鎮守府の片隅で   作:ariel

97 / 106
今回の料理もこの時期の定番料理、木の芽田楽にしました。時期的には竹の子などの田楽も良いかな…と思ったのですが、私にとって木の芽田楽と言うと、やはり豆腐なんですよね…。という事で、今回の料理は豆腐の木の芽田楽にしました。そして主人公は…前回のお話でも少しだけ登場した、妹達に世話を焼かれっぱなしの例の姉になり…。


第八三話 阿賀野と木の芽田楽

花見の時期も終了し、若葉の緑が映える季節になりました。私のお店でも、これまでは春の山菜を中心とした料理を出してきましたが、そろそろ次の季節の料理に人気が移ってきましたね。またこの時期になりますと、夜でもそれなりに気温がありますので、お店の中ではなく、料理を持って外で食べる艦娘の子達も出てきています。そういう理由もあるのだと思いますが、ここ数日は持ち運びが簡単な料理の注文が多くなっていますね…。そして、その中でも特に人気があるのが、木の芽田楽になります。

 

豆腐を串に刺して焼き、この上から味噌ダレと山椒の芽を載せるだけの簡単な料理なのですが、山椒の芽の香りの良さ、そして食べた時に少しだけ感じる辛味が、味噌の甘ダレと豆腐の柔らかい甘さと抜群の相性でして、一人で何本も注文する艦娘も居ます。おそらく今日も夜はかなり暖かいようなので、木の芽田楽を注文し、外に持ち出して食べる子が多いでしょうから、十分な量を作らなくてはいけませんね。

 

「赤城さん、今日は木の芽田楽を多目に作りますから、よろしくお願いしますね。」

 

「は…はい、鳳翔さん。ですが、どうして皆さん、このような料理が好きなのでしょうか…。赤城にはよく分かりませんね…。」

 

そういえば、賄い食で出した時もそうでしたが、赤城さんはあまり木の芽田楽を食べませんでしたね…好みの料理ではないのでしょうか。大体どのような料理でも好き嫌いなく食べる赤城さんにしては珍しい気がしますし、豆腐が嫌いという事もなかったと思うのですが。

 

「そういえば、先日の賄い食の際もそうでしたが、赤城さんはあまり木の芽田楽を食べなかったですよね?あまり好きではありませんでしたか?」

 

「えっ?い…いえ、そんな事はありません、鳳翔さん。赤城は食べ物であれば何でも好きですよ、はいっ!ただ…木の芽田楽は、どうしても豆腐ですから…たくさん食べてもお腹が膨れませんので…。」

 

…そういう理由でしたか。木の芽田楽は、甘い味噌ダレで食べるため、満足感は得られると思うのですが…。やはり豆腐は豆腐ですから、赤城さんにとっては、物足りない料理…という事なのかもしれません。相方の加賀さん辺りは、木の芽田楽も好んで食べてくれますが、赤城さんはもっとボリュームのある料理でなければダメなようですね。

 

「赤城さん…まぁ、赤城さんの場合好き嫌いという訳ではないでしょうが、あまりお肉や魚ばかり食べていてはいけませんよ?」

 

「だ…大丈夫です、鳳翔さん!赤城は、肉や魚だけではなく、野菜も食べていますから!そ…それよりも、急いで木の芽田楽を作ってしまいましょう!」

 

なんだか赤城さんに誤魔化されたような気がしないでもありませんが、あまり時間もありませんから、赤城さんの提案に従って急いで準備をしてしまいましょうか。

 

木の芽田楽は、まずは本体となる豆腐が第一です。そして豆腐の料理ではありますが、少しズッシリした固さの食感を出した方が美味しくいただけますので、木綿豆腐をキッチンペーパーで包み、上に少し重い物を乗せる事で豆腐を少し固めます。これで10分程放置しておけば、木綿豆腐が丁度良い固さになってくれますね。

 

 

豆腐の準備は大丈夫そうですね。それではこの木綿豆腐を串に刺しやすい様に縦の方向に四等分に切り分けます。あとはこれに竹串を刺して注文が入ったら数本纏めて焼けば問題なさそうですね。豆腐の方はこれで準備完了ですから、次に甘い味噌ダレを作らなくてはいけません。この甘い味噌ダレと山椒の若い芽がこの豆腐の田楽の味わいを豊かにしてくれる訳ですから、味噌ダレの味付けは非常に重要です。

