鎮守府の片隅で   作:ariel

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忘年会シーズンになりましたが、なんとか途中まで書いていた物を一つ完成させる事が出来たので、今週も投稿しようと思います。ここしばらく純和風テイストな物が続きましたから、今回は主役もイタリア戦艦にして、イタリア料理で書いてみました。


第七二話 ローマとラザニア

「鳳翔さん、そういう事で明日はお願い出来ますか?」

 

「分かりました、リットリオさん。そういう事でしたら、私も少し頑張ってみます。」

 

今日もいつものように私のお店で食事を楽しんでいたリットリオさんですが、退店の時に私に『明日は、リベのためにラザニアを作ってもらえませんか?』とお願いをしてきました。なんでも、クリスマスはイタリア艦だけでホームパーティーをするようですが、その前に私のお店でも本国イタリアの料理を楽しみたいようですね。

 

リットリオさんは、他の艦娘達が居る前では『リベのために』と言っていましたが、最後にこっそり私に、『自分で料理した以外のイタリア料理も偶には食べたい』と本音も言いました。その気持ちは私も非常によく分かります。私も普段こうやってお店でも家庭でも料理をしていますが、偶には他の人の作った料理を食べてみたいと思うこともあります。…そうです!今度あの人に作ってもらうというのも悪くないかもしれませんね。…以前、金剛さんの惚気話を聞かされた際、あの人は私と出会う以前に、金剛さんと三笠様に手料理を振舞った事があるようですし…『出来ない』とは言わせませんよ…。

 

いずれにせよ、パスタマシンもありますし、イタリア料理ですからあまり慣れない作業になるとは思いますが、明日は頑張ってラザニアを作ってみたいと思います。

 

 

 

翌日

 

 

今日お店で出す料理のほとんどの仕込みが終了しましたね。それでは、そろそろリットリオさんにお願いされていましたラザニアの準備に取り掛かろうと思います。ラザニアは、板状のパスタを耐熱皿に敷き詰め、ベシャメルソースとミートソースで層状に重ねた状態でオーブンで焼く非常に美味しいイタリア料理の一つです。ラザニア用の板状のパスタは、以前金剛さんから貰ったパスタマシンで簡単に作れますし、少しだけ時間がかかりますが、今日は色着きのパスタ生地を使ってラザニアを作ろうと思います。

 

パスタの生地に色をつけるとなりますと、有名な所ではイカ墨を入れて黒くしたり、トマトピューレを入れてオレンジ色にする事があります。しかし今回のラザニアは、白いベシャメルソースとミートソースの赤がありますから…パスタの色は緑色にしてイタリアの国旗のような色あわせにしてみたいですね…。本国を遠く離れたこの地で勇戦してくれている、リットリオさんやローマさん、そしてリベちゃんには、是非祖国の国旗を模した色の料理を作ってあげたいところです。となりますと、パスタ生地は緑色にする訳ですが…たしか、ほうれん草を使って緑色のパスタ生地が作れたはずです。ほうれん草はありますし、早速これを使ってラザニア用のパスタ生地を作りましょう。

 

まずは、ほうれん草を洗って数分だけ湯掻く事で、ほうれん草をしんなりさせます。そしてこれをミキサーで磨り潰してピューレ状にする訳ですが、水分が混じりますとどうしてもピューレがビシャビシャになって、パスタ生地に練りこめませんので、しっかり水分を絞っておきましょう。後は包丁でしっかり叩いてからミキサーでピューレ状にします。…良さそうですね。最後にもう一度包丁で叩いて完全にドロドロのピューレ状にしたら、これで準備は完成です。

 

それではパスタ生地を作りましょうか。パスタ生地は歯応えも必要ですから、薄力粉と強力粉を半々の比率でしっかり混ぜたら、この中に卵などを落とせるように、中央部に少しだけ窪みを作ります。そしてこのくぼみの中に塩、卵、オリーブオイル、そして粘度を調整するために水を少しだけ入れたら…先程準備したほうれん草のピューレも入れます。後はしっかり全体を混ぜて、同時にほうれん草をパスタ生地に練りこんでいくだけですね。…そろそろ大丈夫でしょうか。後はこれを丁寧に丸めて、出来上がった生地を冷蔵庫でしばらく寝かせれば完成です。…ミキサーなどを使っていますが、ほうれん草はどうしてもイカ墨などとは違い液体ではありませんから、完全に緑色が分散したようなパスタ生地にはなりませんね…。とはいえ、非常に細かくほうれん草の成分がパスタ生地に分散していますし、火を入れれば全体的に綺麗な緑色のパスタ生地になってくれるのではないでしょうか。

