鎮守府の片隅で   作:ariel

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夏イベ始まりましたね。とりあえずE1は突破しましたが、E2で苦戦中…といいますか、E1突破で止まっています。まぁ、先は長いので地道にMI作戦に向けて進んでいくしかなさそうですね^^;


第十一話 日向と茄子の煮浸し

私が所属しています鎮守府では先日から大作戦が発動され、これに対応するため多くの艦娘達が忙しそうに動いています。私は特に出撃待機命令が出ていませんので、普段通りにお店を開いていますが、鎮守府内の緊張感は私にも伝わってきます。私が今出来る事といったら、私のお店でみなさんをリラックスさせる事くらいですが、多少は鎮守府のお役に立てるように自分の仕事を頑張っています。そして今日も、お店の料理で使う材料を収穫するために、鎮守府内の菜園に来ています。

 

今日は大量のナスが収穫出来ました。夏のこの時期、私の菜園でも多くの夏野菜が収穫出来ますが、今日は特にナスの収穫量が多いですね。これだけたくさん採れましたから、今日の突き出しには、ナスの料理を何か入れましょう。私のお店では、突き出しとして何種類かの料理を大皿に用意しておき、その中から好きな物を一・ニ品選んでもらっています。通常ですと、厚揚げ料理や煮込み料理、南蛮漬けや簡単な野菜料理を作っておきますが、これだけたくさんのナスがありましたら・・・

 

この時期のナス料理と言いますと、定番としては焼きナスがあります。しかし突き出しとして選んでもらう料理は、どうしてもしばらく作り置きする事になってしまうため、焼きナスよりは煮込みや漬け込んだ料理の方が向いています。ですから、今日はナスの煮浸しを作りましょうか。そうと決まれば、この大量のナスをまずお店に持ち帰って、下準備をしなくてはいけません。

 

まずは、食べやすいようにナスを半分に切って、さらに出汁が染み込みやすくするために、皮の方に細かく切り込みを入れていきます。今回はかなりの量の煮浸しを作るため、この作業は時間もかかり大変なのですが、ここで手間を惜しむ訳にはいきません。美味しい料理を食べてもらうためには、ここは多少大変でも頑張るしかないのです。折角ですから、彩りを添えるために今日採れた獅子唐も一緒に煮浸しにしてしまいましょう。こちらの方は、途中で獅子唐辛子が割れないように、穴だけ開けておきます。

 

それでは、早速作りましょうか。まずは・・・油でナスと獅子唐辛子を軽く素揚げてしまいます。そしてそれと同時に、煮浸しで使う出汁の準備もしてしまいます。鰹の出汁に醤油と砂糖とお酒を少しだけ混ぜて・・・いい感じの色になりましたね。味見を・・・と・・・えぇ、少し薄めですが、ナスにしっかり染み込む事になると思いますので、この味で大丈夫だと思います。あまり煮汁の味が濃いと、突き出しではなく、ご飯のお供になってしまいますから・・・。

 

さて、それでは軽く素揚げしたナスと獅子唐辛子から油をよく切って・・・まだ熱い出汁の中に入れて、火を止めて自然に冷やしていきます。油で既に火は通っていますから、後は出汁に漬け込むだけで十分出汁が染み込みますから、皆さんが来店する頃にはある程度冷めて丁度良い感じになっているでしょう。後は注文が入ったら、ナスと獅子唐辛子を皿に盛り付けて、少しだけ出汁を入れて、生姜や鰹節を乗せれば完成です。まずは一品できました。さて、それでは残りの突き出しと、今日の料理の仕込みも終わらせましょうか。

 

 

「鳳翔さん、来たよ。ちょっと長期の任務で日本の味が恋しいから、何か和食っぽいのを食べさせてくれるといいな。伊勢はどうするのか?」

 

「へ~、日向。いいんじゃない?私も和食が恋しいから、一緒にするけどね。」

 

久しぶりに顔を見せた戦艦伊勢さんと日向さんが今日は開店と同時に来店ですね。こんな時間から私のお店に来ているという事は、今回の作戦に伊勢さん達は出ていないのでしょうか?

 

「いらっしゃい、二人とも。この時期の長期任務という事は、今回の作戦には二人とも出ないのですか?」

 

「あぁ、そうだよ、鳳翔さん。提督からは、今回の作戦は空母が主力だから、私達は資源回収任務に回って欲しいと言われたんだが・・・。今回も昭南島から戦略物質輸送任務の北号作戦に、私も伊勢も駆り出されたばかりなんだ。まぁ、昭南島の南国料理も悪くないんだが・・・やはり、和食が恋しいな。」

 

なるほど、シンガポールから鎮守府への戦略物質輸送作戦に駆り出されているとなると、かなりの長距離輸送任務ですね。私も上海までは進出した事がありますが、流石にシンガポールまでは・・・。ですが、あの辺りの南国料理は独特の香りがあり美味しいと聞いています。とはいえ、毎日南国料理では、和食が恋しくなるのでしょうね。そういう意味では、鎮守府に帰還して直ぐに私のお店に来たという理由はなんとなく分かります。

