鎮守府の片隅で   作:ariel

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今回は宣言通り外伝です。前話『空母のバーベキュー大会』の直後の話になる訳ですが…。前回の話の最後で作戦が失敗して、肝心のお肉をほとんど食べられなかった一航戦の二人、勿論このまま終わる筈がありません。そしてこのままの状態でこの二人が空母寮に戻ってしまえば、どうなる事になるのか…そんな事は付き合いの長い二航戦の二人は良く分かっている訳で…ここから自分達が生き残るための策を展開させる事に…。今回は、小料理屋『鳳翔』に代わり、飯屋『翔鶴』が営業します。


外伝9 翔鶴の炒飯

BBQ大会会場  飛龍

 

 

拙いよ…拙すぎるよ…これどうすればいいのよ…。私の目の前には、茫然とした表情で佇む一航戦の赤城さんと加賀さんの姿、そしてお母さんが提督に担がれて帰宅した後のバーベキュー大会の跡。軽空母の子達は勿論、後輩の正規空母の子達もこの後の空母寮での恐怖を予想して、小声で話し合っているけど…私だって逃げたいよ…。たしかにさっきはお母さんと龍驤さん、それと提督の連携プレイで、一航戦の野望を力で打ち破った姿に喜んでいたけど…。赤城さん達がこのまま引き下がるとは思えないし…これ、間違いなく空母寮に戻った後大変な事になるよ…。

 

ここは今日の安眠のために、今居る一番上の私達二航戦がなんとかしないと…。このバーベキュー大会の後片付け、空母寮に戻った後の作戦、それとその作戦準備期間を稼ぐための一航戦の二人の足止め…考えないといけない事が山ほどあるけど…急いで方針を決めないと…。とりあえず五航戦の二人と大鳳に急いで指示して…。

 

「翔鶴、こっちの後片付けは良いから、急いで空母寮に戻ってご飯を炊いて。瑞鶴と大鳳はバーベキューの残り物を掻き集めて、すぐに空母寮に戻る事。何をするかは分かっているよね?あんた達の力に今日の私達や軽空母達の安眠がかかっているんだから、しっかり頼むよ。」

 

「は…はい!飛龍先輩。翔鶴、すぐに空母寮に戻ってご飯を炊きます。何を作るかは、瑞鶴達が戻ったら材料を見て考えますけど…時間が…。」

 

「そこは任せておいて。私達二航戦の力で、なんとか一時間はもたせるから。瑞鶴、あんた達も急いで行動に移って。」

 

「!瑞鶴、了解。たしかにこのままじゃ、間違いなく瑞鶴達も酷い目に合いそうだよ…。飛龍先輩、時間稼ぎよろしく。」

 

はぁ…とりあえずこの会場の後片付けは、雲龍達と軽空母達に任せておいて、五航戦と大鳳は空母寮に先に戻して二次会の準備。この二次会で上手に一航戦の先輩達の機嫌を取らないと私達二航戦まで地獄行きだよ…。赤城さんも加賀さんも、食べ物が絡んでなければ妥協してくれる事もあるし、空腹でなければそう簡単に機嫌も悪くはならないんだけど…今回は両方とも…。あ~ぁ…気は乗らないけど、翔鶴達が二次会の準備をする時間は、私達二航戦が稼ぐしかないよね。とりあえずあの二人の愚痴に付き合って一時間か…厳しい戦いだよ…トホホホ。

 

「赤城さん、加賀さん。良かったら少し話ながらゆっくり空母寮に戻ろうよ~。」

 

「…そう。…私は早く帰りたいのだけれど。」

 

うひゃ~、機嫌は最悪。こりゃ、頑張って時間稼ぎしないと。翔鶴、二次会の準備は頼んだよ。

 

 

 

空母寮の台所 翔鶴

 

 

とりあえずご飯を炊き始めましたが、瑞鶴達が戻ったら急いで二次会の料理を準備しないと大変な事になるわ。今頃、飛龍先輩達が身を削る思いで時間稼ぎをしているのでしょうけれど、私達五航戦も頑張らないと…。一航戦の先輩方は、間違いなくお腹を空かせて気が立っているでしょうから、二次会でしっかり食べてもらって満足してもらわないと、今日は私達にとって悲惨な夜になる予感がするわ。

 

