鎮守府の片隅で   作:ariel

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先週に引き続き、久しぶりに週一のペースで投稿します。これから一週間のバカンスなので、出かける前、折角時間があるこの機会に一つ物語を書いておこうかな…と思い、急遽春の料理編を前倒しで書きました。当初は山菜料理…たらの芽の天婦羅や菜の花のお浸しを考えていたのですが、時期的にそろそろ竹の子が…と考え直し、今回は竹の子料理にしてみました。また今回の主役はギリギリですが三月なので、駆逐艦の弥生にしました。


第四七話 弥生と若竹煮

鎮守府内の竹藪  天龍

 

「よ~しチビ共、行けぇ~!龍田達に負けるなよぉ~」

 

「弥生頑張る…それと、チビじゃない…。」

 

「卯月も、行っきま~す。天龍さん、う~ちゃん達は、チビじゃないピョン!」

 

「睦月も頑張りますよ~。如月ちゃん達には負けないから!あと天龍さん、睦月もチビじゃないよ~」

 

俺の名は天龍。昨日の遠征帰りにウチのチビ共が、鳳翔さんの店で春の料理を食べたいなんて我儘を言い始めたのには参ったぜ。以前チビ共を鳳翔さんの店に連れて行って夕食を食べさせたのは拙かったかな…。あれ以来事あるごとに、チビ共は俺に鳳翔さんの店に連れていけと言ってきやがる。まぁ、俺も春の料理を鳳翔さんの店で食べたいんだが、流石にチビ共を連れて四人分注文するとなると、俺の給料じゃなぁ…。

 

とはいえ、この頭の良い天龍様はそこで良い計画を思いついた訳だ。そう…材料を持ち込んでしまえば安上がりになるから、四人分なんとか行けるんじゃないかってな。この時期にこの辺りで手に入りそうな材料…最初は山菜を考えたんだが、あのチビ共に採取させたら食べられない草も混じりそうだからな…。だが竹の子なら、あのチビ共でも間違いようがないだろう。という事で今日の朝から、竹の子を堀りに竹藪にチビ共を連れて来た訳なんだが、いつの間にか相棒の龍田に見つかっちまって…龍田もこの計画に一枚噛むようで、自分の配下の駆逐艦のチビ共を連れてきているんだよな。

 

「チビ共、その竹の根元の土が膨らんでいるから、そこを掘れ!途中で折れないように丁寧に掘り下げるんだぞ。」

 

「分かった…弥生、頑張って掘る。あと天龍さんも口だけではなくて、弥生達と一緒に掘るべき。」

 

「弥生、な~に言ってるんだ。俺は旗艦でお前たちに指示を出すのが仕事だぞ!こらっ、卯月も睦月も俺を睨むんじゃない。あんまり我儘言っていると、鳳翔さんのところに連れて行ってやらないからな!」

 

「それは困るピョン。卯月、頑張って掘りま~す!」

 

「睦月も一生懸命頑張るよ。」

 

よしよし、三人とも頑張って掘り始めたな。ん?結構大きそうな竹の子だな。これは今日の夕食は期待出来そうだぜ。龍田の方は…おっ、あっちも一つ目を見つけたみたいだな。龍田の指示であっちも駆逐艦のチビ共が掘ってら。それならこっちも、あと幾つか掘ったら早い内に鳳翔さんの所に今日の成果を持っていくか。たしか竹の子は採れたてが一番旨くて、急いで調理をしないといけないみたいだからな。

 

 

 

鳳翔

 

 

「あら?天龍さんに龍田さん、それに駆逐艦の皆さんもどうしたのですか?あらあら竹の子を掘ってきたのですか。立派な竹の子ですね。それでは今日の夕食は、この竹の子で皆さんに何か料理を作ってあげますから、楽しみにしていてくださいね。」

 

