鎮守府の片隅で   作:ariel

15 / 106
今回のイベント中は、基本的には鎮守府居残り組みがメインになりそうです。という事で、今回の主役は、留守番組となり不貞腐れている五十鈴が主役になります。


第十三話 五十鈴と鶏の唐揚げみぞれ和え

「はぁ…私達、長良型軽巡は、みんな今回はお留守番…私達だって、もっと働けるのに…」

 

「五十鈴…そんなに落ち込まない。いつ出番が来てもいいように、毎日走りこんで、コンディションを整えておく事が大事よ。」

 

「長良姉…そうは言っても、他の軽巡姉妹を見てよ。球磨さんの所は、大井さんこそ鎮守府待機組だけど、他の姉妹はALとMIの両方に分散して作戦行動中。川内さんの所は、全員MI作戦に出撃…。天龍さんと龍田さんは流石に今回の作戦には出ていないけど、作戦中でも遠征任務がぎっしり入っているし…。まぁ、いくら私でも、最新鋭艦の阿賀野さんのところとは比べないけど…姉妹全員が作戦から外されて待機しているの、うちだけよ?」

 

「い…五十鈴姉さん、そうは言っても、私達古いから・・・」

 

「名取姉さん・・・確かに私達は古いですけど、由良達にもいいとこ、ありますよ・・・たぶん。」

 

「二人とも何言っているのよ!私達だってまだやれるわ、大丈夫!」

 

今日は、長良さん達軽巡洋艦四姉妹が、カウンター席を占領しています。今回の作戦では、唯一軽巡洋艦姉妹達の中で、全員が鎮守府待機組になっているようで、それが不満なようですね。とはいえ、何があるか分からない訳ですから、鎮守府待機にも大きな意味があると私は思うのです。実際私達空母組でも、新鋭艦の五航戦姉妹は鎮守府待機組ですし、軽空母でも千代田さんや千歳さんと言った高速軽空母組も居残りです。五十鈴さんにはとても不満なようですが、別に冷遇されているという訳では、ないと思います・・・。

 

「まぁまぁ、五十鈴さん。あの人にも考えがあって五十鈴さん達を鎮守府に残したのだと思いますよ。ですから、そんなに不満を言わないでくださいね。さぁ、今日は何にしますか?」

 

「そりゃ、鳳翔さんの言いたい事は分かるけど、私達でもまだ戦えるのよ?まぁ、鳳翔さんも居残り組だから、鳳翔さんに言っても仕方ないんだけど・・・。」

 

う~ん・・・私もまだ一応現役艦ですが、今更前に出たい・・・とはあまり思いません。とはいえ、五十鈴さんの言いたい事は分かる気もします。自分の力が何処でも必要とされない・・・それは悲しい事ですから。もっとも今回の五十鈴さん達の残留は、戦力外通告と言うよりは、純粋に鎮守府の周辺警戒のためだけだと思いますが。

 

「五十鈴さん、鎮守府待機とはいえ、あなた達も作戦には組み込まれているのですから・・・不測の事態に備えて、いつでも出られるように準備しておく事が、今のあなたの役割ですよ?」

 

「そうそう、五十鈴。鳳翔さんの言うとおり。いつでも出られるように、コンディションを最高の状態で保っておかないと!・・・という事で、鳳翔さん。私は鶏の唐揚げをお願い!」

 

「はぁ・・・そりゃ、鳳翔さんや長良姉が言っている事は分かるんだけど・・・。ま、気にしていても仕方ないよね。鳳翔さん、私も長良姉と一緒の鶏の唐揚げ・・・でも、今日はちょっとさっぱりした物の方がいいかな・・・。」

 

直ぐには気持ちを切り替える事は難しいかもしれませんが、少しだけ前向きになってくれましたね。それに、食事をしてくれる気分にもなってくれたようです。少しさっぱりした物ですか・・・。そうですね・・・折角ですから、長良さんが注文した鶏の唐揚げに少し手を入れて、さっぱりとしたみぞれ餡をかけた料理を作りましょうか。

 

「五十鈴さん、鶏の唐揚げのみぞれ和えはどうですか?これなら、鶏の唐揚げにさっぱりした大根おろしや出汁がかかりますので、五十鈴さんの希望にも沿うと思いますけど・・・。」

