鎮守府の片隅で   作:ariel

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今回はイベントで新加入したプリンツ・オイゲンさんを登場させました。本当は新加入キャラをいきなり出すよりも、ある程度キャラが固まっている子を優先して出したいのですが、この子の絵柄が非常に気に入ったので、急遽登場という事ですw。料理は勿論ドイツ料理なのですが…Z1の時にシュバイネハクセを使っていますし、アイスバインはメジャー過ぎるか…と思い、私のお気に入りのドイツ料理の一つであるザワーブラーテンとしました。この料理、向こうに居た頃に食べた時は、最初酸味に少し驚きましたが、ソースは少し甘めなため、何度か食べる内に凄く美味しいな…と思った料理です。この料理、日本で食べさせてくれる店を私は知らないのですが、どなたか知りませんかね…。流石にこの料理の作り方は私も詳しくないので、今回は次のサイトを参考にして、少しアレンジして登場させています。

http://www.foodnetwork.com/recipes/alton-brown/sauerbraten-recipe.html

レベルはEasyになっていますので、一度チャレンジしてみてもいいかもしれませんね。



第三六話 プリンツ・オイゲンとザワーブラーテン

「鳳翔さん、そういう事で3日後に連れてくるから、よろしく頼むわ。ほら!貴方達何しているの!早く材料と器具を、鳳翔さんのお店に運びなさい。しっかり働かないと、3日後に貴方達を連れてこないわよ。」

 

「は~い…ビスマルク姐さん…重いから手伝ってよ…」

 

「美味しいドイツ料理は食べたいけど…こんな目に合うなんて…」

 

よく分かりませんが、まだ仕込みも始まっていない朝方、ビスマルクさんに連れられ、両手一杯に荷物を抱えたZ1さんとZ3さんが私のところにやってきました。ビスマルクさんの話では、今度鎮守府に新たに所属する事となった、ドイツからの派遣組である重巡洋艦のプリンツ・オイゲンさんの歓迎会を3日後に開きたいため、その時に振舞う予定のドイツ料理について相談に来たという事ですが…。

 

なんでもその歓迎会で、ザワーブラーテンという、牛肉をマリネにした物をオーブンで焼く料理を出したいという事ですが、勿論私はそんな料理は知りませんし、作った事もありません。以前Z1さん達のためにシュバイネハクセというドイツ料理を、レシピだけで作った事はありますが、あれはたまたま上手く行っただけの事。今回もZ1さんがレシピを渡してくれましたが、こんな試みが毎回成功するとは思えないのですが…。ビスマルクさんはそれっぽく出来ていれば良いなどと言っていますが、流石にお店で出す以上は変な物は出せませんし…Z3さんからの話では、プリンツ・オイゲンさんは料理をかなりする娘のようですから、おかしな物を出せばすぐに分かってしまうでしょう。

 

それに…何気なくレシピを見ますと、3日間冷蔵庫内でマリネするなどと書いてあります。どうやら非常に時間がかかる料理のようですね。レシピを見た私の印象では、かなり酸味のある肉料理のような気がするのですが…。毎度の事ですが、自分が食べた事のない料理をレシピだけで作るのは本当に勇気がいります。ただビスマルクさんの指示で、様々な材料を私のお店に運び込んだZ1さん達の期待のこもった目を見ますと、なんとかしてやりたい…という想いもあるわけでして…やってみましょうか。

 

「分かりました、ビスマルクさん。出来るだけやってみましょう。ですがこの料理は、私も初めて作る料理ですから、あまり自信はないですよ?」

 

「そう…引き受けてくれるのね!助かったわ。それじゃ、三日後によろしくお願いするわ。それじゃ貴方達、戻るわよ!それと…鳳翔さん、今度の歓迎会でプリンツ・オイゲンに何か聞かれたら、この料理は私が作ったという事にしてちょうだい…お願い!」

 

なんだか色々と事情がありそうですが、私としては大きな問題がある訳ではありませんので、そういう事にしておきましょうか。それにしても、あのビスマルクさんが料理を作ったと言って、おそらく昔から彼女を知っているプリンツ・オイゲンさんに通用するのでしょうか…。たしか長門さんはこの子に昔会った事があるそうですから、一度どんな子なのか聞いておいた方が良さそうですね。

