鎮守府の片隅で   作:ariel

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今回は外伝で瑞鶴のお料理教室にします。前回大失敗した瑞鶴ですが、鳳翔さんのお店で修行を積んだ事で、料理のレベルは確実にアップしています。今回こそ、汚名返上となるのでしょうか。


外伝4 瑞鶴のお料理教室 2

ついに来たわね、汚名返上の機会が。明日の朝御飯の当番は、五航戦の順番。そして翔鶴姉は、昨日から長期任務のために雲龍と一緒に遠征中。という事で、瑞鶴が一人で朝御飯を作る機会がやって来たわけだけど…今回はこの前のようにはならないんだから!あの事件の後、瑞鶴はお母さんのお店で物凄く頑張って練習しているから、今回こそあの性悪な先輩に五航戦の…ううん、瑞鶴の評価を変えさせてやるのよ。

 

まずは今回の朝御飯の献立…これは、前回と同じ和食で決定。御飯にお味噌汁、焼き魚と出汁巻き卵を作る予定だけど、お母さんから直接料理の手ほどきを受けた瑞鶴に死角はないわ。それに…今回はお母さんから直接貰った秘密兵器もあるから、絶対に瑞鶴をいつも苛めるあの先輩にギャフンと言わせてやるんだから。

 

(瑞鶴…今回は上手に出来たのね。五航戦もやるものね…見直しました。)

 

な~んて言ってくれた日には、瑞鶴も気持ち良い朝を迎えられるんだけど…。さぁ想像はここまでにして、早速作ろっかな。まずは御飯だけど、今回は昨日の夜、お母さんのお店が終わった後に、お店で使っているお釜を空母寮まで運んで来ているんだよね~。このお釜で何度もお母さんと実際にお米を炊いているから、今回は水の量も大丈夫。それに前回は、お米洗うの『忘れていた』から、あの意地悪空母の先輩から散々な評価だったけど…今回は同じ失敗はしないんだから。まずは素早くお米を洗って…水を捨てて…あと二回くらい繰り返せば大丈夫だったよね…。これくらいで大丈夫かな。それじゃ、これをお釜に入れて…水の量は…これでOK!さぁ、早速炊いちゃおっかな。この時間から炊けば、少し余裕があるから、出す前に十分蒸らせると思うし。ここまではお母さんにいつも教えられているから、大丈夫だよね。

 

次は、お味噌汁よ。本当は、前回のリベンジでもう一回赤出汁を作りたいけど、お母さんのアドバイスで、お麩とネギだけを入れた白味噌の甘いお味噌汁にしなさい…と言われているから、今回は白味噌仕立てのお味噌汁を作らないと。お母さんは、『今回のオカズは、紅鮭の焼き魚で塩分がそこそこありますし、出汁巻き卵の塩分も強いですから、甘めのお味噌汁の方がいいでしょうね』って言ってたけど、よくそんな事まで気付くよね!?少し前から、お母さんのお店で瑞鶴も働いているけど、よくもまぁ、あんなに色々考えられるな~っていつも感心しちゃうよ。

 

とりあえず、お麩を水で戻して…これくらい戻っていれば大丈夫かな。そしたら軽く水気を取って、ネギと一緒にお鍋に入れて…。ジャジャ~ン、今回の秘密兵器パート1、昨日の夜お母さんに頼み込んで、お店の出汁を貰ってきたんだよね~。これを鍋に入れて…とりあえず軽く沸騰させちゃうよ!…軽く沸騰してきたら、一回火を止めて…、ここに白味噌を入れるんだけど…。たしかお母さんからは、このお味噌も赤出汁と一緒で、色に騙されないで味見をしながら、きちんとした味になるまで入れなさい、と言われていたから、ここは慎重に入れていかないと…。

 

う~ん、良い色になってきたし、そろそろかな…あれ?なんか味薄いよね。もっと入れてみようかな、う~ん…まだ薄いかな…って、いつも作っている味噌汁よりもかなり味噌入れていると思うんだけど、大丈夫かな。でもお母さんは、『このお味噌を使ってお味噌汁を作れば、凄く濃厚で甘いお味噌汁になりますよ』って言っていたから、お母さんの言葉を信じるしかないよね。思い切ってもう少しお味噌入れよ。あっ!…いいみたい!段々味噌汁の薄さが消えて、濃厚な味が出てきたかな。もうちょっとだけ…。ウン!たぶんこの味だよね。凄く美味しい味になったよ。この味なら、あの横暴な先輩だって、瑞鶴を認めざるを得ないんだから!