 

「あっ、それいいじゃない!それお願いするわ。」

 

「折角だから、長良もそっちに注文変更!」

 

「わ・・・私もそれで・・・」

 

「それなら、由良もそれにします。折角ですから、皆で同じ物を食べて元気になりましょうよ。」

 

結局全員が同じ物を注文する事になったようです。この辺りはやはり姉妹艦だけあって、気が合うのでしょうね。さぁ、それでは鶏の唐揚げみぞれ和えを四人分・・・作りましょうか。

 

まずは、鶏の唐揚げを一気に作ってしまいましょう。たしか鶏のもも肉がありましたから…これを通常の唐揚げよりも少し小さめに切ります。今回はみぞれ和えにしますので、出汁を鶏の唐揚げの上からかける事になります。ですから、あまり濃い味付けは出来ませんが、全く鶏肉に下味がついていませんと、これはこれで美味しくなくなってしまいます。ですから醤油とお酒を使って、切り分けた鶏肉を少しだけ揉んで、軽く味付けをしてしまいます。…さて、後は片栗粉を塗して揚げるだけなのですが、料理は一気に作って熱い内に出したいので、揚げる前にみぞれ和えの部分を作っておかなければいけません。

 

まずはみぞれ和えの出汁の部分からですね。少しだけ甘めにした方が大根おろしと馴染みますから、出汁に醤油を少々とみりん・・・ついでにお砂糖を少し入れて…ゆっくり暖めていきます。このような出汁を作る時は、いつもそうなのですが、焦って一気に煮立ててしまいますと、せっかくの出汁が台無しになってしまいます。ですから、ここは慎重に暖めていかなくてはいけませんし、砂糖が溶け残らないようにも気をつけなくてはいけません。…大丈夫そうですね。それでは、先程の鶏肉に片栗粉をまぶして一気に揚げてしまいましょう。

 

この料理、後からみぞれ餡がかかりますので、鶏肉の唐揚げは、出来るだけカラッと揚げなくてはいけませんし、食べる際には大根おろしで出来たみぞれがしっかり絡まなくてはいけませんから、衣を少し厚くするために通常よりも少し厚めに片栗粉をまぶします。さぁ、それでは行きますよ…。パチパチパチ…ジュー…パチパチ…えぇ、鶏肉を揚げるいい音がしてきましたね…。それでは、少しだけ油から外に出して…表面を少しだけ冷ましたら、もう一度油に入れて揚げましょう。こうすると、火が通りやすいのです。

 

それでは、今の内に最後の大根おろしも準備しましょうか。以前使った鬼おろしがここでも登場です。やはりこういう料理に大根おろしを使う以上、水っぽさが極力抜けた大根おろしを使った方が良いです。ちょっと力が必要なところが玉に瑕ですが…鬼おろしを使う事で、いい感じに水分が抜けた大根おろしが出来ました。鶏肉の方も綺麗に揚ったようですし、後は最後の盛り付けです。

 

まずは、カラッと揚げた鶏肉の唐揚げを小鉢に取り分けて…先程作っていた出汁を上から唐揚げが少しだけ浸る程度にかけます。最後は、鬼おろしで作った水分がほとんど入っていない大根おろしを乗せて…ついでに少しだけ生姜を乗せます。…良い感じに出来ました。我ながら、美味しく出来たと思いますが…気に入ってくれるでしょうか…

 

「みなさん、出来ましたよ。どうぞ。」

 

 

 

軽巡洋艦 五十鈴

 

 

ついつい鳳翔さんに愚痴ったんだけど、五十鈴も鎮守府待機が重要な役割だという事は分かっているのよね。実際、長門さんや陸奥さんも待機組だし、球磨さん姉妹の大井さんもお留守番組。でも、早く戦いに出たいというのも本音。まぁ、長良姉の言うとおり、いつでも出られるように準備だけはしておくわ。そうと決まれば、早速鳳翔さんの出してくれた料理を食べようかしら。

 

へぇ、鶏の唐揚げだけど、上から大根おろしがかかっていてタレの中に入っているのね。大根おろしが上にあるから、確かにさっぱりしてそうな料理だけど・・・早速食べてみよ。まずは、タレに浸かった唐揚げに少しだけ大根おろしをまぶして・・・へぇ~、一口で食べられそうな小ぶりな唐揚げなのね。・・・いただきます。

