鎮守府の片隅で   作:ariel

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今回は主役を大和にして物語を投稿しようと思います。


第七九話 大和と照り焼きチキン 

食事処『鳳翔』  鳳翔

 

 

今回は私も驚きました。…いえ、正確に言いますとあの人の采配に改めて感心したといったところでしょうか。しばらく前から南方で作戦が開始される…という事は聞いていたのですが、一向に始まる気配はありませんでした。ところが、気付いてみれば少数の高速艦艇を比島周辺に作られた敵深海凄艦の物資集積所に突入させ、鎮守府に居る艦娘達もほとんど気付かない間に作戦を終了させてしまったのです。

 

おそらく、秘書艦の金剛さんを中心とする司令部周辺の艦娘達は、今回の作戦の詳細を知っていたのだと思いますが、外部にほとんど作戦の詳細を漏らさない内に、奇襲で作戦を完遂させてしまったあの人の手腕には、改めて驚かされました。そしてあまりにも早い作戦展開だったため、いつもであれば留守番組の艦娘達の士気の維持が大変な所なのですが、今回は留守番組の士気の低下もなく…といったところですね。

 

流石に作戦終了が昨日の今日ですから、現時点では飲酒の許可は下りていませんので、私のお店に居る艦娘達も食事だけですが、ほとんど普段通りの雰囲気といったところでしょうか。結局、今回の作戦に空母娘達は一人も参加しなかったのですが、その空母娘達も特に不満は無いようですし…結果的に今日も鎮守府は平和なようですね。

 

「それにしても…今回の作戦も大和が活躍出来ると思ったのですが…結局今回はお留守番になってしまいましたね。まぁ、私が前線に出なくても問題ないという事は良い事なのかもしれませんが…。」

 

「そうだな…この武蔵も今回こそ主力組として参加したかったところだが…。まぁ、これ程鮮やかに作戦を早期終結させられては、私の出番がないのも仕方ないと言ったところか…。」

 

カウンター席に居る、大和さんと武蔵さんは少し残念そうな表情をしていますが、余程の事がない限りこの二人が前線に出るような事はないでしょうから、これは仕方ない事かもしれませんね。今日も大和さんは初霜ちゃんを連れていますので、三人並んで座っていますが、こうやって三人揃って私のお店で座っている間は、鎮守府もそうですし帝国は安泰なのかもしれません。

 

「まぁまぁ、大和さんも武蔵さんも、結果的に作戦は上手くいったのですから、それ程残念がらなくても…。」

 

「そうね、鳳翔さんの言うとおりだわ。初霜も、大和さんや武蔵さんが動かなくても大丈夫な今が一番良いと思うの。さ、今日は折角作戦も終わった事だし、三人で何か美味しい物でも食べて元気をつけましょうよ。」

 

「えぇ…たしかに初霜の言うとおりね。私達が出なくても大丈夫という事は、結果的にこの鎮守府は安泰なのだから、あまり贅沢は言えないわね。そうと決まれば、今日も美味しい物を食べましょうか。鳳翔さん、何かよろしくお願いします。武蔵も食べるでしょう?」

 

「あ…あぁ、たしかに初霜や鳳翔さんの言うとおりだな。よしっ。この武蔵も今日は美味いものをしっかり食べるか。大和、今日は酒はないが、最後まで付き合うぞ。鳳翔さん、よろしく頼む。」

 

私と初霜ちゃんの言葉に、一応納得はしてくれたのか、お二人とも少しだけ元気になってくれましたね。そして今日は作戦が無事に終了したお目出度い日でもありますから、三人で美味しい物を食べる事に決めたようです。そうと決まれば、私も頑張って美味しい料理を出さなくてはいけませんね。お酒がありませんから、軽い物ではなく御飯と一緒に食べてお腹が膨れる物…やはり肉料理が良いでしょうね。そして御飯と一緒にしっかり食べられる物となれば、味がはっきりしている物の方が喜ばれるのではないでしょうか。

 

豚肉がありますから、トンテキにしましょうか…。いえ、今日の仕入れで良い鶏肉が入っていますから、鶏肉を使った料理も良いかもしれません。そうですね…御飯に合う鶏肉の料理。普通にソテーにしても良いのですが、折角ですから少し甘辛くて御飯が進む、照り焼きにするのも良いのではないでしょうか。

 

