アドマイヤアナザー ~もう一つの一等星~   作:煎餅さん

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未だに競争能力について言及すら無いのは仕様(仕様と言い張る事で誤魔化すスタイル)



アナザーベガのヒミツ③:じつは、神社やお寺に長時間居ると体調を崩す。またお守りやお札に触れると、ちょっとだけピリピリして嫌。

アドマイヤベガのヒミツ③:じつは、寒い日は妹に触れて暖を取っている。


入学式

 入寮日は反省点の多い一日だった。

 私にとっては激動の一日を終えて翌日。学園で執り行われる入学式の場で、偉い人達の言葉をBGMにして問題点を整理していく。

 

 そもそも折角の門出からしてこれまでの身の振り方を改める事を求められたし、それは寮の関係者たちを多少なりとも心配させた事によって明確に自覚もさせられた。なんならあの後鉢合わせたフジキセキからも、実は心配をしていたと言われてしまえば申し訳なさで穴に入りたいと思った程。

 他にもシャンプーだとか化粧水の合う合わない問題や、所持していた各種ブラシ類の不足。兎に角、諸々の認識の甘さから来る準備不足を痛感する一日だったと言う問題点しかない日だった。これを整理せずに今日この後の時間に挑むのは、厳しいと言わざるを得ない。

 

 先ず正直を言えば、前世の記憶という物に少し甘え過ぎていたかもしれない。

 人生二周目みたいな物だからと高を括っていたのは事実だったし、その結果として頓着無頓着の差や物事の捉え方が周囲とあまりに差があった。そしてそれらが、同年代の子ども達のそれとは全く噛み合わない程に。

 それに気付いて改められる場面は今までもあったのだろうが、生憎小学生の時はそれどころでは無い事情もあった。そもそも気付いた所で、たぶん私はこうして痛い目を見なければ反省する事も無かった気もする。事実姉からはそれとなく注意されたりもしたし、母も直接は言わないが凄い顔をしていた記憶がある。冷静に考えれば父は直接言い難いだけだったろうし、弟達はまだそこまで気にしていないだけだったのだろう。

 改善をせずに居た場合、今後成長した弟達から辛辣に「ダサい」と言われる可能性もあったのかもしれない。そう考えて想像してみた所、予想以上にダメージが大きかったのでこれはダメだと意思を固める。

 兎に角、現状は反省した上で改善を急ぐしか無い。

 

 さて、先日までの反省は程々にしてこの後の予定を検めよう。もしすっぽかしたら何をされるか分からない。入学式とその後のクラス挨拶が終わり次第、直ぐに姉と先輩の所に合流する必要があるので行動順序を振り返っておく。

 というのも、昨日は荷解きをして姉と共にマルゼンスキー先輩と食事を取った所までは良かった。良かったのだが、その際困った事に姉と先輩が意気投合したのが拙かった。

 元々私の服装への無頓着に物申していた姉が、門出の際の母からの言いつけと、先輩という私の同室かつ、同じく無頓着に物申す存在を味方に付けない筈が無かったのだ。

 話の雲行きが怪しくなった事に気付き、しかし引き止める間も無く私の予定が埋められてしまったのである。

 

 ちなみに食事の後は案内の後に私と先輩の部屋で、何が必要かを詰める作業で残りの時間が全て溶けた。

 外に着て行っても恥ずかしくない衣類や、その他細かい美容品に諸々と多数。購入予定の品数が多く、しかも予算は少ない為に優先順位を絞っていく必要があったのだ。そのせいで今後暫くは珈琲にお金を割けない事に気付き、私のやる気はもはや絶不調といった処か。

 

 余談だがその後のお風呂で更にシャンプーや化粧品の問題が浮上し、キレた姉に普段の三倍マシで揉みくちゃにされたのはまた別の話。

 

『──以上を以て、中央日本ウマ娘トレーニングセンター学園、入学式を終了とします』

 

 そんな事に思考を割いていれば、退屈な入学式の挨拶がようやく終わる。

 これからお世話になる場所でその態度は無いだろうと思わないでもないが、しかしこの場に居るのは全員が小学校を上がってすぐの女子中学生。それもジッとしているより走るのが大好きなウマ娘だ、過半数が同じ思いだろう。そしてそれは在校生も例外ではない。

 教師たちもそれを理解しているらしく、実を言えばヒトミミの学校のそれとは格段に短い。最低限の要点だけ押さえたお話をしておしまい。おかげ様で私もあくびが出る前にこの窮屈な環境から抜け出せるという訳だ。

 