 

それでは小鍋に八丁味噌、みりん、日本酒、砂糖を入れて中火の状態で十分に掻き混ぜます。そして十分に混ざったら、トロ火で数分煮詰めて、とろみが出てきたら味噌ダレも完成です。…お味の方は…大丈夫ですね。味噌の甘味も然ることながら、みりんと砂糖によって濃厚な甘さを持つ味噌ダレが出来ました。そして…絶対に忘れていけないのは、菜飯の準備です。木の芽田楽だけで食べても勿論美味しいのですが、菜飯田楽という言葉もあるように、この木の芽田楽と菜飯の相性は抜群です。

 

…そして、このような美味しい組み合わせを見逃す程、うちのお店に入り浸っている艦娘の皆さんの舌は甘くありません。おそらく…特に料理には五月蝿い利根さん辺りですと、菜飯が準備されていない事が分かれば大騒ぎを起こす姿が目に浮かびます。いずれにせよ、折角の美味しい組み合わせですから、菜飯も準備しておきましょうか。

 

大根の葉を一度塩茹でして、十分に水を切ったら、これを細かく刻みます。そして一端、味を馴染ませるために冷蔵庫で十分冷してしまいます。後はこれを、炊きたての御飯と十分に混ぜれば、さっぱりした味が特徴の美味しい菜飯が出来上がります。外で食べたい艦娘の子には、お盆に菜飯と木の芽田楽、そしてお吸い物と漬物をセットにして載せた物を渡せば、それだけで十分に楽しめるのではないでしょうか。

 

 

やはりこの時期、外で食べたがるお客さんが多いですね。長門さん達のように今日もカウンター席を占領してのんびり食事やお酒を楽しんでいる子の姿もありますが、妙高さん達のようにお盆に食事を載せて、店の外に準備した机を使って食事を楽しんでいる子達も居ます。そして…案の定、利根さんは木の芽田楽だけには飽き足らず、菜飯田楽の形で注文し、ホクホク顔でお盆に載せて外に持ち出しました。菜飯も準備しておいて本当に良かったです。…あらっ?

 

ガラッ

 

「ほ…鳳翔さん~。助けて~。阿賀野を匿って~。」

 

えっと…一体どうしたのでしょうか。勢いよく扉が開いたかと思うと、軽巡洋艦の阿賀野さんがお店に飛び込んできて…そしてカウンターの後ろ側の私の方に入り込んできました。…それにしても、『匿って』というのは穏やかではありませんね。誰かから追われているのでしょうか。

 

ガラッ

 

「ほ…鳳翔さん、こっちに阿賀野姉、逃げてこなかった?…って、やっぱり居た!阿賀野姉ぇ、いい加減に諦めてよ。」

 

「阿賀野姉ぇ…そこまで必死に逃げなくてもいいのに…。能代も阿賀野姉ぇが心配だから言っているのですからねっ?」

 

…なんと言いますか、能代さんと矢矧さんから逃げていたのですね。そして…この顔ぶれを見ますと、まだ事情は分かりませんが、能代さんや矢矧さんの方に分があるように思えしまうのは私の気のせいでしょうか。いずれにせよ、店内で揉め事があると困りますので、私が仲裁しなくてはいけないようですね。

 

「能代さんも矢矧さんも、一体どうしたのですか?阿賀野さん?いきなり『匿ってくれ』と言われたのは驚きましたが、何かあったのですか?トラブルがあるようでしたら、話くらいでしたら私が聞きますよ。」

 

「鳳翔さん、聞いてよ~。能代と矢矧がね?阿賀野を飢え死にさせるつもりなのよ~!」

 

「なっ…阿賀野姉ぇ。なに人聞きの悪い事言っているの。私も能代姉ぇも、阿賀野姉ぇが最近太りすぎているから、ダイエットをさせようと思っただけよっ!」

 