 

 

それでは、先程冷蔵庫で寝かせていたパスタ生地を取り出しましょうか。このままの状態でパスタマシンにかける事は出来ませんから、最初に麺棒で軽く伸ばします。そして、この軽く伸ばした生地をパスタマシンにかけて更に伸ばしていきましょう。…良い感じに伸びましたね。スパゲッティであれば、これを細く切っていくのですが、今回の料理はラザニア。耐熱皿にシート状に重ねていく訳ですし、敷き詰める前に一度茹でなければいけませんから、適当な大きさにパスタシートを切り分けておきましょう。

 

さぁ、パスタ生地の準備は出来ましたから、次はラザニアで使うベシャメルソースとミートソースの準備ですね。ベシャメルソースは以前リットリオさんから作り方を教えてもらっていますから、たぶん大丈夫でしょうね。お鍋でバターを溶かしましたら、ここに小麦粉を入れて弱火で焦げないように炒めていきます。そしてここに牛乳を少しづつ加えながら、練るように混ぜていきます。大体混ざったでしょうか。非常にトロッとした感じの白い綺麗なソースが出来上がりました。そしてここに白ワインと塩を混ぜて…小麦粉のダマが残らないように鍋底から丁寧に練っていきます。…30分程弱火で練りこみましたし、見た感じではダマもない非常に滑らかなソースになっていますから、これで大丈夫ですね。

 

ミートソースの方は、ベシャメル程手間は掛かりません。こちらは、鍋にオリーブオイルを入れて、ここに玉ねぎと人参の微塵切り、そして牛肉の挽肉を混ぜて塩コショウで軽く味付けをしたら挽肉がバラバラになるように炒めます。最後にトマトピューレを潰しながら入れて…水を入れローリエを入れたらグツグツ煮たたせて、塩と胡椒で味を整えたら完成です。これで全ての準備は整いましたね。それでは、準備出来たほうれん草入りのパスタを茹でましょうか。

 

今回は生パスタを使っていますから、短時間で火が通りますので茹ですぎないように気をつけながら、塩の入った湯で茹でます。…あら、思っていたよりも綺麗な緑色のパスタになりましたね。茹でた事で綺麗な色が出てきたようです。それでは、このパスタをザルに上げて、完全に水分を取除いておきましょう。それと、耐熱皿にこのパスタを積み上げる前に、オリーブオイルを軽く塗っておきましょうか。

 

…いよいよ耐熱皿に全ての準備した具材を積み上げていく時が来ましたね。まずは、耐熱皿の底が焦げ付かないように、耐熱皿の底面、そして側面にパターを塗ります。一番底面の層は、挽肉などが入っているためベシャメルソースよりは崩れにくいミートソースを配置します。そしてこれを一番下の層として耐熱皿に入れて…皿の底全体を覆うように敷き詰めます。この上はベシャメルソースですね。先程のミートソースの層が崩れないように、こちらも丁寧にベシャメルソースを、皿全体に覆うように流し込み、ヘラを使って高低差が出ないようにならします。次はこの上からパルメザンチーズ、そして少しズルをしますが、ピザ用の溶けるチーズをしっかり振りかけたら、この上に先程茹で上げたラザニア用のパスタを敷き詰めましょうか。

 

この料理は、パスタとソースで層状の構造を作るわけですから、パスタの部分はソースの層間を分けるためにも非常に重要です。ですから少しパスタが重なるようにして、完全に皿全体を覆うようにベシャメルソースの上に、緑色のパスタを敷き詰めます。ここまで来たらもう簡単ですね。後は先程と同じように、ミートソース、ベシャメルソースそしてチーズを積み上げて、再びラザニア用のパスタを敷き詰め、これを耐熱皿の一番上まで積み上げていくだけです。…一番上の層はベシャメルソースにして…この上から最後にパルメザンチーズとピザ用の溶けるチーズをしっかり振りかけたら…これで完成ですね。後はこれをオーブンで焼けば出来上がりですから…リットリオさん達が予約していた時間に出来上がるようにするだけです。

 

 

そろそろオーブンの余熱を始めましょうか。今回は表面のチーズに綺麗な焦げ目を入れたいですし、表面に少しだけ出ているラザニア用のパスタ生地をパリッとさせたいですから、240度程で焼く予定です。ですから250度程に余熱をしておきましょう。…そろそろ余熱出来たようですね。それでは準備出来たラザニアをオーブンに入れて240度に温度設定を下げたら、このまま10分程焼きます。