 

それじゃ、味噌汁が冷めないように気をつけながら、焼き魚の準備っと。これは前回の失敗のように、焦げないようにだけ注意して焼けば問題ないよね。という事で、今回のメインイベント、出汁巻き卵を作ろっと。たしか妹分の瑞鳳は、甘い卵焼きが好きだ、なんて言っていたから、瑞鶴も本当は甘い卵焼きを作ってあげたいんだけど…。今回の目的は、あの『か』の付くサディステッィ空母に瑞鶴の実力を認めさせる事だから、あの先輩の好物の正統派の出汁巻きを作らないと…。

 

まずは、お母さんから貰ってきた出汁の中に、薄口醤油を少し混ぜて…。たしかお母さんは、『この出汁を使うのでしたら、味醂や塩や砂糖を入れずに、少しの薄口醤油を混ぜるだけで、美味しい出汁巻き卵が作れますよ』って言っていたから、お母さんの言葉を信じて、醤油だけで、今回は作るよ。次に卵を割って、これをしっかり混ぜておかないと。たしか泡立てちゃったら駄目なんだよね…これくらいでいいかな。そしたら、ここにさっき作った出汁と薄口醤油を混ぜた物を溶き卵の2/3くらい入れて…たしか一度ざるを使って漉すんだったよね。うん、お母さんが作っている出汁巻き卵も、素の色はこんな感じだったかな。

 

そしたら、これを焦がさないように焼かないと。一応、瑞鶴だって練習はしてきているから大丈夫だと思うけど…ここまで来たら完全勝利を狙いたいから、慎重にやらないとね。卵焼き機を熱くして…脂を薄く引いたら、さっきの素を流し込んで…っと。そうそう、表面に出てくる気泡をそのままにして置くと駄目だって、お母さんに言われていたから、これを菜箸で潰して…。本当は完全に固めてからの方が巻きやすいんだけど、お母さんからはいつも、『半熟の状態で巻きなさい』と言われていたから、そろそろ巻き始めないと…ヨッ!ウン!いい感じじゃない。もう一回…ヨッ!うんうん、まずは芯の部分はこんな感じかな…。急いで次の層になる素を入れて…ヨイショッと。さっき作った芯の部分を菜箸で持ち上げて、しっかり芯の部分の下にも素を流し込んで。いいかな…そろそろまた巻いていかないと。…う~ん…我ながら完璧ね。後は、巻き簾で形を整えたら完成!

 

…御飯OK、白味噌仕立ての味噌汁も準備完了、紅鮭の焼き魚…今回は焦げてないし大丈夫、それに出汁巻き卵も完璧!あと…昨日お母さんに頼み込んでもらってきた糠漬け…全部準備完了。さぁ、勝負の準備は出来たから、いつでも受けて立ってやるわ!

 

 

「飛龍先輩、蒼龍先輩、おはようございます!朝御飯出来ていますよ!」

 

「あ~、瑞鶴おはよう。…で、今回は大丈夫なの?前のような事があったら、今度こそ加賀さんに解体されちゃうよ?」

 

「大丈夫ですよ、飛龍先輩。今回は瑞鶴もお母さんのお店でちゃんと修行してきていますから!新しく生まれ変わった瑞鶴の料理、食べてください!」

 

はぁ…やっぱり、前回の失敗した朝御飯の印象は払拭出来ていないよね…。流石に前回の朝御飯はちょっと駄目過ぎたから…。瑞鶴もお母さんのお店で練習を積んだ今なら分かるけど、前回の瑞鶴の朝御飯は最悪だったから、やっぱりあの印象が…。あっ、瑞鳳も起きて来たわね。

