鎮守府の片隅で   作:ariel

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最近、新規参入艦が少し続いた感がありますので、今回は古参の艦娘から摩耶さんに登場してもらいました。また、食べ物の方もニョッキやロールキャベツなど洋風の物が続いていましたので、基本に戻る形で今回は和食にしてみました。とはいえ…丼物を出すのは少し勇気がいりまして…この手の料理は、色々と好みがありますので、好きな人と嫌いな人に綺麗に分かれてしまうんですよね^^;。


第五二話 摩耶と玉子丼

「あっ、やっぱりここに居た。愛宕の姉貴、飯奢ってくれよ。」

 

「摩耶?来て早々に『奢ってくれよ』はないんじゃない?」

 

今日も来店した艦娘のお客さん達に料理を出していますと、いきなり重巡洋艦の摩耶さんがお店にやってきました。摩耶さんのお姉さんである高雄さんや愛宕さんは、このお店のお客さんとして時々やってきますが、摩耶さんが来るのは珍しいですね。…とはいえ、愛宕さんの台詞ではありませんが、入ってきていきなり『奢ってくれ』というのはいかがなものかと思います。それに重巡洋艦である摩耶さんは、それなりのお給金を貰っている筈ですから、それ程お金に困るというのは考えられません。

 

「そんな事言われたって…このままじゃ、今日の夕食が食べられないんだよ!姉貴は、あたしが飢えても良いってのか?」

 

「摩耶?…馬鹿めと言って差し上げますわ。」

 

「どうせそう言われると思ったから、高雄の姉貴には最初から頼んでねぇ~よ!という事で、愛宕の姉貴、あたしに夕食奢ってくれよ!」

 

摩耶さんは非常に活動的な子で、この鎮守府では天龍さんと同様に駆逐艦など小さな子達から人気がある子です。ですから、ひょっとしたら駆逐艦の子達に何かしてあげた事で、お金が足りなくなっているのかもしれませんね。とはいえ、普段駆逐艦の子達と鎮守府食堂で食事をしている摩耶さんです。鎮守府食堂の食事は補助が出ていますので非常に廉価ですし…そこでも夕食を食べる事が出来ない懐具合…あまり考えない方が良さそうですね。

 

「摩耶?無駄使いをしたらダメだといつも言っているでしょ?でも…まぁいいわ。お腹を空かせた可愛い妹のために、ここは私がパンパカパ~ンと一肌脱いであげようかしら。鳳翔さん、この子に何かお腹が膨れそうな物準備してあげられるかしら…一番安い料理で。あと、私も同じ料理をお願いね。」

 

「サンキュー、愛宕の姉貴。ま、一番安い料理ってのは仕方ないか…。鎮守府食堂ではなくて、鳳翔さんの店で夕食が食べられるなら文句は言わないさ。」

 

愛宕さんは気楽に『一番安くてお腹の膨れる料理』と注文をいれましたが、これは実は結構大変な注文です。まずはお腹が膨れる料理…という事ですから、揚げ物などが思い浮かびましたが、揚げ物の場合は中身を考えますと愛宕さんのもう一つのリクエストである『一番安い』という部分が引っ掛かります。また揚げ物の場合、流石に揚げ物だけを出すという訳には行きませんので、必然的にご飯やお味噌汁、そしてもう一品程小料理を出すとなりますと…。揚げ物料理という選択肢は除外した方が良さそうですね。

 

ここは発想を逆転させて『一番安い』という部分から考えてみましょうか。私のお店で最も安いメニューはご飯です。これはご飯とお味噌汁と漬物だけの簡単なメニューですが、飲んでいる時の〆や、好きなおかずと一緒に注文する子も多いため、意外とよく出るメニューでもあります。とはいえ、流石にこの状況でご飯とお味噌汁、そして漬物だけを摩耶さんに出すのは可哀想ですし、そんな事は注文をした愛宕さんも望んでいないと思います。それに…愛宕さんも同じ物を注文するという事は、料理好きな愛宕さんが私を試している訳ですから、その回答としてご飯だけというのは、もってのほかです。

