コンビニでバイトしてたら、めちゃ挙動不審だけど可愛いJKが来た。ヤバい。

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 勢いとノリで書きました




コンビニでバイトしてたらヤバいJKが来た

 

 

 

 

 宵の口。月明かりに染まるコンビニで。

 

 バイト服に身を包んだ俺は、しかして労働に勤しむことなく。

 

 レジカウンターに腕を置き、もたれかかる形で、1人店内をボーッと眺めていた。

 

 視界に映るのは、眩しいくらいに明るい照明に、ピカピカに磨かれた床、規則正しく配置された陳列棚に、窓際に佇む雑誌コーナー……。いかにもコンビニといった内装だ。

 

 唯一違う点は、そう──客がいないことである。

 

 それも1人も、だ。

 

 部活帰りの学生も、仕事の合間の会社員も、立ち読みをする中年も、ちょっとしたものを買いにきた主婦も、誰もいない。

 

 店内はただ、ガラーンと寂しげに広がっているだけ。

 

 いわゆる、閑古鳥が鳴いているという状態である。

 

 ここでのバイト初めたての頃は、この光景から店の将来に一抹の不安を覚えたりもしたものだが……店長曰く、寂れているのは夜だけで、日中は超絶繁盛しているから大丈夫だとのことで。

 

 実際オフの日の昼に店内を覗いてみたら、本当に混み合っていたので、一安心。

 

 今ではこの状況は、慣れたものとなっている。

 

 そんな、いつも通りの日常の風景。

 

 それを震わす軽やかなメロディーが、店内に響き渡る。

 

 ──久しぶりの来客である。

 

 「いらっしゃいませー」

 

 と、営業スマイルを浮かべてお迎えすれば、開いた自動ドアより踏み入って来たのは1人の少女だった。

 

 長く艶やかな黒髪に、綺麗というよりは、可愛いらしい顔立ち。背はそこまで高くなく、小動物めいた雰囲気を纏っている。身につけている制服と、ストラップがぶら下がるスクールバッグはコンビニ近くの高校のものであり、彼女がそこに通っていることを表していた。

 

 おお、めちゃ可愛い……読モとかやってたりするのかな?にこるん?めるる?お近づきになりたいわ……あ、でもあっちは高校生か……俺、大学1年生だからなぁ……ちょっとマズいよな……ってか、お客とそういう関係になる時点で既にマズイか……。

 

 なんて馬鹿げたことを考えつつ、やはりやることもないので彼女の姿を目で追っていると。

 

 くだん件の彼女は、周囲をチラチラと執拗に伺いながら、窓際の雑誌コーナーに進んでいって。

 

 ……え、挙動不審過ぎでめちゃ怪しいんですけど……。なに、万引きっちゃう感じですか?いや、でも流石にそれはないか……?

 

 そうこう訝しんでいるうちに、彼女は雑誌コーナーから、依然キョロキョロを繰り返しながらも数冊を抜き取って、俺の待つレジカウンターへ向かってくる。

 

 ……んー……雑誌を選ぶときに、物を隠す動作も、スクールバッグをいじる音とかもしなかったし……これはシロですかね?挙動不審なのも……まぁ、アガリ症とかそこいらだろう。

 

 ──っとと、来た来た。

 

 「お会計ですね?お品物お預りします」

 「は、はいっ!お願いします……!」

 

 向き合い尋ねると、やや上擦った声で返される。顔もちょっと赤らんでおり、目も伏せがち。

 

 どうやらアガリ症でアタリかもしれないなと思いつつ、重ねられた3冊の雑誌を受け取り、バーコードをスキャナーで読み取っていく。

 

 えーとなになに?『Can Can 』に『月刊イロイロエロエロパラダイス』に『ViVi』……うんうん、イマドキのJKって感じのチョイスで待て待て待て待て待て待て、待て。いや……え???なんか今おかしいのが……え???ちょっ……待ってめちゃ動揺してる。……え、『月刊イロイロエロエロパラダイス』???

 

 混乱の中、半ば無意識に『月刊イロイロエロエロパラダイス』をぺらぺらめくっていくと、溢れるのは、肌色、肌色、ちょっとの桜色、肌色。

 

 

 

 ……いやこれエロ本んんんんんんんんんんッッッッ!!!!!!めちゃエロ本じゃんッッッッ!!!!!!うっそだろビックリだわッ、すっごいビックリだわッ!!まさかイマドキのJKがお前……エロ本!!!???買うの!!!???しかもこれっ、この渡し方っ、サンドイッチ戦法!!!???古典的だなッ!!!

 

 ……はっ!……落ち、落ち着け俺……!よく考えろ……!これは……何かの間違いでは……?……うんそうだきっとそうだ!だってエロ本買うJKとか聞いたことねぇし!……あれか、おそらく取る雑誌を間違えちゃったんだろうな。だとしたら……オブラートに教えてあげるのが優しさだよな。ちょうど18禁だし、理由にはもってこいだ。……ちょうど18禁って何???