 

いずれにせよ、レシピを見る限り下準備に時間がかかる料理のようなので、早速今日から下準備をしましょう。それにしても…普段私のお店で使わないような食材が並びましたね…。やはりドイツの料理は私が知っている料理とはだいぶ違う気がします。本当に大丈夫なのでしょうか。

 

Z1さんのレシピには、最初にマリネで使用する液を作るように書いてあります。それなりの量が必要なようですから鍋を準備して、ここに水、リンゴ酢、ワインビネガー、スライスした玉ねぎと人参、そして塩、胡椒、月桂樹の葉、クローブ、ジュニパーとマスタードシードを入れて、鍋に蓋をしてから沸騰させます。それにしても、ビスマルクさんもよくこれだけの香辛料を揃えましたね。特にジュニパーなど、この国ではまず見かけない香辛料です。私も話でしか聞いた事がありませんが、少し甘みのある香りが特徴の香辛料で、欧州のマリネなどには良く使われるそうですが…今回はかなり本格的な料理になりそうですね。

 

それでは沸騰したので、少しだけ温度を下げて10分程煮ます。後はこれを冷やせば、マリネ用の液として使えますので、火を止めてしばらく放っておきましょう。次にマリネ液を入れるバットも準備しましょうか。今回の料理ために、わざわざビスマルクさんが準備してZ3さんに運ばせた琺瑯製のバット。長時間マリネをする時、鉄製バットは使えませんが、私はお店にガラス製のバットを持っています。ですから、わざわざ準備しなくても良かったのですが、一応ビスマルクさんとしては、私に気を使っているのでしょうね。折角ですから使わせてもらいましょうか。

 

次はマリネ漬けする牛肉の準備ですね。ビスマルクさんが準備してくれたランプ肉の塊の表面に強火で焼き色をつけます。フライパンに牛脂を使って脂をひいたら、ランプ肉の塊をフライパンに入れて…肉の全面に強めの焼き色をつけたら、これで下準備は完了ですね。後は準備した琺瑯製のバットに焼き色をつけたランプ肉を配置したら、上からマリネ液を注いで肉を漬けて、これを冷蔵庫に入れて三日程漬け込むだけです。肉が完全にマリネ液に沈んでいないですから、一日に何度か肉をひっくり返さなくてはいけませんが、後は時間が肉を柔らかくしてくれますし、美味しく料理してくれる筈です。

 

 

「鳳翔さん…どう?あの料理大丈夫そうかな?ビスマルク姐さんは、ああ言っていたけど、今回の料理は是非成功して欲しいと思っているんだ。」

 

「えぇ、まだ私達がドイツに居た頃、プリンツ・オイゲン姉さんは、よくビスマルク姐さんに料理の事で文句を言っていましたから、今回はその鼻を明かしたいと思っている筈だから…。」

 

歓迎会が行われる当日、今回の料理の出来が心配になったのか、Z1さんとZ3さんが私のお店にやってきました。先日ビスマルクさんは、『とりあえず作ってみて』なんて事を言っていましたが、実際には是非成功してもらいたい…と強く思っていたのですね。現在漬けているマリネの出来次第だとは思いますが、そこまで聞いてしまっては、私も頑張らなくてはいけません。

 

それでは冷蔵庫からマリネ漬けした牛肉の塊を取り出して…これをオーブンで焼きましょうか。まずはオーブンを165度で余熱しておきます。そしてオーブンの中段に、漬け込んだ牛肉を乗せたバットを置いて、砂糖を少しかけて、マリネで使用した漬け汁を肉全体にかけてから…肉の内部まで火が通りお肉が柔らかくなるまで四時間程オーブンで調理します。ここまで来たら私としては祈る思いですが、なんとか美味しく出来上がっていると良いですね。

 

 

そろそろ時間ですね。あら…良い感じに出来ているようですね。ここからは最後の仕上げで、ここで使用した漬け液を使って、この料理のソースを作らなくてはいけません。まずは肉の塊を取り出して、保温に気をつけて置いておきます。

 