 

…いえ、ご飯という部分は考えから捨てなくても良さそうですね。要は、ご飯でお腹を膨らませておいて、なおかつ何か違う物で満足感を与える事が出来れば良いのです。また値段という縛りがありますから、あまり凝った物は出せませんから、必然的に少し味が濃い目で安い食材を使用した料理を用いて、ご飯をしっかり食べてもらう…この戦略で行きましょう。そうなりますと…丼物を何か準備するのが良さそうですね。

 

丼物でしたら、元々ご飯と一緒に食べる事が前提の料理ですから、味も濃い目ですし満足感も得られると思います。また、上に載せる物も色々自由が利きますから、非常に安価な値段で満足感のある料理を提供する事が出来るでしょう。上に載せる物…簡単に思い浮かぶ所では…親子丼や他人丼であれば、かなり安価に…いえ、おそらくご飯を多目にしてしまえば、肉類がなくても満腹になると思いますから、肉類を全て省いた玉子丼でも良いのではないでしょうか。これなら愛宕さんの希望を叶え、なおかつ摩耶さんにも満足感を味わってもらえると思います。

 

「愛宕さん、摩耶さん、今回出す料理ですが、玉子丼はどうでしょうか?これなら値段も安いですし、摩耶さんにも満足してもらえると思いますが。」

 

「あたしは奢ってもらう立場だから、何でもいいよ。鳳翔さん。」

 

「…流石は鳳翔さんね。私も丼物までは思いついたけど、親子丼や鶏そぼろ丼かな…と予想していたから、玉子丼は意外だったわ~。やっぱり、なかなか鳳翔さんには勝てないわね~。高雄姉さんも、一緒に食べましょうよ。という事で、鳳翔さん。玉子丼を三つお願いね。」

 

どうやら、愛宕さんのチェックにも合格が出たようですね。おそらく親子丼を提案していてもチェックは通ったと思いますが、鶏肉も除外した丼という事で、愛宕さんの意表を突く事が出来たのだと思います。とはいえ、鶏肉を抜いた事で旨みが落ちてしまう事は確実ですから、それに負けないだけの美味しい玉子丼を作らなくてはいけません。それに…折角私のお店に来店してくれた摩耶さんにも、美味しい料理を食べて欲しいですし、ひょっとしたらこれが切欠となって時々来店してくれるかもしれないですから…今回は特に頑張らなくてはいけませんね。それでは早速作りましょうか。

 

玉子丼は御飯の上から載せる玉子の部分が肝です。この玉子をいかに半熟状のトロトロの状態で御飯に載せて、摩耶さん達に食べさせる事が出来るか…ここがポイントですね。それではまずは、数少ない具となる玉ねぎを薄切りしなくてはいけません。そして肝心の玉子は、ボールを使って溶きほぐしておきます。

 

それでは早速フライパンでご飯の上からかける具の部分を作りましょう。今回は親子丼などと違い、玉子と玉ねぎのみのシンプルな具です。そしてこの二つだけで、鶏肉などの旨味に匹敵する味を出さなくてはいけませんし、御飯が進むようにしなくてはいけません。ですから今回は、はっきりとした味を作るために、出汁と醤油をしっかり使った少し濃い目の味にします。

 

フライパンに日本酒とみりん、そして醤油を入れて、旨味を入れるためにだし汁も加えてから、一度煮立てる事で味をまろやかに整えます。そして薄切りした玉ねぎを入れてしっかり煮る事で、玉ねぎが透明になるまで火を通します。…これで、少し濃い目の味が染み込んだ、噛むと甘味が広がる美味しい玉ねぎの出来上がりです。それではここに溶いた玉子を回しながら入れる事で全体的に玉子を広げたら、再び煮立てた後に火を止めて蓋をします。後はこの状態で数分間蒸らす事で玉子が半熟状になるように待つだけですね。