 流石に現生徒会長であり、無敗のクラシック三冠で現在四冠のウマ娘であるシンボリルドルフの挨拶は全員が清聴していた。だが難解な言い回しが多い為、何人かは頭上に疑問符を浮かべて小首を傾げていたのが実情である。もう少し簡単な言葉を選んであげて欲しいが、かと言って彼女自身のイメージが浸透している以上それも難しいのかもしれない。イメージを崩さない様、けれど新入生には優しくと思うと大変なのだろう。頑張って欲しい。

 

 

 

 入学式が終わった後、事前に割り振られていた教室へと向かう。クラスメイトとの顔合わせと簡単な挨拶がメインで、後は授業の流れや午後の時間の使い方等の説明が行われる予定だ。

 特に挨拶がある意味私にとっての最大の鬼門であるが、残念ながらいまだに答えは見つかっていない。覚悟を決めるとしよう。

 

「皆揃って居るな? 本日よりこのクラスで君たちを担当するプルートーンだ、よろしく」

 

 教室に入り、全員が自分の席に着いた頃にそう言って入って来たのは大人のウマ娘。僅かにウェーブの掛かったセミロングの白毛に、瞳には僅かに金に輝く光彩を持つ強面のウマ娘だ。

 不思議と見覚えがある気がするが、前世で似た人物でも見たのだろうか。ウマ娘に関連しない記憶は流石に十数年も経って希薄だが、稀にこうして既視感を覚えるので意外と煩わしい。

 とりあえず全員が少々疎らながらも、彼女の挨拶に返答。それに静かに頷いて、ゆっくりと各種説明をし始めた。

 

 説明は概ね学業について。基本的な部分は一般的な学校と大差がないが、肝心なのはデビューした後に遠方へ前日に移動する場合の簡単な流れや、テスト等の存在とその評価。

 遠方に行く、要は遠征の際はトレーナー側で申請。そうする事で出席免除が発生し、不測の事態が起きれば即時対応が出来る事。別途授業範囲が宿題として配られるため、その分はトレーナー監修の下で移動中にでも学習する様にとの事だった。

 またテストについては、授業時間の都合もある為そもそも学力成績は低くなる事を前提に評価される。要するにあんまり酷い場合は「最低限この程度も出来ないとなると、レース所じゃなくなるぞ」とお達しが来るらしい。この辺りは仕方がない、学業を疎かにした挙句競争成績も悪かったら目も当てられない事態になりかねないからね。

 

「──以上だ。繰り返しになるが、君たちは競争科である為に座学は午前の僅かな時間しかない。だがそれは学業を疎かにして良い理由にはならないので注意する様に。

 最後に簡単な挨拶をして今日は解散とする、名前と……話の取っ掛かりになるだろうから趣味や好きな物、誰がクラスでライバルになるかの指標として学園での目標を挙げてもらおう」

 

 そして最後に、私にとって憂鬱な時間が始まった。席の並びはこれといって法則は無く、幸い私は教室に入って奥側の後ろ席。この手の挨拶が比較的最後らへんに来る。

 ちなみに姉は別のクラスだ、その為このクラスには見知った顔は無い。前世で見覚えがある子が居るかもと思ったが、そもそもほぼ全員が本格化前で体格や顔立ちが幼い。それっぽい子が居ても確証がなかった。なので今回の挨拶の中で、誰か知ってる名前の子は居るか確認するしかない。

 

 そう思いながら、静かに全員の自己紹介を聞いて行く。

 ニンジンが好き、読書が趣味。クラシック三冠を取りたい、春や秋のシニア三冠を取りたい。趣味や好みはもちろん、競争を志すウマ娘なら珍しくも無い目標を連ねていく。しかし珍しくも無いが、同時に生半可な気持ちでは言っていない。少なくとも、今この瞬間では全員が「私が一番速いんだ」と信じてやまないのだから。

 才能と努力と想い、その総決算がレースだと認識する私としては彼女達が眩しく思える。

 

 そうしていれば、何人目かに立ち上がったウマ娘に目が行った。

 セミロングのやや明るい栗毛のウマ娘。彼女は周囲に顔見せする様に振り返りながら。

 

「ナリタトップロードです! 好きな事は誰かの笑顔を作る事! 夢は私を応援してくれる人達の期待に全力で応えて見せる事です! よろしくおねがいします!」

 

 なんて、お手本の様に明るい笑顔で言って見せた。

 そして彼女の声も名前も、聞き覚えがある。確かにアドマイヤベガのライバルの一人、あのナリタトップロードで間違いは無いだろう。

 知っている名前の子と同じクラスなのは嬉しいが、ゲームの時は確か姉と同じクラスでは無かっただろうかと疑問も浮かぶ。とはいえそれも高等部での話だったし、中等部は別のクラスだった可能性も十分にあり得る。

