鎮守府の片隅で   作:ariel

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あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

さて、お正月の三が日も今日で終了です。幸いな事に明日は日曜日のため、もう一日お休みがありますが、そろそろ正月気分を取除かなくてはいけませんね…。という事で今回のお話は、正月気分を一気に取除くお話になります。年末の年越し蕎麦の話の続編的な位置づけで読んでもらえるとありがたいです。



第四二話 鳳翔さんのすき焼

どうしてこうなってしまったのでしょう…。今年の正月の三が日はあの人と官舎でゆっくり過ごす予定だったのですが、今私達の官舎には、私達以外に七人の正規空母娘、そして四人の戦艦娘が居ます。そして正規空母娘達は、特に悪さをしている訳ではありませんが、七人で大きなコタツを一つ占領して、コタツから一歩も外に出ようとせず、ひたすらコタツの上に置いてある御節料理や旨煮を食べ続ける怠惰な生活を送っています。しかし今は、この怠惰な馬鹿娘達にかまけている余裕はありません。更に大きな問題は、四人の戦艦娘です。こちらは居間のコタツを占領し、特にその中でも一番問題がある戦艦娘は、あの人の横に張り付いて動かないのです。油断も隙もあった物ではありません。私もこの戦艦娘とは逆側のあの人の隣に陣取り、絶えずあの人にちょっかいをかけ続けるこの戦艦娘を牽制し続けなくてはいけないのです。

 

三が日の初日のお正月、駆逐艦や軽巡洋艦、そして重巡洋艦の艦娘達がお年始の挨拶に私達の官舎にやって来たので、非常に楽しい一日を過ごす事が出来ました。また、一部の戦艦娘と軽空母娘達も軽い食事を持参してお年始の挨拶に来たため、その日の夕食は皆で一緒に食べる事となり非常に賑やかになったため、私にとっても非常に素晴らしい時間を送る事が出来ました。しかし、本来であれば真っ先に来ると思われていた正規空母娘達が来なかった事、そしておそらく押しかけてくるだろうと予想していた高速戦艦四姉妹が来なかった事、この二点について私もその時少し不思議に思っていたのです。

 

そして事件は翌日の二日に起こりました。前日の夕食時に軽空母達から聞いたのですが、正規空母の馬鹿娘達は年末に徹夜麻雀に明け暮れた結果、正月は完全に寝正月を送っていたたようです。そしてその結果、翌日の二日にお年始の挨拶にやってきました。殊勝な事に皆で夕食を食べられるようにと、すき焼きの用意を持参して来ましたし、非常に華やかな振袖姿でやってきたため、私も彼女達の元旦の失態に目を瞑り家に上げたことが間違いの素でした。

 

とどめは、高速戦艦四姉妹もこの日にお年始の挨拶にやってきた事です。こちらは計画的にこの日を選んでいますね。後から榛名さんから伺ったのですが、なんでも長女の金剛さんの発案で、他の艦娘達のお年始の挨拶にかち合わない様に、敢えてこの日を選んだそうです。私は警戒して、家に上げる事に難色を示したのですが…こちらも非常に華やかな振袖姿でして、その姿に気を良くしたあの人が家に上げてしまい…その結果がご覧の有様です。

 

金剛さん達は、お年始の挨拶に洋風のオードブルを持参してきており、その日の夕食は、それと元々私が準備していたお節料理などを皆さんで食べる事になってしまったのも私の失態でした。この結果正規空母達が、自分達が持参したすき焼きを食べるまでは帰らないとごねだしまして、その結果あの人も駄々をこね始めた空母娘達を家に泊めて、明日の夕食にすき焼きを食べようという事になってしまったのです。私としては、空母寮は近いですから改めて明日の夜に来なさいと言いたかったのですが、あの人がそう決めてしまった以上は、従うしかありません。

 

更に、あの人のこの決断を聞いた高速戦艦四姉妹も、自分達が持ってきたオードブルを皆で食べたのだから、私達もすき焼きを食べると主張し始め、その結果この高速戦艦四姉妹まで泊まる事に…。この時の金剛さんのしてやったりという表情は、今思い出すだけでも腹が立ってきます。

