鎮守府の片隅で   作:ariel

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今回は、これまで私の話ではあまり登場の機会がなかった、第十七駆逐隊の浜風さんを主人公にしてみました。ただ同行者は浦風達ではなく、第二水雷戦隊の天一号組という事で、矢矧に連れられて食事に行く事に…。料理の方は昨年サイドメニューで使ったきのこのマリネをメインにして書いてみました。


第六六話 浜風ときのこのマリネ

鎮守府司令部 提督

 

 

「提督、矢矧以下第二水雷戦隊、ただいま帰還したわ。途中敵重巡洋艦を主力とする艦隊と出会うも独力で突破、こちらに被害もなく任務は完遂出来たと思うわ。」

 

「ご苦労だった矢矧。これであちらも多少は楽になるだろう。よくやってくれた。…そうだな、褒賞という訳ではないが、今夜はあいつの店で夕食でも食べてこい。勿論、全員俺の奢りだ。」

 

「ありがとう提督、感謝するわ。駆逐艦の子達も今回はかなり頑張ってくれたから、丁度良いご褒美になるわ。それじゃ、少し休憩したら駆逐艦の子達を連れて行ってくるわね。」

 

「あぁ、しっかり楽しんで来い。」

 

矢矧の奴、俺の奢りであいつの店で食事が出来る事が相当嬉しいようだったな。重要任務を無事に完遂してくれた以上、それを労うのは指揮官としての義務だから、早めにあいつに連絡をしておくか。…それにしても、やはり阻止のための艦隊が出てきたか…。通常の海上護衛用の駆逐隊ではなく、二水戦を出しておいて正解だったな。軍令部の命令で重巡洋艦以上を今回動かせなかった以上、攻守のバランスが取れた矢矧達の天一号組は、俺が今回きれる最高のカードだったからな…。よくぞ作戦を完遂してくれたものだ。まぁ、今回の重要物資移送任務、作戦失敗による俺の解任を画策していた軍令部の馬鹿どもには、相応のツケを払ってもらうとして…

 

「Hey! 提督ぅ~。相変わらず良い顔しているネ。とりあえずこの書類は、さり気なく海軍省の法務局に回すネ。But, この書類、本当に法務局が受理してくれるか、心配デ~ス。」

 

…相変わらず金剛は用意が良いな。後ろから味方を撃つ事を画策していたあの馬鹿どもを、最前線送りにするだけの証拠書類は既に準備していたか…。きちんと俺の意を汲み取っていたのは、流石秘書艦と言った所か。こればかりはあいつよりも金剛の方が一枚上手…いや、金剛もまだ甘いな。

 

「金剛…流石だな。だがまだ甘い。法務局が受理するかではなく、法務局の意思に関係なく受理させる。海軍大臣経由で書類を回せば問題はないだろう。あいつは俺に借りがあるから、今回その借りを返してもらう。…それと、俺の膝はお前の椅子ではないぞ。…まったく、最近あいつの目が以前にも増して厳しいのだから、少しは遠慮してくれ…。」

 

「提督ぅ~。軍令部や政治家相手の時は惚れ惚れしマ~スけど、鳳翔には本当に弱いネ。もっとガツンと鳳翔に言わないと駄目ネ。ついでに私も早くもらうデ~ス。」

 

…まったく。これさえなければ、金剛も良い奴なんだが。…それに家の中くらいは、鳳翔のような奴に面倒を見てもらわなければ、俺の精神が病むぞ…。まぁ、仕事では金剛程頼りになる秘書艦もいないが…。

 

「いいから、俺の膝からO・RI・RO。それと鳳翔の店に連絡。これから矢矧達が行くから、俺の奢りで夕食を食べさせてやってくれと伝えてくれ。あ~、復唱はいい。それとお前も矢矧達と一緒に、鳳翔の店に行って来るか?お前も仕事をしてくれたみたいだから、お前の分も出してやってもいいぞ。」

 

