(1/15)※文章に若干の修正を加えました。説明足りな過ぎる部分とか逆に不要そうな部分とか、要らん変換とかの軽微な修正です。
(1/31)※文章の流れ的に微妙な部分を修正しました。
(3/29)※誤字報告を戴きましたが、本作にて「馬」の字を使っていないのは仕様です。煎餅さんの脳みそ(煎餅に脳…?)は割とポンコツなので、どうせミスるなら全部統一してミスはミスとわかりやすくしようっていう脳筋理論で「馬」という字を纏めて使用しない事にしています。その為それを加味してお読みいただければと思います。
逆に言えば今後「馬」の字を使った際はミスです、容赦なく誤字報告を戴ければと。
世界の異端、異物。そんなモノも特異点とでも呼べば、少しは気も紛れるだろうか。
呼び方や感じ方一つで心の持ちようが変わるのはヒトの利点であり、欠点でもあると思う。それに助けられているのもまた、事実ではあるのだが。
私は世界の異物である。
私は世界の特異点である。
私は世界に存在してはならないモノである。
私は、本来存在しないモノに入れられた漂流物である。
この世界で私が獲得したパーソナルデータを除き提示するなら、私についての情報は述べた通りだ。当然公にはできない情報ではあるが、それでも私を私として構成する上で前提としなければならないモノだ。
私は所謂、転生者と呼ばれる類のモノ。これでここが普通の世界であれば、私もここまで捻くれた自己認識は持たなかっただろう。しかしながらそう考え、そう結論付けるには十分な環境に私は生まれてしまったのだ。環境が悪かった、そう言うしかない。
とはいえ、さんざん自分が異端だ何だと言っても生きていれば楽しいこともある。だから自覚があるだけで、今いるこの世界で生きていること自体は前向きに受け入れている事は明記しておこう。
さて、改めて私についての情報を並べていこう。と言うのも、私は今度ある学園へ入学する事が決まったからだ。この世界に来てから予感はしながら、とはいえあまり望ましくない。とはいえ今の環境的には一大イベントである以上、無視できない。
自己紹介の時に、自分への理解が先に述べたモノだけだと困るのだ。というか、バカ正直に言ったらただの痛い奴である。最悪頭が可笑しいと笑われるだろう。
基本的な情報から並べよう。まず私の名前は、アナザーベガ。ウマ娘だ。親しい間柄からはアナザー、もしくはザーガと呼ばれている。後者についてはサーガにかけている心算かもしれないが、少なくとも女の子に付ける愛称では無いと思う。だがボーイとかツヨシとか、そういうのに比べればマシかもしれない。
次いで好きなモノは珈琲。ブラックで飲むのが特に良い。ちなみに前世から好きなので、自覚を持ってからすぐに飲み始めた。結果として今世での家族からも珈琲好きと認識されている。最初期は前世のノリで飲んで、カフェイン酔いや腹痛に悩まされたがそれもいい思い出だ。
最後に将来の夢といったモノを述べるのが普通なのだろうが、生憎私が通う学園は普通ではないので一工夫が必要だ。そもそもウマ娘なんてモノが存在する時点で、前世と比べれば普通の世界ではない。ある意味当然と言えば当然だが。
「……目標、か」
私は、頭の中だけで情報を整理するのを中断する。万が一にも聞かれたくない情報が混じっているので黙っていたが、流石に行き詰まってしまえばそうもいかない。
声に出して情報を整理するのは極めて合理的な手段であり、一人言もバカにならないのだというのは前世での知識。たぶんこの世界にも既にありそうだが、今のところ見かけてはいない。わざわざ探すモノでもないので、いつか何処かで見聞きする事もあるかもしれない。
少し思考がそれたが、今は先ほど自身の口からこぼれた『目標』についてだ。これは大事なものだから考えないわけにはいかない。
「でも、目標って言ってもなぁ……」
この世界での目標、もといこれから入学する学園での目標。これが少々難しい、なにせこの世界では自分とは無縁だと思っていた事だ。過去の自分のしでかした事だが、当時は当時で必死だったので怒るに怒れない。
気を取り直して考える。有名どころならば、日本ダービー。そしてそれに付随する形で目指すならば、クラシック三冠。
次いでトリプルティアラ。前世では牝バ三冠と呼ばれていたが、コチラではティアラと呼ばれ親しまれている。どの道走るのはウマ娘、オスもメスも無いので自然にこうなったのだろう。