そろそろ今日もお店の方に行き、下ごしらえをしようと官舎を出たばかりの所で、天龍さんと龍田さん、そして駆逐艦の皆さんに呼び止められ、竹の子の入った籠を渡されました。詳しく事情を聞きますと、どうやら私に竹の子料理を作ってもらうために、今日の朝早い時間から頑張って掘り出したとの事です。採れたての竹の子ですから、そのまま焼いて食べても美味しいと思うのですが、天龍さん達の話では、駆逐艦の子達がどうしても私が料理した竹の子料理を食べたいと言っているようです。

 

採れたての竹の子をその場で焼いて食べれば、灰汁抜きをしなくても美味しいのですが、今日の夜に食べるとなると…しっかり灰汁抜きをしてきちんと下処理もしなくてはいけませんね。とりあえず、お米屋さんで米ぬかを貰ってきて竹の子の下処理をしましょう。天龍さんと龍田さんからは、駆逐艦の子達が『私の作った竹の子料理を食べたい』と言っていたと聞きましたが、そう言っている本人達も食べたがっているようですし…下処理に少し手間はかかりますが仕方ありません。それにこの時期の竹の子は旬で美味しいですから、他のお客さん達も喜んでくれると思いますし、この子達も折角苦労して竹の子を掘り出してきたわけですから、美味しい料理を作ってあげましょう。

 

 

さて下準備で必要な米ぬかも手に入りましたし、急いで竹の子の下処理をしてしまいましょうか。まずは皮ごと竹の子の先っぽの部分を包丁で斜めに切り落とします。そして中まで簡単に火が入るように、先程切り落とした先端部分から縦に、包丁で切り込みを入れます。それではまずこの切り込みを入れた竹の子を、皮ごと茹でてしまいましょう。皮を剥いてから茹でても良いのですが、この方が竹の子の風味を残した状態で火を入れる事が出来るのです。

 

では準備が出来ましたから、竹の子が完全に水に浸かるように大量の水を入れた鍋に天龍さん達が持ってきた竹の子を全て投入します。そして、お米屋さんから貰ってきた米ぬかを入れて、竹の子から出る灰汁を吸収しやすくします。それでは一気に強火にして沸騰させましょうか。後は沸騰した状態を維持するために、火加減を調整して30分程弱火で茹でれば、竹の子の下処理は完成です。

 

 

そろそろ大丈夫でしょうか。串を竹の子に刺してみますと、内部までスーッと入りましたから、十分に中まで火が通っていると思います。それでは火が完全に竹の子に入りましたから、後は自然に冷えるまで待てば竹の子の水煮が完成です。今日はこの水煮とワカメを使って若竹煮を作ろうと思います。

 

 

もうそろそろ茹でていた竹の子が冷えたでしょうか。それでは一番最初に入れた切り込みから皮を剥いていきますが、ここで水で洗ってしまっては、折角の竹の子の風味が台無しになってしまいます。ですから出来るだけ丁寧に皮を剥いて、一緒に米ぬかも取り除いておかなくてはいけません。いいですね…全ての竹の子の皮を取り除くと、薄いクリーム色のようなとても綺麗な竹の子の身がボールの中で山になりました。

 

それではこの竹の子の水煮を使って目的の若竹煮を作りましょうか。まずはワカメを水洗いしてから、一度水で戻します。そして十分に戻りましたら食べやすいように水気を切ってから一口大に切り分けます。若竹煮は竹の子の形も重要ですから、美しい竹の子の形がそのまま残るように、竹の子の穂先の部分をまず切り分けます。そして穂先を縦に6つ程に切り分けて、竹の子の先端の美しい部分がそのままの形で残るようにします。穂先以外の部分は1-2cm程に輪切りしてから、いちょう型になるように四つに切り分けましょうか。

 

次は切り分けた材料を出汁で煮込みます。お鍋に出汁そして醤油と味醂、塩を入れて味を整えましたら、ここに切り分けた竹の子を入れて煮立てます。竹の子には下処理の段階で一度火が入っていますが、今度は竹の子を完全に柔らかくするために15分程弱火でじっくり火を入れます。そろそろよろしいですね。それでは最後にワカメを加えてからひと煮して…完成です。若竹煮は非常に単純な料理ですが、単純であるが故に素材の味がそのまま出ますし、今回はその日に採れたばかりの竹の子を使っていますから、きっと駆逐艦の子達も喜んでくれるでしょう。