 更に考えてみれば、ゲームで同じクラスだと描写のあったエアグルーヴやBNWの面々の事も気になる。そもそも彼女達は私達と同い年なのだろうかという疑問もある。

 というかルドルフが現在四冠な時点で、色々と時系列が知っている物と違うのだが。シニア一年目で今月末には春の天皇賞がある、五冠目を戴く姿を見れると思えば美味しくはあるけれども。

 

 しかしそんな事を考えている内に、無情にも自己紹介は進んでいく。流石に聞いてなくて名前を忘れたは失礼だ、気持ちを切り替えて考えるのは後回しにする。

 そうして黙って居たが結局ナリタトップロード以外に覚えのある名前の子は居らず、気付けばもう私の番だ。大した目標は無いが、一先ず無難な事を言っておけば良いだろう。

 

「アナザーベガです。趣味は珈琲で、美味しい豆の情報や淹れ方募集してます。目標はG1制覇。よろしく」

 

 そう言って見渡せば、他の子達と変わらない疎らな拍手。あわよくば近所で美味しい珈琲の店の情報が入ればと言ってはみたが、完全に蛇足な気がしてならない。とはいえ言ってしまった物は仕方がないので、このまま珈琲ジャンキーのキャラで通すとしよう。

 

 そうして間も無く私の後ろの子達の挨拶も終わり、そのまま解散となった。

 集合場所に向かう為に動こうかという所で、この後親睦を深める為にと幾つかのグループからお誘いを受ける。しかしこの後別のクラスの姉と予定がある事を伝え、お断りしてまたの機会に持ち越した。そうでなくても同行者の片割れがレジェンドだ、すっぽかしたら彼女のファンから村八分に遭いそうで怖い。世代がまだ近い時期なので余計にだ。

 

 そうして無事に校内で指定していた待ち合わせ場所へ向かえば、既に来ていたらしいマルゼンスキー先輩が手を振っていた。それに合流して一つ二つ言葉を交わせば、直ぐに姉もやってくる。

 幸いな事に先輩はまだ免許を取得していない為、公共の移動手段を使う。これが来年再来年以降には愛車での移動に切り替わるのかと思うと恐ろしい、少なくとも一コマ漫画ではスペシャルウィークに対して吹っ飛ばないようにシートベルトを促していた筈。つまり相応の速度を出すという事だろう。

 

 そんな先の心配で顔を青くする私に二人は不思議そうな顔をして、早く行こうと手を伸ばしてくる。

 先輩とはまだ短い付き合いだが、来年再来年になっても先ず確実に構って来るだろう事は容易に想像が付く。

 

 姉の事もある、今の内から安全運転を刷り込んで置こう。そう心に決めて、彼女達の手を掴むのだった。




ザーガ:珈琲ジャンキー。美味しい珈琲のお店は随時募集中。焙煎所があればなお良い。

トプロ:みんなの役に立ちたい、色々聞いて行かなきゃ。そういえばあの子珈琲のお店探してるんだっけ、うちの近所にあったあそことか良いかも。あの看板娘のウマ娘さんも可愛いし、気に入ってくれるかな。とか思って既にザーガをロックオン。もう逃げられないぞ。

アヤベ:今回は出番なし。ザーガがパッと見確り入学式の挨拶を聞いてるから真面目に聞いてた。その後まったく別の事考えて時間を潰してたと知って後に怒りの3倍マシ揉みくちゃを実行する。

マルゼン:高2だからまだ免許持ってない。ちなみに安全運転の件はモチのロンよ、任せちゃって♪と答えて無事に安全運転超特急スーパーカーとなる。

ルドルフ:現在シニア1年目、入学式時点で四冠。同月中の春の天皇賞で五冠目を戴く。

プルートーン:ザーガとトプロの中等部担任。元中央トレセンサポート科所属、教員勤務4年目。



作品を書く事に関しては素人も素人、故に先の話とかの妄想ばかり先走る。
所で僕はTS娘は曇らせてなんぼだと思ってるんですよ、やっと今の自分を受け入れて居場所が安定したって所に基盤を崩すような事をしてやりたいって思うんですよ。ましてオリキャラなんていう(作者自身にとって)都合の良い存在なんてそうするにはもってこいな存在だと思ってるんです。
でもザーガは下手にやるとアヤベさんが曇るし、危害を加えるのは論外。僕はウマ娘ちゃんを曇らせたいわけじゃなくてあくまでTS娘を曇らせたいんです。悩ましい。

それとは別に序盤の部分からして勢いで書いてたのは否定できないので、追々書き直したい。色々無駄が多い気がして、もっと短く済ませられるし他に書く事あったよな感はあるので。
まぁそこまでやる気力があればですが。
あと前回にマルゼンがシニア2年目まで居た事を記載漏れてました。そこからザーガ達が入学する年にドリームトロフィーリーグに移籍してます。間にルドルフとか一部世代挟むと、そうじゃないとズレますからね。
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