短編小説
「本日、〇〇市の住宅で発見されました佐野美波さんの…」
ニュースから流れてきた聞き覚えのある名前は私の高校時代の友人だ。
高校を卒業した私たちはそれぞれの道へと進んだ。私は社会人に、彼女は夢を追いかけて専門学校へ進学をした。
お互いに毎日を乗り切るのに精一杯になり連絡頻度が日に日に少なくなっていった。それでもたまにメッセージのやり取りが私の中ではとても幸せだった。
数年振りにお互いに落ち着いた時間が取れたので会う約束をしていたその矢先、彼女のニュースが流れてきたのだ。私は驚きのあまり持っていたマグカップを床に落としてしまった。ガシャンとマグカップが割れる。
「あっちゃ〜」
幸いにも中身は飲み切っていた。
静かに、割れてしまったマグカップの破片を集める。
「はぁ、会社行かないと」
ぽつりと呟き、急いで身支度を整える。気がつけばいつも家を出る時間になっていた。
駅まで走る。
なんとかいつもの電車に間に合った。
悲しくても時間は進む。その流れに平然と乗っていかないと、いけないのだ。なんて残酷なのだろう。ゆっくりと悲しむ時間も取れないなんて。
その日はなんとなくすぎてしまった。
今日は色んな人に怒られたな。全く、こっちはそんな気分じゃないってのに…
その日は久しぶりに夢を見た。
花畑の中友人と寝転がり夢を語りあった。
こんな都合のいい夢きっと私が見たいだけだと思いながらも見続けた。
「陽菜は私みたいにならないでね」
最後に彼女はつぶやいた。
待ってと手を伸ばすが彼女に手は届かない近くにいるのに触れることができなかった。
風が吹く、花が舞う、彼女の姿が見えなくなる。
それと同時に目が覚めた。
「夢か…」
それっきり私の夢に彼女が出てくることはなかった。
私はよぼよぼのおばあちゃんになった。
私の人生は幸せだったと言えるだろう。結婚し子宝に恵まれ孫にも会えた。人並みの幸せを手に入れたと思う。
彼女との別れから数年後、風の噂で彼女は自ら終わらせる道を選んだと聞いた。
最後に会えなかったのが本当に悔やまれる。
もし、会えてたら変わっていたのだろうか、現実で夢を語り合っていたら変わっていたのだろうか。
過てしまったものは考えてもしょうがない、そう割り切るしかないのだ。
もしまた貴方と会えたなら
次はどんな話をしようか。
それを楽しみに今日も私は生きてゆく。
「おばあちゃんね、話をしたい人がいるの。こんなに素敵だったよって教えてあげるのだからもう少し…」