「翔鶴姉ぇ~、大変だよぉ~。バーベキュー大会の跡から残っている材料掻き集めたんだけど、野菜の屑とお肉が一パックしかないよ~、どうしよう…。このままじゃ、瑞鶴達はまっさきに加賀先輩に海軍精神を…。それに、今日はいつも止めてくれる赤城先輩も機嫌悪そうだし…もうお終いだよ…。」

 

…そ…そんな。たしかに私達五航戦も今回のバーベキュー大会では、途中から後先考えずにお肉や野菜を食べていましたが、まさかあれだけあった具材が肉一パックと野菜屑だけになっていたなんて。ですが空母寮の冷蔵庫に、まだ望みがあるかもしれないわ。

 

「大鳳さん。急いで空母寮の冷蔵庫をチェックしてください。何か余っているかもしれませんから。」

 

「翔鶴さん…。そっちも見ましたが、残っていたのは卵だけでした。…今日のバーベキュー大会に、冷蔵庫に残っていた野菜は全部供出してしまいましたから…。後はおつまみ用の乾物だけです。」

 

こっちも駄目ですか…。そういえば、今日のバーベキュー大会で焼くために、空母寮の冷蔵庫の中身は全て持ち出していました。…どうしましょう。このままでは…。ここは料理が得意なお母さんの気持ちになって考えてなんとかしなくては、私達だけでなく軽空母の皆さんや二航戦の先輩達まで被害にあってしまいます。

 

「翔鶴姉ぇ、チャーハン、チャーハンだよ。チャーハンならこの具材だけでもなんとかなるんじゃないかな。いつかお母さんの店の賄食で、残り物を全て入れたチャーハンを食べた事があるんだけど、あれ美味しかったから…。」

 

そうね、瑞鶴。たしかに炒飯なら、この野菜屑とお肉だけでもなんとかなると思うわ。あなたもお母さんのお店でだいぶ成長しているみたいね。そうと決まれば、ご飯が炊けたら急いで炒飯を作らないと。たしか空母寮の台所の片隅には、以前赤城先輩がお母さんのお店から借りてそのままになっていた中華鍋があったと思うから、これを使えば大量に炒飯を作る事が出来るわ。

 

炒飯は時間が勝負ですから、二航戦の先輩達が一航戦の先輩達を空母寮に連れて帰る直前に火を入れて、一気に作らなくてはいけないわね。一番美味しい状態で炒飯を食べてもらえば、赤城先輩や加賀先輩達もきっと満足してくれるはずよ。となると、今の内に具材に簡単に火が通るように細かく切っておかないといけないわね。少しでも食感を良くするために、御飯と同じ程度に細かくしないと。

 

「瑞鶴、今から炒飯を作るから、急いで具材を細かくして頂戴。分かっているとは思うけれど、お米と同じくらい細かく切るのよ。それと大鳳さんは、飛龍先輩に暗号電文『ワレ炒飯ノ準備ヲ開始セリ。詳細ナ帰寮時間ヲ連絡サレタシ』。終わったらお酒と乾物を机に並べて、いつでも二次会が出来るように準備をしてね。」

 

「りょ~かい、翔鶴姉。急いでやっちゃうよ!」

 

「分かりました翔鶴さん。急いで始めます。」

 

これでなんとかなると良いのだけれど…。

 

 

「翔鶴さん、飛龍先輩から暗号電文。『我、後10分デ帰寮スル。』以上です。歓話室にはお酒と乾物の準備は完了、それに体調不良の龍驤さんを除いた軽空母の皆さんや雲龍達も歓話室に揃っています。」

 

「大鳳さん、連絡ありがとう。さぁ瑞鶴、急いで炒飯を作るわよ。」

 

今回の炒飯は、先輩方が大好きな口の中でパラパラ分かれていくような炒飯を作らないと…しかも今回は絶対に失敗が許されないわ。いつもなら中華鍋に御飯と卵を入れて一気に炒めるところだけど、今回は確実を期すために安全な方法で料理した方が良さそうね。少し邪道かもしれないけれど…予め溶き卵の中にご飯を入れて、しっかり混ぜて御飯の周りに卵を塗した後に、塩と胡椒で味付けをしてから一気に炒めましょう。それと本当は炊き立てのご飯で炒飯は作りたくないのだけれど…今回は時間がないから、これはどうしようもないわ。一応、出来るだけギリギリまで待って少し冷ますつもりだから、大丈夫だと思うけれど…。

 

