東京喰種re:chord   作:辰己

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 いつの時代も作戦の前は騒がしく大詰めなものなのだろう。作戦開始1時間前のTSC本部のロビーの喧騒は止みそうにない。

 

「クインケ最終点検入ります!そこ、嫌がらない!」

「装備の不備がないか、もう一度丁寧に確認をしてください」

「なぁやっぱり24区のナァガラジのデータもいるって絶対」

「つっても今から閲覧許可なんて取れねぇだろ」

「今なら長官室に長官居るってよ」

「許可もぎってくらぁ」

「ついでにコクリア最深部の崩落予測も許可とってきて!」

「阿藤準特等ってば、またクインケ自己改造しましたね⁈もー、担当整備士呼ばなきゃ…」

「またブチ切れられますよ?」

「山頭二等と羽田二等、遺書が未更新だって事務方からメール来てるはずですよ!今確認してください」

「あっやべ見てなかった。そのままで」

「別に大したもん買ってないし内容そのままでいいや」

「ここ二年くらいずっとそれ言ってますよね」

 

いいから事務室に急ぐ!と急かされる二等保安官2名を視線で見送るのと入れ違いに担当の整備士が般若の形相で飛び込んできた。

 

「アドウのバカは何処に行った!今日という今日こそ許さんぞ、よくも毎回私のTO:lotにあんなクソダサ加工を‼︎」

 

あぁ可哀想に、こんなにされてしまってとクインケを憐れむ女性整備士に持ち主の阿藤準特等がいきり立つ。

 

「クソダサとか言うな!あと俺の愛刀はそんなトイレっぽい名前じゃなくてバルムンクだ!」

「TO:lot、トロット‼︎ハイアーマインドに並ぶ高火力の羽赫で一対多数が本領発揮の性能に相応しい名前だろうが、この竜殺し気取りめ」

「竜遺児倒すんだから竜殺しで縁起がいいだろうが」

「そもそもバルムンクは剣だろう。ビーム撃つ魔剣がお前の世界にはあるのか?」

 

はっ、と鼻で笑う整備士に一瞬怯むも反発する阿藤陣砦(あどうじんざ)27歳、実力も人望も備えた準特等保安官であるが何せゲームマニア(ジークフリート推し)であった。完治しなかった厨二病の成れの果てとも言う。

 

「剣がビーム撃っちゃ悪いのかよ。

あのな、俺はあんたの整備したクインケが一番使いやすいしギミックも完璧だと思ってる。正直尊敬してる」

 

いきなり真面目な声音になる阿藤に、何言ってんだこいつという顔をしつつもクインケの点検を始めた百々目木(どどめぎ)女史はギミックの微調整をしながら頷いた。

 

「…だろうね。中身は何にも弄られてない」

「最高の仕事に蛇足をするほどバカじゃない。

だが!外観のセンスが気に入らん!」

 

腕組みをして言い切った阿藤の顔の横にクインケ用のペンチが全力で突き出される。

 

「曲線美と強度を追求しつつ希望も聞いて何とかスタイリッシュにレイピア型に収めたあれの何が気に入らんのだ表出ろ貴様‼︎」

「だが断る‼︎」

「百々目木班、今すぐその余計な外殻をオーバーホールだ。この馬鹿は私が押さえる、やれ!」

「やめろ!

あああああ」

 

全速力で分解されていく、この整備士を怒髪天にすることでお馴染みの阿藤センスによるバルムンク()は小学生が自由帳に一生懸命描いた“おれのかんがえたちょーかっけーまけん”という感じの見た目をしている。朝の戦隊モノの武器のデザインは洗練されてきているのでそっちの方がまだ持ってて恥ずかしくない。ただし小学生や幼児にめちゃくちゃウケる。

綺麗にバラされピカピカに整備されたバルムンク…否TO:lotを目の前に膝を折って落ち込む阿藤準特等を尻目に整備班は次のクインケの整備に向かった。

 

 伊鶴たち三人はというと早朝からの作戦に備えて朝食代わりに糧食を啜りながら、作戦方の特等と膝を突き合わせて立体地図と睨めっこしていた。

 

「ここ。竜戦時に“カネキケン”を回収した時と“リゼ”を殺した後の崩壊期に似た波長が観測されました」

「一致指数は?」

「0.2から0.34です」

「崩壊期と見るには弱いな」

「必要以上に刺激を与えたり何かを摘出することは避けよう。細胞の採取にとどめるということで」

「それでいいか?」

「はい。少し気になったというだけなので。お時間いただきありがとうございました」

 

作戦開始まであと30分。

 




リアルが…忙しい…書き溜めつつ頑張りますのでどうぞゆるっと期待しててください

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