

おかしいですね…。本国の食料品の補給を受け、毎日のようにロシア料理を食べているでしょうから、今更私が作るロシア料理ではなくても良いと思うのです。そして出身が同じため、普段から仲の良さそうなТашкентさんにも内緒にしたいというのも、おかしな依頼ですね。とはいえ、人には話せない事情があるのかもしれません。とりあえず今日の閉店後に来るようですから、何か準備しておきましょうか。

 

そして、ロシア帝国時代のロシア料理ですか。未だ華やかだった頃の本国の料理という事ですね。ロシア帝国は、フランス料理の起源にもなったと言われる程の料理大国です。そしてその全盛期のロシア料理となりますと…生半可な料理ではありません。オリジナルのレシピの再現は無理でしょうが、私の手元にある食材で、文句が出ない程度に作れそうなロシア料理となると…。

 

有名どころでは、ボルシチのようなスープ系の料理がありますが、これはビーツがなければ本格的なボルシチは作れません。流石にこれからビーツを手に入れる…という訳には行きませんから、これは却下です。そして、シャシリクのような豪快な料理も良いのかもしれませんが、わざわざ『ロシア帝国時代の料理』と指定が入っている以上、豪快な料理よりも繊細な料理を、今回 Гангутさんは望んでいる気がしますから、これも却下ですね。

 

ニシンの酢漬け…これは前菜にしかなりませんから、これをメインにする訳には行きません…、同じ理由でピロシキも却下ですか…。ペリメニ、ヴァレーニキも美味しいロシア料理ですが、これらも単独では少し寂しそうですね…。困りましたね。どうしましょうか…。

 

!そうでした、あれがありました。あの料理でしたら、単独で食べてもメイン料理として十分に通用します。そして幸いな事に、サワークリームやフォン・ド・ヴォーの缶詰を、フランス艦娘のRichelieuさんが、先日私に渡してくれたばかりですから在庫もあります。またこの料理であれば、御飯だろうとパンだろうとどちらでも合いますので、Гангутさんの好きな形で食べてもらう事も出来ます。ある程度の量を一度に作る事になってしまうので、Гангутさん一人分には多いかもしれませんが、残りを家に持って帰ってあの人のお夜食に出す事も出来そうですから、問題ありませんね。流石に今から作ってしまっては、少し早過ぎますから、ある程度店が落ち着いてきたら作りましょうか。そう…ビーフストロガノフを。

 

 

今日も忙しい時間はほぼ終了ですね。後は、店に残っている艦娘達のちょっとした追加注文に対応するだけですから、そろそろГангутさんのためのビーフストロガノフを作り始めましょうか。

 

ビーフストロガノフは、ストロガノフ伯爵が考案した肉料理だったとか、ストロガノフ伯爵を偲んで作られた料理だとか、いろいろな説がある料理ですが、ロシア帝国時代に考案された料理である事は間違いありません。そのため、今回のГангутさんの希望にはぴったり合う料理のはずです。

 

まずは定番の玉ねぎ、そしてマッシュルームを薄切りにします。そしてお肉が柔らかく簡単に食べられるようにするため、2~3 cm幅で細切りにします。この肉を細切りにする所が、この料理のポイントで、これによって肉が非常に柔らかくなり簡単に噛み切れるようになる訳です。そして肉の下味として、塩と胡椒を塗し、更に甘酸っぱい香りと色合いを良くするためにパプリカパウダーも塗します。更に肉の表面に少しプルンとした食感を出すために、小麦粉も塗してしまいましょうか。これで下準備は完成ですね。

 

それでは早速、細切りにした肉を炒めましょう。まずは熱したフライパンにバターを溶かし、ここに牛肉の細切りを投入して軽く炒めます。

 

「鳳翔さん、その牛肉のバター炒めは誰が注文したの?瑞鶴、そんな注文通してないと思うんだけど…。」

 

「いえ、瑞鶴さん。これはちょっとした事情があって作っているだけですから、問題ありません。それと今日は早めに上がってくれていいですよ。」

 

「あ、そうなんだ。今日、瑞鶴ちょっと疲れていたんだよね。サ~ンキュ、鳳翔さん。それじゃ、また明日ね。」

 