「Noネ。ここで提督と一緒に居るデ~ス!それに提督ぅ~、あまり無理しちゃ駄目ネ。」

 

はぁ…艦娘を守る立場の俺が、艦娘に気を使われるようじゃ、俺もまだまだという事か。しかし…今後は、今以上にうちの艦娘を守ることを考えなくてはいかんようだな…。いずれにせよ、危ない橋だったと思うが、矢矧達が無事に戻ってきて本当に良かった。

 

 

 

小料理屋『鳳翔』  鳳翔

 

 

先程、司令部の金剛さんから連絡が来ました。電話での連絡ですから、向こうも今日はとても忙しいようですね。なんでも、矢矧さん達天一号組の皆さんが、難しい作戦を完遂したようです。そしてそのご褒美という事で、今日はあの人が矢矧さん達に私の店で夕食を奢ることになったようです。座敷は一つ空いていますから、そこを使ってもらうとして、料理は何をお出ししましょう。メインの料理は矢矧さん達に好きな物を選んでもらうとして、後は適当に私の方で準備しておきましょうか。

 

小鉢料理…大皿から選んでもらってもよいのですが、今回は作戦成功のご褒美という事ですから、特別なお惣菜を作ってあげたいところですね。今日仕入れてきた材料で、ある程度の人数分作れる料理…。そうですね、今日は様々なきのこがありますから、これを使ってマリネでも作りましょうか。この料理は麦酒に非常に合う料理のため、昨年の秋も私のお店に来てくれた艦娘達には非常に人気があった料理です。今年もたくさんのきのこが手に入る時期になりましたから、そろそろ季節のメニューとして準備しても良い頃合ですし、今日は御祝いという事で他の皆さんに先行して食べてもらいましょう。今回は駆逐艦の子達が中心ですし、おそらく矢矧さんも今日は飲まないと思いますが、料理単体としても少し酸味があり、食べやすい料理ですから喜んでもらえるのではないでしょうか。

 

シメジに舞茸、エリンギ…この三種類のきのこを使えば、美味しいきのこのマリネになりそうです。それでは急いで料理してしまいましょう。まずはシメジと舞茸の石づきの部分を切り落として、小房に分けます。またエリンギも一口大の大きさに切ってしまいましょう。後はこのきのこを炒めるだけの簡単な料理ですが、香り付けのためにニンニクも使いますので、ニンニクの皮を剥いて細かく切り刻んでおきます。

 

先日リットリオさんが私に、イタリア本国から補給されたオリーブオイルを分けてくれましたので、これを使ってマリネを作りましょう。まずはフライパンに切り刻んだニンニクを入れて、オリーブオイルで炒める事で、オリーブオイル全体にニンニクの香をつけます。…そろそろ大丈夫ですね。オリーブオイルとニンニクの香ばしい香が漂ってきました。それでは、ここに先程準備したシメジ、舞茸、エリンギを入れて一気に炒めます。この時期のきのこは旬ですから非常に美味しいですし、オリーブオイルも味や香に癖の少ない物を使っていますから、シンプルな味付けでも美味しく食べてもらえるのではないでしょうか。

 

今回は軽い酸味を出すために、炒めたきのこに白ワインビネガーと白ワインを入れて、そのまま煮詰めます。そして塩と胡椒を使って味を整えたら。ワインビネガーとは異なる爽やかな酸味を追加するために、少しだけレモンを絞ってから、冷まします。そしてある程度冷めたら、これを冷蔵庫に入れて…後は矢矧さん達がやってきたら、冷蔵庫から出せば美味しいきのこのマリネを食べさせて上げられそうです。金剛さんからの連絡では、矢矧さん達は少し休憩してから私のお店にやってくると言っていましたので、冷蔵庫で冷す時間は十分ありそうですね。

 

 

ガラッ

 

連絡どおり、矢矧さんを先頭に雪風ちゃん、浜風ちゃん、初霜ちゃん、霞ちゃん、朝霜ちゃんと、二水戦の天一号組が来店ですね。皆さん、難しい作戦をやり遂げていますし、今日はとても嬉しそうな顔つきですね。