それじゃ時間も迫っているので、始めましょうか。まずは溶き卵にご飯を入れて、しっかり混ぜる事でご飯全体に卵を塗します。後はこの中に塩と胡椒を振って味をつけた後に、鶏ガラスープの素を少し入れて旨味を増やして…。さぁ、ここまで来たら中華鍋に油を塗って強火で一気に炒めないといけないわね。でも今回は火が通り難い具材もあるから、具の野菜に…特に玉ねぎには先に火を通しておかないと駄目ね。具材の方は瑞鶴に任せて、先に火を入れてもらおうかしら。今回辛うじて確保出来た具材…ピーマンに人参に玉ねぎにエリンギ、そしてバーベキューの残りのお肉。本当はネギやチャーシューの方が良いのだろうけれど…今回は仕方ないわ。それに具材の量が少し少ないけれど、今回のようにパラパラした食感の炒飯を作るには、寧ろ都合が良いわ。

 

「瑞鶴、そっちの具材に火を入れておいて頂戴。万が一にもきちんと火が通っていないと、食感が悪くなったり、変な辛味や苦味が出てしまって味が壊れてしまうから、しっかりやるのよ。」

 

「う…うん。分かっているよ、翔鶴姉~。」

 

よし、これで具材の方は瑞鶴に任せたから大丈夫だと思うわ。私は炒める方に専念できるわね。出来上がった後にお米一粒一粒の食感が楽しめるように、おたまを使ってご飯を解しながらしっかり炒めないと…。そろそろご飯が完全にほぐれたわ、それじゃ瑞鶴に任せていた具材をこっちに投入しようかしら。

 

「瑞鶴、具材の準備はいい?それじゃ、こっちの中華鍋に全部入れて頂戴。」

 

ここからはスピードが勝負だわ。具材と炒めたご飯がしっかり混ざるようにかき混ぜながら炒めないと。それと中華鍋をしっかり振って…今回は頑張らないといけないわね。…いよいよ最後の仕上げね。香ばしさを演出するために、醤油を少しだけ中華鍋の縁から回すように入れて…よしっ、完成よ。五航戦特製の残り物炒飯の完成!…これで先輩方が満足してくれると良いのだけれど。

 

「瑞鶴、大鳳さん、なんとか完成したわ。直ぐに二次会の会場に運ぶわよ。それと瑞鶴?これ以上、赤城先輩と加賀先輩を刺激しちゃ駄目よ。」

 

 

あぁ…やっぱり私達が想像していた通り、二次会会場は空気が張りつめたような緊張感が漂っているわ。その中心は勿論、一航戦の先輩方なのだけれど。目を瞑ってジッとしているだけだから、私が思っていたよりは機嫌は悪くなさそうだわ。…飛龍先輩、蒼龍先輩…お疲れ様です。先輩方の疲れ切った表情を見れば、この一時間がどんな一時間だったのか、私達でもよく分かります。あとは、この特製チャーハンで完全に機嫌を直してくれればよいのだけれど…

 

「あの…赤城先輩、加賀先輩?…その…今回の二次会のために炒飯を作ってみたのですが、食べてもらえないでしょうか。具材は、今回のバーベキュー大会の残り物しか準備出来ませんでしたが…」

 

「…チャーハン。それは香り立つ黄金のご飯。お肉と野菜が散りばめられた様は、まさに宝石箱のような美しさ…。」

 

「あ…赤城さん?これは駄目ね。空腹で正常な判断がつかなくなっているわ。翔鶴、早くチリレンゲを持ってきなさい。この際、私も具材には拘らないわ。」

 

 

 

加賀

 

 

今回のバーベキュー大会は酷い目にあったけど、なんとか二次会ではそれなりの物が食べられそうね。ま、二航戦の二人に小一時間も連れ回されたのはどうかと思うけれど、空母寮に戻ったら一応二次会の準備をしていたという事は、それなりに気を使っているという事ね。それにしても…お腹が空きました。赤城さんではないけれど、流石にこのままでは私も眠れなかったから、この二次会はありがたいわね。

 

…炒飯ですか。まぁ、残り物を使ってなんとか私達に美味しい物を食べさせようとした…という心意気は買いましょう。五航戦が作ったという事のようですが、流石に今回は料理の上手い翔鶴が中心に作っているでしょうし、もう一人の五航戦もお母さんの店で鍛えられているという事ですから、それなりに味は期待出来そうね。大皿からとりあえず取り分けてみたけれど、お米はきちんとパラパラしているようだし、お米の中に丁度良い感じで肉や野菜が散りばめられている…いい感じね。

 