 

ガラッ

 

「鳳翔さんっ! まだちょっと早いけど、Buon Natale!リットリオさんから聞いてるけど、今日はリベにラザニア食べさせてくれるんだよね~。楽しみ~。」

 

「リベッチオ?あまり騒いでいたら食べさせませんよ?鳳翔さん、今日はありがとうございます。あ~、美味しいラザニアを早く食べたいですね。ローマ?あなたも楽しみにしていましたよね?さぁ、今日はそこの座敷を使わせてもらいましょう。」

 

「姉さん、そんな余計な事は言わなくていいから。ま、本国程の物が食べられるとは思っていなけど…少しは…楽しみね?」

 

イタリア組が丁度良い時間に来店のようですね。リベちゃんは相変わらず元気そうですし、その…ローマさんも相変わらずと言えば相変わらずですね。最近は、霧島さんや榛名さん達と一緒に居る事が多いと、長門さん達からは聞いていますが、多少はこの鎮守府に慣れてくれたでしょうか。リットリオさんはこのお店によく来ています…と言いますか入り浸っていますので、このお店には慣れたもので、直に二人を連れて座敷の方に行きました。…それでは、丁度ラザニアが焼きあがりましたから、直にお出ししましょうか。

 

「皆さん、丁度焼きあがりましたから、どうぞお召し上がりください。お口に合えば嬉しいですが…。お酒は…白ワインでよろしいですか?」

 

「…私、ニホンシューがいいわ。」

 

ローマさん…また難しい注文をしてきましたね。いえ、ローマさんが日本酒を気に入ってくれたという事は、存じ上げていますが、まさかラザニアを食べる時まで日本酒を要求してくるとは思いませんでした。しかし…ラザニアに合う日本酒ですか…。ここは白ワインに良く似た、爽やかで少し甘みのある日本酒が良さそうですね。蓬莱泉の空をお出ししましょうか。

 

「分かりました、お酒は、蓬莱泉の空をお出ししますので、これで楽しんでくださいね。それでは、これがラザニアです。後、取り皿はこちらに用意しておきますので…。ごゆっくり。」

 

「あら…これは美味しそうなラザニアですね~。早速いただきましょうか。」

 

「リットリオさん!早くリベに頂戴~。もう我慢出来ないよ~。」

 

「ふ~ん、見た目は…まぁまぁってとこね。」(ゴクッ)

 

 

 

戦艦ローマ

 

 

また姉さんの気まぐれに巻き込まれることになったけれど、私もイタリア料理は食べたかったし付き合うか。それに姉さんが作る以外のイタリア料理も食べたかったところだし、鳳翔さんの料理の腕は信用しているから、問題ないわ。それにしても…ラザニアか…。これ美味しいのだけれど、太るのよね…。姉さんも、もう少し太らないイタリア料理を注文すれば良かったのに…私達は一応高速戦艦なのだから、これ以上体重を増やしたら拙いのよ。

 

それにしても立派なラザニアね。耐熱皿にズッシリ詰まっていて、表面はチーズの焦げとパリッとしたパスタ生地が少しだけ出ている。とりあえずリベではないけれど、早いところ口に入れたいものね。…姉さん、早く取り分けてくれないかしら。さっきは思わず唾を飲み込んでしまったけれど、姉さんに聞かれてないといいわね…。

 

 

あっ、このラザニアは…。姉さんから小皿に取り分けてもらったけど、パスタ生地の部分が緑色。ベシャメルの白に、ミートソースの赤、そしてパスタの緑、まさにイタリアのトリコローレね。流石は鳳翔さんと言ったところかしら。ま、これくらいの事は予想していたけれどね。リベ…たしかに私も嬉しかったけれど、『わ~、この料理、イタリアの国旗と同じ色だぁ~』と騒ぐのは止めなさい。まっ、そんな事はともかく、冷えない内に食べないと。ちょっとお行儀が悪いかもしれないけれど、まずは大きく一口…。

 

ふぅ…流石は鳳翔さんというか、我が祖国の偉大さを改めて思い知らされたというか…。熱々のチーズの焦げた香ばしい香り、それとベシャメルソースの濃厚でクリーミーな味、挽き肉の旨味と野菜の甘みがトマトの酸味とバッチリ合ったミートソース、それに歯応えのある綺麗なパスタ、チーズのトロ味と塩味、どれをとっても完璧だわ。特に、ミートソースの部分を少しだけつけて、ベシャメルソースを絡めたパスタ生地は、もう最高だわね。たった一口の中に、クリーミーさや、酸味や旨味に甘味…そして最良の歯応え、これら全て含んだ最高の料理…流石は我がイタリアが誇るイタリア料理だけあるわ。