「大和さん、武蔵さん、それに初霜ちゃん。照り焼きチキンはいかがですか?甘辛くて美味しいですし、御飯も凄く進むと思うのですが…。今日はまだお酒が駄目ですし、食事が中心となると、丁度良い料理だと思いますが、どうですか?」

 

「照り焼きチキンですか…それは美味しそうですね。初霜、それに武蔵、今日は折角ですから、美味しい照り焼きチキンを食べさせてもらいましょう。」

 

大和さんの言葉に武蔵さんも頷きましたし、初霜ちゃんも嬉しそうな表情をしていますね。それでは早速作りましょうか。照り焼きチキンは比較的簡単に作れますし、それでいて味もとても良い料理ですから、美味しい物を食べ慣れている大和さんにもきっと満足してもらえると思います。

 

それではまず、鶏肉を焼かなくてはいけません。皮付きの鶏もも肉を使いますので、まずは皮の部分が少しパリッなるように焼きますが、このまま焼いてしまっては皮の部分が先に縮んでしまいますので、予めフォークで少し穴を開けておき、焼き縮みを防ぎます。そして火の通りを均等にするため、肉の部分の厚みが整うように包丁を入れておきましょう。それでは、フライパンに油をひいてから、この鶏肉のもも肉に焼き目を入れます。まずは皮を下にして、皮の部分がパリッとなるまで焼き目を入れたら、ひっくり返して裏側にも焼き目を入れて火を通します。

 

流石に美味しそうな鶏肉を用意していますから、焼いている間に鶏肉からかなりの量の脂が染み出してきましたね。この脂、これはこれで美味しいのですが、今日は照り焼きにする予定ですから、この脂は照り焼きソースには合いません。ですから一度、キッチンペーパーで出てきた脂分を軽く拭き取っておきます。鶏肉全体に焼き目が入り、だいぶ火も通ったようですから、いよいよここからは味付けをしながらタレと絡ませるように弱火で焼くことになりますね。日本酒、醤油、砂糖、そしてみりんを入れて、この状態でフライパンに蓋をします。

 

後は弱火で焼きながら、鶏肉全体に味がつくように、軽くフライパンを動かしましょうか。そろそろ良いようですね。ここで蓋を取って水分を少し飛ばせば出来上がりですが…。えぇ、良い香りが漂ってきましたね。フライパンの蓋を取った瞬間に漂ってきた照り焼きソースの甘い香りが鼻に入ってきます。この香りだけでも美味しく御飯が食べられそうですし、料理をしている私でもお腹が空いてきそうですね。カウンター席に座っている大和さん達も、一瞬ゴクリと唾を飲み込んだ様子でしたし、はるか座敷に居る赤城さん達も、第六感で感じたのか、一瞬私の方を見て目が光った感じがします。

 

そろそろ…水分も飛びましたし、鶏肉全体に飴色の照り焼きソースもトロッと絡みました。最後は付け合せとなるように少しだけ大根おろしを作りましたら、出来上がった照り焼きチキンを切り分けて並べて、大根おろしを少しだけ添えて…これで完成です。

 

「大和さん、武蔵さん、それと初霜ちゃん。照り焼きチキンが出来ましたので、熱い内にどうぞ。…赤城さん、それに利根さん。後から貴方達の分も作ってあげますから、今は大人しく自分の席に戻って待っていてください。」

 

「…ほ…鳳翔さん。い…急ぎでお願いします。赤城は…その香りをかいだだけで、もう我慢出来ません。」

 

「わ…我輩にも急ぎで頼む。こんなに美味しそうな香りを嗅がされてしまっては、我輩…我慢出来ぬぞ!」

 

…流石に大和さんの料理にちょっかいはかけないとは思いますが、余計なトラブルが起きる前に赤城さんと利根さんには釘をさしておかなくてはいけませんね。一応二人とも自分達の席に戻ってくれましたが、油断も隙もあったものではありません。

 

「まぁ…鳳翔さん。ありがとうございます。これは…本当に美味しそうですね。大和、感激しました。さぁ、初霜?それに武蔵?暖かい内にいただきましょうか。」

 

「そうだな…大和。この武蔵、不覚にも鳳翔さんが料理をしている途中でお腹がなってしまったからな。それにしても…これは美味そうだ。」

 

「まぁ、これは凄いわ。鳳翔さん本当にありがとう。それと…大和さん。今日もご馳走様です。」

 