バットの中に残った煮詰まった漬け汁には、肉から染み出た肉汁が混じっていますから、これを使ってソースを作るのです。出てきた煮汁を一度濾してから、これを小さめのフライパンに集めます。ここにジンジャービスケットを砕いた物、スキムミルク、小麦粉、サワークリーム、黒砂糖を入れて、時々泡だて器でかき混ぜながら、とろみがつくまで煮込みます。そして、最後に出来上がったソースを濾す事で塊を除去して…レーズンを追加してソースの出来上がりです。味は…あら、意外といけますね。おそらくお肉はマリネされていますから、かなり酸味が利いていると思います。ですから、この少し甘目でコクのあるソースは非常に合うのではないでしょうか。

 

後は付け合せに前回作ったザワークラウトと茹でたジャガイモを準備して、出来上がった肉を適当な厚さに切り分けて…これで準備完了です。後は、注文された時にソースをかけるだけですね。

 

 

「こんばんは鳳翔さん、今日はよろしくお願いね。プリンツ・オイゲン、こちらは鳳翔さん。提督の奥さんでもあるし、この鎮守府では一番怖い人だから、逆らっちゃ駄目よ。」

 

え?あの人の家内という紹介は良いのですが、その後の説明は一体何なのでしょうか。今回、ビスマルクさんのお願いを全部叶えてあげた私に対して『一番怖い人』という紹介はないと思うのですが…。Z1さんとZ3さんも、苦笑いはしていますが、訂正するつもりはないようですし…困った子達です。

 

「Guten Abend. 私は、重巡プリンツ・オイゲン。鳳翔さんの事は、長門さんからよくお話を聞いています。これからよろしくね。」

 

私はプリンツ・オイゲンさんには初めてお会いしますが、とても可愛らしい感じの子ですね。Z1さん達からの話では、ビスマルクさんと一緒に戦ったライン演習作戦では大活躍した武勲艦だそうですが、パッと見た感じではそうは見えないですね。もっとも、それはうちの鎮守府に居る神通さんや羽黒さん達にも同じ事が言えますので、普段と戦いの時の表情がガラッと変わるのかもしれません。

 

「ビスマルクさん、ザワーブラーテンの準備は出来ていますよ。早速お出ししてもよろしいですか?」

 

「えっ、今日はザワーブラーテンが食べられるの?ドイツから出てきた時点で、自分で作る以外の故郷の料理は諦めていたんだけど…。まさか、ビスマルク姉様が料理した…訳ないよねぇ~。」

 

まぁ…昔からビスマルクさんの事をよく知っているのでしたら、そういう感想でしょうね。さて、ビスマルクさんは私にこの料理を作ったのは自分だという事にすると言っていましたが、どうやって誤魔化す気なのでしょうか。嫌な予感しかしないのは私だけではないと思いますし、Z1さんとZ3さんも固唾を飲んでビスマルクさんを見ています。

 

「プリンツ・オイゲン、な…何言ってるのよ。今回のザワーブラーテンは、私が(Z1達に指示して作らせたレシピで鳳翔さんが)作った料理よ!そ…そうよね、貴方達!」

 

「う…うん。ビスマルク姐さんが言ったとおりだよ、プリンツ・オイゲン姉さん。(肝心な部分が省略されているけど)」

 

あらあら、ビスマルクさんの言葉に、無理やり言わされている感満々でZ1さんが返答し、Z3さんは黙って視線を逸らせました。プリンツ・オイゲンさんは、おそらく全て承知の笑顔だと思いますが、ニヤッとした表情が顔に浮かびましたね。あっ、ビスマルクさんも視線を逸らせましたね。ビスマルクさんにとっては、プリンツ・オイゲンさんは口やかましい妹のような存在なのかもしれません。まぁ、今日は折角の歓迎会のようですし、ビスマルクさんに助け船を出しますか。

 

「まぁまぁ、折角の料理ですから、温かいうちにどうぞ。あら?ビスマルクさん、そのお酒は?」

 

「あ…あぁ。そうだ忘れていたわ。折角のザワーブラーテンだから、それに合うドイツワインを持ってきたのよ。さぁ、鳳翔さんの言うとおり温かい内に食べましょう。ほら、プリンツ・オイゲン、つまらない事に拘っていないで、さ、さ、飲むわよ。はい!Prosit!」

