さすがにいつかはクビになると思っていた。
それが予想以上に早い段階になってしまっただけ。
事務所にこのことがいつかバレるのは分かっていたこと。それぐらいの覚悟を持って、この副業を始めたんだし。だってこのことがバレて辞めてくれと言われた時も後悔することはなかった。
そして事務所から出て歩いていると…目の前からよく知っている人が僕のことを見ていた。
「天音さん…」
「社員さん」
「…なんで天音さんがいるの?」
「だって社員さんが辞めることになったって聞いたから」
「それは理由になっていませんよ」
たぶん、事務所の方もタレントがあのホストクラブに出入りしていることは気付いていることだろう。事務所はタレントの行動を制限することは出来ないが、注意ぐらいはあったと思う。どんなに小さな火種が火事になるかは誰にも分からないからな。
「ボクは社員さんのことを大切に想っているんです。でないと態々、ホストクラブになんて行かない」
「それはありがたいが」
すると天音さんからこれからについて質問をされた。
「これからはホストとして働いていくんですか?」
「そうかな。今のところはね」
副業をしていたお陰である程度の金銭的余裕は存在する。正直、全然違う仕事に就くのも案外面白いかなと思ったりしている。
「いずれはホストも辞めちゃうんですか?」
「辞めるかもしれないですね。さすがにいつまでもホストとして収入を得られるとは思ってないですから」
「それからどうするの?」
「それはその時決めるかな。今はまだホストとしてしばらくやっていくことを決めているだけ」
そこまで先の未来は全然読めていない。自分がこれからどんな風になるのかは分からない。
「天音さんは活動を頑張ってください。あなたは『アイドル』としてファンの人に夢を見せることができるんですから」
でも、これからはホロライブの中の人間ではなくて外の人間として見れるのは少し面白い。どんな風に方向性として成長していくのか、それぞれの道を見ることが出来るのは楽しみでもあるしな。
「…キミは居てくれないんでしょ」
「それは辞めましたからね。近くでは見れませんけど、画面越しであれば普通に見ることができます」
「それじゃあ隣には居てくれない」
「いつも天音さんの隣に居たわけじゃないですよ。僕には仕事もありましたし、同僚とお酒を飲みに行ったり、他のホロメンと一緒に活動することも多かったですよ」
誰か一人だけの固執することはなかったと自分でも自信がある。それにまず、スタッフが一人のタレントだけを贔屓するようなことをする訳にはいかないでしょ。
「それでもホロライブっていうグループに居てくれれば、いつでもお話とか出来るよ。だけどこれからはそういうわけにはいかない…」
「それはそうですね」
ここで天音さんに会ったのも何かの縁かも知れないので伝えておくことにした。
「あと連絡先は変えようと思っているんですよ」
「え?」
「同僚の方は大丈夫ですけど、タレントの個人情報は持っているのはさすがにマズいですし」
会社でも言われたが、自分でもそれは社会人として決めていた。辞めた会社のタレントの連絡先を持っている時点でかなりマズいだろう。もしかしたらこういうところからスキャンダルとかが出るかもしれないしな。
「それじゃあ…これからはもう会えなくなっちゃうってこと?」
「まぁ…そんな感じですかね」
「ボクたちのこと嫌いになったの?」
「そういうわけではないです。ただこれからも連絡先を同じにしていると色々と面倒になりそうですし。あなたたちの連絡先を持っているのがマズいので」
今の携帯には関してはしっかりと処分する。しっかりと連絡先を消してから処分する。万が一にでも誰かにタレントの連絡先を知られないように。
「…ぼ、ぼくはこれからも社員さんと…」
「ごめん。僕はもう天音さんたちとは働けない」
これ以上ここで立ち止まっていても、僕にとっても天音さんにとっても悪いので歩き出すことにした。天音さんも追ってくることはなかったので僕も振り返ることなく進んで行く。
ホロメンが社員を接待するというシチュエーションだったら誰がいいですか?
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天音かなた
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夜空メル
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常闇トワ
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猫又おかゆ
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潤羽るしあ