 

 

戦艦『大和』

 

 

前回の作戦は、枝作戦とはいえ主力部隊として活躍出来たのですが、今回は完全に留守番のようですね。妹の武蔵も今度こそは初陣を飾ると言っていましたから、今回のようにあっという間に作戦が終わってしまっては…少し拍子抜けしています。…いえ、味方が何も苦戦せずに、こうやって初霜も入れて三人でノンビリ食事が出来ているのですから、これ以上望む事は贅沢なのかもしれませんね。

 

今日はまだ作戦終了の宣言がされておらず、飲酒の許可が出ていませんから、こうやって食事を楽しむしかないのですが…それにしても美味しそうな料理ですね。今回鳳翔さんは、御飯にも合う料理という事で照り焼きチキンを作ってくれたのですが、本当に美味しそうな香りが漂ってきます。これまで私もこのお店で様々な料理を食べてきましたし、ここ以外でも様々な高級料理と呼ばれる料理も食べてきましたが、このようなシンプルで尚かつ美味しさが直接伝わって来そうな料理は、いつ見ても嬉しいですね。冷めない内に、早速頂きましょうか。

 

あら…一口大の大きさに切られているのですね。食べやすくて本当に良いですね。上から飴色のトロッとしたタレがかかっているチキンの一切れを、箸で摘み口に近づけると、少し甘い感じがする美味しそうな香りが強くなってきます。先ほど鳳翔さんが料理をしていた時もこの香りを楽しむことが出来ましたし、妹の武蔵は不覚にもお腹を鳴らしていましたが、この香りだけでも御飯が食べられそうですね。それでは一口。

 

えぇ、いいですね。先ほどの香りに負けないだけの少し濃い目の甘辛い味、そして皮の部分が少しだけパリッとしていますが、中は凄く柔らかくなっている鶏肉。口の中で簡単に皮の部分が剥がれてしまいますが、脂分が少し抑えられているこの鶏肉の部分は、とても食べやすくなっていますし、それでいてお肉のジューシーさが損なわれていません。丁度良い状態に火が入っているのでしょうね。そしてこの濃い目の、はっきりした味のタレが大和に満足感を与えてくれます。これは…御飯が進みますね。お酒なしでも全く不満を感じさせない素晴らしい料理です。柔らかく繊細な味を持つ高級料理も勿論好きですが、このようなはっきりした味を全面に出してくる料理も捨て難いものですね。

 

それに…付け合せとして出ている小ぢんまりと置かれた大根おろし。おそらくそのような大根を使っているからだと思いますが、それ程辛味がなく…いえ、むしろ甘さすら感じる事が出来る大根おろしですね。そしてこの大根おろしを一口口に入れると、先ほどまで濃い目のはっきりした味のタレに慣れてしまった舌を、再び元の状態に戻してくれますね。素晴らしい付け合せです。この大根おろしを一口食べて、再び照り焼きチキンを食べる…たったこれだけの作業なのですが、もう一度タレの甘辛い素晴らしさを大和に感じさせてくれて…本当に素晴らしいですね。

 

先ほどお腹をならしていた武蔵も非常に満足そうな表情で照り焼きチキンを食べていますし、連れてきている初霜も凄く嬉しそうです。初霜には普段から色々と細々した仕事をお願いしてしまっていますから、こうやって嬉しそうに私の横で美味しい食事を楽しんでいる姿を見ますと、私も嬉しくなってきます。

 

あっという間にお皿に載っていた照り焼きチキンは無くなってしまいましたね。流石にこれだけでは、私はおろか初霜でも足りなかったようですから…追加で何品か注文しましょうか。…いえ、もう一度照り焼きチキンを追加するのも良いかもしれませんね。美味しい料理でもたくさん食べてしまうと食べ飽きる…とはいいますが、流石に一皿だけでは食べ飽きるという程でもありませんでしたし…。いずれにせよ、作戦が早く終わり、こうやって楽しく食事が出来るというのは、本当に良い事だと思います。

 

 

 

鳳翔

 

 

…やはりこの三人にも、追加でこの料理も含めて、何品か作ってあげた方が良いようですね。赤城さんや利根さん達にお出しする照り焼きチキンが作り終わり、現在は最後の盛り付けをしているのですが、あっという間に大和さん、武蔵さん、それに初霜ちゃんもお出しした照り焼きチキンを食べ尽くしてしまいました。流石にあの大きさでは、全く足りなかったようです。おそらく大和さんから、直に追加注文が入ると思いますので、急いで次の準備をしなくてはいけませんね。