 

えっ!何これ。タレに浸かっていたから、少し味が濃くて、しっとりとした衣を想像していたんだけど、全然違うじゃない。タレだと思っていた物は、出汁だったのね。薄味だけど、物凄くしっかりした旨みが閉じ込められていてビックリしたわ。それに、唐揚げの衣の部分、結構厚めなんだけど、しっとり・・・と言うよりは、パリッとした感じなのよね。どうやっているのかしら。

 

それに・・・大根おろしと一緒に食べるだけで、唐揚げがこんなにさっぱり食べられるのね。驚いたわ。唐揚げの衣が少し厚めに作ってあるから、口の中で衣を破ると、中に閉じ込められていた、しっかり味の付いた鶏肉から旨みが一気に飛び出てくるし、これが出汁や大根おろしと一緒になると、凄く美味しいわ。これなら、どんどん食べれてしまいそうね。・・・太らないように気をつけないと・・・私も長良姉と一緒に運動でもしようかな・・・。

 

 

 

鳳翔

 

 

四人とも気に入ってくれたようで、何よりです。普通の鶏の唐揚げとは少し雰囲気も違いますし、大根おろしや薄味の出汁が一緒ですから非常にさっぱりしています。ですから、沢山食べて英気を養うには丁度良いかな・・・と思ったのですが、この反応なら大丈夫ですね。

 

「こ・・・これで、私達に気合を入れろってことですよね。頑張ります!鳳翔さん!」

 

「名取姉さん、興奮しすぎです。・・・でも、こんなに美味しい料理を食べたら、今度の作戦で出撃したら、由良もいいとこ、見せられそうです!」

 

下の妹である名取さんや由良さんも、凄く嬉しそうですね。長良さんや五十鈴さんも笑いながら妹達を見ていますが、良い雰囲気になってくれて本当に良かったです。これなら、本当に急の出番が来たとしても、十分に戦えるでしょう。

 

「四人とも、他の料理も作りましょうか?」

 

「ありがとう鳳翔さん。愚痴を言っていた五十鈴も元気になったし、そろそろ本格的に注文しようかな。でも五十鈴、あまり食べ過ぎちゃ駄目よ。食べ過ぎて、緊急事態に対処出来ない・・・なんてなったら、いい笑い物になるから。」

 

「分かっているわよ、長良姉!ちゃんと準備は怠らないから、心配しないで!」

 

さて、どうやらここから本格的に注文が入るでしょうから、私も気合を入れて料理をしていきましょう。私の戦場(お店)は、今日もとても忙しいです。あの娘達も、今頃元気でやっているでしょうか・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(おまけ)

MI作戦 加賀

 

「ふぅ・・・今の所、索敵も順調ですし、今回は大丈夫そうですね。はぁ…お腹が空きました…。今頃、鎮守府ではお母さんがお店で色々料理を作っているのでしょうね。おにぎりに卵焼き、焼き魚、野菜の煮しめ…はぁ、唐揚げも悪くないですね…。」

 

「…赤城さん、止めてください。こっちまでお腹が空いてきます。第一、出撃前にお母さんからお弁当もらったでしょう?もう食べてしまったのですか?」

 

全く…赤城さんには困ったものです。これだけ近くで食べ物の名前を連呼されては、私までお腹が空いてきます。この作戦に出撃する時、お母さんからお弁当という事で、それぞれの空母娘にお重が渡されましたが、赤城さんはもう食べてしまったのでしょうか…いえ、間違いなくもう食べてしまっていますね。なにせ先程赤城さんが連呼していた食べ物は、全てお重の中に入っていた物ですから。

 

「ねぇ、加賀さん。あのお弁当まだ残っています?まだ残っているのでしたら、少し分けて…(ギロッ)…いえ、なんでもありません。次の作戦に備えますね!」

 

…やっぱりそうでしたか。次の補給まで少しまだ時間があるのですが、赤城さんどうするのでしょうか…。まさか妖精さんの補給を銀蝿する…なんて事がなければ良いのですが。あっ、そういえばお母さんから、戦闘前の時間がある時に開けるように言われていた小さなお重を思い出しました。今なら時間がありますから、少し開けてみましょうか。