 

結局、ビスマルクさんの強引な進行で無理やり乾杯となり、この料理が誰によって作られたかは、有耶無耶のまま歓迎会が始まりました。それにしても…ビスマルクさんが持ちこんだドイツの白ワイン、少し薄目の琥珀色をした綺麗なワインですね。

 

「はぁ…やっぱりドイツワインは最高ね。ほら、プリンツ・オイゲン、あなたもどんどん飲みなさい!折角私が持ち込んだリースリングの白ワインなんだから。」

 

「は…はい!ビスマルク姉様。ふぅ…すっきりした軽い飲み口ですが、フルーティーで本当に美味しいです。やっぱり、白ワインはドイツワインですね。…さて、それでは料理の方も早速食べて見ます!」

 

 

 

重巡洋艦 プリンツ・オイゲン

 

 

いつのまにか、故国ドイツからこの鎮守府への派遣が決定し、数日前にこの鎮守府に着任したプリンツ・オイゲンです。この鎮守府には、ビスマルク姉様や、Z1、Z3達が既に着任していたから、あまり不安は感じていなかったし、以前会った事がある長門さんも居ると知っていたから、大丈夫だとは思っていたけど…。ビスマルク姉様は、相変わらずね。

 

私の歓迎会、まさかいきなり故国ドイツの料理が出るなんて思っても居なかったけど、美味しそうなザワーブラーテンが並んでびっくり。ビスマルク姉さんは自分で作ったなんて言っているけど、それは絶対に嘘。ザワークラウトすらまともに作れない姉様が、こんな料理が作れるなんて想像出来ないよ。Z1やZ3達がこういう料理を作れるとも思えないから、これは目の前の鳳翔さんが作ったという事よね。

 

私も料理やお菓子作りは得意だから分かるけど、外国の料理で食べた事のない料理をレシピだけで作るのは、物凄く大変。だからそれが出来るという事は、目の前の鳳翔さんは、物凄く料理が上手という事だから…良い関係を結んでおいた方が良さそう。それに姉様は『この鎮守府で一番怖い人』って言っていたけど、凄くやさしそうな人だし、こういう人が居てくれて本当に良かったよ。さて、それじゃ早速ザワーブラーテン食べて見ようかな。これ絶対に美味しいと思うよ。まずは大皿から、自分の皿にいくつかお肉と付け合せを取り分けて…ソースもかけて…。

 

本物のザワーブラーテンは肉の部分がマリネ漬けだから、肉自体にかなり酸味があって、この酸味が食欲を増すんだけど…どうかな。まずはソースを使わずに肉の部分だけ…エイッ。あぁぁ…美味しいよ。この料理、お肉をリンゴ酢などで長時間マリネ漬けするから、物凄く柔らかくなるのよね。今回のザワーブラーテンも、簡単に肉が歯で噛み千切れるし、滲み出てくる酸味の混じった美味しい肉の旨味…ザワーブラーテンはこうでなきゃ。ソースの方も物凄く丁寧に作られているのは、見ただけでも分かるよ。ちょっとソースだけを舐めてみよっと。

 

ソースの中に余分な塊が全く入っていないから、ちゃんとソースが出来上がった後に濾しているのは分かるし、それにこの味。少し甘酸っぱくてコクがあって…ほぉ…ほぉ、これは…少し生姜っぽい刺激もあるから、ジンジャービスケットも使っているね。それに…これはサワークリームによるまろやかさかな…。この少し甘目のソースが、酸味の強いお肉には最高に合うのよ。サッパリとした味のお肉に、この濃厚なソースを絡ませて…これなら、どれだけでもお肉が食べられちゃう!さぁ、それじゃ、どんどん食べよっと。

 

付け合せにのっているザワークラウトも美味しいわ。これも絶対にビスマルク姉様が作ったとは思えない繊細な味付けのザワークラウトよ。こんな料理を食べさせてくれる場所があるなら、私もこの海で戦い抜けそう!たぶんZ1達がここで元気に戦っているのも、こんなに美味しいドイツ料理を食べさせてくれる場所があるからね。それにしても…ビスマルク姉様が持ってきてくれたドイツワインに、この素晴らしいドイツ料理、まるで自分の国に居るような感覚になるわ。…ビスマルク姉様が、料理を食べながら嬉しそうに頷いているのが見えるけど…この事からも、これが姉様の作った料理ではない事は明らかね。ちょっと意地悪してみようかな。