 

蓋の隙間から美味しそうな香りが漂ってきましたし、隙間から見える玉子も丁度良い半熟状になりましたから、これで大丈夫ですね。それでは炊きたての御飯を丼によそってから、出来上がった具材を上から載せます。そして最後に具材を作る時に出来た煮汁をかけて完成です。折角ですから、色合いと口の中で広がる香の変化をもたらすために、三つ葉を少し上から散らしておきましょうか。

 

「摩耶さん?それに愛宕さんに高雄さん。玉子丼が出来ましたので、どうぞ召し上がってください。」

 

 

 

重巡洋艦 摩耶

 

 

…まさか、あのぬいぐるみがあんなに高かったとは、あたしの誤算だったなぁ。あれであたしの今月の給料は全部無くなっちまったし、同部屋の鳥海には笑われるし…散々だぜ…まったく!鳥海には口止めをしておいたけど、こんな事が姉貴達の耳にでも入っていたら…特に高雄の姉貴はこういう事はうるさいからなぁ。それにしても、今日は夕食抜きだと覚悟していたんだけど、運が良い事に愛宕の姉貴が見つかったからラッキーだったぜ。

 

事情を話さないと絶対に奢ってくれない高雄の姉貴しか居なかったら今日の夕食は抜きだったんだが、愛宕の姉貴は、細かい事情は話さなくてもちゃんとお願いすれば、飯くらいは簡単に奢ってくれるからなぁ…チョロイもんだぜ。ま、奢ってもらえるならあたしは何だって食べるさ。とはいえ、ここはあの鳳翔さんのお店。何が出たって美味しいという事は、姉貴達の話を聞いて知っているし、鎮守府食堂の味に慣れ親しんだあたしにとったら、どんな物でもご馳走に違いないぜ。

 

…と思ったら、愛宕の姉貴が注文してくれたのは、玉子丼か。まぁ、あたしも丼物は好きだから問題ないけどさ…せめて鶏肉の入った親子丼が良かったな…。ま、文句は言わないけどさ。よしっ!まだ丼から湯気が立っているホカホカの丼物だから、早速いただくか!鎮守府食堂でも親子丼はあるからあたしも時々注文するけど、噂に名高い鳳翔さんのお店の玉子丼はどんな味なんだろうな。

 

あぁ…早速飯を掻き込むために丼ごと口に近づけたんだが、出汁の旨そうな香がどんどん漂ってくるなぁ。もう我慢ならないから、一気に上の具と一緒にご飯を…。おぉ!丁度良いくらいに半熟になった玉子とご飯の相性が最高だぜ!このフワッと少しだけ溶けた玉子が良いんだよなぁ。鎮守府食堂のこれは、どうしても大量に一気に作っているから、半熟はまず味わえないけど、やっぱり鳳翔さんの所の作り立ては凄いもんだなぁ。

 

それにこの味がまた最高だよな。半熟玉子の甘さと少し濃い目の醤油と出汁の旨さ…これは飯が進むよな!ん?そうそう…やっぱり玉ねぎだよっ。親子丼の時も玉ねぎは美味いんだけど、この玉子丼の玉ねぎも…。うんっ、噛んだ時に少しだけキュッとなる、この絶妙な歯応え、それと噛んだ瞬間にグッと出てくる汁の濃い味。ご飯や玉子の部分を噛む時の汁の味とはまた少し違った、濃い目の味が玉ねぎの中から…これは箸が止まらないぜっ。

 

ん?この上に載っている緑の葉っぱは何だ?鎮守府食堂ではネギが載っていたと思うけど、それと同じような物だよな?香は特にしないようだけど…とりあえず一口…。お、おぉぉ…これはあたしを駄目にする野菜だなっ。歯応えはシャキシャキしていて、噛んだ瞬間にさわやかな香りが口の中に広がって…これ、本当に拙いって。こんなさわやかな味が広がったら、また玉子丼がどんどん食べられるようになっちまうじゃないかぁ!丼の中には、もう半分くらいしか残っていないってのに、これ以上食欲が増しちまったら、あたしはどうすればいいんだよっ!