 

ちょっとニホンシューを飲んで口を休めたら、次の一口を楽しもうかしら。この日本の白ワイン、最初霧島に無理やり飲まされた時は驚いたけれど、今思えばあれは最高の出会いだったわね。イタリアの白ワインに負けないくらい素晴らしい香りとすっきりした味わい。この出会いを作ってくれた霧島には、今は感謝しているわ。今回のニホンシューは…はぁ…これも素晴らしいニホンシューね。霧島が飲ませてくれるニホンシューもいいけれど、このニホンシューはあの時の物よりもフルーティーな甘さがあって、それでいて雑味がないすっきりした味。チーズなどの濃い味に慣れていた舌が、あっという間に普通の状態に戻ったわ。これで再び、あのラザニアの味の感動を味わえる…。ま、悔しいけど、日本式の白ワインもたいしたものだわ。

 

それにしても…姉さんのイタリア料理は勿論美味しいけれど、このラザニアも甲乙つけがたいわね。特にこのベシャメルのクリーミーな甘みが…太ると分かっていても、止められないわ。このベシャメル…市販の物ではここまでクリーミーにならないから、鳳翔さんが自分で作っている筈よね。それにこのパスタ生地も…。フィットチーネやタリアッテレ辺りまでの太さのパスタなら、こういう緑色のパスタも市販されていると思うけれど、ラザニアまでになるとなかなか売っていない筈。これも鳳翔さんの手作りね…。私の周りでは、姉さんが一番料理好きだと思っていたけれど、上には上が居るという事ね。

 

姉さん…このラザニアが美味しい事は、私も認めるけれど、リベと同じように掻き込むようにして食べるのはちょっと…。それにリベ、貴方も口の周りに、ベシャメルソースとミートソースがこびり付いているわ。…って、姉さん達、もう三回目のお代わりなの?私がちょっと考え込みながら味わっていたら、いつのまに…。こうしてはいられないわ。これ程のイタリア料理を食べられる事なんて滅多にないし、この機会を逃したら次の機会が何時になるか分からない。こうなったら私も多少のお行儀は捨てて掻き込まないと、折角のラザニアがなくなってしまうわ。

 

 

 

鳳翔

 

 

今回の料理は、リットリオさんから色々と聞いていましたので、それなりに自信を持ってお出し出来たのですが、やはり本場の子に受け入れてもらえるかどうか…これは少し心配していました。そのため、今回は私も少し注意してお座敷の様子を見ていたのですが、私の心配事は杞憂に終わったようですね。リットリオさんとリベちゃんは、最初からまるで赤城さんと加賀さんが乗り移ったかの如く食べ始めましたが、ローマさんはまるで味を確かめるかのように、じっくり味わいながら食べていました。

 

しかし今は、そのローマさんも食べる速度が一気にあがっていますね。日本酒を口に入れる速度も上がっていますし…満足してもらえたのだと思います。あっ…ビスマルクさん、本当に懲りませんね。少し前にお話を伺っていますが、ローマさんにちょっかいをかけたばかりに、お気に入りの白ワインを一箱、金剛さんに没収されたのではないですか?どうなっても知りませんよ?

 

「あ~ら、流石は地中海の引き篭もり姫様。貴方、最近食べ過ぎて太ったと言っていたのではなくって?それなのに、こんなに太りそうな物を掻き込むように食べて…このままじゃ、重量が増えて低速戦艦と呼ばれる日も近いわよ!それとも…引き篭もり姫様は、出撃するつもりなんて、全く無いって事かしらね~。」

 

「ぐっ…。うるさいわね。貴方もこれを食べてみれば分かるから。ま、大西洋の暴れん坊さんの退化した舌じゃ、この料理の素晴らしさが理解出来ないのかもしれないけれど…フンッ。」

 

「何ですって!そこまで言うなら食べてやるわよっ!ん…あっ…美味しい…。」

 

喧嘩を売りに行ったビスマルクさんでしたが、今回はローマさんに軍配が上がったようですね。ローマさんから差し出されたラザニアを一口食べたビスマルクさんでしたが、食べた瞬間に静かになってしまいました。そしてそんなビスマルクさんの変わり様を、ローマさんが勝ち誇ったような表情で見ています。…しかしこれは…また面倒な事に巻き込まれそうですね…。このままビスマルクさんが黙って引き下がるとは、とても思えないのですが。

