元モルモット君ダイワスカーレットと、モルモット君が大好きすぎるアグネスタキオントレーナー 作:雅媛
始業式の日、私は高等部3年の教室に向かっていた。
今年1年担任をするクラスだ。
全校生徒2000人弱いるトレセン学園は、1学年だけでも10クラス、1クラスに30人強が所属し、それぞれのクラスに一人ずつ担任の教官が所属する。
とはいえ、高等部にもなると担任の仕事はそう多いわけではない。
なんせ、高等部になるとまず確実にトレーナーと契約をしている。
日常的な問題からトレーニングやレース上のトラブルまで、大体はトレーナーが対応し解決する。
担任に回ってくる仕事なんて基本ほとんどない。トレーナーとウマ娘のトラブルになると、担任では手に負えないのでそういうのを対応する専門部署が出てくるし……
とはいえ、何かおかしな様子の子を見つけられるのは、毎日顔を合わせる担任の場合も多いので、よく観察することは大事だ。
まあ、今回の場合は私がウマ娘になったからいろいろ聞かれそうだが……
過去三年、同じ学年のクラスを一つ、担任として受け持っているのでクラスメイトは全員顔見知りだ。一部は去年若しくは一昨年に担任としてかかわってきた生徒だし、授業で教えたことがある生徒と合わせるとほとんどが当てはまる。
そんな男性教官がいきなりウマ娘になったら色々聞きたくなるだろう。私だって生徒の立場ならいろいろ聞きたくなる。
幸いなことにトレセン学園はお嬢様学校なので、あまり過激な質問はされないことだろう。されないと期待したい。
あまり気負い過ぎても生徒たちも困るだろう。
ある程度気心も知れている相手だから普段通りに教室に入る。
扉を開け教壇まで進んで声をかける。
「みんな席についてー」
ワイワイと楽しそうに話している生徒たちに着席を呼びかけながら、教壇に立った。
ウマ娘になったことは学園側から告知文が出ているし、ウマ娘間の口コミの伝達速度はすさまじいので、知らない子はいなさそうだ。
教壇の上から見てても、「本当にウマ娘になってる」的な反応の生徒はいるが、「だれ、あれ」となっている生徒はいない。
「担任になった教官の赤井だ。いろいろあってウマ娘になってしまったが、それ以外何か特に変わることはない。ほとんど知っている顔ばかりだが1年間よろしく」
「教官!」
唐突に手を上げる芦毛で褐色肌のウマ娘。
付き合いも長い生徒だ。
「なんだ、ヒクマ」
「タキオンさんと付き合い始めたって本当ですか!」
「……始業式も近いから、式に関係ない質問は後でな」
「わかりました!!」
唐突な質問だったが、今の状況に関係ないのでひとまず流す。
ウマ娘に限らず、これくらいの年齢の子というのは恋愛沙汰が好きだ。
ある程度そういう話に付き合ってやるのも円滑なクラス運営には必要不可欠だが、始業式が近いのでそちらを優先させる。
「始業式の後は各自自己紹介するから、式の間寝ないで考えておけよ」
「「「はーい」」」
「それじゃあ、式場に移動するぞ」
わらわらと立ち上がると、生徒たちが教室を出て始業式の会場へと向かう。
高等部にもなると慣れているので、迷子になる子も居ないし、任せていれば式場へと皆移動してくれるのも楽である。
私も移動しようとしたが、生徒たちが3人寄ってくる。
「ん? 何?」
「教官、そのスーツ、すごく似合っていてかっこいいです」
「ありがとう」
褒めてくれたので素直にお礼を言う。
生徒たちに良いといわれると素直に嬉しい。
結構辛辣なので、ダサいときはダサいと直球で言ってくるので油断ならないが、それでもかわいい生徒たちである。
移動を始めるが、生徒たちが質問をしてくるのは止まらない。
「教官、ウマ娘になってどんな感じですか? ヒトとウマ娘って違いますか?」
「そこまで大きくは違わないというのが正直な感想かな。とはいえ力とか走る速さは全然違うけど…… どちらかというと性別が変わったほうが戸惑うかも」
「お手入れとか困ってません?」
「タキオンがいろいろ世話してくれるから今のところ困ってないかな」
「やっぱりタキオンさんと同棲始めたっていうのは本当だったんですね!!」
「ヒクマ、お前コイバナになると喰いついてくるな。ほら、着いたから話の続きはあとでな」
「絶対教えてくださいよ~」
生徒たちと別れ、教官の席に向かう。
