獅白さんの一件以降はお酒の飲みすぎに注意するようになった。持て成すはずのホストがお客さんに介抱されるようではいけない。
そして今日も定時で仕事を終わらせて出勤をする。でも今日に関してはいつもと違うことがある。それは僕の隣を笑顔で歩いている人物。
「沙花叉さん」
「なに~?」
「何で僕の隣を歩いているんですか?」
「え~~隣を歩いちゃダメなんですか~?」
「別にダメという訳ではありませんが、何も面白いこともありませんよ」
「いいよ。沙花叉は只、社員さんに付いていきたいだけだからさ」
僕が事務所を出る時に出くわして何故かそれからずっと付いて来ている。沙花叉さんが付いて来ている状態でホストクラブに出勤する訳にはいかない。沙花叉さんに情報が広がっているのかは定かではないから。ここで辺に聞くと妙に鋭いところがあったりする、沙花叉さんのことだから何かを勘ぐってしまうかもしれない。そう思うと聞こうにも聞けない状態。
「いつまでついて来るつもりですか?」
「いつまでも」
「……さすがにそろそろ付いて来るのを止めてくれませんか?」
「だ~~め」
沙花叉さんは笑みを浮かべながら見つめて来る。少し怖く感じてしまう。
「さっきも言いましたけど付いて来ても楽しいことありませんよ」
「いいの。沙花叉は社員さんと一緒にホストクラブに行きたいの」
「…………」
「どうしたの鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をして」
「知ってたんですか?」
「知っているよ」
まさかホストクラブのことを知っているとは思いもしなかった。
「…本当に行きたいんですか?」
「行きたい!!沙花叉も社員さんに接待されたい!!」
「僕は別にそんなに接待とか上手くないですよ。誰から話を聞いたのか分かりませんが」
「いいの!!それでも沙花叉は社員さんに接待して欲しいの!」
そんな話をしていて僕は気付いた。今の僕にはあまり手持ちがないことを。そこで近くのコンビニでお金を下ろすことにした。沙花叉さんは外で待っていると言っていたので待ってもらっている。
お金を下ろし終わって、沙花叉さんの近くに向かおうとすると、そこには屈強な男たちが沙花叉さんを取り囲んでいた。
「俺達と遊ばない?」
「…楽しいことしようよ~~」
「あ、あの…さかまたはただまっているだけで…」
「ねぇ~いいじゃん~~~」
「あそぼうよ~~」
普段の沙花叉さんと違って萎縮してしまっている。僕はすぐに沙花叉さんを助け出すことにした。
「ごめんなさい。この子は僕の彼女なんで手を出さないでくれますか?」
「…な、なんだよ!彼氏持ちかよ!」
そう言って男たちは去っていった。
そして去ったのを確認してから沙花叉さんの方に振り返るとそこには……涙目の沙花叉さんが上目遣いでこちらを見ていた。
「し、しゃいんさん~~」
「ど、どうしたんですか?」
「こ、こわがった…」
「大丈夫ですよ。もういませんから。少し落ち着きましょう」
沙花叉さんだって女性なのだから、急に屈強な男性に詰め寄られたら恐怖の方が勝ってしまう。
「…うん……」
そして沙花叉さんが落ち着くまでしばらく抱きしめていた。
その足で僕と沙花叉さんはホストクラブに向かうことにした。ホストクラブに入ると支配人が出迎えてくれた。
「ちょっと遅くなってしまいました…」
「いいよ。同伴なら別に。それにしてもキミは本当に人気だよね。こっちとしてもキミの人気は助かっているんだよ。ほぼ毎日絶対に同伴があるし、ちゃんとお客さんを連れてきてくれるし」
「そうですかね…。僕としては毎日胃がキリキリしますよ」
最近はほとんどタレントさんばかり。タレントと関わりない人とは3週間近く接していない。
「そういえば、キミのお得意様の白上様から明日、同伴をお願いしたいと来ていたのでお願いね」
どうやらタレントさんからホストクラブに同伴の予約見たいなものが入っているらしい。今日も白上さんと事務所内で会ったけどそんなことは一言も言っていなかった。
「そんなに人気なんですか?」
「別にそんなことはないですよ。只、面白がって白上さんとかが予約を入れるだけですよ」
すると沙花叉さんは何か小言で呟き始めた。
「…でも…社員さんを狙っている人って多いって聞いたことあるんだよな」
そしてお互いに席に着くと沙花叉さんはお酒を頼んだ。そして沙花叉さんが酔うまではそこまで時間は掛からなかった。
「しゃいんさんってかっこいいですね~~」
「そうですか?そんなことはないと思いますよ」
「さかまたがいうんだからぜ…ぜったい~~かっこいいの!」
「そ、そうですか…」
沙花叉さんの圧力に押し負ける形で同意してしまった。もう完全に出来上がってしまった、沙花叉さんは靴も脱いで幼い子供のように這い這いをして僕に近づいて来る。
「きょうはほんとうにありがとう…」
「これでも社員の一人ですから。タレントを守るのも仕事の一部なので」
「それでもうれしかったよ、さかまたは」
普段の差花叉さんよりも甘えが強い気がする。これもお酒の影響なのだろう。
「これやろう~~」
そう言って沙花叉さんはテーブルにあったお菓子を一歩取った。
「…それですか?」
「ポッキーゲーム…だよ」
「ポッキーゲームですか?」
「うん…。さかまたがこっちからたべるからぁ…しゃいんさんはそっちからたべてぇ…さぁすたーと!」
沙花叉さんはそれだけ言ってポッキーを咥え始めた。さすがに僕はこの状況を理解できずにいた。
「ほぉら~はやぁく…」
「あ、はい…」
促されるまんまに僕も沙花叉さんが咥えた方とは真逆を咥える。すると沙花叉さんは少しずつ食べ始めてこちらに近づいて来る。沙花叉さんは酔っていて恥ずかしいという気持ちも欠如しているだろうし、正常な判断が出来ている感じではない。
ここは僕の方が負けないと……。
そんなことを考えていると…目の前まで沙花叉さんが来ていた。あと少しでも沙花叉さんが進めばお互いの唇が触れ合ってしまうほどの距離。そこで僕は無意識のうちに…ポッキーを強く噛むことでゲームを終了させた。ノリで始めてしまったがこれ以上はさすがにマズイ。もし、沙花叉さんが明日でも今日のことを思い出した時に……最悪な思い出が残らないように。
「あ~~しゃいんさんのまけ~」
「はい。僕の負けですね」
「じゃあ~~さかまたのいうことをきけ~」
急に沙花叉さんは僕のことを指差してそんなことを言い始めた。このゲームには別に罰ゲームも何もなかったはずなんだけど……。
それから僕は沙花叉さんに命令されたことをやるのだった。なるべく叶えられるものに関しては叶えた。
ホロメンが社員を接待するというシチュエーションだったら誰がいいですか?
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天音かなた
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夜空メル
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常闇トワ
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猫又おかゆ
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潤羽るしあ