 

「瑞鳳おはよう。今日の朝御飯は大丈夫だから、しっかり食べていってね。」

 

「瑞鶴のお姉ちゃん、おはようございます。…今回は大丈夫だよね?お母さんのお店で練習したお姉ちゃんの料理なら大丈夫だよね?瑞鳳…信じてるよ?」

 

「大丈夫、大丈夫。今回の料理は、お母さんからアドバイスももらっているから、絶対に大丈夫だって。ちゃんと味見もしているから、安心して食べてよ。」

 

流石に妹分の瑞鳳に、二回も悲惨な料理を食べさせられないよね?でも、今回は大丈夫。あれだけお母さんに助けてもらって、練習もしてきた瑞鶴なんだから、絶対に今回は美味しいに決まっているんだから。…それにしても、肝心のアレがなかなか降りてこないよね…。いくら一航戦の先輩だからと言って、毎回悠然と最後に降りてくるのはどうかと…あっ、降りてきた…さぁ、勝負よ!

 

「おはようございます。赤城先輩、(バ)加賀先輩。朝御飯の準備終わっています。今回は…前回のような事はありませんから、大丈夫です。」

 

「…何か私の名前の呼び方に違和感があったようだけど。まぁいいでしょう。…それで、今回は本当に大丈夫なのでしょうね?今回は赤城さんもあなたの朝御飯を食べると言ってくれているのだから、おかしな物を出したら許さないわよ。」

 

「まぁまぁ、加賀さん。とりあえずお腹空いているんで、早く朝御飯食べましょう。大丈夫よ、瑞鶴だって私と一緒にお母さんのお店で修行しているんだから。瑞鶴、御飯大盛りでお願いね。」

 

「は…はい!」

 

これだけの料理を朝から準備したんだから、瑞鶴の敗北はないと思うけど…。少しだけ不安があるのも確かなんだよね…。飛龍先輩や蒼龍先輩に赤城先輩、それに瑞鳳達なら多少の瑞鶴の失敗があっても、全体的にレベルが高ければ笑って許してもらえそうだけど…あの姑のような先輩は、瑞鶴のミスはどんな些細なミスでも許してくれなさそうだし。…って勝負する前から、弱気になっていてどうするのよ、今回は絶対大丈夫なんだから。

 

 

 

正規空母 加賀

 

 

前回の酷すぎる朝御飯の事件からしばらく経ち、あの子もお母さんのお店で厳しく指導を受けたと聞いています。ですから流石に今回の朝御飯はまともな物が並んでいると期待したいところです。前回の事件を回避した赤城さんの話では、今回あの子は、お母さんから様々なアドバイスや特別補給まで受けているそうですから、普通に考えればお母さんが作った朝御飯と同等の物が出てもおかしくないという事は分かっているのですが、それでも一抹の不安が残ります。

 

…なるほど。瑞鶴から渡された朝御飯、御飯にお味噌汁に漬物、そして焼き魚に出汁巻きと、朝御飯としては定番の料理が並んでいますが、まだ食べていない状態でも、前回とは全く違う事が分かります。出汁巻き卵の色から、これはおそらく私が好きな砂糖が入っていない出汁巻きだという事が分かりますし、綺麗に焼けた紅鮭は少し強めの塩味だという事も想像出来ます。そしてこれらのおかずとバランスを取るために、お味噌汁は甘味が強い白味噌仕立て。あの子がこんなに気が利いた献立を作れるとはとても思えないので、これはおそらくお母さんの入れ知恵でしょう。いずれにせよ、今日はまともな朝御飯が食べられそうです。

 