トレーナーや教官が座る席は、演壇の上で話す役割がなければ自由なので、ひとまずマーチャントレーナーの隣に座った。今日も元気にマーチャンの着ぐるみである。
一切ブレない姿に感動すら覚える。
私自身は、彼女が同じトレーナーに師事した姉弟子だし、付き合いはタキオンより長いので何か意味があるのだろうと思って特に何か思わない(とはいえ着ぐるみの頭がでかくで邪魔なのは否めないが……)が、結構遠巻きにしているトレーナーも少なくない。
ウマ娘になった現状、変に絡まれるのも嫌なので、先輩の隣に逃げたのだ。
「スカーレット君」
「タキオン、特に問題ない?」
「慣れた学園生活さ。仕事もちょっとした雑用ばかりだし、特に問題はないね」
始業式の設営をしていたのだろうタキオンが、反対の隣に座る。
初めての仕事だし、トレーナー職にウマ娘というのはまだまだ非常に少ないから心配だったが、今のところはまだ問題がないようだ。
「それよりも生徒に大人気じゃないか、スカーレット君」
「普通だよ普通。みんないい子だから助かってるよ」
「タキオンちゃん、スカーレットちゃんは教官の中で結構人気だから注意した方がいいわよ」
「先輩、変なこと言わないでくださいよ」
「知ってるよ。毎年バレンタインのチョコがすごいことになってるからね」
「男性教官は大体みんなそんなものだよ」
ちなみに今年のバレンタインのチョコの数だと、奈瀬トレーナーが1位だと思う。
去年までは先輩もトップ争いに巻き込まれていたが、着ぐるみトレーナーになってから数がかなり減っていた。代わりにお供えのようにチョコレート以外の変なものをいろいろ渡されていたが……
それに比べれば、私がもらっていた数なんてたかが知れている。
「そう言えば、スカーレット君はこの後仕事は何も入っていないかい?」
「クラスのホームルームが終わればそれ以上は何もなさそうだね。まあ、ホームルーム直ぐに終わらなさそうだけど」
「ああ、なるほど。私は会場の片づけだけだから、終わったらクラスに迎えに行くよ」
「……多分すごい騒がしいよ」
「私もOGだからね、どんな雰囲気かも、あしらい方もわかってるよ」
「じゃあお願い」
始業式が終われば、お互い自己紹介をして解散である。
もっとも高等部3年にもなれば、6年間おなじ学年にいたわけで、人数が多いのを差し引いても生徒同士もかなりお互いをわかっている。だから、予定としてはすぐに終わるのだが、大体そのあとの雑談が長くなる。
特に高等部3年にもなると、大体はトゥインクルシリーズを引退しているか、していなくてもシニアの2年目とか3年目なので、急いでトレーニングに行く子も居ない。受験勉強も、内部進学してトレセン大学に進学する子が多いし、そうでなくても本格的に取り組むのもまだまだ先だ。
私がウマ娘になったのも相まって質問攻めにあうだろう。
多分抜けるのはかなり苦労するはずで、その間タキオンを待たせるのも悪いから迎えに来てくれるのは正直助かる。
そんな話をしていると、始業式が始まる。
仕事も特にない私は、あとは大人しく聞いているだけであった。
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さて、次はスカーレット君に何を着せようか
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バニーガール
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お揃い勝負服(白衣)
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振袖
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ゴスロリ
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サンタ
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巫女
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ドレス
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誰かの勝負服