 

残った竹の子…そうですね。今日はお釜も空いていますし、竹の子の残りを少し細かめに薄切りにして、竹の子の炊き込みご飯も一緒に作っておきましょうか。

 

 

「いらっしゃい皆さん。竹の子料理は出来ていますよ。今日は8人も居ますからそちらの座敷に入ってください。」

 

夕方をちょっと過ぎた頃、まだ少し夕食には早い時間なのですが、天龍さんと龍田さんに連れられた6人の駆逐艦の子達が来店しました。どうやら通常の夕食の時間まで待ちきれなかったようで、少し早い時間の来店になったようですね。駆逐艦の子達は凄く嬉しそうな表情をしていますし、引率している天龍さんと龍田さんも凄く嬉しそうですね。やはり自分達で採取してきた物を食べる訳ですから、楽しみにしていたのだと思います。

 

全員が座敷に入ったようですね。それでは若竹煮と竹の子の炊き込みご飯をお出しして、後は何品か適当に春の料理を出してあげましょうか。あまり待たせると駆逐艦の子達どころか天龍さん達も騒ぎ出しそうですからね。そういえば、今日は長門さんや加賀さん達もいつもより早く来店していますね。おそらく天龍さんから今日は竹の子料理を食べる事が出来ると聞いたのだと思います。

 

「はい、皆さんが今日の朝持ってきてくれた竹の子で作った、若竹煮と炊き込みご飯ですよ。今日は一杯作ってありますから、お代わりが必要な子は言ってくださいね。それではお上がりなさい。」

 

 

 

弥生

 

 

昨日の遠征帰り、天龍さんに弥生達は少しだけ我侭を言った…かもしれないです。だいぶ前、天龍さんに連れてきてもらった鳳翔さんのお店…でも最近、弥生達は連れてきてもらっていない…。あのお店が高い事は弥生達も知っている…けれどたまには連れていって欲しい…です。今回は弥生達の我侭を聞いてくれた天龍さんが、材料を持ち込めばなんとかなると言ってくれた。流石に天龍さんは頭がいい。それでこそ弥生達の旗艦…です。

 

その結果、今朝早い時間に弥生達は鎮守府の中にある竹薮に集合して、竹の子堀りを頑張ったよ。途中で天龍さんの姉妹艦の龍田さんや、その指揮下にいる如月ちゃんや、白雪ちゃん、そして深雪ちゃんもやって来て一緒に掘ったけど、弥生達の方がたくさん竹の子を掘り出したと思う…。採った竹の子をすぐに鳳翔さんの所に持って行ったら、鳳翔さんが今日の夕御飯に竹の子料理を作ってくれる事を約束してくれた…です。だからその日の任務は、夕食が楽しみだったから、弥生達も一生懸命頑張りました。

 

そしていよいよ久しぶりの鳳翔さんのお店に到着。座敷に通された弥生達の前には、朝に採ってきた竹の子を使った料理や、竹の子の入った御飯が並んでいます。…これは、物凄く楽しみ。天龍さんが『チビ共、食べていいぞ!』と言ってくれたから、弥生も早速食べます。…それと、弥生はチビじゃない。

 

まずは、竹の子の塊がワカメと一緒に入っている料理を食べないと…。弥生達が頑張って掘り出した竹の子が、こんな綺麗な料理になっている。えっと…折角だから、先が尖った竹の子の先端部分を箸で上手に掴んで…なんとか一口で食べます。弥生の口に竹の子の塊が近づくと、何とも言えない竹の子の香りが鼻から入ってくる…とても美味しそう…いただきます。

 