 

!!!おはぎが一杯…やりました!これは、私がお母さんから直接もらった物ですから、私が食べていい筈です。…そうに違いないでしょう。しかし周りには、食いしん坊の赤城さんを始め、二航戦の二人も居ます。そしてこのお重の中身がばれれば、間違いなく彼女達は「私の」おはぎを奪っていくでしょう。慎重に機会を伺ってバレないように食べなくてはいけません。

 

!今ですね。パクッ…ふぅ…甘い物が口の中に入ると気分が高揚します。餡子の甘さ…お米のつぶつぶ感…流石はお母さんのおはぎ…素晴らしいものです。たとえ赤城さん達と言えども、このおはぎは譲れません。

 

「加賀さん、そろそろ次の索敵を出した方がいいんじゃないかな…って、何食べているんですか!?」

 

「飛龍どうしたの?って…何それ!加賀さん、どこからそんなおはぎ持ってきたのですか?私達にはそんな補給無かったですけど!」

 

あっ…バレました。慎重にバレないように食べていた筈なのですが…。どうしたものでしょう…。こうなっては仕方ありません。お重の中身全部を一気に口の中に入れて証拠隠滅を…。

 

「あっ、それお母さんから貰ったお重ですよね。なんで加賀さんのお重の中だけおはぎなんですか?それに赤城達がもらったお重の数と加賀さんのお重の数が違います。」

 

…今まで『忘れていました』が、たしか出撃前に、お母さんは皆で食べてねと言っていた『かも』しれません。…しくじりました。いつのまにか、周りには私を取り囲むように赤城さんや飛龍、そして蒼龍が居ますし、私を睨んでいます。このままでは私のおはぎが…そんな。

 

 

「加賀さん!飛龍偵察三号機より入電『我、敵機動部隊ヲ発見セリ。大型空母1、空母2、戦艦1、駆逐艦2カラ成ル。上空ニ直掩戦闘機アリ。此レヨリ退避スル。我ニ追イツク敵機ナシ。』。直ぐに攻撃隊を出さないと。」

 

「加賀さん、行きますよ。戦闘が終わったら、そのおはぎ、赤城も貰いますからね。それと、航空戦の指揮をお願いします。」

 

ふぅ…当面の危機は去りましたが、どうやらおはぎは戦闘後に皆で食べる事になりそうです。まぁ…いいのだけれど。それでは、当面の敵を一気に片付けてしまいましょうか…。私は一航戦の加賀です。五航戦の子なんかと一緒にしないで…鎧袖一触よ。

 

「艦首風上へ、面舵!」

 

『おも~か~じ』

 

「第一次攻撃隊、順次発艦を…みんな頑張ってくるのよ。」

 




イベントもだいぶ進んできましたね。E3はなんなくクリアーしましたが、E1とE2の厳しさは何だったのか…な感じです^^;。結局、一航戦と二航戦主力は全てMIにつぎ込む事になりました。E6はどうも軽空母で良いようなので、鳳翔さんの出番なのですが、そこまで資源が持つかどうか…。それにE4…秋津丸を持っていないので、ゴリ押しで行くしかないですしw。

鶏唐揚げのみぞれ和え。個人的にはこの料理美味しいと思うのですが、どうでしょうか?出汁に唐揚げを漬けて大根おろしを乗せますから、どうしても純粋な唐揚げに比べると衣がシットリしてしまい、好みが別れるかもしれませんが、私は良い料理だと思います。大根おろしは消化を助ける力もありますので、油物の料理とは元々相性は良いですし、馴染みの飲み屋でこれが注文出来る日は、結構注文しているかもしれません^^;。

みぞれ和え自体は、唐揚げに限らず他の料理にもよく合うので、かなり万能レシピですが、大根おろしが水っぽいと料理本体も台無しになる恐れもあり、やはりこの料理で使う大根おろしは、鬼おろしが必須な気がしています。皆さんは、どんな料理のみぞれ和えが好きでしょうか。

ちなみに、おまけ部分の加賀さんは、完全にネタとして書いていますので、この部分のツッコミは無しの方向でお願い出来たらと思いますw。

今回も読んでいただきありがとうございます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。