ウチは行かないつもりだった。皆は社員さんがやっているホストクラブに行くって言ってたけどね。ウチは社員さんのことを信用しているし、社員さんだって色々と事情があってホストをやっているんだと思う。さすがにそういうところに踏み入るのは悪い気がしていかないと決めていた。
でもホロメンが社員さんに接待してもらったとかを聞くと行ってみたいという欲求がどんどん強まっていくのを自分でも感じていた。自分だってお金を払うだけで社員さんと二人きりで過ごせるのなら払う。だってそれにはそれだけの価値がある。
さすがにもう我慢が出来なくなっちゃった。
それにフブキの話を聞く感じだともうかなり多くのホロメンが社員さんと一緒に過ごしているというのを聞いて……これ以上他の子に追い抜かれるのは嫌だと思ってしまった。
ウチは今、社員さんが勤めているホストクラブの前に立っていた。こういうところに入ったりするのは初めての経験で少し緊張する。早くなる鼓動を必死に抑えながら…ウチはホストクラブへと入って行く。
中はとっても豪華な飾りで装飾されていた。ウチが少し圧倒されているとスタッフの方が話し掛けてくれた。そしてそこで社員さんのことを指名して、場所は『VIPルーム』にした。VIPルームは予想以上に高くてさすがにちょっと悩んだけど、社員さんと二人きりになれるなら安いもの。
そしてスタッフさんに『VIPルーム』に案内されて、社員さんが来るまで待つことにした。
少し待っていると社員さんは来てくれた。
「ミオさんも来たんですね」
「ご、ごめんなさい」
「いや謝らないでくださいよ。別に来た事を咎めているわけではないので」
「…来ないようにしてたんです。あくまで社員さんが副業でホストをやっているのは知っていましたから」
「え、知ってたんですか?」
「はい。ウチは知ってましたよ。フブキから聞いていたので」
「あ…白上さんですか…」
社員さんが『白上さんですか』と言った時の顔はまたかぁという感じだった。
そこでウチは一つ気になったことがあった。
「あの社員さん、一つ聞いてもいいですか?」
「うん」
「なんでずっと右の首筋を抑えているの?」
「あ、これはちょっと色々ありまして」
その時の社員さんがあんまり触れて欲しくない感じだったけど、気になった。だって首筋を抑えるなんて絶対になにかあったに決まってるし。
「何があったんですか?」
「いや…ちょっとこれは触れないでください」
「教えてくれないんですか?」
「すいません」
「どうしてもだめですか?」
「だめです」
普段の社員さんであれば押しに弱いのである程度、押せば何でも押してくれるような人。その社員さんが今回は一向に折れてくれそうにない。
だけどそこまで社員さんが隠すようなことなんてやっぱり知りたい。でもあんまり強引にやっちゃうと嫌われちゃうかもしれないし。
ウチはちょっとだけ考えた。どうすれば社員さんが首筋を抑えるのを止めるか。
そしてある考えが浮かんだ。
「ウチの手を握って欲しい!」
「手ですか?」
「うん。ウチの手を温めて欲しいの」
「分かりました」
社員さんは片手でウチの手を握った。ウチの計画ではこれで社員さんが両手で握ってくれる予定だったのに。
「両手で握ってくれないの?」
「ご、ごめんなさい」
「ウチ、両手で握って欲しい」
「…それは勘弁してくれませんか」
「ウチは社員さんに両手で握って欲しいの。握ってくれないとウチは社員さんのことを事務所に言っちゃうかも」
もちろん、事務所に言うなんてのはウソ。社員さんが事務所をクビになっちゃったらいやだもん。今の活動はホロメンや運営の人たちのお陰でとっても楽しい。そして特に社員さんが居てくれるから、前に比べて何倍も活動が楽しいと感じれるようになった。
そんな社員さんが困るようなことはあんまりしたくない。でもこれを言えば社員さんは首筋を抑えるのを止めてくれると思ったら口から出てしまった。
「…それは困りますね」
社員さんは一瞬だけウチから視線を外したけど、すぐに戻した。
「じゃあ誰にも言わないでくれますか?」
「うん!!約束する!!」
すると社員さんは首筋を抑えるのを止めて、ウチの手を両手で握ってくれた。
そしてやっと社員さんが首筋を抑えていた理由が分かった。
それは首筋に残っている、『キスマーク』。
「…き、きすまーく!?」
「これは酔ったお客さんがしちゃったんですが、大神さんとかにこれを見られて広められるとマズイと思って隠していたんです」
「そ、そうだったんですか…」
酔ったからと言っても社員さんの首筋にキスマークを付けたのは許せない。
う、うちだってまだ社員さんにキスしたことないし、そういうことは段階を踏んでから…。
「…社員さんは嫌じゃないの?」
「嫌ということはないかな。さすがにホストを副業にしてそれなりに経ってるしね。最初はもちろん色々と取り乱すこともあったけど、どんどんこなしていくうちに慣れていくものですよ」
「…う、うちはいや!」
「大神さん?」
「ウチは社員さんがキスマークとか付けられるのいや!」
「なんで大神さんが嫌なんですか?」
社員さんは不思議そうな顔で聞いてきた。
「な、なんでもいやです!!これからはキスマークとか付けられないでください!!」
自分の好きな人が他の人にキスマークを付けられているなんて良い気分じゃない。むしろ吐きそうなぐらいに気持ち悪い。社員さんに誰かが触れたと想像するだけでも…いやだ。
でも、社員さんがホストで働いていることを知った時からこういうことは覚悟していたはずなのに。いざ社員さんがキスマークとかを付けられているところを見るとかなりキツイ。
「な、なるべく気を付けます」
それから話してお酒を飲んでいく。こういう場だといつもよりも自分にセーブが掛かるものだけど、今日はセーブが掛からなかった。社員さんと二人きりで話せるという環境がそうさせてしまった。
気付いた時には…見慣れない部屋のベッドだった。
視線を隣に向けると…そこには可愛い寝顔の社員さんがいた。
ウチは必至に考えた。
「な、なんで…こんなことに…!」
どうにか思い出そうとしても…思い出せない。ちょっとお酒を飲んだところまでは覚えている。
そんなことを考えているところで…ウチは気付いた。
「え…ウチ……はだか…」
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ホロメンが社員を接待するというシチュエーションだったら誰がいいですか?
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