とりあえず、御飯から食べてみますか。前回、御飯を炊く事に失敗し、あまつさえお粥と称して出した悲惨な御飯とは似ても似つかない素晴らしい御飯ですね。お母さんのお店で食べる御飯と同じ、とても表面がつやつやした真っ白のお米が一粒一粒見えますし、そしてお釜で炊いた事を示すお焦げまで乗っています。…見ているだけでも、口の中に唾が貯まってくるわね。まずは一口…えぇ、合格ね。アツアツのまだ湯気が出ている御飯を一口、口に入れた瞬間、炊きたての御飯の美味しい香りが口の中に広がります。そしてお米の一粒一粒が感じられるような素晴らしい食感、更に噛んでいくと徐々に米の甘味が広がって…流石に気分が高揚します。隣の赤城さんは、もう丼飯を掻き込み始めていますし、これは熾烈なおかわり争奪戦になりそうね。

 

焼き魚も今日はきちんと焼けています。紅鮭を少しだけほぐして口に入れると、しっかりした塩味が付いた鮭特有の香りと味が口に広がります。これも御飯が進む一品ね。・・・次は出汁巻き卵も食べましょうか。お母さんのお店では、長門さんを筆頭に甘い卵焼きなる物も人気ですが、私はあれは好みません。やはり出汁巻きは、しっかり出汁の旨味が感じられ、甘くない物でなければ…。今回、あの子はきちんと私の好きなタイプの出汁巻き卵を作っているという事は、それなりに気が利くようね。味の方も、卵の甘みに出汁の旨味、そして僅かな塩味のバランスが完璧ね…満点を出しても良いでしょう。間違いなく、お母さんが作った出汁を使っている事も分かりますが、それくらいはおまけしてあげてもいいわ。

 

流石に焼き鮭と出汁巻き卵と、比較的塩辛い料理を食べていますので、少し口直しのためにも、御飯とお味噌汁を食べないと…。白味噌仕立てのお味噌汁、空母寮で出るなんて珍しいけど…ちゃんと作れているのかしら。あら…これは美味しいわね。濃厚なお味噌の甘味…そして、そのお味噌をたっぷり吸い込んだお麩。赤出汁も好きだけれど、あれよりも更に甘味が強い白味噌仕立てのお味噌汁、このおかずにはピッタリね。糠漬けのきゅうりも絶品だけど、これはお母さんの漬物だから、採点の基準外。

 

…ふぅ、この朝御飯は大した物です。私の目の前で、あの子がソワソワしているのが気になるけど、これなら褒めてあげてもいいでしょう。

 

「瑞鶴、あなたもやれば出来るのね。これなら合格点を出しても良いでしょう。美味しかったわ。」

 

 

 

瑞鶴

 

 

…やった~!今回は瑞鶴の完全勝利よ。あの先輩が、瑞鶴の事を褒めてくれるなんて…こんな事があるなんて…。もう瑞鶴の料理が下手だなんて誰にも言わせないんだから。ま…まぁ、今回はお母さんの強力なバックアップがあった事は認めるけど、それでも実際に作ったのは瑞鶴なんだから!やっと、あの加賀先輩に瑞鶴の力を見せつける事が…良かった~。

 

今回は、加賀先輩が瑞鶴の朝御飯を一品一品食べていく姿を、目の前で見ていたから瑞鶴も物凄く緊張していたけど、先輩が一通り食べ終わった後に『ふぅ』と息をついた後に出てきた言葉。まさか瑞鶴を褒めてくれるなんて思ってもいなかったから、本当に驚いちゃったよね。まぁ、折角褒めてもらえたから、余分に作っていた出汁巻き卵を加賀先輩に出してあげようかな…これ、先輩の大好物だから。

 

「加賀先輩、あの…出汁巻き卵、少しだけ余分に作ってあるんだけど…いります?」

 

「…もらうわ、ついでに御飯とお味噌汁もおかわりを持ってきて。それにしても…赤城さんも出汁巻き卵のおかわりを欲しがっているみたいだけど、この出汁巻き卵は譲れません。」

 

エヘヘヘ…おかわりまでしてくれるという事は、凄く気に入ったという事だし、しかも独り占めするという事は、赤城さんにも渡したくないくらい気に入ったという事だよね?…加賀先輩でも、瑞鶴の作った料理をこんなに気に入ってくれるなんて、本当に嬉しいよね!?…エヘヘヘ…Zzzzz。

 

 

正規空母 加賀

 

 