…事情は十分分かりました。たしかに最近、阿賀野さんは少し重量が増えているような気がしますし…普段から近くにいる姉妹艦の能代さんや矢矧さんからすると、心配になったのでしょう。そして阿賀野さんのダイエットのために食事制限をしようとしたところ、阿賀野さんが逃げ出した…というのが真相なのでしょう。

 

「ちょっと、ちょっと、阿賀野だって矢矧達と同じ物しか食べてないのよ?阿賀野だけ太るなんて事はありえないんじゃな~い?」

 

「…阿賀野姉ぇ、たしかに普段の食事は同じ物を食べていますね。でも、冬の間ずっと炬燵でゴロゴロしていたと思います。それに…私や矢矧はあまり間食していないけれど、阿賀野姉ぇは、間食もしていましたよね?」

 

「そう!能代姉ぇの言うとおりよ。とりあえず、今日からダイエット食を食べてもらうわ。ということで…折角ここに来たのだから、鳳翔さんお願い。」

 

…は、はぁ。いきなり振られても困るのですが…。幸いな事に今日は木の芽田楽を沢山作っています。これでしたら中身は豆腐ですからそれ程カロリーも高くないですし、味付けが濃いですから満足感もあると思いますので、量は食べないのではないでしょうか。そして菜飯については大根の葉も入りますから、ダイエット食という訳にはいかないかもしれませんが、肉や魚に比べればカロリーを抑えられると思います。

 

「そういう事でしたら、菜飯田楽はいかがですか?最近それを注文して、お店の外で食べる艦娘の子達も多いですし…。これでしたら、豆腐の料理ですから比較的カロリーも少ないですよ。」

 

「それで決まりね。鳳翔さん、それじゃその菜飯田楽という料理を三人分お願いね。あっ、それと私達も外で食べたいから、持ち運べるようにしてね。」

 

「ちょっと待って、阿賀野の希望を…わ…分かったわよ~、矢矧。それでいいわよ~。」

 

かなり強引に決まった…というような気もしますが、能代さんと矢矧さんの厳しい視線を受けて、阿賀野さんも納得をしたようです。とはいえ、この菜飯田楽は非常に美味しい料理ですから、きっと阿賀野さんも気に入ってくれると思います。

 

それでは先程竹串に刺していた豆腐を、グリルを使って両面しっかり焼きます。豆腐の表面に少しだけ焦げ目が出てきましたね。それでは一端グリルから豆腐を取り出して、準備した味噌ダレを豆腐の片面に乗せます。そして再びこれをグリルに入れて…味噌の部分がこんがり焼けたら、完成です。後はこの上に山椒の芽を載せたら、お皿に移して出来上がりです。菜飯とお吸い物を準備して、漬物もお盆に載せて…これで大丈夫ですね。

 

「皆さん、菜飯田楽が出来上がりましたので、どうぞ。外で食べるのでしたら、お盆から落さないように気をつけてくださいね。」

 

「ありがとう、鳳翔さん。それにしても美味しそうね。矢矧も楽しみだわ。さ、阿賀野姉ぇ行くわよ。能代姉ぇ、外の席の確保よろしく。」

 

 

 

軽巡洋艦 阿賀野

 

 

もぉ、なんで阿賀野ばっかりこんな目に合うのよ!能代も矢矧も心配し過ぎよ。たしかに今年の冬、阿賀野は炬燵でゴロゴロしていたのは間違いないけれど、別にいいじゃないの~。ここ最近、毎日のように矢矧達から『阿賀野姉ぇは、ダイエットしないと!』なんて言われるけれど、阿賀野はそんなに太ってないわよ。…その…ちょっと…ちょっとだけ、お腹にお肉がついた『かも』しれないけれど…別に目立つような量じゃなし…い…いいじゃないの~。

 

ま、それはともかく、こうやって三人で鳳翔さんのお店で食事をするのは久しぶりかな。本当は酒匂も居れば良かったのだけれど、酒匂は遠征中のようだから…今日は仕方ないのよね~。それにしても…こうやって、少しだけ涼しい外で食べる料理というのも、悪くないわね。とりあえず、よく分からない料理だけれど、鳳翔さんの作った料理はたぶん美味しいと思うから食べてみようかな…。まずはこの上に葉っぱが載った、串に刺さった料理からね。