Гангутさんは、お忍びで来る予定のようなので、今日のお手伝いをしてもらっている瑞鶴さんは先に帰しておきましょうか。さて、それでは先ほど炒めた肉の細切りを一度取り出して、次は玉ねぎを炒める番ですね。先ほどと同じように、バターを使って玉ねぎが飴色になるまで、ゆっくり炒めます。そしてここに、マッシュルームの薄切りを加えて…そろそろ両方とも火が通りましたね。

 

それではここに赤ワインとフォン・ド・ヴォーを入れて、煮詰まるまで弱火でゆっくり火を通していきます。フォン・ド・ヴォーは缶詰を使っていますが、今回は急な話でもありますから、Гангутさんも許してくれるのではないでしょうか。…そろそろ煮詰まりましたね。後は、ここに先ほど炒めた肉の細切りを戻し、この料理の二つ目のポイントでもあるサワークリームを入れて煮込んだら出来上がりです。出来上がりの味はどうですかね…えぇ、少しだけ塩と胡椒を加えましょうか…これで味が整いましたね。

 

あとはГангутさんの希望に応じて、バターライスでもパンでも好きな物と一緒に出せば良さそうです。おそらく本国のオリジナルレシピとは、少し違うビーフストロガノフですが、この味ならば、十分喜んでくれると思います。さて閉店時間を少し過ぎてしまいましたが、あと店に残っているお客さんは…珍しく遅くまで残っている、大和さんと初霜ちゃんの二人だけですね。そろそろ約束の時間ですし、Гангутさんもやってくる頃でしょうか…。

 

ガラッ

 

「同志鳳翔、無理を言ってすまなかった。早速約束の物をもらうとしよう。」

 

「あら、Гангутさんいらっしゃいませ。準備は出来ていますので、そちらのカウンター席にどうぞ。」

 

Гангутさんが来店です。何故か知りませんが、凄く嬉しそうな顔をしていますし、機嫌も凄く良さそうですね。ひょっとして、何か個人的に凄く良い事があって、その記念に私のお店でロシア料理を食べるという事でしょうか。

 

「あら?Гангут。ここで会うのは久しぶりね。もう閉店の時間だと思うのだけれど、これから食事?」

 

「あぁ、同志大和。それに同志初霜も居たのか。いや、今日はちょっとあってな。これから食事なんだ。」

 

「そう。それじゃ私達はそろそろ帰りますので、ごゆっくり。初霜、そろそろ行きますよ。」

 

「はい、大和さん。今日もごちそうさまでした。Гангутさんも、また明日。」

 

「うむ、Доброй ночи(おやすみ)」

 

さて、いよいよГангутさんだけになりましたし、事情が気になるところではありますが、まずは食べてもらいましょうか。喜んでくれると良いのですが…。

 

「Гангутさん。今回はビーフストロガノフを準備したのですが、これでよろしかったでしょうか?それと、バターライスでもパンでも準備は出来ますが、どちらにしましょう。」

 

「ビーフストロガノフか…流石は同志鳳翔。私の考えをきちんと理解してくれていたか。それとパンもライスも必要ない。これを準備してきたからな。」

 

なるほど、そういう事ですか。Гангутさんが持ってきた袋の中から、黒パン、キャビアの缶詰、そしてウォッカの瓶が出てきました。キャビアの缶詰まで準備しているという事ですから、余程良い事があったのでしょうね。それでは、こちらはビーフストロガノフを器によそうだけにして、あとは好きなようにしてもらいましょう。

 

「分かりました、Гангутさん。それでは、ビーフストロガノフだけ準備しますので、後は好きなようにしてください。それでは、めしあがれ。」

 

 

 

戦艦 Гангут

 

 

ハハハ…アッハハハ、ついに来たぞ、この私の時代が!。今日は、あの五月蝿いТашкентも居ない。見ろ、この料理の数々。これだ…これこそが、我が祖国『ロシア帝国』の料理だ。やはりボリシェヴィキなどに任せては駄目だったのだ。さぁ、今日は昔に戻って…そう、あの華やかだった頃の祖国の味と雰囲気を堪能するぞ。まずは黒パンとキャビアだ。