 

「ビスマルク姉様?流石は姉様が作った料理だけあって、とっても美味しいです!私感激しちゃいました!Danke、Danke! 後学のために教えて欲しいのですが、この酸味はどうやって出しているのですか?」

 

「えっ?えっ?酸味??こ…これは、酢よ。酢を料理にかけているから、こういう酸味が出たのよ!」

 

「そうですか…酢をかけているのですか…。流石は姉様です!それでは、このソースのコクのある甘さ…これも、私感激しちゃったので、どうやってコクと甘さを出しているのか…それも教えてもらえませんか?」

 

「ソ…ソース??こ…これは…その、さ…砂糖ね。甘くするんだから、砂糖を入れないと駄目でしょう?あなたそんな事も分からなかったの?」

 

はぁ…姉様…嘘をつくのでしたら、もう少し取り繕わないと。Z1とZ3も、『あ~ぁ』と言った顔をしているし、カウンターに居る鳳翔さんも苦笑いね。もうそろそろいいかな?

 

「ビスマルク姉様…な、訳ないでしょ!」

 

 

 

鳳翔

 

 

あらあら…プリンツ・オイゲンさんの追及が止まりませんね。おそらく完全にビスマルクさんが嘘をついている事を知っている上で苛めているのでしょうけど…料理を多少知っている人が近くで見ていると、どう見ても漫才にしか見えません。さしずめ、ビスマルクさんがぼけて、プリンツ・オイゲンさんがつっこみを入れているような。

 

ついにビスマルクさんが、白旗を揚げたようですね。ビスマルクさんが白旗を揚げた瞬間、プリンツ・オイゲンさんがここぞとばかりに、ビスマルクさんに『もっと料理を勉強するように!』などと言い始めていますが、Z1さん達もそれに同調しているのが面白いところです。プリンツ・オイゲンさんがこの鎮守府に来るまでは、Z1さん達はビスマルクさんの言いなりでしたが、これからは多少この関係が変わるのかもしれません。

 

「姉様!姉様がこの鎮守府に派遣される時に、私に約束したでしょ!『Z1達の面倒は私が見るから安心しなさい』って。どう見てもZ1達の面倒を見ていたのは、鳳翔さんじゃない。」

 

「わ…私だって、ちゃんと努力したわ!ほら、Z1達もプリンツ・オイゲンに何とか言ってやりなさい!」

 

「プリンツ・オイゲン姉さん。僕等はここでしばらく凄く苦労したんだよ?ビスマルク姉さんの凄く『個性的な』ザワークラウトを食べたりしながら…。鳳翔さんが居なかったら、僕もZ3も撃沈されていたかも…。」

 

「貴方達!ここで裏切るつもり!毎日のように、私が貴方達を鳳翔さんのお店に連れてきてあげたのを忘れたのかしら!?」

 

「ほら、やっぱり。姉様?やっぱり、Z1達の食事の面倒は鳳翔さん頼みじゃない!」

 

何だか、四人組の漫才を見ているように思えてくるのは、私だけではなさそうですね。周りに居る他の艦娘達も笑いをこらえるのに必死です。それに…そろそろハイエナさん達も行動を開始しそうですね。私のお店で初めて登場するドイツ料理です…ハイエナさん達がこれを見逃すとはとても思えません。…ほら、やってきました。

 

「あの…プリンツ・オイゲンさん、はじめまして。私、この鎮守府の空母機動部隊の一員の、第一航空戦隊の赤城です。その…美味しそうな料理ですね…ちょっと…ちょっとだけ、赤城にもその料理を食べさせてもらえませんか?」

 

「新入りのプリンツ・オイゲンじゃな。我輩、この鎮守府の重巡洋艦の利根じゃ。機動部隊の護衛から主力部隊の一員まで幅広くやっておるぞ。その…我輩も御近づきの印に、その料理が食べたいのじゃ、良いか?」