レンゲでチャーハンを掬うとよく分かるけれど、本当にご飯一粒一粒がパラパラ分かれています。という事は、ご飯粒それぞれに卵が上手にコーティングされているという事なのだろうけれど、上手に作ったものね。まずは一口…あら、良いじゃない。口に近づけた際に鼻から入ってくる香ばしい香りも良いけれど、少し濃い目の塩味と後ろに隠れた旨味が良いわね。それに…この香ばしさは普通の焦げ目だけではなさそうだわ。…なるほど、これは醤油の香ばしさ。という事は、最後に醤油を使って焦げ目を作って、香ばしさを出しているのだと思うけれど…翔鶴やあの子もやるものね。

 

それに肉や野菜が丁度米粒に近い大きさで切られているから、とても食べやすいわね。お米の食感の中に時々感じる人参の固さ、それと色彩を楽しませるピーマンの緑色、それに口の中でキュッとした異質の食感を楽しませてくれるエリンギに、噛んだ際に甘みを感じさせる玉ねぎ…残り物と言っていたけれど、こういう具材もなかなか良い物です。勿論細かく切られたお肉も、丁度噛むと肉の旨味がグッと溢れて、さらに食が進む…。空腹は最良の調味料と言うけれど、この炒飯なら空腹でなくても楽しむことが出来る逸品だと思います。

 

…さてと、これだけ美味しい炒飯だという事が分かれば、もう余計な事を考える必要もないでしょう。後は赤城さんに全部食べられてしまう前に、私も食べられるだけ食べないと。多少お行儀が悪いと思われても、今回だけは赤城さんと同じように、私も一気にかきこもうかしら。

 

「翔鶴、瑞鶴、今回の炒飯は美味しかったわ。ま、五航戦もやるものね…。もっと食べたいから、お代わりを入れて頂戴。急いで。」

 

 

 

翔鶴

 

 

はぁ…良かった…。なんとか先輩方に気に入ってもらえたみたい。これでも機嫌が直らなかったら、私と瑞鶴は真っ先に大変な事になっていたと思うけれど、どうやら助かったようね。赤城さんは勿論、あの加賀先輩まで掻き込むように私達五航戦が作った炒飯を食べてくれているし、加賀先輩が私達を褒めてくれるなんて…。…良かった。

 

一航戦の先輩方の雰囲気が柔らかくなったから、ようやく会場全体を覆っていた緊張感も薄れて、普通に二次会の酒盛りが始まったようね。軽空母の子達もやっとリラックスしてお酒を飲み始めたし、雲龍さん達もホッとした表情だわ。これで私達姉妹も落ち着いてお酒が飲めそう。バーベキュー大会ではたくさん食べたはずだけれど、なんだか少しお腹が空いたような気がするのは、たぶん緊張感が薄れてホッと出来たからなのでしょうね。

 

「そこの五航戦。折角だから、私のお酒もこの二次会に提供するわ。部屋に置いてあるから持って来て頂戴。それと雲龍、マイクの準備をしなさい。折角の二次会だから楽しまないとね。」

 

「え?加賀先輩のお酒って、あの高いやつでしょ?ラッキ~。早速持ってくるね。翔鶴姉、行こうよ。」

 

加賀先輩が自分のお酒まで出してくれるなんて、機嫌が良くなったみたいで本当に良かったわ。それに先輩の持っているお酒は、瑞鶴が言っているように、たしか大吟醸の高いお酒ばかりだった筈。今日は瑞鶴だけではなくて、私も運が良いみたい。

 

 

 

飛龍

 

 

拙い…拙いよ。加賀さん…そこまで機嫌が良くならなくても良いのに…。マイクを準備させるという事は、たぶん強制参加のカラオケ大会が始まるんだろうけれど…こりゃ、私達が解放されるのはまだ先かな…。五航戦は何も考えずに加賀さんの部屋からお酒を持ってくるみたいだけれど、あんた達こうなったらどうなるのか…たぶん分かってないだろうね…。これは私達二航戦も、今日は覚悟を決めないといけなさそうだよ…トホホホ

 

 

「マイクが来たみたいね。それじゃ最初は私が歌うけれど、次は…そうね、飛龍あなたが歌うのよ。演奏は…飛鷹、そこのピアノでお願いね。あとこれ…楽譜よ。」

 

えっ、えっ、私も歌うの?といっても、ここで断ったら折角ここまで機嫌を良くさせたのに元の木阿弥になっちゃうし…もう自棄だわ。とりあえず加賀さんの高いお酒飲んで、テンションあげておかないと。