 

うむっ!美味い。実に美味い。こちらのイクラーも悪くはないのだが、やはりチョウザメの卵の方が一枚上手だな。見ろ、この美しい黒い粒を。そしてこの塩味、この独特の食感。これこそがキャビアなのだ。祖国から派遣されてくる前に、無理を言って手に入れてきた甲斐があったな。Ташкентに見られたら何を言われるか分からんから、今まで隠してきたが、やはり美味い。そして…キャビアを食べ終わった後に口に入れる、この一口のウォッカ。キャビアの味を洗い流し、そしてこの喉を焼くような感覚。堪らんな!

 

さて、いよいよビーフストロガノフだ。同志鳳翔には、特にリクエストをしていなかったから、何が出てくるのか不安もあったが、やはり同志鳳翔だ。私は、コトレータを予想していたのだが、ビーフストロガノフとは予想以上だ。少し私の思い出に残っているビーフストロガノフとは色合いが違うようだが、見てみろ、この美しく茶色く輝く料理を。このビーフストロガノフも美味そうだ。そして香りも…素晴らしい。

 

早速食べてみるか。まずは肉だ。やはりこれがなければ始まらん。この細切りに切られた肉、表面がプルンとした食感、そして歯を入れた瞬間に分かれていく、この柔らかさ、良いぞ!。味も素晴らしい。我が祖国のビーフストロガノフとは少し異なるようだが、これも美味い。見た目はデミグラスソースを使ったビーフストロガノフに似ているが、味は異なる。そう、こちらの方が、より洗練された味というのだろうか、甘さと旨味を併せ持つソースに絡まった牛肉の味…素晴らしいぞ。それに、この後ろに隠れた僅かな酸味とまろやかさ。きちんとサワークリームを使用しているからこそ出てくる、この味だ。

 

良いぞ!玉ねぎも、噛むと甘味が滲み出てくる程にうまく火が通っているし、マッシュルームのキュッとした食感も完璧だ。この料理は、牛肉と玉ねぎとマッシュルームだけの単純な素材の組み合わせなのだが、これら三者が全て異なる食感、香り、味を持ち、それら全てをコクのある味で、そしてサワークリームのまろやかさが包み込む…やはり祖国の料理は最高だ。今日は、同志鳳翔に無理を言って良かった。このビーフストロガノフだけでも、ウォッカが美味く飲めそうだ。

 

「同志鳳翔、流石だ。礼を言うぞ。Спасибо(ありがとう)」

 

「いえいえ、気に入っていただけたようで何よりです。それにしても、今日はどうしたのですか?人目を忍んで…というようにも見えますが、何か良い事でもあったのですか?」

 

「いや、そうではない。私も偶には、美味い物を満足するまで食べたかっただけだ。」

 

「は、はぁ。」

 

まぁ、そうだろうな。これだけ美味い料理を自由自在に作る事が出来る同志鳳翔には、この私の気持ちは分かるまい。まぁ、いい。今回このような機会を作る事が出来たのだ。また機会を見つけて、同じ様に頼めば、断られる事はないだろう。ん?

 

ガラッ

 

「同志Гангут、一体何をしているんだい?先程、駆逐艦寮に戻ってきた同志ハツシモフから、閉店間際の同志鳳翔の店に、同志が現れたと聞いたのだけれど、とても楽しそうだね。」

 

なっ…なんで奴がやってきた。…そうか、これは私の失策か。たしかに同志初霜には、内密にしろとは言っていなかったか。しかし…これは拙い、とても拙いぞ。

 

「同志、なにやら凄く美味しそうな料理が並んでいるような気がするのは、勘違いだろうか。まさか同志が、このようなブルジョワな料理を隠れて楽しんでいた…とは想像していなかったよ。一度この件については、党に報告した方がよいかもしれないね。」

 

拙い…拙すぎるぞ。こんな事が党に報告でもされた日には、間違いなく私に、党から帰国命令が来るだろう。そして帰国した後は…あぁ、考えたくもないぞ。ここはなんとかして誤魔化さなければ…しかしどうやって…。!そうだ。