竹の子とワカメが入っていた薄くて透明な茶色の汁をしっかりつけて、竹の子をまず一口で食べます。…美味しい。竹の子は凄く柔らかいけど、シャクシャクした歯応えが丁度良い感じ…それと竹の子の先っぽ部分の内側のヒダヒダがある場所も、噛むと崩れていくような歯応えが最高。そして竹の子の甘い味と、お汁の薄味が物凄く良い感じ…。やっぱり春の料理は最高…弥生の名前も春にちなんだ名前だから、とても嬉しい…です。

 

次はワカメと一緒に竹の子を…これも美味しい。ワカメは少しへばりつく様な感じだけど…竹の子だけで食べた時と比べて、味…というか旨味が全然違う。…これは止まらない。いつも五月蝿くおしゃべりをしている卯月も、睦月も凄く静か…不気味…です。でも、こんな美味しい料理を食べていたら静かになるのも分かる…あの天龍さんも静かだから。

 

次は竹の子の御飯も食べる。この御飯は色がついているから、味もついている筈。一緒に入っている薄く切られた竹の子と一緒に御飯を掻き込みます。ちょっとお行儀が悪いけど、今なら天龍さんも自分の料理に集中しているみたいだから、問題ない…です。…美味しい。こっちもちょっと薄味の醤油と旨味が詰まった御飯に、竹の子のシャキッとした歯応えがとても合う…これも止まらない。他にも鳳翔さんが料理を並べてくれているけど、弥生は竹の子とワカメの煮物と、この御飯だけで十分。両方ともお代わりがしたい気分…です。たしか今日弥生達はたくさん竹の子を掘ってきたと思うから、まだ料理はある筈。だからお代わりを要求しないといけない…です。お代わりなら、天龍さんも許してくれると思います。

 

「鳳翔さん、竹の子料理のお代わりお願いします。」

 

「あっ!卯月も、お願いしまっす!」

 

「睦月も、睦月も~!」

 

「如月にもお願いします。」

 

「深雪様も、お代わりをいただくぜ!」

 

「私にも皆さんと一緒でお代わりをもらえると…」

 

「お…おぃ、チビ共!勝手にお代わりを注文するなって!この天龍様の許可をだな…って、鳳翔さん、俺にも頼むわ!」

 

「あらあら…天龍ちゃんもまだ食べるの?私ももう一杯いただこうかなぁ~」

 

なんだ…弥生だけでなく、皆もお代わりを注文するんだ…。そうだよね、こんなに美味しい料理だし、やっぱり自分達で頑張って掘ってきた材料で作ってもらった料理だから…お腹一杯食べたい…です。

 

 

 

鳳翔

 

 

どうやら皆さん、自分達で採ってきた竹の子で作った料理は気に入ってもらえたようですね。しばらくの間、カウンターはお手伝いの赤城さんに任せて奥で他の料理の準備をしていたので、座敷の様子を見ていませんでしたが、お代わりをしてくれたという事は、気に入ってもらえたのだと思います。正直に言いますと、駆逐艦の子達のように小さな子には、若竹煮は少し薄味で気に入ってもらえないかもしれない…と心配したのですが、杞憂だったようですね。これくらいの子は、もっとはっきりした味付けの方が好きだと思っていましたが、本当に美味しい味であれば問題ないようですね。私も一つ勉強になりました。この子達は今回、頑張って沢山竹の子を持ってきてくれましたし、料理の方はまだありますので早速お代わりを出してあげましょう。

 

「赤城さん、そこにある若竹煮と竹の子御飯を天龍さん達の座敷に追加で出してあげてください。」

 

「えっ?もうありませんよ。鳳翔さん?」

 

えっ?若竹煮はそれなりの大きさの鍋で作りましたし、竹の子御飯はお釜で炊いています…一体どうして…って、あっ!カウンター席の周辺を見て事情が瞬時に分かりました。カウンターに座っている長門さんを始めとする戦艦娘達の前にはお椀に並々と入れられた若竹煮、そして丼には竹の子御飯が山の様によそわれています。そして加賀さんと何故か知りませんが赤城さんが持っている器にも並々と竹の子御飯が…。大和さんの隣に座っている初霜ちゃんの小さなお皿やお椀は誤差範囲だと思いますが、それ以外のお椀は…。どうしてくれましょう。