 

「いらっしゃい、皆さん。あの人から連絡は貰っています。今日はあの人の奢りという事ですし、たくさん食べてくださいね。そちらの座敷を使ってください。」

 

「鳳翔さん、今日はよろしく頼むわ。さぁみんな、今日は一杯食べるわよ。」

 

「鳳翔さんのお店は、ご褒美で甘い物を食べさせてもらう時しか来た事がありませんから、浜風も今日は楽しみですね。色々食べてみたいです。」

 

そういえば、今回来店した駆逐艦の子達のほとんどは、二水戦の演習におけるMVPのご褒美として、甘味を食べに来る時しか、私のお店には来ていませんね。おそらく初霜ちゃんを除くと、私のお店できちんとした料理を食べるのは、初めての子が多いのではないでしょうか。今日は私も腕によりをかけて、美味しい物を食べさせてあげなくてはいけませんね。とりあえずメインの料理の希望を聞いておきましょう。

 

「浜風ちゃん。今日は作戦成功のお祝いで、あの人の奢りという事ですから、リラックスして美味しい料理をたくさん食べてくださいね。さぁ、それでは皆さん、とりあえず何を注文しますか?」

 

「えっと…どうしようかしら。正直言うと、私は何でも良いのよね…。あっ、秋刀魚以外なら。」

 

「矢矧さんと同じです。浜風も秋刀魚以外でしたら、どんな物でも歓迎です。」

 

「霞も今日はガンガン行くわ。…秋刀魚はちょっと今日は食べたくないけど…。」

 

「あたいも、秋刀魚以外なら歓迎だぜ。」

 

あらあら…矢矧さんも含めて、流石に先日の第二次秋刀魚の塩焼きパーティーの記憶がまだ残っているようで、秋刀魚以外で…となりましたか。駆逐艦の子達も流石に秋刀魚は少し食傷気味のようですね。まぁ、今日は秋刀魚は置いてありませんから、出したくても出せませんので問題ないのですが、いずれにせよ私の方で適当に何か選んであげたほうが良さそうですね。とりあえず今日は、肉料理と魚料理から適当にメインになる一品をお出しして…先程のきのこのマリネを含めて幾つか小鉢の料理、そして御飯とお味噌汁とお漬物で良いと思います。

 

とりあえず、既に準備が終わっている先程のきのこのマリネを全員にお出しして、他の料理の準備をしましょうか。

 

「分かりました、皆さん。そういう事でしたら、私の方で適当にメインになるような肉料理や魚料理を選ばせてもらいますね。料理の準備に少し時間がかかりますから、出来上がるまで小鉢の料理を食べて待っていてください。一応今日は皆さんに特別な料理を一つ作っていまして…きのこのマリネなのですが、この時期のきのこは美味しいですから、是非食べてみてください。」

 

 

 

浜風

 

 

鳳翔さんのお店に来るのは、いつぶりの事になるでしょうか。前回私が演習でMVPを取って矢矧さん達に連れてきてもらったのは…もうかなり前になりますね。久しぶりの鳳翔さんのお店、しかも今回は前回のように甘味だけではなく、きちんとした料理を食べさせてもらえるようですから、嬉しいです。私達陽炎型の駆逐艦の中でも、陽炎姉さんは時々このお店に来ているようですが、私はこれまで機会に恵まれませんでした。特に浦風と谷風と私で編成される第十七駆逐隊は、金剛の直属艦隊ですから…こういう機会でもなければ、このお店には個人的に入り辛いです…。

 

いずれにせよ、次の機会がいつになるか分からないですから、今日は降って沸いたこの幸運に感謝して、料理を堪能したいですね。まずは最初に出てきた料理、きのこを炒めたような料理が小皿で出てきましたが、とても美味しそうですね。…おや、この料理は冷えている料理なのですね。小皿に触った時に、ひんやりとした感覚が手に伝わりました。様々なきのこが入っているようですが、まずは浜風も見慣れたシメジから食べてみましょう。