 

プリンツ・オイゲンさんはまだ知らないのでしょうが、その子達の『ちょっと』は全くあてになりませんよ。ここは私が止めないと…。って、私の制止や、事情を知っているビスマルクさんが止めるよりも先にプリンツ・オイゲンさんが頷いてしまいました。赤城さんも利根さんも凄く嬉しそうな顔をして、料理に箸を伸ばします。…あぁ、やっぱり。利根さんは料理をさらうような動きで箸を動かし、プリンツ・オイゲンさんのお皿に残っていたお肉の全てを奪いましたし、赤城さんに到っては大皿の方から肉を奪い取りました。

 

「えっ、えっ、ちょっと食べるだけって…。」

 

プリンツ・オイゲンさんの顔には驚愕の表情が浮かんでいますが、この鎮守府の事情を知っているビスマルクさんに宥められています。

 

「プリンツ・オイゲン…。あの二人のちょっとは全くあてにならないから、今度から気をつけることね。とりあえず、今日は貴方の歓迎なのだから、私の残っているお肉分けてあげるわ。」

 

「は…はい、ビスマルク姉様…今度からは気をつけます。それとこれからよろしく…。」

 

なんだか、プリンツ・オイゲンさんは意気消沈してしまい、私も申し訳ない気持ちで一杯になってしまいました。今日は折角の歓迎会ですし、赤城さんと利根さんのお勘定で、この四人に何品か料理を出してあげましょう。これからしばらく、プリンツ・オイゲンさんもこの鎮守府で戦っていくようですから、是非頑張って欲しいですね。




プリンツ・オイゲンちゃん、立ち絵が凄く可愛くて、思わず主役にして物語りを書いてしまいましたw。まだこの子のキャラ付けってあまり固まっていないような気がしますが、個人的にはビスマルクにとっては非常に口うるさい妹分みたいな感じで捉えています。まぁ、ライン演習作戦では、二人とも一緒に出撃していますし…共同で英戦艦とも戦っていますから…こんな感じでもいいかな…とw

ザワーブラーテン…まえがきでも書いていますが、このドイツ料理美味しいと思います。ただし初見で食べると、少し酸味が強い料理のため、あれっ?と思うかもしれません。ただし、この酸味が肉料理と本当に相性が良い訳でして…これに少し濃厚でコクのある甘いソースが加わると、非常に食がすすみます。機会がありましたら是非食べてみてください。私も今回は、レシピを他サイトに頼りましたが、これジンジャークッキーなどを砕いてソース作っていたのですね。たしかに食べた時に甘さの中に少し生姜?っぽい感じの香りがありましたので、あれ?っと思っていたのですが、今回レシピをチェックして非常に納得出来ました。

おそらくこの料理、あまりメジャーではないと思いますので、自分の感じた味を文章として読者の皆さんに伝えるのは本当に大変だな…と感じました。日本食ですと、読者の皆さんも食べた事がある料理であったり、なんとなく想像がつく料理が多いと思いますが、今回のような場合は…。多少なりとも、味が伝えられたら良かったかな…と思います。

さて次回ですが、可能であれば水曜日に投稿したいところですが、これが駄目な場合は一週間完全に空く事になりますので、ご了承ください。次回は順番的に外伝…瑞鶴のお料理教室を続けるか…あのお代官様(金剛)と大黒屋(初霜)の物語にするか…少し迷っています。今回も読んでいただき、ありがとうございました。



メニュー (たぶん四人分)

マリネ用の液
水:400mL
リンゴ酢:200mL
ワインビネガー:200mL
玉ねぎ:1個(中)
人参:1個(大)
塩:大さじ1+小さじ1
胡椒:小さじ1/2
月桂樹の葉:2枚
クローブ:6
ジュニパー:12 (これは無しでも問題ないと思う)
マスタードシード:小さじ1


ランプ肉:1.8 kg
(海外のレシピだと、これで4-6人前になってるから、よく食べるよねw)

ソース用
ジンジャービスケット:18個(140g)
スキムミルク:50mL
小麦粉:30g
サワークリーム:適量
黒砂糖:5g

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