 

そして今日うちの馬鹿娘達七人は、振袖姿だった華やかな姿はどこへやら…既にいつもの姿丸出しです。いつの間にやら振袖は脱いで、楽な室内着を着てこたつから一歩も外に出ようとしません(こんな室内着を持参してきたという事は、泊まる事を最初から狙っていましたね…)。高速戦艦の四姉妹も、一名を除き普段着に着替えていますが(なんでも今朝の早い時間に、一番末っ子の霧島さんを戦艦寮に走らせて着替えを持ってこさせたようです。)、金剛さんだけは新しい振袖姿で、今もあの人の横にベッタリです。流石に金剛さんクラスになると、そう簡単に尻尾を出さないですね。私も気が休まる時がありません。

 

「Hey! 鳳翔。お酒がなくなってしまったネ。早く代わりを入れて欲しいデース。提督ぅ~、こんな気が利かない鳳翔よりも、私と一緒になった方が楽しいネ。」

 

「金剛さん、いい加減にしてください。もう飲みすぎです。それに、金剛さんは秘書艦ですよ。三が日と言えども業務はある筈です。自分の職務に早く戻った方が良いのではないですか?あなた?こんな不真面目な秘書艦は早いところ解任した方がよろしいのでは?」

 

「な~に馬鹿な事言っているネ。ちゃんと私は代理の子に職務を遂行させているデース。今頃、My best friendの初霜が、私に代わって潜水艦達にオリョール行きの命令を出しているネ。」

 

まさか、この日のためにあの素直な初霜ちゃんを毒牙にかけて秘書の仕事を教え込んでいたのでしょうか。とんでもない人です。ですが、職務代行までたてて私の家に押しかけて来ているという事は、かなりの準備をしてからうちに来ているという事ですね。これは油断出来ません。それに私は、金剛さんをよく観察していましたから見逃しませんでしたが、時折何処かに連絡して、私の家に様々な物資まで運び込ませています。どうやら初霜ちゃんに命令して、補給物資を送り込む体勢まで整えて、うちに居座っているようですね。なんとか反撃の手段を見つけなくては、私のこの怒りが…。…そうです!

 

「あなた?今日の夕食のすき焼きですが…これだけの人数では、流石に一つの鍋を囲むという訳にはいきません。二組に分けようと思いますが、それでよろしいでしょうか?」

 

「あ~、そうだな。流石にこの人数では、ちょっと無理だな。鳳翔、悪いけどそれで頼むよ。」

 

「分かりました、あなた。ところで折角ですから、空母と戦艦が別々で食べるよりは、今回は二つのグループに分かれて、空母と戦艦両方が混じってすき焼きを食べたいのですが…。特に正規空母と高速戦艦は機動部隊として一緒に出撃する事が多いですし…鍋を一緒につついて、仲良くなるというのも悪くないかと。」

 

「そうだね…流石は鳳翔、よく考えているな。じゃぁ、適当に分かれて食べるか。お前は私と一緒でいいな?」

 

「いえ、あなたも久しぶりに金剛さんと一緒に食べたらどうですか?私はもう一方の鍋に行きますから。そうですね…榛名さんと霧島さんをこちらにもらって、その代わりに一航戦と二航戦の四人をそちらに回しますね。」

 

一瞬、金剛さんが怪訝そうな顔をしましたが、やはりあの人と一緒に鍋を食べるという誘惑には勝てなかったのか、私の提案を受け入れました。計画通りです。以前榛名さん達から聞いた話では、金剛姉妹の鍋料理は金剛さんによる独裁鍋です。しかし食べ物に関してはとても意地汚い一航戦及び二航戦の四人がそれに参加すれば…間違いなく修羅場になるでしょう。二日間、鼻の下を伸ばしっぱなしのあの人にとっても、丁度良いお灸になりそうです。それと…うちの馬鹿娘達へのお仕置きのために、今のうちにあそこに連絡をしておきましょうか。

 