 

…キラリ~ン。なになに、この料理。凄く美味しいじゃな~い。上に載った黒い物は凄く甘い…というか、濃厚な甘さだけれど、葉っぱの部分は凄く良い香りで、ちょっとだけピリッとするのが良いのよね~。それに…この串に刺さっている物は豆腐なんだ~。歯応えが凄くしっかりしていて少し固めだったから、阿賀野は最初分からなかったけれど、これ豆腐なのね。豆腐の部分も勿論柔らかい甘味があるのだけれど、上の濃厚な甘さ…これお味噌のタレなのね。あぁ、いいじゃないの~。さぁ~て、こんなに美味しいという事が分かれば…阿賀野、次の串も急いで食べちゃうわよ~。

 

「阿賀野姉ぇ、おかずばっかり食べていたらダメって、いつも言っているでしょ?」

 

む…むぅ…ま~た矢矧に怒られたよ…。別にどうやって食べたっていいじゃな~い。…でも矢矧は怒ると五月蝿いから、とりあえず御飯も食べておこうかな。あれ?この御飯…何か混じっているのね。野菜かな?普通の御飯よりもさっぱりしているから、御飯もどんどん食べられるけれど、さっきのお豆腐の料理と凄く相性が良さそう~。それにお吸い物も薄味だけれど、凄くしっかりした出汁が入っているから…美味しいわね~。

 

さ~て、御飯も食べたし、お吸い物も飲んだから、もう矢矧に怒られることはないわ!早速、次の豆腐の串を食べちゃうんだから!

 

「阿賀野姉ぇ、両手で串を持つのは止めて頂戴。欲張らなくても、誰も阿賀野姉ぇの料理を取らないから大丈夫です。」

 

今度は能代に怒られたよ…。べ…別にいいじゃな~い。この豆腐の串、とっても美味しいから一気に二本纏めて食べたいだけなのに…。それに、すぐ隣の席に座っている利根さんなんて、両手で四本も串を持って食べているのよ?阿賀野だけ怒られるのは納得できないんだけど!

 

 

あ~ぁ、あっという間に阿賀野のお盆の上の料理は空。能代と矢矧のお盆の上も空みたいだけど、まさか二人とも今日はこれで終わりという事はないわよね。いくら阿賀野にダイエットをさせるつもりでも、これだけではとても足りないんだから。一応、矢矧にお伺いを立てておこうかな…。

 

「ね…ねぇ、矢矧?流石にこれだけじゃ、阿賀野は足りないのよね。それに矢矧だって足りなかったでしょう?追加を注文してもい~い?それに…隣の席の利根さんも追加注文しているようだしぃ~、阿賀野達ももっと食べたっていいじゃないの~。」

 

「…仕方ないわね。阿賀野姉ぇがそこまで言うのなら、矢矧は止めないわ。能代姉ぇもそれでいい?」

 

「そうですね…阿賀野姉ぇの選択ですから…。能代もこれ以上は…」

 

あ…あれ?能代も矢矧も止めないの?それに、二人とも顔を見合わせて仕方ない…みたいな感じなんだけれど…ひょっとして阿賀野、何か拙い事言っちゃった?ま…まぁ、いいじゃない。こんなに美味しい料理なんだから、ダイエットは明日から…ってことで。それにこの料理は豆腐の料理だから。…でも、ちょっと肉や魚も食べたいかな…。能代達には内緒で、鳳翔さんに追加注文しようかな。

 

「能代も矢矧もここで待っていて、阿賀野が鳳翔さんに追加注文してくるから。」

 

 

 

鳳翔

 

 

今日はお店の外も凄く賑やかですね。先程、菜飯田楽のセットを持ち出した阿賀野さん達三人も、今頃は外で料理に舌鼓を打っているのだと思います。あらっ?