 

 「……あーっと、申し訳ありませんがお客様。こちらの商品、18歳未満の方にはお売りできないようになっていまして……」

 「18歳越えてますっ!!!」

 「……???あの、え……???」

 「18歳越えてますっ!!!」

 

 ……???この娘、何言ってるの???……え……めちゃ18歳越えアピールしてくるじゃん……エロ本、死ぬほど買いたがってるじゃん……こ、こわい……。

 

 「……お、お客様……?」

 「18歳越えてますっ!!!30歳くらいですっ!!!アラサー!!!」

 「いや待てそれはないだろ」

 

 唐突な衝撃発言に、思わず敬語を忘れてツッコんでしまう。でも、仕方ないだろこれ……!その見た目、格好で、アラサーはないだろ……!

 

 「な、何言ってるんですか店員さんっ!私アラ、アラサーですよっ!化粧水とか美容液買いまくり!男も欲しがってます!!」

 「アラサーへの変な偏見はお止めくださいお客様。それとアラサーは制服を着ませんよお客様」

 「しまった!!!!……えっと……その……あっ!これあれっ、コスプレですっ!」

 「無理がありますお客様。しまった!!!!とか、あっ!とか言ってましたよね???」

 「き、記憶にございません……」

 「お客様はどこぞの議員でいらっしゃるのですか……?」

 

 問い詰めていけば、彼女は目をぐるぐる、汗をダラダラ垂らし始める。

 

 「……とにかく……もしお客様が18歳以上だというなら、身分証明書のご提示をお願いしたいのですが?」

 「み、身分証明書……あ、ポン太くんカードでいいですか?」

 「いいわけねぇだろ」

 「えっ!!??駄目なんですか!!??」

 「逆になんでポン太くんカードで身分証明ができると思ったんですか???」

 「そっか、駄目なのかぁ……可愛いのに……あっ、でも身分証明したら、高校生ってバレちゃうんだった!危ない危ない……!」

 「お客様、全部言ってますよ???後半で隠すべきこと、全部言ってますよ???」

 「しまった!!!!」

 

 だから、しまったじゃねぇって……薄々分かってたけど、さてはこの娘、アホの子だな。

 

 ……ってか、ほんとなんでこの娘、こんなにエロ本買いたがってんの……?そ、そういう用途か……?いやでも、『月刊色々エロエロパラダイス』は男向けのアレだし……。お客様相手に失礼ではあるけど、何か事情があるかもしんないから、ちょっと聞いてみるか。

 

 「──お客様。少々お聞きしたいのですが……」

 「こ、高校生じゃないですよっ!アラサーですっ!」

 「いえ、お客様は高校生です。……ではなく、その……どうしてこのような商品をお求めになられているのでしょうか?」

 

 尋ねると、彼女は後ろ手を組み、どうしてか悪戯っぽく微笑んで。

 

 「なんでだと思いますー?」

 「だるっ、そういうのいらないので、さっさと話してもらっていいですか?」

 「だ、だる……!?ひどい……!……ま、まぁいいです。……それで、理由ですね?」

 「はい。いえ、無理に話す必要はありませんが……」

 「ふっふっふ、簡単ですよ店員さん。え、えりょ、エロ本はですね……」

 

 そして彼女は、エロ本という単語の気恥ずかしさから少し頬を上気させつつ。

 

 内緒話でもするかのように、こしょりと、言った。

 

 

 

 「大人っぽいじゃないですかっ」

 

 

 

 ………………は???……いや……な、何言ってんだコイツ???

 

 

 

 「今日、クラスの友達と喋ってたら、子供っぽいよねって言われちゃったんですよー!かちーんと来ちゃって、どうにか見返してやろうと考えて……それで思いついたんですよ!エ……ロ本は、アダルトなもの、つまり持ってたら大人っぽい!どうですこの発想力!ヤバくないですか店員さんっ!!」

 「ヤバいですね」

 「でしょぉ!えへへ……!」

 

 胸を張って、この行動に至るまでの経緯を語ったかと思えば、笑み崩れる彼女。

 

 ほんとにヤバいなコイツ……。

 

 「……僭越ながらお客様。大人っぽくなりたいなら、髪型なりメイクなり言動なりを変えればいいのではないでしょうか?それだけで充分印象は変えられると思うのですが……」

 「………………えっ、天才……?すごいっ、店員さん、アカデミー賞レベルの発想じゃないですか……!」

 

 いつの間に俺は映画に出演してたんだろう……それを言うなら多分ノーベル賞だし、ってかこれくらいの発想でノーベル賞って、もうノーベル賞に喧嘩売ってるだろ。

 

 「──じゃあ、エ……その本は要らないので、残りの雑誌ください!あ、袋は大丈夫です!」

 「……2点で1590円になります」

 「ペイペイで!」

 「はい……はい、お支払い完了ですね。こちらお品物になります」

 「はーい!それじゃあ私、髪とかメイクとか頑張って、大人っぽくなってきますね!店員さん、ありがとうございました!バイバイ!」

 「はい、ありがとうございましたー」

 

 

 

 ──そして、彼女はにこやかに手を振って、店を後にし。

 

 残された俺は、たった1人しか接客していないというのに、ドッと疲れを覚えたのだった。

 

 あの娘……色んな意味でヤバいな。うん、ヤバい。

 

 

 

 






 当たり前ですが、この物語はフィクションです。

 感想、評価などいただけると嬉しい……!

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