 

♪ ジャジャ~ン ♪ ジャ~ジャジャ ジャ~~ ジャジャジャ~~~ ♪

 

おっ、久しぶりに飛鷹のピアノ聞いたけど、えらく気合入ってるじゃん。

 

「♪XXXXXXX XXX『XxXXX~』♪」 

 

って、加賀さん、いきなり演歌~!?いや…まぁ、加賀さん、歌は上手いから演歌でも華があるんだけどさ…。その…もう少しフォローしやすい曲にしてくれると、私達もありがたいんだけど…。

 

(ひ…飛龍先輩…)

 

(何も言わないの瑞鶴。何でもいいから、早く場を盛り上げなさい!)

 

とりあえず機嫌良く歌いきってもらわないと…本当に世話がやけるよ…。ほら、瑞鶴に翔鶴!もっと頑張って盛り上げるのよ。…でもこの後、私も歌うんだよね…どうしよう…。

 

 

『♪皇~國の光 輝や~かせ~♪』

 

「ふぅ…皆で歌う軍艦マーチも良いものね。…さて、今日は久しぶりに私も楽しい時間が過ごせたわ。こうやって二次会を空母寮でやるのも悪くはないわね。ただ…私も赤城さんも流石に今日は疲れました。先に引き上げさせてもらうわ。飛龍、後はよろしくお願いします。さぁ赤城さん、私達は先に部屋に戻らさせてもらいましょう。」

 

お…終わった…ようやく終わったよ。もうこっちも疲労困憊。あれだけ飲んで騒いで歌えば、そりゃ楽しい時間だったと思うよ…実際私達もしっかり楽しんだし。でも軽空母の子達はとっくに酒瓶抱えてひっくり返っているし、正規空母だって雲龍達は仲良く酒瓶抱えて川の字。…私や蒼龍もそうだけれど、五航戦や大鳳ももう体力的にギリギリ。赤城さん達が部屋に戻って、みんなホッとした表情だよね…。うん…よく分かるよ、その気持ち。とりあえず赤城さん達も居なくなったし、ようやく一息つけるって感じだよね。

 

「飛龍先輩…今何時?瑞鶴…もう駄目…。」

 

「…もう0330だよ…。私もさすがに疲れたし…。瑞鶴、お疲れさん。とりあえず、あと少しだけ飲む?どうせ今日は、もうほとんど眠れないと思うからさ…。」

 

「ようやく終わったのですね…。先輩達もそうだと思いますけれど、私も流石にもう…」

 

「翔鶴もお疲れさん。あの炒飯は良かったよ。あれのおかげで一航戦の二人の機嫌も直ったようだからさ…功一等だよ。さ、さ、とりあえず飲んだ、飲んだ。」

 

散々一航戦の先輩達に振り回された二次会だったけど、美味しいお酒を提供してくれたりカラオケで先陣を切ったりと、一応気は使ってくれていたんだよね。いや…分かっちゃいるんだけどさ。それに、食べ物が絡まなければ面倒見の良い先輩達だから良いんだけれど。…それにしても疲れたわ。あれ?翔鶴は御猪口持ったまま寝ちゃったよ。しょうがないな~、とりあえず私が代わりに飲んじゃうか…って、瑞鶴も大鳳もコックリコックリしているし。ま、それだけ体力的にも精神的にも疲れたんだろうね。

 

ふぁ~あ、流石の私も少し瞼が…重く…もういいや…このまま…寝ちゃお…Zzzzz。

 

 

 

0600 加賀

 

 

まったく…昨日はたしかに皆で『少し遅くまで』遊んでいたけれど、起床時間になっても動きがないと思ったらこの体たらく。まさか昨日の会場で私と赤城さん、それと龍驤以外の全員が引っくり返っているとは思わなかったわ。それに…今日の朝御飯の当番はたしか…二航戦の二人だったわね。夜遅くまで遊ぶのは良いのだけれど、上に立つ者としてやるべき事はやってもらわないと、下の者に示しがつきません。

 

「おぉ、赤城に加賀やないか。おはようさん。昨日は夜遅くまで騒いどったみたいやけど…って、なんやこれ。こら隼鷹に飛鷹起きんかい。それに千代田や千歳もいつまで寝とるんや。もう起床時間やで。まったく…しょうがないやっちゃな~。こら…祥鳳、瑞鳳、龍鳳、己らもシャキッとせんかい。ほんまに困ったやっちゃな…。」