 

カウンター席の惨状、そして『賄い食』と称して丼に山盛りによそわれた竹の子御飯を掻き込むのに忙しい赤城さんの姿を見て、座敷に居た6人の駆逐艦の子達の顔色が変わりました。これは拙いですね…。しかし既に戦艦娘や赤城さん達の皿によそわれている若竹煮も竹の子御飯も消えつつあります…。それに今から新しい料理を用意するにしても竹の子は全部使い切っていますし…困りました。

 

「弥生達の竹の子が…ウ…ウ…ウァ~ン」

 

「卯月も、まだ食べたいピョン…でも…もう無いピョン。酷いピョン…エグッ…」

 

「睦月の竹の子が消えちゃったよぉ~…ウァ~ン。」

 

そうなりますよね…。天龍さんや龍田さんが駆逐艦の子達を慰めていますが、これは長引きそうです。流石に長門さんを始めとする戦艦娘や加賀さんも拙いという表情をしていますが…赤城さん…この状況でも我関せずに御飯をかき込んでいるのはあなただけですよ…全く。どこでどう教育を間違えてしまったのでしょう。あら?初霜ちゃんが長門さんに何か耳打ちしていますね。それに長門さんが無言で頷いています。何かこの状況を打開する良い考えでもあるのでしょうか。

 

「あ~、お前達。勝手にお前達が持ってきた竹の子料理を全部食べてしまって申し訳なかったな。だが泣くな。今日は詫びの意味も込めて、このビッグセブンである長門が、お前達に好きな物を好きなだけ食べさせてやろう。だから何でも遠慮せずに注文するといいぞ!」

 

流石といいますか…非常に強引な力技ですが、長門さんが動きましたね。おそらく初霜ちゃんから何か耳打ちされての事だと思いますが、長門さんのこの言葉に、さっきまで泣き顔だった駆逐艦の子達の顔に驚きの表情が浮かぶと、すぐに喜びの声があがりました。これは…長門さんは勿論そうですが、アイデアを出した初霜ちゃんのお手柄ですね。やはり駆逐艦の子達も、連合艦隊旗艦である長門さんに奢ってもらえるという事実は、凄く嬉しい事のようです。

 

「流石は連合艦隊旗艦の長門さん…弥生…感激。竹の子は残念だったけど、今日はお腹一杯食べる…。長門さんに感謝。」

 

「卯月も、長門さんに感激ぃ~。やっぱり、ビッグセブンは凄いピョン!」

 

「睦月も感激しました。長門さんはやっぱり凄いです!」

 

「う…うむ。まぁ、今回の事はこの長門に全て任せておけ!」

 

あれだけ天龍さんや龍田さんの説得でも泣きべそが止まらなかった駆逐艦の子達が、あっという間に笑顔になってしまいました。そして『今日は奢ってやる』と宣言した長門さんに次々と駆逐艦の子達が抱きついています。長門さんも駆逐艦の子達に懐かれて満更でもなさそうですし…結果的に全員が幸せになったという事でしょうか。周りの長門さん以外の戦艦娘や加賀さんもホッとしていますし…今日も鎮守府は平和です。

 

 

 

 

 

 

 

 

ここからは勿論ネタですよ…

HATSUSHIMO

 

 

駆逐艦の子達が急に泣き出したから、ちょっと驚いてしまったし、私も大和さんに誘われて竹の子の料理を食べていたからちょっと居心地が悪かったけど、上手に収まってくれて本当に良かったわ。長門さんには、

 

「長門さん。ここであの駆逐艦の子達に、『詫びの印に今日は奢ってやるから好きな物を注文しろ』と言えば、間違いなく駆逐艦の子達は長門さんに感謝すると思うわ。ここはビッグセブンであり連合艦隊旗艦の長門さんの力の見せ所だと思うの。」

 

