元モルモット君ダイワスカーレットと、モルモット君が大好きすぎるアグネスタキオントレーナー 作:雅媛
始業式が終わり、教室に戻る。
タキオンはこのまま、会場の片づけである。私もよくやらされたが、こういう雑用は新人トレーナーのお仕事だ。
タキオンも例外ではないので、こういうことをやらされてる。
「片付けぐらい大したことじゃないよ。でも、毎回式典のたびにこういうことしてたんだねぇ」
「演壇とか椅子とか重いだろ?」
「ウマ娘のパワーの前では大したことないよ」
そう言いながら、パイプ椅子をたたんだものを30個重ねて持ち上げるタキオン。
ウマ娘のパワーはわかったが、グラグラしててバランス的にちょっと怖い。
周りのほかのトレーナーたちも結構ビビっている。
確かによく考えたら、ウマ娘のトレーナーなんてまず見ないし、彼女らにとってこれくらいの荷物は重いのうちに入らないのだろう。
私もタキオンと出かけた時はよく荷物を持ってくれていた。
「張り切り過ぎて怪我しないようにね」
「大丈夫だよ。おっと」
倒れそうになったパイプ椅子タワーのバランスを取り直すタキオン。
ここにいると邪魔になりそうなので、私はさっさと教室へと戻るのであった。
タキオンの張り切りっぷりに振り回されている、おそらく新人と思われるトレーナーの縋る視線はスルーである。この程度で疲れてたら担当なんて持てないぞ。
教室に戻ると皆が思い思いに私語を話していた。
ざっと教室を見渡すが、変に思いつめた表情をしている子も、孤立してしまっている子もおらずひとまず安心する。
高等部1年を担任に持った時は、未勝利で引退し気に病んで退学しようとした子やら、レースの重圧で体調を崩してしまった子やらがクラスにいて大変だった。
さすがに3年になるとそういうこともなく、せいぜい受験ぐらいしかないが、受験だって内部進学があることを考えればのんびりしている子しかいないのだろう。
「じゃあホームルーム始めるぞー」
「「「はーい」」」
みんなさっさと私語を止めてこっちを見る。
素直でいい子である。
「改めて自己紹介をしよう。赤井で知っている者も多いと思うが、何かの都合で最近ウマ娘になってしまったからよろしく。ちなみにウマ娘の名前はダイワスカーレットだから、教官でも、赤井でも、スカーレットでも好きに呼んでくれ」
「はい、スカーレット教官、質問です!!」
「長くなりそうだしホームルーム終わったらな。今日はホームルームが終わったら学校が終わりだから、さっさとそっちを終わらせよう」
「「「はーい」」」
いい返事である。そりゃ授業なんてさっさと終わらせたいだろう。私だって学生時代はそうだった。
「じゃあまずは各自、資料の確認だ。時間割はみんな持ってるな」
「「「はーい」」」
「それぞれで授業が違うから、時間割は自分でちゃんと確認するんだぞ。友達任せだと授業欠席になるからな」
「ふふ、そんな人いるんですか?」
「そのせいで一週間欠席扱いになったやつは本当にいる」
何を隠そう、わが愛しのウマ娘アグネスタキオンが高等部3年でやらかしたことである。
それまでは同室のアグネスデジタルや、同級生のマンハッタンカフェがフォローしてくれてどうにかやってきたのだが、学年が一つ上のアグネスデジタルが卒業し、世話が不十分になったのだろう。
何も考えていなかったタキオンは、選択科目が全く違ったカフェにくっついて一週間過ごし、そのせいで本来自分が受けないといけない授業をすべてすっぽかしたのである。
話を聞くと、何年かに1回はそういうことをする子が出ると聞いているし、油断はできなかった。
「明後日から授業だから、ちゃんとどの科目がどこでやるか確認して受けるんだぞ」
「「「わかりましたー」」」
元気で結構である。
「じゃあ次は、各自自己紹介してもらおう。今日はこれで終わりだ。ある程度見知った顔が多いだろうし名前だけ言えばいいぞ。まずはアイタンリからたのむ」
「はい、アイタンリです。よろしくお願いします」
早速自己紹介を始める。ひとまず顔と名前が一致すればいいだろうから、面倒は抜きにして立って名前を言ってもらうだけである。
一人10秒もかからないので、数分で全員の自己紹介が終わった。
「じゃ、終わったし自己紹介終わったからホームルームは終わりで。もう帰っていいけど、私に何か質問があれば今から受け付けるぞー」
ホームルームなんて長々とやってると飽きるのだ。これくらいで充分である。
だが、おそらくタキオンの方はそれなりに時間がかかるだろう。暇つぶしと生徒たちとの交流を兼ねて、ひとまず質問を受け付けることにした。
あとで聞くと言っていたのだから、そういうタイミングがないと生徒から顰蹙も買いやすいし。
どうせヒクマ当たりの噂好き、コイバナ好きが数人残るだけだろう。そう思って解散と言ったのだが、誰も出ていかない。
むしろ興味深そうに私を見ているので、ちょっと緊張する。
早速手を挙げながら発言し始める生徒が出る。
「タキオン先輩と同棲してるって本当ですか」
「ああ、この前からな」
「「「きゃー!!!」」」
そんな黄色い声を上げるほどだろうか。
個人的なことだが、どうせバレそうなのもあるので特に否定はしないで答える。
ちなみに、この子らとタキオンの学年は4つ違うだけなので、この子らが中等部2年の頃まではタキオンも学園に所属していた。
だから、一部の生徒たちはタキオンを先輩と呼ぶ。
「じゃあ付き合ってるってことですよね」
「そうだね」
「「「きゃー!!!」」」
また黄色い声が上がる。そんなに楽しいだろうか。
というか、ちょっとずつ人が増えてきていないだろうか、隣のクラスから覗きに来た生徒が教室の後ろにいるんだが……