さて金剛さん、どのように対処するでしょうか。あの人の前でも、美味しいお肉の誘惑には勝てずに赤城さん達を相手に修羅場に参加するか、あくまでも猫を被って肉を諦めるか…どちらしても面白い物が見られそうです。

 

私の居るコタツには、高速戦艦の榛名さんと霧島さん、そして正規空母の翔鶴さん、瑞鶴さん、雲竜さんが居ます。私達の真ん中にはガス台とすき焼き鍋があり、私の目の前にはすき焼きの具が入った皿が置かれています。この面子ですと、やはり私が作るのが自然ですね。正規空母達が持ち込んだお肉ですが、かなり奮発したようで赤い肉にさしが綺麗に入ったそれは見事なお肉です。これにネギ、エノキ、椎茸、焼き豆腐、白滝に角麩そして春菊と並び、〆のうどんが準備されました。

 

またすき焼きのタレ用に、昨日から干し椎茸を水で戻していた時の戻し汁も準備してありますし、今日は美味しいすき焼きが食べられそうです。

 

すき焼きですが、これは関東と関西で大きく作り方が異なります。私は関東出身ですから、西で生まれた霧島さんや瑞鶴さんには申し訳ありませんが、今回は関東風で作らせてもらいます。まずは十分にすき焼き鍋を熱したら、牛脂を使ってすき焼き鍋全体に脂をひいていきます。そして脂をひいたら、牛肉そしてネギの順番にすき焼き鍋に投入し、十分に火を入れてこれらの具材を一端焼きます。そしてそこに、醤油、みりん、日本酒、砂糖そして干し椎茸の戻し汁を十分な量入れたら、ここに水で戻した干し椎茸、白滝、焼豆腐、更に角麩を入れて…これらの具材に十分に火が通りましたら、最後にエノキと春菊を入れます。そろそろ全ての具材に火が通ったでしょうか。

 

「貴方達、そろそろ食べられますよ。卵は皆さんに行き渡りましたか?今回は特に取り分けませんから、好きなように取って食べて良いですよ。具が少なくなりましたら追加しますから、遠慮せずに食べてください。お肉も十分な量がありますから、好きなように食べても大丈夫ですから。」

 

「あ…あの…榛名達もお肉を食べて良いのでしょうか?いつも金剛お姉様からは『榛名達はネギと椎茸、それと焼豆腐をしっかり食べるデ~ス』と言われて…その…お肉はほとんど食べさせてもらえないのですが…。」

 

「榛名さん大丈夫だって。鳳翔さんや翔鶴姉もそうだけど、ここに居る艦娘でそんな事言う人いないからさ。五月蝿い先輩達もあっちの鍋に居るし、今日は好きなように食べようよ。」

 

「そうですよ、榛名さん。瑞鶴が言っているように、そんな事言う人はこっちの鍋に居ないですから、今日はしっかり好きな物を食べましょう。」

 

すかさず五航戦の二人がフォローを入れましたが、こちらの鍋を囲んでいる艦娘でそのような事を言う娘は居ませんし、多少の肉の取り合いがあると言っても、向こうの鍋程酷い取り合いにはならないでしょう。瑞鶴さん達の話を聞いて、本当にお肉を好きなだけ食べられる事が分かった榛名さんは嬉しそうな表情をしていますし、霧島さんに至っては目が潤んでいる気がします。向こうの鍋は大変な事になっているようですが、こちらはその分平和なので、今のうちにしっかり食べましょうか。

 

 

 

榛名

 

 

先日、加賀さん達に連れてきてもらった鳳翔さんのお店で食べた湯豆腐に引き続き、金剛お姉様が居ないすき焼きを榛名は食べる事が出来ます。いつものすき焼きでは、金剛お姉様や比叡お姉様の采配により、私と霧島の二人はほとんどお肉を食べる事が出来ません。榛名もこれまでは、すき焼きというのはネギと豆腐を食べる料理だと感じていたくらいですから、霧島もおそらく同じ思いだと思います。まさか、好きなだけお肉を食べて良いすき焼きが食べられるなんて、榛名感激です。

 

