鎮守府の片隅で   作:ariel

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今回は、作戦終了後に酒を飲みに来ているヒャッハーさん事、隼鷹さんの物語にしました。


第十六話 隼鷹とお茶漬け

「ヒャッハ~、やっと待機命令も解除されたぜ!鳳翔さん、酒!刈穂の山廃純米を出してくれよ~。さぁ、今日は飲むよ~。」

 

「隼鷹…たしかに待機命令は解除されたけど、あまり飲みすぎたら駄目よ!」

 

全ての作戦が終わり、深海棲艦側からの再度の侵攻もないと判断されたようで、本日ようやく私の居る鎮守府の待機命令が解除され、普段どおりの生活が戻ってきました。ですから、おそらく今日はお酒の注文が増えるだろうな…と思っていましたが、開店と同時に酔いどれ軽空母が相方と一緒に来店です。それにしても、いきなり日本酒からですか…。

 

「飛鷹、隼鷹、いらっしゃい。隼鷹?たしかに待機命令は解除され飲酒も問題ありませんが、あまり飲みすぎたら駄目ですよ?料理の方はどうしますか?」

 

「塩でいいよ。」

 

「はい、はい…って 塩だけですか?」

 

たしかに、お酒をたくさん飲みたい時、余計な物をお腹に入れてお腹を一杯にしないため、飲兵衛の中には塩を舐めながらお酒を飲むという方が居るのは承知していますが、まさかこんな身近でそのような事をする娘が居たとは…。とはいえ、今日くらいはたくさん飲みたいという隼鷹の気持ちも分かります。この娘は、陽動作戦とは言えAL作戦にその主力として出撃していましたから、戦いを忘れるためにも今日はたくさん飲みたいのでしょうね。仕方ありません、今日だけは余計な事は言わずに隼鷹の言うとおりにしましょうか。

 

「隼鷹、塩です。何か食べたくなったら、いつでも言ってくださいね。飛鷹はどうするのですか?」

「あっ、鳳翔さん、私はそこの茄子の煮浸しが欲しいわ。とりあえず隼鷹と適当にやっているから、食べたくなったらまた注文しますね。それと、私は蓬莱泉の空をお願いします。」

 

とりあえず、二人にお願いされた食べ物を出して、後は注文された日本酒を出しますか。隼鷹が注文した刈穂の山廃純米は、辛口のキリッした飲み口の日本酒、そして飛鷹の注文は、甘口でかつ透明感のある味わいの蓬莱泉の空。いつも一緒に居る二人ですが、お酒の好みはだいぶ違うようです。そして今日は二人ともたくさん飲むでしょうから、最初から少し大目に出してあげましょうか。まずは枡にコップを入れて…コップに日本酒を注いでいきますが、完全にコップの口から日本酒がこぼれるまで入れて…今日はサービスで、外側の枡も一杯になるまで入れてあげましょう。

 

「お!おぉぉ!鳳翔さん、いいねぇ~。これは、飲み甲斐があるよ!飛鷹、早速飲もうぜ!って、こんなに一杯じゃ乾杯も出来ないけどな!」

 

少しお行儀が悪いですが、飛鷹も隼鷹もコップに一杯になった日本酒を飲むために、枡の中にあるコップにそのまま口をつけて日本酒をすすり始めました。料理?も出してありますし、しばらくはこのまま放って置いても問題ないでしょう。今日は開店と同時にたくさんの艦娘が来ていますから、私も忙しいのです。さて、次は久しぶりにお客さんとして来ている赤城さんを含めた正規空母達の座敷ですね。今回新しく正規空母娘が増えましたので、その娘の歓迎会でもあるようで、赤城さんもお客さんとして来ているようです(代金は加賀さんから借りるとの事らしいですが…大丈夫なのでしょうか)。

 

「いらっしゃい。それと雲龍さん、久しぶりですね。これからよろしくお願いしますね。」

 

「あっ、鳳翔さん…また…よろしくお願いします。」

 