 

ガラッ

 

「鳳翔さん?阿賀野達にさっきの料理を追加してね。…それと、矢矧達には内緒で、唐揚げと焼き魚も一皿追加してくれる。この二つは中で食べていくから…ね?」

 

…阿賀野さん、それはあまり良い選択ではないと思いますよ。今回の菜飯田楽については、それほどカロリーは高くないですが、ここで唐揚げや焼き魚を食べてしまっては、元の木阿弥になってしまうと思うのですが…。

 

「阿賀野さん?今回は大人しく菜飯田楽だけにしておいた方が良いと思うのですが…。」

 

「だ…大丈夫よ、鳳翔さん。阿賀野に任せて。ダイエットは明日からちゃんとやるから。」

 

その言葉は、ダイエットに失敗する典型的な言葉だと思うのですが。とはいえ、阿賀野さんは時々しか来店しないお客さんですし、軽巡洋艦の子達にそれ程強く言う事も出来ませんから、一応注文どおりにお出ししましょうか。唐揚げや焼き魚は直に出来ますから、これを先に出して阿賀野さんに食べてもらっている間に、菜飯田楽の追加注文も作ってしまいましょう。

 

 

「阿賀野さん…一応、追加の唐揚げと焼き魚ですが…矢矧さん達に怒られても知りませんよ。」

 

「大丈夫よ~、鳳翔さん。阿賀野に任せて。いただきま~す。…キラリ~ン、やっぱり鳳翔さんの唐揚げは、いつ食べても最高!それに焼き魚も美味しいじゃないの~。」

 

…阿賀野さん、唐揚げや焼き魚を食べるのに集中しているのは良いですし、とても美味しいそうに食べてくれているので私も嬉しいのですが…後ろから迫る危機に全く気付かないのは…。阿賀野さんが戻ってくるのが少し遅い事に気になったのだと思いますが、矢矧さんと能代さんが店内に戻ってきました。そして…

 

「阿賀野姉ぇ…とても美味しそうね。こうなってしまっては、矢矧も心を鬼にするしかないわね。」

 

「阿賀野姉ぇ…流石にこれは…能代も庇えませんよ。」

 

「あ…その…能代、矢矧?これはね?…その。」

 

阿賀野さんもようやく自分の危機に気付いたのだと思いますが…時既に遅しといったところでしょうか。矢矧さんも能代さんも凄く良い笑顔をしていまして…直接大声で怒らない以上に怖い雰囲気ですね。それに…矢矧さんが誰かに連絡を取っていますが…誰が相手なのかは、流石に私でも簡単に予想できてしまいます。

 

 

「あっ、神通さん。ごめんなさいね、呼び出してしまって。ちょっとお願いがあるのだけれど。しばらくでいいから、阿賀野姉ぇを神通さんの部隊で預かってくれない?最近、阿賀野姉ぇの錬度が落ちているようだから、矢矧は心配なのよ。能代姉ぇもそう思わない?」

 

「能代もそう思います。神通さん、すいませんが阿賀野姉ぇを少しキツク鍛えてもらえると、能代も嬉しいですね。」

 

なんとなくですが、私もこうなるのではないか…と予想していた通りになりそうですね。神通さんがお店に来るまでに、矢矧さん達は『かくなるうえは、阿賀野姉ぇにしっかり運動してもらうしかないわね』などと言っていました。そして矢矧さん達にしてみれば、阿賀野さんを自分達の目が届く第二水雷戦隊で預かって運動させるのが一番手っ取り早いと考えたのでしょうね。それにしても同じ第二水雷戦隊で預かるにしても、わざわざ神通さんを呼び出した…という事は、能代さんも矢矧さんも、ついに業を煮やしたという事なのかもしれません。

 

「…そうですか。たしかに、最新鋭艦の阿賀野さんが私の部隊に来てくれるのでしたら、私の指揮下の駆逐艦の子達にも良い刺激になりそうですね。阿賀野さん?この神通、相手が同僚の軽巡洋艦とはいえ、訓練では手は抜きませんので、そのつもりで居てくださいね。」

 

「ヒ…ヒィ…。ちょっと、ちょっと、能代、矢矧。阿賀野を殺す気!?それに、阿賀野が勝手に第二水雷戦隊に動く事なんて出来る訳ないじゃな~い。提督さんだって、反対するわよ?」

 