折角の機会ですから、いつも最後に少しだけ食べさせてもらえる切れ端のお肉ではなく、大きなお肉を一枚すき焼き鍋から取り出して、早速これを食べてみます。最初、あれ程大きく広がっていた薄いお肉ですが、焼いた後にすき焼きのタレで煮た事で、少し縮まり丸まっていますが、それでも最初のお肉の大きさを反映した大きなお肉です。すき焼きのタレの色に染まったこのお肉を、黄色の溶き卵に少しだけ漬けて…早速いただきましょう。

 

あぁ…美味しいです。元々のお肉にさしがしっかり入っていましたから、予想はしていたのですが、とても柔らかくて少し噛んだだけで、まるでその部分が溶けるような感じで肉が口の中で分かれていきます。しかも、いつも榛名が食べさせてもらえるような筋の入ったお肉ではなくて、どの部分を噛んでもすぐに噛み切れるようなとても柔らかいお肉です。そして、すき焼きの少し濃い目の甘辛い味が、溶き卵によってまろやかになり、本当に素晴らしい味です。それでは一度御飯を食べて舌の感覚を元に戻してから、次の具材を食べましょう。やはりすき焼のような味の濃い料理の時は、御飯が進みます。

 

ネギや豆腐はいつもすき焼きの時に凄い量を食べさせられますから、味はよく分かっていますが、やはりこれを外す訳にはいきません。これらの具材も肉と同様にとても美味しい事を榛名は良く知っていますから。ネギ…これは注意して食べなくては、口の中でネギの中身が飛び出して凄く熱い目に合いますから、そうならないように注意して噛み切ります。ネギの甘みとすき焼のタレの甘辛さが混じってこれも見事ですね。焼き豆腐も少しだけある豆腐の甘みとタレが絶妙なマッチングをしています。

 

そういえば、普段榛名達のすき焼ではあまり見かけない具材がありますね。長細い直方体で、側面の二面にヒダヒダがついた豆腐のような物体です。鳳翔さんは、角麩と言っていましたが、これはどのような具材なのでしょうか。焼き麩とはだいぶ異なる感じがするのですが…榛名気になります。箸で持った感じでは、少し柔らかめですから、固い麩饅頭のようなものでしょうか…。あっ、少しネットリとして、弾力性がある柔らかい食感…素敵です。焼き麩では、すき焼のタレを吸い込みすぎてしまうと思いますが、この麩は中までしっかりつまっていますから、タレもそんなに染み込んでいなくて、丁度良い按配の味になっています。

 

白滝に椎茸にエノキ…まだまだ色々な具材がありますが、やはり春菊を食べなくてはいけません。春菊のほろ苦さ…これもすき焼を食べる時には必須だという事を榛名は良く知っています。春菊の葉の部分に染み込んだ甘辛い味、そしてほろ苦さが、溶き卵によってまろやかになって…本当に美味しいです。このような美味しいすき焼が食べられて、榛名感激です!

 

「榛名さん、楽しんでいるところを申し訳ありませんが、そこの日本酒をとってもらえますか?すき焼のタレが煮詰まってしまいましたので、少し日本酒などを足しますから。」

 

次のお肉をすき焼に入れるのですね。今日は榛名達もたっぷりお肉が食べられます。隣の霧島も嬉しそうです。

 

 

 

鳳翔

 

 

榛名さんと霧島さんが嬉しそうにすき焼を食べている姿は予想出来ましたが、うちの翔鶴さん達三人も幸せそうな顔をしてすき焼に箸を伸ばしていますね。この子達は、もうすぐ地獄に叩き落される事になっていますが、せめて今だけは幸せな時間を過ごさせてあげましょう。いえ…本当はここに居る五人はある意味被害者で、真の悪者は向こうの鍋を囲んでいる六人の中の数名だという事は知っています…が、これは連帯責任ですから。

 

 

そろそろすき焼の具材も粗方なくなりましたから、最後の〆のうどんをいれましょうか。御飯を入れて卵でとじた〆も美味しいですが、うどんの〆も悪くありません。それにしても、こちらの鍋は大人しい子が集まりましたから、とても平和に終わりそうですがあの人が居るあちらの鍋は凄い事になっていますね…。予想はしていましたが、実際に私があの中に居なくて本当に良かったです。

