オレはポケモンが好きだ。昔っから家の周りにいるポケモンたちと戯れてきた。オレが生まれたすぐの時から、野生のポケモンたちはオレと遊んでくれたらしい。さすがにそこまでは覚えていないが。家が地図にも乗らないような、森の中にある小さい集落ということもあって、毎日毎日ポケモンたちと遊んでいた。
「まてまてー!」
「クリュ!」
この日、オレは妙に足が速いクルミルと追いかけっこをしていた。クルミルに足が速いイメージは無いが、どうしてこいつはこんなに足が速いのだろうか。いつもそんなことを考えながら追いかけている。
お互いに疲れて休憩している最中、オレたちの元に1匹のポケモンが近づいてきた。
「チュッチュ!」
「ん?どうしたチュリネ。もしかして......それ、オレたちにくれるのか?」
「チュ!」
元気いっぱいにそう鳴くと、チュリネはオレとクルミルに綺麗な花かんむりを渡してくれた。オレはそれを頭に被り、近くにあった小さい湖で自分を見る。クルミルも同じことをしている。
「おおー......ありがとな!コレ、ずっと大切にするからな!」
「クリュリュ!」
「チュリー!」
オレが言うと、クルミルも同調したように鳴き、チュリネはそれに喜んでくれているようだ。オレたちが笑っている最中、突然地面に穴が空いた。そしてそこから1匹のポケモンが這い出てきた。
「モグッ!」
「うおわあっ!」
オレはそう叫ぶと、バランスを崩して湖に落ちてしまう。泳ぐのは苦手ではないためすぐに陸に上がることができた。が......。
「服がびちょびちょだ......どうしてくれるんだよ、モグリュー......」
「モグ?」
オレが言ってもただ頭にハテナを浮かべているだけのモグリュー。こいつが原因で湖に落ちたのは今回だけでなく、今まで何度もあった。回数なんて多すぎて覚えていない。
......実を言うと、このモグリューともう1匹のポケモンのことがオレは苦手だった。理由は簡単だ。手に熱を感じないから。触ると冷たく、まるで鉄のような無機質さが、オレは苦手だった。
「ちっ......次はぜってー落ちねーからな......」
「モグ!」
そう鳴くと、モグリューは自分が掘った穴とは別の穴を掘ってどこかに行ってしまった。
湖に落ちたオレを心配しているクルミルとチュリネに「大丈夫」と言いながら服を脱ぎ、そこら辺で広げて乾かす。この様子を木の後ろから見ているポケモンがいた。......そいつが、オレの苦手なもう1匹のポケモン。
「......コマッ」
「......何見てるんだよ、コマタナ」
それがコマタナ。さっきのモグリュー以上に苦手だ。モグリューはまだ表情から感情がわかった。だが、コマタナには感情がみられない。鉄のような冷たい身体も相まって、オレはこいつのことが大の苦手だった。
「......」
「......」
何を言うでもなく、ただオレのことをじっと見つめていたコマタナは、しばらくすると森の中に走っていった。
「何したかったんだ、あいつ......まあいいか。服乾くまで暇だなぁ......」
そう呟いて、オレは昼寝をすることに決めた。今日は日差しもいい、外で寝るには絶好の日だ。
「クルミル、チュリネ、おやすみ」
「クリュ!」
「チュ!」
そう元気に鳴く声を聞き、オレは眠りについた。
目覚めたのは、とても熱を感じたからだった。
「熱っ......!どうして───」
オレは目覚めてすぐ、周りを見た。そして目にした。燃え上がる森を。身体に火を纏って苦しそうに駆け回るポケモンたちを。
「どう、して、こんな......」
昔からオレと遊んできたポケモンたちが、昔から暮らして遊んできたこの森が、突っ立っている間にも燃えていく。
オレはその場に居たくなかった。何とか燃えずに残っていた花かんむりを見つけると、それを持って家の方に向かって走りだした。家やみんなは無事だ。そう思いながら走っていた。しかし、家に近づくほど炎の勢いは強くなっていった。そして、見た。
「あ、あぁぁ......」
既に燃えて崩れている家に、道に倒れている人々。その目に映る全てが、オレの日常を壊していく。
オレは走りだした。一刻も早く、この場から離れたかった。しかし、もう遅かった。オレが来た方向には、既に火の手が回っていた。
「は、はは......」
オレは燃え盛る炎の前で座り込んだ。もうどうなってもいい、と。そう思い、わざとそうした。だが、そんなオレの前に、あいつが現れた。
「......コマッ」
「......なんだよ。何か言いたいことがあるのかよ」
オレが苦手で堪らないコマタナ。そいつがオレの前に走ってきた。オレが言うと、そいつはその刃物のような手で、切らないようにオレの腕を引っ張った。
「なんだよ、逃げろってのかよ」
「......」
「......ちっ......ほんと、何考えてんのかわからな────」
オレは見た。コマタナの目から涙が流れているのを。
「あ......」
オレは、こいつの無機質さが苦手だった。しかし、目の前にいる今のこいつはどうだ。涙を流している。オレと同じように。
「そうか......そうだよな。おまえも生きてるんだもんな......」
「......」
「......どうにかして逃げよう。一緒に」
「......!コマッ!」
オレは立ち上がった。そして、辺りを見渡す。
「......ダメだ、もう囲まれてる......」
「......!ナタッ」
「何か見つけたのか?」
コマタナが腕を伸ばして何かを指している。その方向を見ると、まだ火の勢いが弱い木があった。しかも、その木は細く、コマタナでも十分に切れそうな木だった。
「よしっ!じゃあコマタナ、やってくれ!」
「ナタッ!」
オレが言うとコマタナは応えて腕で木を切った。その木の後ろには細い道があり、2人でその道を進んでいく。やがて広い空間に出た。しかし、森の外ではない。それでも、ここには火の手はまだ回っていないようだった。
「ここは......」
「......!」
「ん?どうかしたのか?」
コマタナが後ろから腕をつついてきたのでそっちの方を見る。
「─────」
そこには1匹のポケモンがいた。だが、そのポケモンを見たことがない。いや、どこかで見たかもしれないが、思い出せない。
オレはそのポケモンが醸し出す雰囲気に圧倒されていた。その目は厳しく、威厳があった。しかし、どこか優しさも感じる。
「おまえは......」
「こふ......」
そう鳴いたポケモンは、まるで「着いてこい」とでも言いたげにオレたちを一瞥し、歩きだした。
「......行こう」
不安そうにオレを見ていたコマタナに言い、オレたちはそのポケモンを追いかけた。
そのポケモンの力は圧倒的だった。何故か襲いかかってくる人たちの強そうなポケモンたちを一瞬で倒していた。オレたちはそのポケモンに守られながら、森を出ることができた。
「......ありがとう。オレたちを助けてくれて」
「......」
オレが感謝を伝えると、そのポケモンは何も
「......なあ、コマタナ。これからどうする?」
「......」
「オレはさ、もう1回あのポケモンに会いたい」
あのポケモンの逞しさに、オレは憧れの念を抱いていた。オレたちを守りながらも、余裕を持って戦いに勝利していた強さもそうだが、何より、美しいと思った。だから、もう一度会って話がしたい。
「だから、強くなりたいんだ。もし良ければ、おまえも協力してくれないか?」
「ナタッ!」
「......そうか、ありがとな!」
こうして、オレたちは再びあのポケモン───コバルオンに会うために、旅を始めた。たった2人で生きていけるかわからないけど、オレたちは生きる。もう一度出会うために。
続くかは気分次第。