雲龍さんは、先の戦争の末期、私と同じ空母として生まれてきましたが…残念ながら既に搭載する艦載機もなく、空母としての活躍はほとんど出来なかった娘です。ですから今回は、この鎮守府でその時の悔しさをバネに頑張って欲しいですね。この場に居る正規空母娘達の中では、残念ながら翔鶴さんと瑞鶴さんくらいしか雲龍さんの事を知らない筈ですが、赤城さんを始めその他の正規空母の娘達も、久しぶりの自分達の後輩を温かく迎え入れてくれたようです。

 

「ねぇ、瑞鶴?そういえば、あなたの後輩なんて初めてじゃない?雲龍は、私を元にして生まれてきた正規空母みたいだから…しっかり面倒みてあげてよ。」

 

「大丈夫ですよ、飛龍先輩。瑞鶴に任せて置いてくださいよ!翔鶴姉と一緒にちゃんと面倒みるから!」

 

「フン…蝶々、蜻蛉も鳥ならば、五航戦も鳥のうち…まぁ、それなりに期待しています。」

 

「なんですって!!」

 

「貴方達も今回はそれなりに活躍したようだけど…まだまだね。雲龍の面倒も良いけど…自分達ももっと精進する事ね。」

 

あらあら…加賀さんも、翔鶴さんと瑞鶴さんが今回の鎮守府防衛作戦で迎撃艦隊として活躍した事は評価しているようですね。それと言葉には出していませんけど、無事に戻ってきた二人を見て安心していたという事を、私は赤城さんから聞いています。とはいえ、今回の迎撃作戦の成功は赤城さんや加賀さんを始めとした第一航空艦隊の援護があってのものですから、加賀さんが言うとおり、まだまだこの子達が精進しなくてはいけない事も確かです。加賀さんも、もう少し口が達者なら、瑞鶴さんと上手くやれそうな気もするのですが…。

 

「これからも精進します、加賀先輩。それと今回は私達の援護をしてくれて、本当にありがとうございました。ほら、瑞鶴もちゃんとお礼を言いなさい。」

 

「イーーだ。」

 

…翔鶴さんは、きちんとその辺りの加賀さんの心境を理解しているようですが、瑞鶴さんの方はまだそこまでは理解出来ないようですね。今回、後輩の雲龍さんが着任した事で、瑞鶴さんも色々と変わっていくと思いますので、それに期待です。いずれにせよ、久しぶりの新しい正規空母の着任ですから、私も嬉しいですね。

 

 

 

「…そこに私の艦載機が登場して、迫り来る敵艦載機をバッタバッタ…」

 

「隼鷹、飲みすぎ。そろそろ止めた方が…。」

 

「らいじょ~ぶ、らいじょ~ぶ。私はまだ素面らって~」

 

「いや…全然大丈夫じゃなさそうよ。鳳翔さん、そろそろ隼鷹を連れて帰るから、何かご飯物を二つお願いします。」

 

どうやら隼鷹さんは、完全に酔っ払っていますが(そりゃ、塩を肴に日本酒をあれだけ飲めば酔っ払うでしょう…)、飛鷹さんがストッパーとなっているようですから大丈夫そうですね。そして流石に日本酒だけ飲んで…では体にあまりにも悪いですから、最後にご飯物を食べさせるという事には、私も賛成です。とはいえ、ここまで酔っ払ってしまっていては、普通のご飯とお味噌汁では、なかなか食べてくれなさそうですし…そうですね、少しでも食べやすいお茶漬けでも準備しますか。たしか鮭がまだありましたので、あれを炙って乗せれば鮭茶漬けが出来ますから。

 

そうと決まれば、まずは上からかける出汁の準備をしましょうか。今回の出汁はお茶漬け用の出汁ですから、昆布と鰹節で出汁をとります。お茶漬けというのは、非常にシンプルな料理ですから、この出汁の出来が味を左右するわけでして、ここで手を抜いては駄目です。ですから、昆布は一度湯にくぐらせるだけですが、鰹節の方はしっかり使いましょう。…いい感じの出汁になりましたね。後はここに薄口醤油を少し入れて…塩で味を調整して…これで出汁の方は完成です。