 

「提督ぅ~、そこの空母達が私の肉をどんどん食べていくネ~。これじゃ食べられないデ~ス。なんとかしてくださ~い。」

 

「こら赤城、加賀。少しはお前達も遠慮しろ。金剛も俺も全然肉が食べられないぞ。」

 

「提督…ここは譲れません。」

 

「そうそう!肉は早い者勝ちだよ!」

 

「飛龍…お前まで何を言っている。」

 

金剛さん…肉を諦めてでも猫を被る事を選択したようですね。これには私も脱帽です。しかし、たとえあの人が何か言った所で、赤城さん達が自重する筈がありません。ですから、あの人に頼んで赤城さん達を止めようと思っても無駄ですよ。いつまで我慢出来るでしょうかね…。

 

 

「提督ぅ~。私がなんとかするネ。提督のお肉も私がとってあげま~す。私の活躍、よ~く見ていてくださ~い。Hey、比叡!比叡ガードをするネ。ここで空母達に負けるわけにはいかないネ、金剛姉妹の力を見せ付けてやるデ~ス!」

 

それまでほとんどお肉が食べられなかった金剛さんも、ついに我慢の限界が来たようで本気で参戦ですか。比叡さんに赤城さん達のブロックを任せて鍋にある肉を根こそぎ奪っていく荒業に出たようですね。あの人も金剛さんの豹変ぶりにびっくりしているようですが…。あなた?あれが金剛さんの本性ですよ。いつまでも鼻の下を伸ばしていてはいけません。

 

 

ピンポ~ン。

 

「鳳翔さん、神通です。呼ばれた通り来ましたけど…本当に良いのですか?もう皆待っています…。」

 

神通さんが来ましたか、それに…駆逐艦の子達も何人か一緒のようですね。さて…あの馬鹿娘達にツケを支払ってもらう時間が来ましたね。すき焼も十分食べたようですし、もう良いでしょう。

 

「さぁ、貴方達。お正月の間、ほとんど寝転がって過ごしていたのですから、これから少し運動をしていらっしゃい。一緒に運動をしてくれる神通さん達も来ましたから、ついて行くのです。神通さん?うちの馬鹿娘達と比叡さん達三人を連れて行ってください。すっかり怠け癖がついてしまっているので、私への遠慮は無用ですから今夜はしっかりしごいてやってくださいね。」

 

「はいっ、鳳翔さん。今夜は二水戦と一水戦合同の夜戦訓練始めですから、標的艦になってくれる人を探していたのですが、全ての戦艦や重巡洋艦の皆さんに断られてしまって…。まさか、正規空母の皆さんや高速戦艦の皆さんに手伝ってもらえるなんて…嬉しいです。」

 

うちの鎮守府の精鋭水雷戦隊の夜戦訓練の標的艦です。今日はかなり絞られる事になるでしょう。赤城さんや加賀さんは顔面蒼白になっていますし、比叡さん達に至っては、既に両側から駆逐艦の子達に腕をつかまれ、うなだれています。

 

「わ…私は秘書艦の業務があるから、そろそろ帰りま~す。My sister達、頑張ってくるネ。」

 

金剛さん…今日は逃がしませんよ。貴方には特別メニューを用意しています。一番の巨悪のあなたを見逃す程、私は甘くありません。

 

「鳳翔さん…来たデチ。本当に金剛さん相手に、魚雷発射訓練をしてもいいデチか?」

 

「えぇ、構いませんよ。貴方達をお正月からオリョール資源回収作戦に連続出撃させる計画を立てた秘書艦の金剛さん自ら、貴方達の訓練に付き合ってくれるそうですから、今日はしっかり訓練するといいですよ。」

 

「本当デチか?金剛さん…今日は逃がさないデチ!しっかりゴーヤ達の訓練に付き合ってもらうデチ。ゴーヤ達の正月休みの申請を却下したお礼は、たっぷりさせてもらうデチ!」

 