 

…うん、これはありですね。口に近づけた時に鼻から入ってくる、ニンニクの食欲を刺激する香、そしてシメジの冷たくてプルッとした食感と癖のない味。どれも素晴らしいです。そして僅かに感じられる酸味や…これはオリーブオイルの味ですね。浜風は以前、鎮守府近くのイタリアレストランに浦風達と出かけたことがありますが、あの時はオリーブオイルの癖が強すぎて、私はあまり好きにはなれませんでした。しかし今回のオリーブオイルは、香りや味に癖もほとんどありませんし、何と言っても酸味と僅かにある塩味が、浜風の食欲を呼び覚まします。

 

次は、こちらの少しヒダヒダになったきのこ…これは舞茸ですね。…これもありですね。先程のシメジとは違った、少しシャクシャクした食感。噛んだ際に簡単に舞茸がばらけて行くこの食感が素晴らしいです。それにシメジの時はほとんど感じられなかった、舞茸の素晴らしい香が口の中で広がり、先程のシメジとは異なった感動を浜風に与えてくれます。こうなれば、最後は何か少し分かりませんが、この薄い直方体のようなきのこも食べなくてはいけません。ここまで素晴らしい味や食感、香が続きましたから、嫌が応にも期待が高まります。

 

…こ、これは…。少し固めの歯応えですが、キュッキュッとした食感が素晴らしいです。…分かりました。これはエリンギですね。味はシメジ同様にほとんど癖がありませんが、この食感には脱帽です。いやはや…陽炎姉さんから話は聞いていましたが、流石は鳳翔さんのお店。一番最初に出てきたこんな小鉢の料理でも、非常に素晴らしい料理でした。これは今日の夕食は非常に期待出来そうです。後から浦風や谷風にも話をしてやらなくてはいけません。…いえ、今度は金剛には内緒で、浦風達と一緒に食べにきたいですね。

 

 

 

鳳翔

 

 

まずは最初のきのこのマリネ、皆さんに気に入ってもらえたようでアッという間になくなってしまいましたね。今回のお客さんはお酒を飲みませんので、料理のペースを早くした方が良さそうです。それに御飯とお味噌汁も直に出してしまいましょう。それでは魚料理…先程のマリネはあっさりしていましたから、少しこってりした濃い目の味付けの物が良いでしょうね。今日はカワハギの煮物を濃い目の味付けで作ってありますから、これを出して…後は定番ではありますが肉料理として豚の生姜焼きも出しましょう。これにお浸し、出汁巻き、御飯、味噌汁、お漬物と出せば、夕食として十分楽しんでもらえそうですね。

 

「皆さん、それでは残りの料理も出しますので、どうぞお上がりください。」

 

「あっ、この料理いいわね。私もこれだけの夕食を食べるのは久しぶりだわ。いただきます、鳳翔さん。」

 

「雪風がこんなに美味しい夕食を今日食べられるのは、司令のおかげですね!」

 

「うん、丁度いいわ。たまにはこういう形で夕食を食べるのも悪くはないわ。」

 

矢矧さんも目を細めて今日の夕食を楽しんでいますね。それに雪風ちゃんもとても嬉しそうです。そういえば、雪風ちゃんも何度か私のお店で甘味は楽しんでいますが、きちんとした料理を食べるのは、これまでほとんど無かったような気がしますね。そういう意味では初霜ちゃんも、普段大和さんと来る時は一品毎に注文ですから、今回のようにご飯も含めて定食のような形で料理が出てくる事は、これまであまり無かったと思いますから、こちらも喜んでいるようです。

 

 

皆さんアッという間に、食べ終わってしまいましたね。駆逐艦の子達の中には既にお腹をさすっている子もいますから、お腹一杯食べる事が出来たのだと思います。それでは今日最後のデザートとして、栗の茶巾絞りを準備していますから、これをお出しして締めくくってもらいましょうか。