 

「摩耶?美味しそうで良かったわ。ところで…摩耶の買った新しいぬいぐるみちゃんは、そんなに可愛い子なの?摩耶が給料を全部使ってまで手に入れたみたいだから、今度私にもゆっくり見せて欲しいわぁ。」

 

ブホッ!

 

「あらあら、摩耶?折角のご飯を吹き出すなんて、お行儀が悪いわよ。ま、摩耶のそんな姿が見られただけでも、奢ってあげた甲斐があったかしらぁ。」

 

な…なんで愛宕の姉貴が知っているんだよっ!こういう情報が愛宕の姉貴にばれちまったら、まるで人間スピーカーのように周りに話しちまうから、一番知られたくない相手だったのによ…。高雄の姉貴だったら、説教はされても吹聴される事はないのに…よりにもよって…。しかも、今日は奢ってもらっているから文句も言えないし…あたしのバカ、バカ、バカ…ク…クソがっ!

 

 

 

鳳翔

 

 

えっと…その…摩耶さんにも意外な面があったのですね…。駆逐艦の子達に何かしてあげてお金がなくなったのではなく、ぬいぐるみを購入してお金が無くなっていたのですか…。ま…まぁ、その…私も愛宕さんの言葉に少し驚いてしまいましたが、摩耶さんが恥ずかしそうに俯いている姿を見ますと、なんだか私まで申し訳ないような気持ちになってしまいます。

 

「そ…その摩耶さん?別にぬいぐるみを買う事は恥ずかしい事ではないのですから…。そんなに恥ずかしがらなくても、誰も笑ってなどいませんから、顔を上げてください。その…良かったら、もう少し具がありますので、おかわり食べますか?」

 

笑いを噛み殺しているような表情の戦艦娘や空母娘、そして重巡洋艦娘達を一睨みしておきますか…。誰にだって好きな物はありますし、摩耶さんにとって、それがたまたま可愛いぬいぐるみさんだっただけですから、それを笑うのは流石にどうかと思います。摩耶さんも少し落ち着いたのか、顔を上げて黙って私に丼を差し出してきましたし、どうやら店の中の雰囲気も少し落ち着いたようですね。

 

「それにしても、摩耶さんがぬいぐるみが好きだったとは思いませんでした。それに、そんなに高いぬいぐるみを買うとは、思い切った事をしましたね。」

 

「そ…その、鳳翔さん。たまたま気に入った物があったから、値段を見ずに買っちまったあたしが悪かったんだよ…。あ~ぁ、明日から給料日まで、どうしたもんか…流石に参ったぜ…。」

 

「あらあら、摩耶?それくらい、あたしがパンパカパ~ンと奢ってあげるから、大丈夫よ。それよりもっ!そのぬいぐるみ、後でちょっと私に見せてね。どんなぬいぐるみか気になるじゃない。」

 

高雄さんは苦笑いしていますが、愛宕さんは摩耶さんのぬいぐるみに凄く興味があるようですね。まぁ、その代わりに給料日まで奢ってやると言っているわけですから、摩耶さんにとっても悪い取引ではないと思いますが…先程の一件がありますから、なかなか素直には頷けないようですね。とはいえ、他に選択肢はなさそうですが。

 

「ちっ、分かったよ。見せればいいんだろっ、見せれば。でも愛宕の姉貴の部屋には持ち込ませないからなっ!…クソがっ。」

 

 

ガラッ

 

あら?初霜ちゃんが来店ですね。という事は大和さんも…あら?今日は初霜ちゃん一人ですかね?