「…で、そんな夢を見ていて、寝過ごしたの?…それで、今日の朝御飯はどうするつもり?」

 

あの子は前回大失敗をしているので、少し心配になって、今日はいつもよりもだいぶ早く台所の様子を見に行ったのだけれど、本来であればもう朝御飯の準備をしているはずが、もぬけの殻。まさかと思って、急いでこの子の部屋に来てみたら、布団を抱えて高いびき。…どうしてくれましょう。嬉しそうな顔をして、私の名前を寝言で呟いている姿は、本当に不気味だわ。急いで叩き起して、事情を聞いたのだけれど、愚にもつかぬ言い訳を…いくら夢の中で料理が上手くいった所で、そんな物は食べられないのよ。…まったく、これだから五航戦は。

 

「それで…どうするつもりなの?あと5分もすれば、飛龍達が下に降りてくるわよ。」

 

「…」

 

「…何とか言いなさい!」

 

本当にどうしてこの子は、こんなに…。同じ五航戦でも翔鶴の方は、それなりに気が利くのだけれど。しかし、このままではどうしようもないわね。流石に、当番が寝過ごして朝御飯がありませんでは、他の艦娘達にも示しがつきません。

 

「…ごめんなさい。」

 

…ようやく謝りましたか。この子も流石に拙いという事に気付いたのか、少し涙目で私に謝りました。…あまり役に立って欲しくはなかったのですが、万が一のために昨日のうちに私が準備をしていた物が役に立ちそうですね。

 

「まったく…。どうせこんな事だろうと思って、昨日の内に私が鎮守府の倉庫から、非常準備食の乾麺麭(乾パンの事)を空母寮に運んで来ているわ。それと牛乳も準備してあるから、とりあえずそれを出して、みんなに謝る事ね。」

 

「あ…ありがとうございます、加賀先輩。」

 

「これに懲りたら、もう少し普段から色々な事に気をつける事ね。大体あなたは…クドクドクド」

 

雲龍が赴任して後輩が出来たので、少しはこの子も変わったと思っていた矢先にこれですから、本当に心配になってきます。もうそろそろ、あまりクドクド言わずに自由にやらせてみようとも思っていましたが、もうしばらくは、私がしっかりこの子の事を見ているしかなさそうですね…。流石に今日は神妙に私のお説教も聞いていますが、お説教をしているこちらも大変だという事を、この子は理解しているのでしょうか。

 

「…まぁ、済んでしまった事だから、今日はこの辺にしておくけれど…。瑞鶴、今日は朝御飯が終わったら、私の部屋に来る事。何をされるか分かっているわね?」

 

「…はい、加賀先輩。ごめんなさい…。」

 

赤城さんからは、この子がお母さんのお店でかなり練習を積んだと聞いているから、今日の朝御飯は期待出来ると思っていたのですが、この子が作った美味しい朝御飯は、少なくとも次の当番までは食べられなさそうね。…とりあえず、赤城さんを起こして、精神注入棒の準備をしたら、乾麺麭と牛乳の朝御飯を食べに下に降りますか…。今日は昼までお腹が空きそうです。

 

 

 

(後始末)

鎮守府の司令室

 

 

「加賀…昨日お前の名前で、倉庫の乾麺麭が大量に持ち出されているんだが、何をしたんだ?まぁ、それ程高い物ではないから、特に問題にはしないが、少しは遠慮してくれよ。」

 

「昨日は少しお腹が空いていたので、持ち出しました。ごめんなさいね。」

 

「お前…あの量を全部一人で食べたのか!?あいつが店を出すようになってから、赤城が大人しくなったと思ったら、今度はお前か…。」

 

流石に、あれだけの量の乾麺麭を持ち出した訳ですから、提督にはバレましたか…、いいえ、秘書の金剛さん経由ですね…。まぁ、直に補充が利く物品で、当面は使用予定のない物だから、これくらいのお説教で済むとは予想していましたが。

 

「ヘイ加賀。乾麺麭だからと言って、只ではないネ。お腹が空くのは分かるけど、少しは自重して欲しいデ~ス。」

 