 

「なるほど、それは大変でしたね。和食ですか・・・そうですね、折角ですから、今日の突き出しにナスの煮浸しはどうですか?これなら、鰹出汁がしっかり染み込んだナスの料理ですし、出汁を味わえば、日本の味が楽しめると思いますよ。」

 

「・・・まぁ、そうなるな。鳳翔さん、それをお願いしよう。伊勢の煮浸しには、ナンプラーでも混ぜてやってくれ。」

 

「日向・・・沈みなさいっ!」

 

まぁ、ナンプラーを入れても食べられるとは思いますが、おそらく完全に和食ではなく南国風味になるでしょうね・・・。一応店にはナンプラーもありますので、リクエストに応える事は出来ますが・・・伊勢さんの反応を見ればやらない方がいいでしょうね。本当に店内で砲撃戦が起こってしまいそうですから。さて、それでは二人分のナスの煮浸しを取り分けましょうか。しっかり味の染み込んだナス・・・そして彩りがよくなるように獅子唐辛子を二・三本皿に乗せて・・・煮汁も少しだけ入れます。そして生姜を下ろした物を上に乗せて・・・後は少し鰹節をかけておきましょう・・・完成です。二人とも和食が恋しいと言っていましたから、気に入ってもらえると思いますが、どうでしょうか。

 

 

 

戦艦 日向

 

 

今日の午後、昭南島からようやく鎮守府に輸送物資と共に到着したんだが、今回も被害なしで戻ってこられて本当によかった。提督からは、作戦で必要な戦略物質を少しでも補充しておきたいと命令を受けていたから、私達の作戦の成功が少しでも鎮守府の役にたったのであれば、ありがたい。昭南島での食事は、内地の食事とはだいぶ違う。私も嫌いではないのだが、流石に三食全てで南国風味の料理を食べるのは、ちょっとな・・・。勿論、洋上作戦中はオニギリなど米も出るのだが・・・やはり、きちんとした和食の味が恋しくなる。たぶん、伊勢も同じ事を考えていたのだろうな。鎮守府に帰還してすぐに、どちらから言うまでもなく、鳳翔さんのお店に押し掛ける事になった。

 

鳳翔さんのお店には、これまでもよく飲みに来ているが、店に入るとカウンターに様々な料理の乗った皿が置かれている。そしてこのお皿の中から、好きな料理を選ぶと、まずはそれが自動的に出てくるんだ。今日は、私達が鳳翔さんのお店に一番乗りだが、既にカウンターには何種類もの料理が並んでいた。純和食っぽい料理・・・私にはなかなか分からないから、今回は完全に鳳翔さんに希望を言って、お任せをしたんだが・・・、ナスや獅子唐辛子の料理が出てきたぞ。まぁ、鳳翔さんが選んだ料理だから、間違いはないと思うんだが・・・。

 

とりあえず、食べてみるか。まずはメインのナスからだな。・・・ほぉ、煮汁に漬かっているという事は、煮物料理の一種なのか?生姜と鰹節もついているから、生姜を少しつけて、鰹節も少し挟んで食べてみるか。!!ん・・・そうだ、これこそが和の味。これだ・・・。ナスを口に入れた瞬間、染み込んでいた出汁が口の中に広がる・・・これは、鰹出汁だな。生姜のほんのりとした辛味も丁度いい。それに、煮込まれているナス・・・、噛むごとに出汁が出て来て、これが丁度良い濃さで食べやすい。これが濃い味だと直ぐにでもご飯が欲しい所だが、この料理は意外に薄味なんだな…日本酒を少し飲むか。お酒と一緒に、純粋な和食の味を楽しむ・・・これこそが幸せ。隣を見ると、伊勢も嬉しそうに料理を口に運んでいるようだ。・・・まぁ、そうなるな。

 

次は獅子唐辛子だな。綺麗で涼しげな緑色・・・やはり和食は見た目も綺麗だ。味は・・・そうだ・・・これだ。先程のナスも良かったが、こちらはしっかりとした野菜の甘さが感じられ、ナスとは違った食感も楽しめる。こういう料理を食べると、帝国に生まれた幸せを感じる事が出来て、自然と頬も緩む。あぁ・・・こんな緩んだ顔は、伊勢には見せたくないな・・・。それにしても、幸せだ。

 

 

 

鳳翔

 

 

目の前に、物も言わずに嬉しそうにナスの煮浸しを食べ、日本酒を飲んでいる戦艦艦娘が二人います。本当に美味しいものを食べているときは静かになる・・・まさに言葉の通りですね。やはり帝国海軍の戦艦娘ですから、和食を食べると落ち着くのでしょうね。私もまだ一航戦として現役だった頃は、長期作戦から戻るとむしょうに和食が食べたかった事を思い出します。今回、和食の味が恋しかったと言う二人に喜んでもらえたようですから、私も嬉しく思います。