 

「こんばんは鳳翔さん。先に行って待っているように言われたので、一人で来ました。そこのカウンター席いいですか?」

 

あぁ、大和さんとは私のお店で待ち合わせという事ですか。丁度摩耶さんの隣に二席空いていますので、初霜ちゃんがそこに座りました。摩耶さんは不思議そうな顔をして、初霜ちゃんを見ていますね。たしかに駆逐艦の子達が私のお店に来る事は稀ですから、初霜ちゃんの事を不思議そうに見ている理由は納得できます。

 

「ん?初霜じゃん。どうしたんだ、こんな所に。はは~ん、お前、小遣い掻き集めて鳳翔さんの所で食事ってか?ま、お前の小遣いでも掻き集めれば、今日あたしが食べた玉子丼くらいなら食べられるもんなっ。あれ美味いからお勧めだぞっ!」

 

…摩耶さん。悪い事は言いませんから、今のうちに帰った方が精神的なダメージが少なく済みますよ…。たしかに駆逐艦の子達の中には、お小遣いを掻き集めて私のお店に来る子も居ますが、初霜ちゃんの場合は…。

 

ガラッ

 

遅かったですね。もうこうなってしまっては、仕方ありません。摩耶さんの隣に居る高雄さんや愛宕さんは、時々私のお店に来るために事情を知っていますから、これからの惨状が予想出来るのか、顔を横に振っています。

 

「こんばんは、鳳翔さん。初霜の方が先に来ていたのですね。あらっ、それは玉子丼ですか?たまには、こういう丼物も食べてみたいですね。それに、その溶けそうな半熟の玉子も美味しそうですね。今日は私もそのような丼を注文してみましょうか。…ただ、玉子だけでは少し寂しそうですね。鳳翔さん、すいませんがカツとじ丼をお願いします。初霜もそれで良いですか?」

 

「はいっ!大和さん。ごちそうさまです!」

 

カツを溶き卵で一緒に煮て、それをご飯の上からかけるカツとじ丼を注文してきましたか。たしかに、隣に座っている摩耶さん達が食べていた玉子丼から連想出来る丼物ではありますが…。あぁ、やっぱりそうですよね…摩耶さんが茫然とした表情で初霜ちゃんを見ています。

 

「あ…あたしが玉子丼で、駆逐艦がカツとじ丼?おかしいだろっ。あたしも今日は奢ってもらってるから、あまり人の事は言えないけど…。初霜…お前…あたしを怒らせちまったなぁ!」

 

たしかに…摩耶さんも今日は奢ってもらっていますから、あまり文句が言えるような立場でないことが、余計に摩耶さんにとって面白くない所なのでしょうね。ですが摩耶さん?この状況で初霜ちゃんにちょっかいを出すような事になりますと、大和さんが黙っていないでしょうから、あまり不穏当な発言は…。それに、私のお店での揉め事は困ります。

 

「あの…摩耶さん?その…初霜では、一人で全部カツは食べられませんから…少し、貰ってもらえますか?」

 

「ん?は…初霜っ!お前、凄くいい奴だなっ!サンキューな!」

 

…こういうのを、摩耶さんの言葉で言う所の『チョロイ』というのでしょうか。おそらく、隣に居る高雄さんや愛宕さんも私と同じように考えたのか、肩を竦めて苦笑いしています。とはいえ、摩耶さんもお腹一杯今日の夕食を食べる事が出来そうですし、初霜ちゃんの好意でお肉も食べる事が出来ますから幸せそうな表情ですね。…今日も鎮守府は平和です。

 

 

 