「…阿賀野姉ぇ、この矢矧が何も準備していなかったと本当に思っていたの?ここに来る前に能代姉ぇと相談して、阿賀野姉ぇが食事だけでダイエットをする気がないなら、第二水雷戦隊に一時的に移ってもらって鍛えなおす事に決めていたのよ。だから、この件については提督や金剛さんにも相談して許可はもらってあるわ。」

 

阿賀野さん…どうやらこれは年貢の納め時のようですね。矢矧さんの言葉に阿賀野さんはガックリ肩を落としてしまいましたし、そんな阿賀野さんを能代さんと矢矧さんが両脇から抱え込むようにして引きずり始めました。

 

「鳳翔さん、今日はごちそうさま。それと…阿賀野姉ぇが追加注文した菜飯田楽だけれど、外にいる妙高さんや利根さん達に渡してくれないかしら。お代は勿論私が払うから問題ないわ。さぁ、阿賀野姉ぇ、早速今から二水戦名物の夜戦訓練に行くわよ!」

 

「阿賀野さん…二水戦にようこそ。この神通が、阿賀野さんをしっかり鍛えなおしてあげましょう。」

 

どうやらこれからしばらく、阿賀野さんにとってはかなり厳しい訓練の日々が待っていそうですね。とはいえ、あの人の話では近々大きな作戦があるという事なので、ある意味丁度良いタイミングなのかもしれません。阿賀野さん、頑張ってくださいね。

 

 

数日後、ゲッソリ痩せた阿賀野さんが、フラフラしながら私のお店に来店しました。どうやらかなり厳しく神通さんから訓練を受けたようです。そして、私のお店でここぞとばかりに暴飲暴食をした結果…また元の木阿弥になってしまったようで…阿賀野さんにも困ったものですね。




ようやくGW突入ですね。皆さんは何連休になりましたか?私は前半はカレンダー通りですが、後半は金曜日に有給休暇を入れる事が出来たため、長期休暇を利用して、最近お気に入りのコテージを一つ借りて、家族揃って休暇を取る予定です。

さて今回のメニュー。題名は木の芽田楽としていますが、話の中では菜飯田楽という形で登場させています。山椒の芽を乗せる木の芽田楽はまさに春の料理ですから、丁度良いタイミングかな…と思い、この料理を出しました。また個人的には、木の芽田楽には菜飯でして…愛知県の豊橋だったと思いますが、この菜飯田楽が凄く美味しい料理屋があり、私も時々今でも訪れる事があります(勿論、これを食べるためだけに岡崎に行くのは大変なのですが、それをする価値があるわけで…w)。

話中の阿賀野の心情ではありませんが、この木の芽田楽は、豆腐料理ではあるものの、味噌の濃厚な甘さによって凄く満足感がある素晴らしい料理でして…これにあっさり食べられる菜飯がついてくると、もう止まりませんw。したがって私の場合ですと、結局何本も木の芽田楽を追加で食べてしまう事になり…甚だしくは菜飯をお代わりしてしまう事もあり、結果的にカロリーオーバーになってしまっている感が…。ですから、実は今回の阿賀野の行動は完全に自分自身の行動だったりする訳です(勿論、唐揚げや焼き魚の追加はしませんし、私には神通さんのような鬼教官は居ませんが)w。

それにしても阿賀野は、矢矧や能代達によって、神通さんのブートキャンプに放り込まれてしまった訳ですが、大丈夫だったのでしょうか。なんとなくですが、今回の話の最後の段にあるように、リバウンドで更に太る…というような事になりかねない気がw。

いよいよ、春のイベントが開始されますね。基地航空隊に絡んだ作戦で三段構えという事ですから、基地建設、基地航空隊の進出、基地の防衛作戦?みたいな感じのイベントですかね…。いずれにせよ、大規模作戦という事なので、なんとか完走出来たらな…と思っています。

今回も読んでいただきありがとうございました。


木の芽田楽(四人分)
木綿豆腐 :4丁(1丁で4本)
木の芽(山椒の芽):16枚

八丁味噌:180 g
味醂 : 60 mL
日本酒 :60 mL
砂糖:70 g

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。