しかしそれらのどれもが、マイル以上の距離を走れて初めて目指せる目標だ。私の場合はたぶん、姉の事もあるので大丈夫だと思うが。少なくとも前世での記憶通りに事が進めば、私の姉はダービーウマ娘にはなれるのだから。
「姉がダービーウマ娘なら、妹はオークスウマ娘? それとも、姉妹でダービーを取りに行く? デビュー時期でどっちかは、取れなくなるかもしれないのに?」
実家の自室で、ふわふわに整えられたベッドに腰かけていたのを無造作に倒れ込む。柔らかな衝撃の後、毛布が私を包み込むように、沈む。流石は私の姉だ、油断すればあっという間に眠りの世界へ落ちてしまいそうな程に、ふわふわだ。
しかしそれで意識を手放すわけにも行かず、倒れ込む時に一度閉じた瞼を再び開けて天井を見つめる。物心ついた時からずっと見てきた天井、今となっては見慣れた天井。
目標について考えているのに、その目標が自分の姉の目標を潰すかもしれないと、そう考えると尻込みしてしまう。勝負の世界だと知っていて、それに絶対は無いのだと分かっていてもだ。
何故尻込みするか、その説明をするには私の前世について説明しなければならない。
私はごく平凡な日本国民だった。面白みのないその辺に居る成人男性だったのを記憶している。逆に言えば自分についての事で憶えているのはそれぐらいで、今となっては自分の名前も家族の事も何一つ思い出せない。
対外的な事象や、娯楽や学術的知識については記憶がある。そしてその中でも前世で流行っていて、自分もハマっていたゲームを幾つか憶えていた。その一つが、今私が居るこの世界を舞台としたモノ。ずばり『ウマ娘 プリティーダービー』だった。そしてこれこそ、私が自身の事を異物だと定義するに到った理由だ。
前世の事を知っている、この世界の原作の事を知っている。普通のゲームや物語なら、それはこの上ない優位に立てる情報だ。だがウマ娘の世界は常に可能性に満ちていて、少なくともアプリ版の育成シナリオであれば原作での怪我も引退もなんのそのと走り切っている。大なり小なり原作との乖離は常であり、せいぜいが世界からの修正力染みたナニかで世間からの印象変化を受ける程度。大抵はそれらを乗り越え、ウマ娘本人の心情的に納得できず更に次を目指すといった内容で話が進む。ゲーム以外の媒体もあったし、それぞれで内容に若干の差異がある。その為、原作を知っている事の優位性なんて微々たるものだろう。
そもそもアプリで語られたそれら事象も大抵は確りと納得できる内容であり、そうなるに至る原因も殆どの場合は定義されていた。それ故にそのウマ娘個人の物語として、見守り、切磋琢磨して育成を進める事が出来たとも言える。
そして改めて自らの立場を鑑みれば、特に原作知識など有って無い様な物だという事に改めて目を向ける他無いのだ。
さて、ここであるウマ娘の未来の話をしよう。もちろん前世での記憶の話だ。
彼女には、生まれてこなかった妹が居た。それをある日知ってしまった彼女は、生まれて来る事が出来なかった妹に勝利を捧げる為走ると心に決めた。決めてしまった。
そうして走り続けた彼女はついにダービーウマ娘となった。その後多くのライバル達、トレーナーの支えもあって自らの中の妹の呪縛から解放された。自らの中に束縛し歪めてしまった妹を、本来の姿へ解放したとも言えるだろうか。
ここで重要なのは、彼女の妹は生まれてこなかったという事だ。
そのダービーウマ娘の名は、アドマイヤベガ。
私の、姉の名である。
ちなみに執筆者の読みやすいように書いてる
アプリ育成や二次創作で色んなウマ娘の可能性の世界を見て来たけど、土台崩すような設定スタートの当事者になった主人公の未来はどっちだ
投稿の為にこれ書いてて冷静に考えたけど、もしかしてキャラ崩壊状態のアヤベさん書く事になるからワイのメンタル常にボロボロにならんか?
クールビューティふわふわ属性アヤベさんがシスコンふわふわ属性アヤベさんにジョブチェンジしたのとか書けるのか? 既に胃が痛くなって来た
(3/29)※前書きで「馬」の字を使わない事について更に付け加えるならば、本作の主人公であるアナザーベガはウマ娘世界に生まれて既に十数年経過しています。その為に常日頃から「馬」の字を使わない、意識しない生活をして来た為に思考ですら「馬」という字を認識しなくなっていると思って頂ければ多少納得出来るかなと。要はウマ娘世界に順応した結果みたいな感じですな。まぁ馬偏とかの例外もありますが、そこを含めての順応という事で。