正直、白上さんの記憶がないということで油断をしていたかもしれない。白上さんがいつの段階で僕がホストとして働いているのを知ったのか。それは未だに知らない。勝手にあの日に知ったんだと頭で決めつけていた。
でも翌々考えれば…この可能性だってあったはずだよね。
「宝鐘さん」
「どうしたんですか?急に考えこんじゃって」
「い、いや…何でもないですよ。それで宝鐘さんはどうしてこんなところに?」
「そんなの言わなくても決まってるじゃないですか。船長のことを接待してもらうためですよ。ここなら社員さんに接待して貰えると聞いたので」
「その情報元は白上さんですか?」
「どうですかねぇ…船長はホロメンのことを売ったりしないので答えません。黙秘権を使わせてもらいます」
「そうですか……まあ、ほとんど見当はついてますし」
「それで社員さん、船長はお客さんですよ。接待してください」
これは白上さんと同じような展開だ。僕なんかに接待してもらうよりも他のホストの人に接待された方が気持ちいいと思うけどな。僕はまだこの副業を始めてそんなに時間は経っていないし、話術も人よりも秀でている訳ではないから。
「僕が接待するんですか?ホストを楽しみたいのなら僕以外のホストをお願いしてみましょうか」
「そんなことしなくていいですよ。船長は社員さんに接待してもらいたいので」
宝鐘さんがこんなことを言う以上は僕が接待をしなくてはならない。他の人に任せれば確実に満足して帰ってもらえてこっちの秘密がバレることもないはず。宝鐘さんが他の人にバラしていない保障はないし、満足したら本当に誰にも言わないのかも分からない。少なくともここで宝鐘さんを追い返すような真似をしたりすれば僕の秘密は完全にバラされるのが目に見えている。
「まさか白上さんが宝鐘さんに話していたとは…」
「船長の方が驚きましたよ。いつも真面目に仕事に取り組んでいる、社員さんがホストをやっているなんて。最初は船長も信じられなかったですけどフブちゃんに一枚の写真を見せられて納得せざるを得なかったですね」
白上さんってそんなものまで持っているの。もしかして白上さんはかなり前から僕のことを怪しんでいて調べていたのかも。まあ、それしか考えられないか。
「…それで宝鐘さんは何で来たんですか?それを会社にでも話せば僕はクビになりますよ。態々、来たということは脅迫でもするつもりですか!??」
「船長がそんなことをするような人間に見えますか_?」
「見える」
「は!船長はただ社員さんに注意を言いに来たのとどうせなら社員さんに接待をしてもらおうと思っただけです!」
何だかんだ言って白上さんもそうだったけど、上司や同僚にこの事を言わない辺りは優しいのかもしれない。これを言われたら僕は仕事を失うから。
「…そうですか…。でも、僕のことを心配してくれたんですか?」
「そりゃ…心配しますよ。社員さんにはかなり助けられましたから。社員さんにはクビになって欲しくないし、これからも船長が活躍する姿を見て欲しい」
普段はおちゃらけているよう宝鐘さんにこんな事を言われると……さすがに申し訳ないという気持ちが湧きあがって来る。タレントさんに心配を掛けてしまっているのがスタッフの一人として…あるまじき行動。少なくともスタッフはタレントさんが全力で出来るようにサポートをするのが仕事なのに。
「ありがとうございます」
「何か飲みたいものはありますか?」
「今日はお酒が飲みたいな~~社員さんとこんな風に飲むことなんてありませんし」
そしてドリンクが来てすぐに宝鐘さんは勢いよく流し込んだ。
「ぷはぁぁぁ!!うまい!!」
「それは良かったです」
「やっぱり社員さんのお酒は美味しい」
「…宝鐘さんが満足して貰えていたのなら嬉しいです」
そんな風に話していき、少しずつ宝鐘さんにも酔いが回っていった。
「せんちょう~~のおさけのみますか~~」
目が完全に座っちゃっているのが怖い。お酒に強い訳ではないのでしょう。それなのにお酒をすごい勢いで飲んだりするからだろう。僕はあんまりお酒が強い訳ではないから少しずつ飲むようにしている。
「キミもいっきにのんでください~」
そう言いながら宝鐘さんは自分が飲んでいたグラスに追加でいえて差し出してきた。
「宝鐘さんも知っていると思いますけど、僕はあんまりお酒が得意ではないので…」
これでどうにか回避できるはずだ。今までのホロメン以外のお客さんにはこれでどうにかなった。すると宝鐘さんは別の手段を取り始めた。
「キミにそんなゆうきないですよね~~」
煽っている。この人、酔うことで煽り属性が追加されるのか。かなり面倒ください酔い方の人というのが印象だ。
「ほら~~のんでください~~ゆうきがあるのならですけど」
この人、本当に人を腹立たせるのが上手い。そこまで言われるとさすがに僕も…。
「そこまで言うなら飲みますよ!!最初に煽って来たのは宝鐘さんの方なんですからね」
「いいですよ…のめるものならのんでくださいよ~~」
そして僕は勢いよくお酒を体に流し込んだ。すると少しずつ体温が暖かくなるのを感じる。僕は体に出やすいような体質のため酔っているのが端から見ても分かりやすい。
でも今はお客さんを接待している最中。ここで意地でも倒れる訳にはいかない。いくら宝鐘さんのような人であってもお客であることは変わる事のない事実なんだから。
「…はぁ…はぁ……飲みましたよ。これでいいですか……」
そして宝鐘さんの方を見ると……宝鐘さんの顔がさっきにも増して顔が赤く染めあがっている気がする。これは僕が酔っているからそんな風に見えているのか。それとも本当に赤くなっているのか…正直分からない。
「……そ、…それは……せ、せんちょうのぐらす…」
小さな声過ぎて何を言っているのか分からないが…今は自分のことが心配だ。只でさえもお酒が弱いのに。
「どうしたの?宝鐘さん」
「…な、なんでも……」
でもなぜか宝鐘さんはさっきよりも顔が赤く見えるのにさっきよりも呂律が良く回っている気がする。まるで酔いがさめてしまったかのように。
それから宝鐘さんは…少し消極的になっていき最終的には自分の足で帰っていったのだった。
ホロメンが社員を接待するというシチュエーションだったら誰がいいですか?
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天音かなた
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夜空メル
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常闇トワ
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猫又おかゆ
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潤羽るしあ