 

次は鮭の準備ですが、こちらはそれ程たくさん鮭を入れてしまっては、お茶漬け全体の味のバランスが崩れますので、小さく切った鮭を二切れ程入れる事を考えて、二人分で四切れだけ網を使って焼きます。そして塩を少々ふって少しだけ焦げ目が入る程度に炙って…これを丼に盛ったご飯の上に乗せます。ここに三つ葉と海苔を乗せて…最後に山葵を置いた後に胡麻を少しだけ振ったら、先程作った出汁をかけて完成です。

 

「飛鷹、隼鷹、お茶漬けを準備しましたから、これを食べて行ってください。それと隼鷹、今日のお酒はそこまでです。これを食べたら空母寮に真っ直ぐに戻るのですよ。」

 

「は~い、まだいけるんだけどな~。」

 

…全く、どこからどう見ても、あなたはもう酔っ払っていますよ。飛鷹さんが居なかったら、大変な事になっていたでしょう。

 

 

 

軽空母 隼鷹

 

 

ん?私?酔ってなんかないよ?素面だよ?といってもな~、今回私は一つの作戦の主役として活躍したから、ちょっとばかし今日はたくさん飲んだかな~。それと、調子に乗って塩だけで日本酒を飲み続けたことも、失敗だったかもな~。まぁ、やっちまった事だから、今更クヨクヨしても仕方ないけど。

 

何か知らないけど、相棒の飛鷹が私を心配して、ご飯物を鳳翔さんに注文した時は、ちょっと参ったぜ。あれだけ飲んでいて、今更ご飯物なんて絶対に喉を通らなさそうだからな。飛鷹ももう少し考えてくれよ~。まぁ、鳳翔さんが出してくれる以上、全く食べないって訳には行かないだろうから、一口は食べるつもりだったけど。ところが流石は鳳翔さん、私の考えている事を正確に理解していて、お茶漬けを出してくれたんだよな~。この辺りのちょっとした心配りは、私や飛鷹ではどう頑張っても真似出来ないんだろうな。お茶漬けなら問題なく食べられそうだから、早速いただくか。

 

はぁ…いい香りだな。お茶漬けを食べるために少し顔を近づけたら漂ってくる出汁の香り…あとこれは、三つ葉の香りか…落ち着くよ。この香りを嗅ぐだけで、幸せになってきそうだな~。それに、焼き鮭に山葵か…見ているだけでも嬉しくなってくる。さて、まずは一口…。あぁ…いいな。醤油の味と出汁の味…米の食感…そして山葵のアクセント…このうちの一つでも無くなるとこの絶妙なバランスが崩れちゃうんだけど、この三つが私の口の中で合わさる…本当に最高だね。

 

お、焼き鮭もいいな~。。空母寮で飛鷹が時々作ってくれる鮭茶漬けは、鮭の身が完全にバラバラになっているんだけど、これは小さいとはいえ塊なんだね。二つ…たった二つしかない鮭なんだけど、これをどのタイミングで食べるか、本当に迷うってとこだよ。鳳翔さんも、もっと入れてくれればいいのに…とは思うけど、これがたくさん入りすぎると、塩分が増えて、この完璧なお茶漬けの味が崩れるってところなんだろうね。憎たらしい程計算された味ってとこか…。

 

もう考える事はよそう…とりあえず、鮭をいただくぜ!おぉ…おぉ…いいな、少しだけ塩の利いた焼き鮭、そして出汁汁とご飯…。これまで冷酒を飲んでいて冷えた胃の中が温かくなっていくような感じだ。さっきまで塩と酒だけだったから、もう飲めないと思ったけど、これならまだまだ飲めそうだぜ。

 

「駄目よ、隼鷹。」

 

チッ…以心伝心って言うのかね…飛鷹の奴に先に釘を刺されちまったぜ。

 

 

 

鳳翔

 

 