 

「同志Ташкент。貴様は何を勘違いしているのだ?『彼を知り己を知れば百戦殆うからず』という言葉を貴様は知らんのか?私はこうやって、敢えてブルジョワな料理を食べる事で、我々の革命精神を堕落させる要素を知ろうとしているだけだ。貴様も一緒に食してみるか?自身の革命精神がこのような料理で流される程、貴様も軟弱ではあるまい。」

 

「なるほど、そういう理由だったんだね、同志Гангут。そういう事なら、ご相伴にあずからせてもらうよ。」

 

よしっ!奴も巻き込んだぞ。これで奴も、党に報告する事は出来まい。なにせ、奴も一緒に『ブルジョワ的な』料理を楽しむ事になるのだからな。ん?同志鳳翔、何を俯いて震えているのだ?早く、奴にもビーフストロガノフを出してやってくれ。

 

「そうか。同志鳳翔。同志Ташкентにも、ビーフストロガノフを出してやってくれ。」

 

「…っ、は、はい。さぁ、Ташкентさんもどうぞ。」

 

 

 

航空母艦 鳳翔

 

 

…思わず、噴出しそうになってしまうのを、なんとか堪えることが出来ましたか…。あまりにも強引なГангутさんの言い訳でしたが、それに納得したのか、Ташкентさんも横に座り、真剣な顔をしているのがまた可笑しくて…。とりあえず笑い出してしまう前に、急いで料理を出しましょうか。

 

それにしても、Гангутさんが今回私にお願いをしてきた理由ですが、Ташкентさんに内緒で豪華な料理を楽しみたかった…こういう事だったのですね。どうやら祖国の政治的事情が、Гангутさんにそうさせたのでしょうが、なかなか難しい御国のようですね。普段自由に、好きな物を料理して食べている私としては、少しだけГангутさんに同情してしまいます。

 

Ташкентさんも、ビーフストロガノフを食べ始めましたが、Гангутさんとは少し違う反応ですね。Гангутさんは、食べた瞬間に表情が緩み、満面の笑みになりましたが、Ташкентさんは料理を口に入れた後も真剣な表情です。口に合わなかったのでしょうか。

 

「同志Гангут。この料理は駄目な料理だよ。本当に駄目な料理だ。」

 

あら…やはり口に合わなかったようです。流石に本国のビーフストロガノフとは少し作り方が違うでしょうから、駄目だったのかもしれませんね。申し訳無い事をしてしまいました。

 

「この肉の柔らかさ、これは本当に駄目だよ、同志。この肉の柔らかさは、人民の団結の強さを否定するメッセージが込められているに違いないよ。こういう政治的に正しくない料理は、急いで食べてしまうに限るね。」

 

「ん?そうだろう同志Ташкент。貴様も分ったと思うが、このようなブルジョワな香りがあふれる料理を食べて、きちんと分析する事こそ、科学的社会主義というものだろう。我々は、党と人民のために、このように敢えてブルジョワな料理を食べて、科学的に分析する義務があるのだ。」

 

「なるほど、流石は同志Гангут。これは、もっと分析を重ねないといけないね。同志鳳翔、もう一杯、ビーフストロガノフを。」

 

くっ…。危なかったです。思わず噴出してしまうところでした。あの…二人とも冗談です…よね?二人とも真剣な表情で、このような会話をしているのですが…。Ташкентさん?もの凄い勢いで一杯目を食べて、直におかわりをしていますよね?さっきの台詞と、やっている事が全く合っていないのですが…。

 

それにГангутさんもТашкентさんも、『このキャビアは実にけしからん。このようなブルジョワな香りが漂う物は、急いでウォッカで洗い流して消毒するに限る』などと言って、キャビアを黒パンに山のように乗せていますし…。その姿だけを見ていると、その…お二人が会話で否定している『ブルジョワ』な姿そのものに見えてくるのですが…。

 

「同志Ташкент。私から一つ提案があるのだが。よいだろうか。同志もよく理解出来たと思うのだが、我々は党と人民のために、これからも定期的にブルジョワな料理について研究を進める必要があると思う。それでどうだろう?これからは1ヶ月に一度程、このような集まりをするべきだと思うのだが。」