 

「さぁ、皆さん。今日のデザートは栗の茶巾絞りです。温かいお茶と一緒に出しますね。」

 

「鳳翔さん、浜風今日の夕食、堪能しました。それに…これは以前初霜からもらった栗の茶巾絞りですね。再びお目にかかれるとは…嬉しいです。」

 

そういえば、以前初霜ちゃんが自分のご褒美を皆さんに配っていますので、この子達は栗の茶巾絞りを食べた事があるのですね。ある意味、この子達には丁度良いデザートになりそうです。

 

ガラッ

 

あら?神通さんと能代さんですね。今日は矢矧さんは駆逐艦の子達と食事ですから、二人で甘味を食べに来たのでしょうか。矢矧さんは栗の茶巾絞りに夢中で神通さん達の来店には気付いていないですが、神通さん達は直に矢矧さんの姿に気付いたようです。

 

「矢矧さん…美味しそうですね。矢矧さんが帰還したので、折角今日は久しぶりに三人で甘味友の会を開く予定だったのですが…。矢矧さんが寮に居なかったので私達だけで鳳翔さんのお店に来たら、矢矧さんは既に夕食までご馳走になり、さらに栗の茶巾絞りまで…。私の納得がいく説明が欲しいですね…。」

 

「矢矧…私と神通さんに黙って、鳳翔さんのお店で料理を食べるに飽き足らず、甘味まで…。私の妹として、そして甘味友の会の仲間として嘆かわしい限りです!」

 

あの…その…矢矧さん?同じ二水戦の神通さんや能代さんに何も言わずに、私のお店に来たのですか?いえ…勿論、報告の必要はないと思うのですが、いつも一緒に行動していた三人ですから、私はてっきり既に伝えてあると思っていました。矢矧さんも神通さん達の声で二人の来店に気付いたのか、顔が真っ青になっていますね。

 

「その…神通さん、能代姉、ちょっと任務帰りで疲れていたから言い忘れただけで、別に他意がある訳ないじゃない!だ…だからね?そんな睨みつけるような顔は…く…駆逐艦の子達も怖がるから止めて欲しいわ…。今日は提督の奢りで…その…ご…ごめん。」

 

神通さん達の迫力に、駆逐艦の子達も怖がっていますね。矢矧さんは懸命に言い訳をしていますが、神通さん達の追及は止まりそうにありません。

 

「なるほど…疲れていて言い忘れた訳ですか。矢矧さん、鍛え方が少し足りないのかもしれませんね…。これでは、私から引き継いだ二水戦の誇りが泣いてしまいそうです。訓練、付き合いますよ?」

 

「え…え~っと、神通さん?その…訓練はまた今度で…。今日は駆逐艦の子達も居るから、ちょっと勘弁して欲しいわ。ちゃんと謝るからさ…ねっ?この茶巾絞り食べるわよね?ねぇ?良かったら皆で一緒に食べて幸せに…ね?」

 

「神通さん、矢矧も謝っていますし茶巾絞りも差し出すようですから、ここは許してやりましょう。ただ…私と神通さんの傷ついた心を癒すには、茶巾絞り一つでは足りないですね。…鳳翔さん、栗の茶巾絞りを追加してください。勿論、矢矧の奢りです。」

 

「ちょ…ちょっと、能代姉、そ…それは…いえ、矢矧が悪かったわ…。その…出来ればお手柔らかに…。」

 

矢矧さん…ご愁傷さまです。まぁ、矢矧さんがきちんと連絡しておけば問題は起きなかったと思いますから、こればかりは仕方ありませんね。矢矧さんの大幅な譲歩によってなんとか話が纏まりそうです。そして駆逐艦の子達も、ようやく自分達の旗艦達の揉め事が収まった事が分かったのか、少しホッとした感じで胸を撫で下ろしているようですね。神通さん達も座敷に居座るようですが、駆逐艦の子達を脅す事は最初から考えていなかったようで、今は駆逐艦の子達から、今回の作戦の武勇伝を聞かせてもらって喜んでいます。どうやら今日は皆に楽しんでもらえそうで、本当に良かったです。