ゴーヤさんを始め、ハチさんにイクさんにイムヤさん、そしてシオイさんの目が爛々と輝いていますね。今日は厳しい訓練になりそうです。金剛さんもようやく拙い事になっている事を悟ったのか、あの人にしなだれかかり、なんとかしてもらおうと必死のようですね。

 

「提督ぅ~。この潜水艦達を黙らせてくださ~い。秘書艦の私が居ないと提督も困るネ。だから…早く私を助けるネ!」

 

あの人は頷きかけていますけど、そうは問屋がおろしません。それにしてもあの人、どれだけ金剛さんに甘いのでしょうか。普段の執務室でもこんな感じだとしたら…これは少し問題です。

 

「あなた…あなたにはこれから少しお話があります。ゴーヤさん、いいから金剛さんを連れて行ってください。」

 

さて…それではこの人に少しお説教をして、あの馬鹿娘達が食い散らかした後片付けをして…。せっかくの静かに過ごせるはずだった三が日…全て台無しになってしまいました。今年も、あの子達に色々と引っ張りまわされる一年になりそうですね…はぁ。

 

後日、正月勤務の特別手当をもらって嬉しそうな初霜ちゃんから話を聞いたのですが、翌日提督の執務室で、ゲッソリとした顔のあの人と、筋肉痛で席から立ち上がる際ですら顔をしかめた金剛さんを見かけたそうです。これで少しは懲りてくれると良いのですが…。




我が家では、お正月の夜はすき焼をする事にしています。すき焼はこの作中でも書きましたが、色々なタイプありますね。関東風と関西風で作り方が違いますし、入れる具材も地方によって異なります。昔、北海道の同僚が話していたのですが、北海道では豚ですき焼をするという事も言っていましたし、私の出身地である名古屋でも、味噌すきという味噌ダレで作るすき焼がありまして、これは鶏肉で作ります。

すき焼肉、昔はそこそこ肉を食べる事が出来ましたが、最近は二切れか三切れがせいぜいです。ですから、赤城や加賀がやったように肉の取り合いに参加…という事もなくなりましたw。まぁ、すき焼肉はさしがしっかり入っていますので、二切れや三切れでも結構な脂を取る事になってしまうわけですが^^;。また作中で登場させた角麩。これは少し馴染みのない読者もいるかもしれませんが、これは名古屋の人間ですと分かってくれるかな…と思います。すき焼にはとても合う具材なので、もし見かける事がありましたら、是非試してみてください。独特の食感が楽しめるかと思います。

さて、正月三が日を寝正月で楽しむ事を画策した加賀を始めとする空母勢、そして下心満載でお年始に訪れた金剛、たしかに三が日の間は幸せな時間(鳳翔さんにとっては不本意な時間)を過ごす事に成功しましたが、最後の最後でとんでもない落とし穴が待っていました。おそらく、二水戦と一水戦の合同訓練始めに標的艦として強制参加させられた面々は、神通さんによってこってり絞られたと思いますし、正月から連続出撃させられていたゴーヤ達潜水艦隊の訓練に付き合わされた金剛も言わずもがなです。提督も鳳翔さんから、かなりきつくお説教を受けたと思いますし…鳳翔さんも多少はこれで溜飲が下ったでしょうねw。

次回からは、これまでと同様のスタイルでお話を進めていく事になるかと思います。今年もどうぞよろしくお願いします。今回も読んでいただきありがとうございました。



すき焼(四人分)
すき焼肉 600-1000 g (さしがしっかり入った肉なら一人150gで良いかと…)
ネギ   2本
焼き豆腐 1丁
エノキ  1袋
椎茸   8個程(干し椎茸を水で戻して使うと、戻し汁も使えて一挙両得)
春菊   1パック
角麩   1パック
白滝   1袋

醤油            :120 mL
みりん           :100 mL
砂糖(三温糖が良いかと)  :40-60 g
干し椎茸の戻し汁      :150 mL
日本酒           :50 mL

(煮詰まった時は、戻し汁か日本酒を入れて薄めると美味しいかと…。戻し汁が無い場合は通常の出汁でOK。一応分量は書きましたが、味はお好みで色々と調整してください。)

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