 

「我が偉大なるイタリア料理の素晴らしさを分かってくれたようね。貴方のような田舎者でもはっきり美味しさが理解出来たという事は…まあ、嬉しくはあるわね。」

 

「くっ…ほ…鳳翔さんっ!ちょっと酷くないかしら!今度は私達にも、美味しいドイツ料理を作って欲しいわ!こっちだって、Z1やZ3が美味しいドイツ料理を楽しみにしているのよっ!」

 

おそらくこうなるだろうな…というのは分かっていましたが、やはりこうなりましたか。まぁ、私も最近はプリンツオイゲンさんから、色々とドイツ料理の事は聞いていますので、たぶん大丈夫だとは思いますが、普段作りなれていない外国の料理を作るというのは、私にも大変なのですよ?もっとも、ビスマルクさんにそう言っても理解してもらえないという事は百も承知していますが。いずれにせよ、次は何かビスマルクさん達にも作ってあげないと駄目なようですね。これからしばらく忙しくなりそうです。

 

ガラッ

 

「Hey!鳳翔。リットリオから今日はラザニアをorderしたと聞いて、私も来たデ~ス。Oh!これがそのラザニアですね~。早速いただきま~す。ウンゥ…まぁ、これもdeliciousデスネ。」

 

「金剛さん、金剛さん、このラザニア凄く美味しいでしょ?リベもびっくりしたんだけど!」

 

「金剛さん、私は凄く美味しいと思ったのですけれど、あまり満足しなかったのですか?」

 

「フンッ、どうせイギリス娘に我が祖国の偉大なる味が分かる筈がないわ…。」

 

リットリオさん、金剛さんにも今日の料理の話をしていたのですか…。いえ、久しぶりに自分が料理した以外のイタリア料理が食べられるのが嬉しいというのは理解出来ますが…。それに金剛さんも、わざわざ一つの料理を味見するだけのために、私のお店に邪魔をしに来るというのも珍しいですね…。それに今回のラザニア、あの辛口のローマさんにも褒められた味ですから、私も自信を持っていたのですが…。以前カレーを金剛さんに作ってあげた時のように、わざと低い評価を下した…という気もしましたが、金剛さんの表情を見ますと、どうもわざとやっている様には思えません。あの顔は、心の底から『まぁ、こんなところか…』と思っている顔です。これは私も少し気になりますね。

 

「金剛さん、その…今回のラザニアは美味しいと自信を持っていたのですが、駄目だったですか?」

 

「ん? A…Ah…鳳翔、あまり気にしなくていいネ。偶々私は、これよりも美味しいラザニアを知っているだけデ~ス。このラザニアも美味しかったネ。」

 

これよりも美味しいラザニアですか…。そう言われると私も気になりますね。後学のために是非それを食べてみたいですし…何処で食べられるか、金剛さんが素直に教えてくれると良いのですが…。

 

「金剛さん、金剛さん、これよりも美味しいラザニアあるの?ねぇねぇ、リベに教えてよ!」

 

あらあら、リベちゃんに先を越されましたね。しかしある意味リベちゃんが質問をした方が、金剛さんも素直に教えてくれそうですし、丁度良かったのかもしれませんね。

 

「Oh…リベッチオ、残念ながら今はもう食べられないデ~ス。そんな暇もなさそうネ。」

 

今は食べられなくて、作る暇も今はない…という事は、どこか今流行っているレストランで、昔は特別に作ってもらえた…という事ですか。残念ですね…。

 

「金剛さん、そんなに美味しかったのですか。そんなに美味しいラザニアなら、リットリオも一度食べてみたかったですね~。いつ頃食べたのですか?ですが、今もやっているリストランテなら、リットリオも一度行ってみたいですね~。」

 

たしかに今は食べられなくても、そのレストランがやっているのであれば、そこの味は間違いなく美味しいでしょうね。私も今度あの人と一緒に行ってみても良いかもしれません。それにしても金剛さん…流石にこういう情報はたくさん持っていますね…。

 

「What? レストランじゃないネ。あれはまだ昔、提督がNew faceだった時代ネ。私と三笠のBBAのために、提督が作ってくれたラザニアで~す。あれはLOVEというスパイスがたっぷり入った、最高のラザニアでしたネ~。Oh! 鳳翔~、眉間に皺が寄っていますネ。But、あれはまだ提督が鳳翔と会う前の事ネ!鳳翔と提督よりも、私と提督の仲の方がなが~いですから、これは仕方のない事デ~ス!」