と言ってみたけど、長門さんが初霜の提案に乗ってくれて本当に良かったわ。たしか長門さんは、大和さんに対してよく『大和ばかり駆逐艦に懐かれるのはズルイぞ』と言っていたから、駆逐艦の子達からの人気を凄く気にしていると思ったの。だから初霜の提案に乗ってくれるとは思っていたけど、こんなに上手く行くなんて思わなかったわ。

 

それに長門さんに何か耳打ちしたというのは、他の戦艦のお姉さん達や鳳翔さんも見ていたから、初霜が今回の出来事の解決に何か有益な助言をしたと理解してくれていると思うの。こうやって地道にポイントを稼いでいくのは重要だわ。

 

そして今回は大和さんではなくて長門さんに頼んだ事も重要よ。たしかに大和さんなら長門さんと同じように駆逐艦の子達全員に奢るのは苦も無いことだわ。でもそんな事をされてしまったら、その分初霜の貰いが少なくなってしまうし…長門さんに恩を売ることも出来なくなってしまうわ。今回長門さんの人気が上がった事に対して、大和さんは不満を感じていなさそうだし…やっぱり今回は長門さんに頼って大正解だったわね…うふふふ。




久しぶりに連続して投稿する事が出来ました。まえがきでも書いたとおり、今回は竹の子料理にしてみましたが、いかがだったでしょうか。私自身、この時期に京都方面に出張がありますと、京都の錦水亭(きんすいてい)で竹の子料理を食べる事がよくありますが、この時期の竹の子料理は本当に美味しいですね。錦水亭も昔と比べると(と言っても、もう二十年近く前になりますが)、少し味が変わったかな…と思いますが、今の味も個人的には結構好きなため(特に今回の話に登場させた若竹煮…といっても錦水亭のそれは汁物ですが)、京都出張の楽しみの一つでもあります。

さて今回登場しました天龍組と龍田組。まさに私の鎮守府の遠征艦隊の編成どおりでして…私の鎮守府では第三艦隊として天龍+第30駆逐隊(如月を除く)、第四艦隊として龍田+如月+第11駆逐隊(吹雪と初雪を除く)な感じで遠征に勤しんでもらっています。という事で、今回の物語は普段縁の下の力持ちとして頑張っている遠征艦隊に登場してもらいました。駆逐艦の子達の物語を書く時、毎回導入部分でちょっと苦労しているのですが、今回は珍しくサクッと書く事が出来まして…この面子は結構お気に入りだったりします。

竹の子堀り…私も何度か実際にやってみた事がありますが、これ結構大変なんですよね…。また採れたての竹の子であればそのまま焼いて食べたりする事も出来ますが、今回鳳翔さんがやったように、下処理をするとなると灰汁抜きのために米ヌカを使ったり…と結構面倒でして…間違いなく水煮を買った方が楽だったりしますw。とはいえ、やはり自分で収穫した物は格別だと思いますし…という事もあり、今回の戦艦娘や一航戦の仕打ちに駆逐艦の子達が大泣きする事になったような…w。

もっとも結果的には、長門に奢らせる事に成功していますから、今回の遠征艦隊の駆逐艦の子達はかなり満足して駆逐艦寮に戻ったのではないかな…と思っています。また初霜ちゃんのアイデア(内心は真っ黒で下心満載ですが…)で、長門も駆逐艦達からの感謝がもらえましたから、長門も満足していそうな気が…。それにしても赤城さん…勝手に商品を賄い食として食べてしまって大丈夫だったのでしょうか…こちらは後から鳳翔さんから怒られていそうです。

次回は流石に少し時間が空く事になるかと思いますが、また時間が取れましたら春の料理を続けて書いていきたいな…と思っています。今回も読んでいただきありがとうございました。


若竹煮 (四人分)
竹の子:二本分くらい (400-500 gくらい)
ワカメ:100 g
出汁汁:400 mL
醤油 :30 mL
味醂 :30 mL
塩  :5 gくらい(味の調整)


炊き込みご飯は一般的な炊き込みご飯のレシピに竹の子を薄切りにして入れればOK

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