まあよく考えたらウマ娘になった元男性教官とか、かなり気になる存在か。確かにそんな人が居たら私だって思わず見に行く。
だが、そこで繰り広げられるどうでもいいコイバナは聞いていて飽きそうである。
「はいはーい、タキオン先輩との夜の生活はふべらっ!?」
「このおパカ!! 何聞いてるのよ!!」
「いや、さすがにそれは答えられないかなぁ」
一人がとんでもないことを聞き始めたが、隣にいた別の生徒が止めてくれる。さすがにそういうセンシティブなのは答えがたい。
「そんなの聞かなくてもわかるでしょ!! 始業式の時にずっと尻尾ハグしてたし!」
「えっ?」
「もうあれ見たらうまぴょいよ!! 理事長の話も生徒会長の話も全然入ってこなかったわ」
「あのー、ちゃんと偉い人の話は聞いてほしいかなって先生思うんだけど」
何がわかるのか、小一時間問い詰めたい。そしてそんなことを力説しないでほしい。
というかタキオン、また尻尾を絡ませてきてたのか。
未だに尻尾の感覚がいまいち理解できず、そういうことをされてもまったく気づけないのだ。
ウマ娘にとって尻尾というのは大事でかなり敏感だと聞くのだが、この辺りの差はヒトからウマ娘に変わったせいだろうか。
何にしろ生徒たちに尻尾を絡ませているのが見えていたらしい。
「それに、スカーレット教官の首にキスマークついてるわ。そこから明らかじゃない」
「!?」
思わず右の首を手で押さえる。
痕はつけるなって言ったのに、いつの間にかやられていたようだ。朝一にちゃんと鏡で確認しなかったのが仇になった。
そんな私の様子を見た生徒たちが一部は真っ赤になりながら、一部は楽しそうに私を見る。
「こ、これは虫刺されですよ……」
自分も騙せない嘘を言わざるを得ないぐらい私は追い詰められていた。
顔が真っ赤になっているのがわかる。
「そう言えば、さっき近づいた時にタキオン先輩の匂いがした気がするし……」
「匂いが移るぐらい一緒に居たってこと? もううまぴょい! うまぴょい! じゃない……」
ざわめく教室、いつの間にかここは敵地になってしまったのか。
真っ赤になった顔を隠すため教壇に突っ伏していると。
「待たせたね、スカーレット君」
元凶が現れた。
そのまましれっと私の横までくると、腰を抱いて持ち上げつつ、尻尾を自然と私の尻尾に絡めてくる。
生徒たちから小さな悲鳴が上がる。
こういうムーブは止めてほしいのだが。
「おやおや、ずいぶん生徒にからかわれていたみたいだね」
「タキオンのせいでね!!」
「キスぐらい普通だろう?」
この野郎、確信犯か。そう言い返す前に、頬にキスをされた。
学校でイチャイチャすると後でたづなさんに怒られるんだからな!!
というか多分もう怒られるの確定してるぞこれ。
「タキオン先輩のいいところもっと見てみたーい」
「もっとじゃない!! 見世物じゃないんだぞ、金取るぞ!!」
「お金払えばもっと見せてもらえるんですか?」
あ、失言した。待て、お前たち、カードを取り出すんじゃない。カードは非対応だ。
黒いカードとかを持って迫ってくるな。
じりじりと生徒たちに迫られて、進退窮まった状況を助けてくれたのはタキオンであった。進退窮まった状態になった理由も大体タキオンな気がするが。
「あー、すまないがそろそろトレーニングの時間なんだ」
「トレーニング、ですか? タキオン先輩、担当もう決まったんです?」
「そうだよ、スカーレット君が私の担当なのさ!」
「「「ナ、ナンダッテー!!」」」
「ノリ良いね君たち……」
ウマ娘達のノリに時々ついていけなくなるのは、年齢のせいだろうか。
「あ、あの…… トレーニングなら、併走パートナーとかいかがですか?」
「ふむ?」
クラスの子が一人、そんな立候補をしてきた。
まあ、併走パートナーはいて損はないだろうが……
「あ、じゃあ私もスカーレット教官と走りたい!! 最近運動不足気味だし」
「じゃあわたしもー」
一人がそんなことを言いだすと、みんながわらわらと立候補し始める。
「じゃあ、併走希望の人は一緒にコースに行こうか」
タキオンも雑に引き受けるものだから、皆でトレーニングに向かうことになってしまうのであった。
2022年12月15日13時 総合日間ランキング39位
新作日間ランキング41位
ありがとうございます。
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シエラ様、サンダーミアン様、不如法おじさん様、太陽のガリ茶様、BuddPioneer様 誤字報告ありがとうございます。
さて、次はスカーレット君に何を着せようか
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バニーガール
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お揃い勝負服(白衣)
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振袖
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ゴスロリ
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サンタ
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巫女
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ドレス
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誰かの勝負服