 

…なるほど、それは確かに金剛さんにとっては最高の料理だったでしょうね…。以前金剛さんが聞かせてくれた惚気話の時の料理ですか。という事は、あの人が三笠様にしごかれていた時代という事ですね…。まぁ、金剛さんだけにではなく、三笠様にも食べさせているという事は、金剛さんが妄想しているような話ではないという事は『断言』出来ますが、それを勝手に綺麗な思い出に書き換えて妄想している金剛さんには、本当に困ったものですね…。いえ、正直に言いますと、かなり腹が立っている事は否定できませんが…。やはりこれは、今度あの人に是が非でも『私のために』料理を作ってもらわないといけませんね…。




思い出が相手では、鳳翔さんと言えども勝てないという事なのでしょうね^^;。現実でも非常によくある話なのですが、良い思い出と言うのは、本人の中でどんどん美化されてしまいますから、これと勝負をしたら駄目なのかもしれませんねw

さて今回の物語、クリスマス周辺ですから、一度くらいは洋風な物を出したいな…と思い、今回はこの物語ではかなり珍しいのですが、イタリア料理を登場させる事にしました。ある意味、ラザニアと言うのはパスタ料理の中では定番中の定番ですし、実際に作る時も今回の鳳翔さんのようにパスタから自作する!という事がなければ、比較的簡単に作れる料理ですから、ラザニアが好きな人は結構多いのではないかな…と思っています。まぁ、この種のオーブンを使ったイタリア料理は、失敗する要素もあまりないですから、大体誰がやっても美味しく作れるというのが、良い所なんですよね^^;

今回の主役はローマさんでしたが、やはりローマさんが出れば、そこにちょっかいを出すビスマルクさんが居ないと…という事で、ビスマスクさんがちょっかいを出しに来たようですが、今回は料理の力もあったとは言えローマさんの完勝に終わりました。ゲームや史実では、ローマとビスマルクの接点はないですし、『ビスマルク? ええ、知ってるわ。名前だけだけど…有名よ。』というローマの台詞にもあるように、あまりこの二人は関係ないのですが、この辺りは二次創作のオリジナル設定という事で勘弁してください。

そして…これは…提督終了のお知らせのような気がしないでもw。実を言いますと、この『鎮守府の片隅で』の外伝という形で、提督が鎮守府の司令官になる前の話を書こうかな…と考えていまして、プロットまでは無事に出来たのですが…。現時点では、提督と金剛さんのラブストーリーになってしまっており(そして最後の最後で鳳翔さんが提督を奪っていくw)、このままでは使えない…という事で、プロットを練り直している最中だったりしますw。

そしてその中で、若かりし日の提督が、金剛さん&三笠様に無理やり欧州料理を作らされる…というエピソードを入れたいと考えていまして(その結果、比較的手抜きが可能で、見た目が派手なラザニアが…)、そのエピソードを、過去にあった話という事で金剛さんに今回語らせた結果…こうなってしまいましたw。実際のところ、艦これのゲームとは完全に外れてしまうのですが、三笠様や敷島様や朝日様が現役の艦娘をしており、金剛さんが新人だった時代を一度書いてみたいな…と思っているんですよね^^;。問題は…新任将校時代の提督が鎮守府司令官の地位を得るために、出世に邁進していく…赤い(レンガの)巨塔な話になりそうな感じがして、書くことを躊躇していたりしますw。

今回も読んでいただきありがとうございました。



ラザニア
ベシャメルソース部分
バター:50 g
小麦粉:50 g
牛乳:450 mL
白ワイン:50 mL
塩:適量

ミートソース
玉ねぎ:1個
人参:1/2 本
挽肉:200 g
ホールトマト:1缶
水:20-40 mL
ローリエの葉:1枚
塩 :適量
胡椒:適量
オリーブオイル:適量

ラザニア生地(市販の乾燥ラザニア用のパスタでOK)
薄力粉:100 g
強力粉:100 g (薄力粉:強力粉=1 : 1)
卵:1個
塩:少量
オリーブオイル:15 mL
水:20-30 mL
ほうれん草:3-4束くらい

残り部分
パルメザンチーズ(粉):適量
ピザ用の溶けるチーズ:適量
バター:最初に耐熱皿に塗る分

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