私も一瞬、隼鷹がニヤッと笑ったのを見て、まだ飲むつもりか…と身構えてしまいましたが、私よりも先に飛鷹が止めてくれました。長い間相方をしているだけあって、相方のちょっとした変化を見逃さない辺りは流石です。それに、これ以上飲んだら間違いなく自分が大変な目に合うという事も分かっているでしょうから、飛鷹からしたら絶対に隼鷹を止めるでしょうね。

 

「飛鷹、隼鷹、お茶漬けはいかがでしたか?その食べっぷりを見た限りでは、満足していただけたようですけど。」

 

「はい、鳳翔さん。とても美味しくいただけました。私もこのお茶漬けで、何かホッとしたような感じになりましたし、たぶん隼鷹も同じだったと思います。さぁ隼鷹、帰るわよ。」

 

「あぁぁ? 嫌だ~、まだ飲むんだ!」

 

…まったく困ったものです。これだけごねている隼鷹を無事に空母寮まで連れて帰るとなると、飛鷹だけではちょっと大変でしょうね…あっ、そうでした。この手がありました。

 

「赤城さん!食べているところ申し訳ありませんが、ちょっと飛鷹を手伝って隼鷹を空母寮まで曳航していってください。引き受けてくれるのでしたら、赤城さんにもお茶漬けをサービスしますよ。」

 

「!!!お茶漬けのサービス! 分かりました。軽空母の曳航なら、私にお任せくださいませ。ということで、赤城行ってきます!」

 

赤城さんと飛鷹の二人がかりなら、隼鷹が途中でごねても問題なく空母寮まで連れて行くことが出来るでしょう。…それにしても、待機命令が解除された途端にこれです。先が思いやられますね。

 




お茶漬け、普通にお茶をかけても美味しいのですが、やはり出汁をかけたタイプのお茶漬けが最高です。隼鷹の台詞ではありませんが、これを最後に食べると、胃の中が温かくなったような気分になり、何故か知りませんが落ち着くんですよね。…という事で、私自身は、酒を飲んだ後の最後の〆はお茶漬けが多いです。若い頃ですとラーメンでも良かったのですが、流石にこの年になるとラーメンはちょっとね^^;

今回登場の日本酒二種類ですが、隼鷹が注文した刈穂の山廃純米は私の友人が好きな辛口の日本酒です。私個人は甘口の方が好きなため、これは滅多に注文しませんが、非常に辛口ながら旨味も感じられるお酒ですし、それ程高いお酒ではないので、辛口が好きな人は是非お試しください。反対に飛鷹注文の蓬莱泉の空は私の好物。こちらは置いてあるお店が限られていますが(…これの上のランクになる吟になると、更に難易度が…)、非常にフルーティーで香りが物凄く良い甘口のお酒です(欠点は置いてある店の少なさと値段…)。

お茶漬けについて続けますが、最近は専門のお店もありまして、そういう所で食べる様々なタイプのお茶漬けも楽しめますね。個人的には成田空港に入っているお茶漬けのお店結構好きですw(たぶんチェーン店だと思いますが)。欧州出張で朝に帰国した際、何か日本食の軽い物が食べたい…という事が結構あるため、そういう時に成田空港のその店でお茶漬けを食べますと、『今回も日本に無事に帰ってこられた』という思いになります。ですから、そういう思いもおそらく加算されているのだと思いますが、成田空港のお茶漬けのお店は、私としては一押しです。(おそらく同じように考えている人も多いようで、北ウィングの欧州からの帰国便が到着する朝の時間は、あのお店かなり満員なんですよね…w。)

艦これの方ですが、現在雲竜の戦力化のため練成中です。なんとか改になり、任務も完了したため、烈風を含めて601空が搭載されていますが、もう少しレベルを上げたいところですね…。イベントの方は完全に終了状態になっています。結局、清霜は来なかったな…。ですが、今回のイベントでようやく三隈やあきつ丸が着任したので、個人的には結構満足しています。

今回も読んでいただきありがとうございまいた。これからしばらくは、投稿が不定期になると思いますが、これからもよろしくお願いします。

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