 

「同志Гангут。その提案には、全面的に賛同するよ。実に科学的社会主義に基づく、素晴らしい提案だと思うよ。」

 

「よし、話は纏まったな。ということで、同志鳳翔、これから月に一度、このような食事の会を催す事にする。申し訳ないが、これからもよろしく頼む。」

 

は…はぁ。お二人がそれで良いのでしたら、私は構いませんが…。ということは、私はこれから月に一度、このような会話に噴出さないように耐えなければならない…という事ですか。困ったものです。




少し時間が空いてしまいましたが、今回はロシア艦(ソ連艦)に登場してもらうことになりました。私自身は、ロシア料理は非常に好きでして、時々ロシア料理のレストランに家内と行く事があります。個人的にはシャシリクなどが好きで、レストランに行く時は結構な頻度で注文しているような…。そして今回登場してもらったビーフストロガノフ。これも大好きな料理でして、こちらはボルシチと並んで、冬によく家内に作ってもらっています。最近、結構安くビーツ缶が手に入るようになったのが、嬉しいですね。

ビーフストロガノフは、いろいろなレシピがありますし、牛肉ではなく鶏肉などを使うレシピもあるようです(チキンストロガノフ?)。また作りやすいビーフストロガノフは、デミグラスソースを使用するレシピだと思いますが、今回は私が好きなフォン・ド・ヴォーを使用したタイプを使ってみました(まともにフォン・ド・ヴォーなんて作っていたら大変ですが、今は簡単に缶詰が手に入りますし…)。こちらのレシピの方が、デミグラスソースよりも少し軽めの味のため、私は好きなのですが、若い方はデミグラスソースで作った少し重厚な味の方が好き…になるかもしれません。

さて、今回登場してもらいましたГангутさんは、ロシア帝国時代に生まれたソ連艦。そのため、華やかだったロシア帝国時代を知っており、時々ブルジョワな生活がしたい!と考えている設定にしてみました。そして同志Ташкентは、ソ連時代生まれのソ連育ちの生粋のソ連艦。Гангутとは異なり、党に忠実な艦娘で、彼女にとってはブルジョワは唾棄すべきもの…なのですが、今回Гангутによって、贅沢の楽しさを教えられてしまいましたから、これから少しずつ軟化していくような気がします。

おそらく、月に一度贅沢をしている陸軍所属の『あきつ丸』と一緒に、三人揃って贅沢料理を堪能することになるのではないでしょうか。

「う~ん…。このフィレステーキは、素晴らしいものでありますな。脂身がそれ程ないため、肉本来の味が堪能できるであります。それに、このワインソースも絶品でありますな。お二人ともどうでありますか?」

「うむ…同志あきつ丸。このようなブルジョワの香りあふれるステーキは、実にけしからんな。このように肉の旨味が凝縮され、噛む度に肉汁が溢れてくるような肉は、人民から富を搾り取れるだけ搾り取ろうとする、ブルジョワ的なメッセージが込められているようだ。同志Ташкентもそう思うだろう?」

「そうだね、同志Гангут。このような唾棄すべきブルジョワ風ステーキは、党と人民の名において(ここ、人民よりも党が先に来るところがポイントなんですよね(笑))、直に胃の中に処分しないといけないね。」

な感じで、バクバクとステーキを頬張っている三人の姿が見えてきそうです。そしてその三人の会話を聞いて、噴出す事に必死で耐えている鳳翔さんの姿も…。

次の投稿は、何時になるのか分かりませんが、出来るだけ早く投稿したいな…と思っていますので、気長に待っていただけたらと思います。今回も読んでいただきありがとうございました。




ビーフストロガノフ(四人分)


牛肉:500 g
玉ねぎ:1 個
マッシュルーム:20 個
小麦粉:30~40 g
パプリカ粉:10~15 g
バター:50 g
フォン・ド・ヴォー:缶詰で2缶
赤ワイン:250 mL
サワークリーム:150 g
塩+胡椒:適量
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