 

矢矧さんだけは、少し心配そうに神通さんと能代さんのお皿から消えていく栗の茶巾絞りの数を数えていますが、ご安心を…。今日は作戦成功のお祝いであの人から奢りと言われていますから、神通さん達の分も上手にあの人に請求しますので大丈夫ですよ。今日も鎮守府は平和です。

 

 

 

鎮守府司令部  提督

 

 

「Hey! 提督ぅ~。鳳翔から請求書が来たネ。凄いpriceになっていマ~スけど、大丈夫ですか?」

 

「ん?…って、おぃ、この甘味代は何だ。あいつらどれだけ食べたんだ…全く。」

 

甘味代が料理代より多いなんておかしいだろう。たしかに好きなだけ食べても良いと言ったが、限度と言うものが…。こんな請求書が何度も来たら、俺が禿げ上がるぞ…。今後は少し自重させないと…。

 

「提督ぅ~、少し後悔してますネ。矢矧に注意しておきマ~スか?」

 

「いや、それには及ばない。まぁ、普段艦娘を酷使している分、これくらいは仕方ないという事か…。しかしこれだけ散財してしまうと…また鳳翔に、怒られそうだな…。」

 

「提督ぅ~、本当に鳳翔には弱いですネ~。」

 




以前、きのこのマリネを登場させた際(たしか利根の回だったと思います)、メールも含めてレシピ出して!と何件か問い合わせが来ましたので、今回一年越しですが、ようやく主役の料理として出す事が出来ました。この料理はこの時期が旬の料理ですから、やはり秋に登場させたかった料理です。今回はシメジと舞茸、エリンギで作っていますが、ここに他のキノコを入れても(例えばエノキなど)勿論美味しいですし、異なった食感も楽しめますので、好きな用に追加してもらえば良いかと思います。ただ…松茸の追加はお勧めしませんがw

さて今回は、二水戦の天一号組が主役の回になりましたが、矢矧が同僚に報告していなかったばかりに、最後の最後で矢矧が肝を冷すことになりました。まぁ、普段一緒に甘味を楽しんでいる神通さんと能代が、自分達に黙って提督の奢りで矢矧だけが美味しい目にあっているとなれば…どうなるかは火を見るより明らかな訳でしてw。いくら作戦成功の御祝いという名目があるにしろ、甘味の魅力に取り付かれたこの二人が納得してくれるとは、とても思えませんw。

また浜風さん、この物語には浦風や谷風も含めて、あまり第十七駆逐隊の面子は出していなかったのですが、一応金剛さん直属の駆逐隊のため…な理由にしてみました。とはいえ、今回浜風はここで夕食を堪能しましたので、浦風達にその話が伝わり…金剛さんに内緒でお店にやってくるかもしれませんが^^;

…それにしても提督…仕事ではかなり有能なようですが、なんだかんだ言って鳳翔さんには完全に尻に敷かれているような…。一応鳳翔さんは普段の生活でかなり提督をたてているのだと思いますが、家の中では提督が完全にコントロールされていそうですね…。まぁ、現実の家庭でも非常によくありそうな訳ですから、何も不思議はないのかもしれませんw。

さて次週は…明日から再び修羅の国のため、おそらく投稿は出来ないと思いますので、次にお目にかかれるのは再来週になりそうです。次の料理…修羅の国での気分次第ですが、落ち着いた料理になりそうです。

今回も読んでいただきありがとうございました。


きのこのマリネ(四人分)

しめじ:160-200 g
舞茸 :160-200 g
エリンギ:200g (四つくらい)
ニンニク:一欠片
レモン :一欠片
オリーブオイル :15 mL (癖が少ないオリーブオイルが良いです)
白ワインビネガー:10 mL
白ワイン    :50 mL
塩       :適量
胡椒      :適量

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