「金剛さん、あなたのお茶とスコーンもたしか、黙って経費で落としていますよね。あれに比べれば今回の費用など微々たる物です。」

 

「何!金剛、お前いつのまにそんな事を(提督、急用を思い出したネ。)…あっ、逃げるな!加賀、とりあえず今後は自重してくれよ。下がってよし。金剛、待て~!」

 

どうやらこれで、今回の件は全て解決ね。まったく、あの子のせいで余計な事をする事になったわ。…赤城さん、それに飛龍に蒼龍。そこに居るのは分かっています。何をニヤニヤしているのですか。

 

「いいえ~、加賀さんも色々大変だな~と思っていただけですよ。赤城では、そこまで出来ませんから。」

 

「そそ、結局全部自分で責任被っちゃって、流石は一航戦だな~っと感心していただけだから、気にしないでね。ね~蒼龍。」

 

「本当そうよね~。なんだかんだ言っても、加賀さん、瑞鶴には甘いですから。」

 

…まったく。同僚とはいえ、困った子達です。…それにしても、お腹が空きました。早く昼食の時間になってほしいものです。




加賀のフォローにより、なんとか窮地を凌いだ瑞鶴でしたが、次回こそまともな料理が作れるのでしょうかね。まぁ、後始末の部分を瑞鶴に見せないのが、加賀の良い所だと思いますが、瑞鶴は加賀のフォローを分かっているのでしょうかねw。

さて、今回の朝御飯。白味噌仕立てのお味噌汁を出しましたが、あれ美味しいですね。我が家は普段は赤出汁派なのですが、時々家内が白味噌仕立てのお味噌汁を作ってくれます。具としては、今回登場させたお麩とネギのような単純な物から、里芋や人参などまで入れるかなりしっかり具を入れるタイプまで作ってくれますが、あの独特な濃厚な甘みのある味噌汁…本当にいいな…と思います。

出巻き卵も、今回は以前登場させた甘いタイプではなく、きちんとした方を出していますが、これ自分で実際に作ってみると、最初は綺麗に作るの難しいですよね。私も料理をあまりしていなかった頃は、なかなか綺麗に巻く事が出来ませんでした。出汁の量を多くすると、旨味は増えるのですが、巻きにくくなるので、やはり卵:出汁=3:2くらいが丁度良いかな…と思っています。上手な人は1:1でも大丈夫なようですが、私の腕ではちょっと厳しいわけでw

正直、朝御飯でこれだけの物品を出そうと思うと、準備に結構時間がかかりますから、なかなか普段から作るという訳には行きませんが、たまにはこんな朝御飯が食べたいですね^^;。最近、我が家では一週間に1-2回はこのような朝御飯が出ますが、洋食が多いです。あまつさえ、オートミールが出る事もありまして…まぁ、あれはあれで美味しいので良いのですけどね^^;。ただ、個人的には朝は和食派だったりしますw。

今回は外伝にしてしまいましたので、次回は通常回にするつもりですが、正直これから12月の上旬まで、ほぼ全て週末に出張が入っており、おそらく土曜日更新は出来ない感じが…。
(この毎週週末の出張という地獄の日程が終わったら、絶対に有給休暇を取って、小旅行に行く気満々ですがw。)という事で、しばらくは週1の更新になるかもしれませんが、気長に待ってもらえるとありがたいです。

今回も読んでいただきありがとうございました。



白味噌仕立てのお味噌汁(四人分くらい)
出汁:500-600mL.
お麩:8-12個
長ネギ:1/4本
(里芋などを入れても合います)
白味噌:70-100g(お好みで)

たぶんこの量で美味しく食べられると思いますが、この味噌汁の味はかなり個人差があるので、自分の好きな味になるまで味噌を使ってもらえば良いかな…と


出汁巻き卵

出汁
(卵と出汁がだいたい3:2くらいになれば、どの量でもOK。上手な人なら1:1でも大丈夫。)
薄口醤油:少しだけ
味醂や砂糖、塩を入れても美味しいですが、良い出汁を使っている場合は、余分な物が無い方が美味しいような…。

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