 

ガラッ

 

あらっ?…金剛さんに…夕雲さんですか。司令部に普段詰めている秘書艦の金剛さんですから、今回の電撃的な作戦成功は凄く嬉しい…筈なのですが、何か少し焦ったような表情をしていますね。何か問題でもあったのでしょうか。それに夕雲さんは、完全に無表情なのが気になりますね。

 

「Hey! 鳳翔。料理はSTOPしてくださ~い。戦艦も空母も大体ここに揃っていますネ。時間がないから、ここで直接指示をシマ~ス。幌筵駐留の北方艦隊の木曾から緊急電が来たネ。アリューシャン諸島経由で北方から敵深海棲艦の大侵攻の兆しがあるようネ。既に敵前衛艦隊が、幌筵と北海道の間に進出してきているらしいデ~ス。」

 

一難去ってまた一難とは、まさにこの事ですね。南方での作戦が電撃的に終了したかと思えば、今度は北方ですか。しかも今回は大艦隊が直接帝国本土に侵攻してくるようですから、かなり大規模な迎撃戦になりそうです。あの人も、流石にここまでよんでいたとは思えませんから偶然だとは思いますが、待機命令が解除されていませんので、ほとんどの艦娘もこれから直に出撃可能ですから、運が良かったのかもしれません。

 

「提督は、幌筵を起点にして敵艦隊を迎え撃つようデ~ス。大本営からの大海令第三三号に基づいて北方迎撃作戦、捷四号作戦が発令されたネ。既に幌筵に向けて、神通を旗艦とした高速輸送部隊が出撃準備中デ~ス。後は迎撃主力部隊だけネ。」

 

なんといいますか…あまりにも迎撃作戦が整いすぎている…気もしますが、既に迎撃の準備は始まっているのですね。そして金剛さんがわざわざ此処に来たという事は、今私のお店に居る子達の中から迎撃の主力部隊が選ばれるのだと思います。

 

「迎撃部隊の指揮は…Hey! 大和。提督が大和をご指名デ~ス。ついでに妹の武蔵も連れて行くといいネ。あと…そこの山城と扶桑も出撃命令が出ていマ~ス。ビスマルクは主力護衛艦隊の指揮ネ。そこの初霜と、この夕雲も連れて行ってくだサ~イ。空母は、千代田と千歳が主力部隊、支援部隊は…今回は赤城達に任せるネ。」

 

ここまで大規模な出撃になるとは思いませんでしたね。大和さんだけではなく武蔵さんにまで出撃命令が出ているという事は、あの人もかなり本気のようです。一方、赤城さん達は久しぶりの出撃に喜んでいますが、今回はかなり大規模な迎撃作戦のようですし、それだけ苦戦も予想されますから、無事に戻ってきてもらいたいものですね…。それにしても大和さんが出る以上、いつも一緒に居る初霜ちゃんが護衛艦隊として出撃する事には納得出来ますが、夕雲さんはどちらかと言えば、神通さん旗下の部隊のような気も…。夕雲さんの顔は完全に無表情ですし、本人からは金剛さんに対して何も言えないと思いますので、私の方から少し聞いてみましょうか。

 

「あの金剛さん?他の子達の出撃は理解出来るのですが、夕雲さんも主力部隊なのですか?…その…神通さん旗下に妹の長波さん達も居るようですから、姉妹一緒に高速輸送作戦に従事すると思ったのですが…。」

 

「Hey! 鳳翔。作戦の事はこっちの仕事ネ。余計な口出しはNoデ~ス。とはいえ、私と鳳翔の仲ネ、事情を教えてあげるデ~ス。夕雲は初霜と仲が良いデ~スし、戦力的にも十分主力で行けるネ。だから今回は私の『説得』で、主力組に加わってもらう事にしたデ~ス。夕雲も納得しているネ。」

 

夕雲さんは、無表情ですが、凄く頷いていますね。金剛さんの『説得』という言葉に一瞬ビクッとした表情を浮かべていましたので少し心配ですが、たしかに作戦の事については私には権限がありませんので、反対は出来ません。いずれにせよ、ここは旗艦を勤める大和さんに十分に気をつけてもらえるようにお願いするしかありません。