 

「全くですね、龍驤。赤城は既に朝御飯を食べる準備が完全に整っているというのに…肝心の朝御飯がまだないなんて…。」

 

「赤城さん…昨日あれだけ食べたというのに、よく食べられるわね…。流石は赤城さんだと思うけれど。いずれにせよ、これは海軍精神が全く足りていないわね。仕方ありません…。総員起こ~し。貴方達いい加減にしなさい!今日はいつもどおり勤務があるのよ。これから全員に海軍精神を注入してあげるわ。全員整列!」

 

…まったく。いつまで経っても駄目な子達ね。この有様を見れば、私達一航戦がしっかりしていないといけないという事がよく分かります。本当に困ったものです。

 

 

 

後輩空母達の心の声

 

 

(あれだけ騒いでいたのに、どうして普通に起きられるのよ…。)

 

(あの二人、元気すぎるよ…)

 

(なんで加賀さん達、あれだけ瑞鶴達と一緒に騒いでいたのに、あんなに元気なの…)

 

(折角昨日の夜は無事に乗り切ったのに…。やっぱり私はついてないわ…。でも今回は、妹の瑞鶴も逃げられなかったみたいだし…。)

 

(さすがは一航戦の先輩…。大鳳も一航戦をきちんと名乗れるように、もっと鍛えないといけないわね。)

 

などなど…




はるか昔、まだ昭和脳の上司達が元気だった時代、こういう事結構あったような気がするんですよね。私も若手社員だった昔、こんな感じで様々な当時の上司達に可愛がってもらった記憶があります。しかもあの人達、今回の一航戦の二人のように、翌日も物凄く元気でして…一体どういう体の作りをしているんだ?と疑問に思った事も多々あります。今や私自身がそういう立場になってしまいましたが、未だにあの人達の元気の源が分かりませんw

とはいえ今はそんな時代ではなく、仕事とプライベートをきっちり分ける時代になり(外国人社員も多いですし、今更昔の古き良き時代の典型的な日本の会社には戻れませんからね^^;)、昔のような光景はもう思い出の中だけになってしまいましたが、時々あの頃の滅茶苦茶だった時代、そしてそんな無茶が成り立っていた時代を懐かしく思うことがある私は、たぶんもう年寄りなんでしょうねww。…という事で、うちの鎮守府の空母寮は、現実ではもう見る事が出来ない、このような昭和脳全開&上下関係はハッキリの精神で今後も邁進していく所存でございますw

さて炒飯です。本当はネギやチャーシューのような定番の具材を入れたきちんとした炒飯を翔鶴に作らせたかったのですが、今回はバーベキューの残り物しかないため、家庭でおなじみの残り物処理用の炒飯になりました。しかし炒飯という料理は、冷蔵庫を綺麗にしてくれる料理でして…残り物の処理には非常に有益なんですよねw。我が家でも時々、冷蔵庫の整理のために家内が炒飯を作ってくれる事があります。

今回の作り方ですが、おそらく溶き卵に御飯を混ぜてしまってから炒めるのは正式な作り方ではないと思います。ただ…何かの料理の本でこの作り方を知って以来、結構簡単にパラパラに別れる炒飯が作れるという事から、私は結構このやり方で作っているような…。いずれにせよ、炒飯は火力と勢いで作る料理ですから、短期決戦型で一気に作り上げないと駄目ですよね。

艦これも、いよいよ夏のイベントが迫ってきましたね。舞台は再びソロモン海。いつぞやの悪夢再び…な感じですが、今回は我が鎮守府も夜戦用部隊や機動部隊は充実していますし、資源やバケツも揃っていますから、今回こそ甲を狙ってみたいところです(問題は、まとまった時間が取れるか?なのでしょうが^^;)。皆さん、頑張ってクリアーを目指しましょう。

加賀さんの演歌は、例のアレです…はぃ。ハーメルンは著作権切れていない歌詞は禁止ですから全て伏字にしていますが、頭の中で曲が流れてくる私は…もう駄目かもしれませんw





レシピ
翔鶴の残り物炒飯
(今回は残り物料理ですから…レシピは超適当ですw)

御飯      :適当
具材      :冷蔵庫の残り物全部
卵       :御飯の量に合わせて適量
塩       :適量
こしょう    :適量
鶏ガラスープの素:少し
醤油      :少しだけ
翔鶴の愛    :たくさん

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