 

昨晩帰宅してきたあの人から聞きましたが、現在AL作戦と呼ばれる作戦に空母娘からは、酔いどれ空母の隼鷹と私と同じ古株の龍驤が出ているようですが、彼女達が戻ってきたときには、今日の戦艦娘二人と同じように和食で迎えてあげないといけないですね。彼女達には何を作ってあげましょうか。

 

「お二人とも、久しぶりの和食はどうですか?気に入ってもらえたようですが…。」

 

「あぁ、流石に鳳翔さん。これこそまさに私達が食べたかった味だな…。ありがとう。今日は徹底的に食べて飲む予定だから、この後もどんどん頼むよ。どうせ伊勢もそのつもりだろうからな。」

 

「日向の言うとおり、私も本当に幸せです。ところで…今日私達が提督に報告をした際に、提督の机の上に置かれていた今回の作戦の部隊編成書を少し見て…今度の作戦、鳳翔さんも作戦部隊に入っていたけど、そっちの方は大丈夫なの?」

 

えっ!?私、あの人からまだそんな話は、何も聞いていないですが…。私も今回は出るのでしょうか?いえ、たしかに総力戦となれば、私も出る事になるのでしょうが。あの人からは、予備戦力及び鎮守府守備のためにしばらく鎮守府で普段どおり待機しろと言われています。しかし日向さん達の話では、今日の報告の際に見た書類では、私も作戦部隊に登録さているとの事です。ひょっとして、隼鷹や龍驤から苦戦中との報告でもあったのでしょうか。…久しぶりの実戦ですか。少し私も準備をした方がいいかもしれませんね。

 

「まぁ、そういうお話は、そのうちあの人から私にあると思いますので…それがあったら準備しますよ。ところでお二人とも、突き出しは気に入ってもらえたようですから、そろそろ本格的にお料理をお出ししましょうか?それと次のお酒は何にしますか?」

 

「まぁ、それもそうだな。今から心配しても仕方ないか。よし!それではそろそろ本格的に注文しよう。それと、次のお酒は少し甘口がいいな…十四代の播州山田錦を頼むか…伊勢はどうする?」

 

「鳳翔さん、私も日向と同じ物をよろしくね。」

 

「はい、分かりました。」

 

私も作戦参加の可能性があると聞き少し驚きましたが、私にとっての今の戦場は、この小料理屋。そして作戦などから帰還してきた艦娘達をリラックスさせる事です。ひょっとしたら今度の作戦で出撃するかもしれませんが、今は自分の仕事をしっかりするしかないですね。さぁ、今日も頑張って料理を作っていきますか。

 




AL作戦とMI作戦始まりましたね。AL作戦の方は史実編成である隼鷹と龍驤を中心とした機動部隊を出撃させています。E1はなんとか現在の編成でも突破出来たので、鳳翔さんの出番はなかったですが…龍驤のレベルが空母の中では少し低いため(一応今回の作戦投入のために改2にはしてありますが、少し使い難いんですよね。)、場合によっては鳳翔さんのAL作戦(E2)投入も考えたほうがいいかな…と思っています。本当は、鳳翔さんは史実どおりMI作戦に投入したいのですが^^;

さて茄子の煮浸し。飲み屋でも家庭でもこの時期の定番中の定番料理ですね。家庭ではこの料理は温かい状態でおかずとして食べるのが一般的だと思いますが、個人的には飲み屋でおつまみとして出るような、冷えてしっかり出汁が染み込んだ茄子の煮浸しが好きですね。ただ…飲み屋で出る場合、店によってかなり濃い目の出汁に浸されている事もありまして…ご飯のお供ではなくお酒のつまみとして食べるとしたら、少し薄めの煮浸しの方がいいかな…と思い、今回のような話としました。

また、茄子の煮浸しには色々な作り方があり、揚げないタイプもあると思いますが、これは完全に私の趣味で、今回の作り方にしています。ですからうちの煮浸しは、こんな作り方していない!という人も多いと思いますが、あくまでも私の趣向という事でよろしくお願いしますw。獅子唐辛子を一緒に出すのも…これは結構定番だと思いますが、茄子と食感や味わいがだいぶ違い、結構合うと思います(それに色合いがあざやかになり、見た目も楽しめますし)。

ちなみに、十四代…大好きな日本酒なのですが…いかんせん高すぎる!

今回も読んでいただきありがとうございました。

一応この物語では、戦闘は出さない…という事にしてありましたが、もし私の鎮守府で鳳翔さんが出撃する事になりましたら…ひょっとしたら戦闘も出てくるかもしれませんw。ですから次回のお題はまだ未定ですが、ひょっとしたら『鳳翔さんと戦闘食』くらいの題名になるかもしれませんw

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