 

「大和さん?初霜ちゃんは勿論ですが、夕雲さんの事もしっかり見てやってくださいね。」

 

「分かりました、鳳翔さん。大和にお任せください。ちゃんと全員を連れて帰ってきます。初霜行きますよ。それと夕雲、しっかりお願いしますね。」

 

「鳳翔さん、この武蔵もちゃんと見ていてやるから、安心してくれ。…それにしても、いよいよこの武蔵の出番か…腕がなるな。初霜、夕雲、行くぞ。」

 

この鎮守府の最大戦力である二人がここまで言ってくれているのですから、おそらく大丈夫でしょうね。赤城さん達も嬉しそうに準備をしていますし、軽空母組も士気は高そうです。

 

「Hey! 初霜。これを持っていくネ。作戦が終わったら、根室港に寄ってこのリストの物を購入してくるネ。冬の北海道の海産物は美味しそうデ~ス。」

 

「は…はぃ、金剛さん…って、これは多すぎだわ。こんなにたくさん、初霜では運べないわ。」

 

「初霜、な~に言っているネ。そのために今回、初霜のfriendの夕雲も一緒にしてあげたデ~ス。夕雲は駆逐艦達の中では力持ちネ。初霜では運べない分は夕雲に任せるといいデ~ス。」

 

…金剛さん。まさかとは思いますが、帰りの買い物のために夕雲さんをこちらに編入した…訳ではないですよね?夕雲さんは金剛さんの言葉に再びビクッとしましたが…。これは一応確認しておかなくてはいけません。

 

「金剛さん…まさかとは思いますが…夕雲さんを入れたのは、帰りの金剛さんの買い物の荷物持ち…ではないですよね?」

 

「What? 鳳翔、な~に言っているネ。夕雲は駆逐艦達の中では実力者デ~ス。純粋に戦力として期待してマ~ス。それに帰りに買い物を頼んでいるのは、初霜や夕雲が絶対に無事に戻ってくると確信しているからデ~ス。鳳翔は、二人の無事を確信していないのデ~スか?」

 

…まったく。金剛さんの屁理屈には毎回感心しますね。とはいえ、金剛さんなりにお二人の無事を心配している…と読み取る事も出来ますから、これはこれで一つの送り出し方なのかもしれません。

 

 

…どうやら大和さんを含めて、金剛さんに指名された艦娘達の出かける準備が整ったようです。神通さん指揮の高速輸送任務が成功してからの迎撃作戦になるとは思いますが、もう既に作戦は発動されていますし、後はあの人を信じて、あの人の立案した作戦通りに動くしかありませんね。

 

「皆さん、御武運を…。気をつけて行って来て下さいね。赤城さん、向こうには美味しい物がたくさんあるようですが、あまり食べ過ぎてはいけませんよ。大和さん、よろしくお願いします。」

 

「鳳翔さん、この大和にお任せください。それでは行って来ます。」

 

「鳳翔さん…赤城も大丈夫ですよ。…キンキにソイ、タラバガニにホッキガイ、それに牡蠣…ヨダレが出てきますね…。」

 

赤城さんの言葉を聞いていると、戦いに赴くのか食べ歩きに出かけるのか、分からなくなってしまいそうですが、今から緊張していても駄目でしょうから、これはこれで良い感じにリラックスしている…と思うしかありませんね。それに相方の加賀さんも一緒ですし…たぶん大丈夫だと…信じたいですね。いずれにせよ、皆さんどうか無事で…。

 

 

 

 

少し時間を遡った時刻

鎮守府応接間  金剛

 

 

「Hey!夕雲。今回の迎撃作戦だけどサ~、夕雲は主力部隊に編入しておくネ。」

 

「えっ、その…金剛さん、それは流石に夕雲も困るわ。それに私の妹の長波さん達は神通さん指揮の高速輸送任務でしょう?だから、夕雲もそっちに行きたいわ。」

 

たしかに、夕雲の妹達は今回、神通に任せる輸送任務でドラム缶輸送をしてもらう予定ネ。But, 私の手足として動かせる駆逐艦は、浦風達を除くと少ない以上、今回は夕雲には主力組に参加してもらいマ~ス。初霜も丁度良い子を私の元に連れてきたネ。夕雲なら戦力的にも全く心配ありませ~ん。