HATSUSHIMO 


省略



エッ?酷い、酷いわ、作者さん。折角初霜も久しぶりに本話に登場出来たというのに、省略するなんてあんまりだわ。初霜だって、いつも悪い事を考えている訳じゃないの。特に今回なんて、摩耶さんに脅されたから、初霜は泣く泣くカツを渡しただけよ。別に下心とか、お近づきになりたいとか…そんな事、これっぽっちも考えていないわ。第一、お金を全て失った摩耶さんにお近づきになっても初霜には短期的には利益が得られな…でなくて、初霜は損得だけで動いている訳じゃないのよ。

それなのに、初霜の心境を省略するなんて…初霜は悲しくて悲しくて涙が出てくるわ。こんな酷い作者さんの話に、初霜はもう付き合いきれないから、もう登場しないわ。エッ?そうでしょ?こんなに可愛い初霜が登場しないと、作者さんもお話を作るのに困るでしょ?分かったわ、だったら初霜に何か美味しい物を食べさせて頂戴。そうしたら、これからも喜んで初霜はお話に登場するわ。



という事でメタな話になってしまったので、今回のHATSUSHIMOの部分は、あとがきの方に入れました。流石にこれを本文の方に入れるのは…ちょっとね^^;



さて…せめて『親子丼』にしてやれよっ…とお嘆きになっている摩耶ファンの皆様、申し訳ありませんw。とはいえ玉子丼は私個人にとって思い入れのある料理だったため、今回はメジャーな親子丼ではなく、玉子丼にしました。玉子丼はシンプルなのですが、これはこれでとても美味しいんですよね。

昔、まだ私が学生の頃、当時同じ研究室には同期生が二名居りました。そして我々三人はとても貧乏でして…結構研究室で米炊いて自炊していた訳です。そしてその頃よく皆で作ったのが、この玉子丼のような廉価版のご飯でしたw。まぁ当時でも、鶏肉くらいは入れたかったのですが、修士や博士課程となると時間的にバイトもほとんど出来ませんし、学会や遊学などで出費も多かったので、本当に貧乏だったんですよね^^;。

その後、同期の一名と私は、当時の教授様の御眼鏡に叶わなかったため、研究室と関係のある企業に払下げられましたが、残りの一名は御眼鏡に叶ったようで、大学に残り現在はとある大学で教授様をしていたりします。そして今でも仕事柄、研究会などの席で同期生達と会う事があるのですが…。先日会った際、昼食として今回書いたような玉子丼を食べる事になりました。その時にお互いに『あの頃、我々が研究室で作っていた玉子丼の方が美味しいわな…』なんて話になりまして、思い出というのは徐々に美化されて最高の調味料になるのだな…と感じた次第で、今回の話の料理ネタになりましたw。皆さんは、何か若い頃の思い出の料理という物はあるでしょうか?

さて、ひょんな所から無駄使いが姉達にばれてしまった摩耶さんですが、その後大丈夫だったのでしょうかw。とはいえ、夕食を食べるためには愛宕さんに頭を下げるしかない状態ですし…奢ってもらう以上文句も言えない訳ですから、しばらくはストレスのかかる生活が待っているような。また愛宕さんは、何処から摩耶さんの情報を手に入れたのやら…ですが艦これキャラ的には、愛宕さんはこういう情報には、物凄く鋭いと感じるのは、私だけですかね^^;

今回は、しばらく書いていなかった重巡洋艦を主人公にしたいなと思っていましたが、次回どうしましょうかね。同じ比率で書いていきますと、駆逐艦の子はほとんど登場させられませんから、駆逐艦を優先して書きたい所なのですが、駆逐艦の子達の物語は…結構書くのが大変なんですよね…と言いますか、最後のネタ部分で約一名駆逐艦が出たがっているようですが^^;

今回も読んでいただきありがとうございました。



玉子丼(四人分)

ご飯 :丼ぶり×4
玉子 :6個
玉ねぎ:1個
三つ葉:適量
出汁 :200 mL
醤油 :50 mL
みりん:50 mL
日本酒:100 mL

今回の物語で使ったような、少し濃い目の味付けにする場合は、醤油の量を少し増やしてください。

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