 

「Noネ、夕雲。夕雲のFriendの初霜も主力組ネ。Friendは大事にしないとNoデ~ス。それに、初霜一人では帰りに持って帰る事が出来る物資の積載量が少ないネ。」

 

「まさか金剛さんは、夕雲に荷物持ちをさせるために主力組に編入する気なの?それはちょっと酷いと思うわ。」

 

「な~に言っているネ。My best friendの初霜のfriendの夕雲も私の仲間のようなものネ。私は純粋に夕雲を助けるために、今回の提案をしているだけデ~ス。夕雲?よ~く考えるネ。神通指揮下の部隊が輸送作戦を終了した時、終了地点は幌筵ネ。あの神通が、作戦終了で直に帰ってくると思っているデ~スか?それはNoネ。神通は間違いなく、普段とは違う環境下、流氷漂うオホーツク海で訓練に入る事は間違いないデ~ス。夕雲もそれに参加したいデ~スか?」

 

「…金剛さん、本当にありがとうございます。夕雲は、喜んで主力組に参加したいわ。それと…帰りの物資搬入の荷物持ちでも何でもやるわ。だから主力部隊への編入よろしくお願いしますっ!」

 

説得完了ネ。実際のところ、いくら神通でもあんな海で訓練をするかどうかは分かりまセ~ン。でもその可能性は全く無い訳ではないから、嘘は言っていないネ。いずれにせよこれで、駆逐艦二隻で運べる分の北海道の海産物が手に入るネ。初霜や夕雲が無事に戻ってきたら、初霜達が持って帰ってきた物資を使って海鮮鍋パーティーデ~ス。今回はそのパーティーに初霜と夕雲も呼んであげるデ~ス。私は寛大な女ネ。




夕雲姉さん…完全に金剛さんに取り込まれてしまっていますがな…。史実的にはほとんど絡みはないのですが、艦これキャラ的に、そしてこの物語での設定的には、夕雲姉さんと初霜ちゃん&金剛さんは凄く親和性が高いような…w。

今回のイベントは小規模という事ですし、北と南で違う海域に突入する作戦になっていますから、このような話に調理してみました。私も今回、あまり纏まった時間が取れない事が予想されていたため、イベント開始二日で一気にクリアーしてしまいました。とはいえ私は呉鎮守府のため…ラスボスがまさかの猫となりまして…。E3のラストダンスでボスを撃破した後、勝利Sを狙いに夜戦に突入した所で猫が出た時などは…久しぶりに熱くなりそうでしたw。そして今回のイベント、おそらく私にとっては初めてだと思うのですが、イベント海域の出撃組として大和と武蔵の両方を編入して戦いに臨む事になりました。そのため物資の消費量が…w。とはいえ、流石にL100を越えた大和型二隻、物凄く安定している…と言いますか、ラスボスからの攻撃を喰らっても中破で耐えられるというのは、安心出来ました。…もっとも、鎮守府に戻った後の修理で要求される燃料&鉄には驚かされますがw。皆さんは無事に今回のイベント完走出来たでしょうか?

さて、今回の料理となった照り焼きチキン。実は大和を出す時の料理はかなり迷いがありました。大和らしく豪勢な料理で行くべきか…派手な料理にするべきか…とも考えたのですが、意外とこのような普通な料理(且つ、非常に御飯などと親和性が高く、美味しい料理)というのもアリなのではないか…とも思いまして、ビーフシチューや、伊勢海老入りカレーなどではなく、この料理で物語を作る事に…。

実際のところ、照り焼きチキン、個人的にはかなり好きです。非常に単純な料理ですし、作るのも手間取らないのですが、これ本当に美味しいですよね。といいますか、照り焼きタレを初めて考え付いた人は天才なのではないかとw。海外でも照り焼きソースは非常に人気ありますし(微妙に味が違う…と言えば違うのですが)、このような甘辛くてはっきりした味というのは、世界中どこでも好まれるのだな…と思っています。

今回も読んでいただきありがとうございました。
次週…投稿出来る…とは思うのですが、正直ちょっと不安もありますので、休むかもしれません。





照り焼きチキン(四人分)
鶏モモ肉 : 2枚  (中なら4枚)
日本酒  ; 30 mL
醤油   : 30 mL
砂糖   : 10 g
みりん  : 30 mL
大根おろし:適量

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