Silent Hill〜五等分の罪〜   作:仙豆大名

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第14話 真実

 ついにこの時が来た。俺の目の前にあるテレビを点ければこの異変の謎が解けるんだ。

 ここに来て緊張感が大きく増してきた。どうしてもあの手紙の忠告が気になってしまうんだ。でも、少なくとも三角頭の怪物を生み出した人物が俺たちの身近な存在ではないのは確かだ。

 中野姉妹の実の父親の仕業だと仮定した時、最もしっくりくるからだ。母親のお腹の子が五つ子だと知って姿を消し、その罪から逃れるためにあいつらを始末しようとした。それをあの怪物に任せたということだ。

 

 風太郎は、テレビを点ける前にもう一度三角頭の怪物についての考察を振り返り、自分の身近な人間によるものではないことを改めて確認する。納得のいく説明だった。そうに違いないと風太郎は思った。

 足取りが少し軽くなる。……が、辻褄の合わない点が一つあった。墓地にあった中野姉妹の墓のことだ。あれが死んだ娘たちを埋葬するためのものだとしたら、どうして四葉の墓だけが用意されていなかったのだろうか?

 テレビの横に置かれたリモコンを手に持った。とにかく、テレビを見てみるしかなかった。その中に疑問を解く糸口があると信じて。

 リモコンの電源ボタンを押してテレビを点けた。ニュース番組が流れていたが、突如砂嵐の映像に切り替わり、しばしの砂嵐の後、画面には自分の姿が映し出された。

 風太郎は目を疑った。家庭教師の仕事一日目で、初めて中野姉妹のマンションに行こうとしている自分が映っている。

 

 

『なに君、ストーカー?』

 マンションの場所がわからなかったので仕方なく五月の後をつけていく形で歩いていたところ、五月と一緒にいた二乃に足止めされたシーンだ。今、風太郎はストーカーだと勘違いされているところである。

 

『嫌です。そもそもなぜ同級生のあなたなのですか? この町にはまともな家庭教師は一人もいないのでしょうか?』

『嫌、なんで同級生のあなたなの? この町にはまとも家庭教師は──』

『もー勉強勉強って、せっかく同級生の女の子の部屋に来たのにそれでいいの?』

 なかなか顔を出さない四葉以外の姉妹たちを連れて行こうと各々の部屋に赴いた時の映像だ。五月、三玖、二乃、一花の順に部屋を訪ねたが、五月と三玖には拒絶されてしまった。二乃はそもそも部屋にはおらず、一花は風太郎をからかって楽しんでいる様子だ。

 

『私の体操服が無くなったの。まさか……』

 一花の部屋を訪れた後、三玖から体操服を奪われたという濡れ衣を着せられたシーンだ。幸い、すぐに誤解は解けたが……。

 

『ばいばーい』

 二乃が風太郎に水を差し入れしたシーンだ。一瞬気が利く奴だと思ったが、その水の中には睡眠薬が入っていて、眠らされてしまった。二乃は風太郎を追い出すためにその手を使ったのだ。ちなみに、後日改めてマンションを訪れた時もこの件については反省していない様子だった。

 少し苛々してきた。昔の事とはいえ、映像で改めて見ると流石に腹が立ってくる。

 

『逃げろ!』

 家庭教師二日目、風太郎は五人にテストを解かせた。自身の負担を減らそうと、合格ラインを下回った者だけを相手にすると考えたのだが、結果は全員不合格。そして、二乃の合図とともに五人そろって逃げていく始末だ。

 

『この写真は上杉被告で間違いありませんね』

 ある日、風太郎がマンションに財布を忘れて取りに来た時のことだった。風呂上がりでバスタオル姿の二乃と鉢合わせしてしまい、被告人として裁判にかけられているところだ。裁判長は一花、検察官が五月、弁護士は三玖、そして原告人は二乃だ。

 風太郎の苛々が増す。睡眠薬を盛った二乃は何も咎められなかったのに……。なんで俺だけ?

 

『赤点を取ればクビね。いいこと聞いちゃった』

 ある時、雇い主である中野姉妹の父親から「五人の赤点を回避できなければ、家庭教師を辞めてもらう」というノルマを課せられた。それが不幸にも二乃に知られてしまった。

 できることならこんな仕事なんて辞めたかった。どうせ歓迎されないのなら……。だが、風太郎の家庭は貧しくて借金を負っておりそうもいかなかった。でも、自分は雇われている立場であるため、下手に行動するとかえって家庭教師の立場が危うくなる可能性があった。

 

『あんたなんて来なければよかったのに』

 二乃と五月が喧嘩をして家出した頃の映像だ。二乃はホテルで泊まっていて、連れ戻そうとそこへ訪れたが説得に失敗し、追い返されてしまった。

 風太郎は納得できなかった。なぜ、彼女たちが勝手に始めた喧嘩を自分のせいにされなくてはならないのか。自分は家庭教師として彼女たちをサポートしようとしに来ただけなのに。お金儲けが一番の動機だが……。

 

 風太郎の苛々が限界まで高まってきた──その時だった。風太郎の苛々に反応するかのように、テレビの映像の中の自分の胸の中心辺りが光りだした。

 神のような神々しいものでもなく、幸せを象徴する煌びやかなものでもない。邪悪だ。どす黒い光が映像の中の風太郎の胸の中で不気味に輝いている。

 そして突然、暗黒の光だけを取り残して画面が暗転した。暗転した画面の中で、光が少しずつ姿を変えていく。

 人型だろうか? 下の方から段々と形が作られていく。そして、ついに全貌が明らかとなった。

 

 

 

 

 

 

  風太郎や中野姉妹に幾度となく襲い掛かり、二乃と五月を殺して自分たちを絶望へと追いやった、三角頭の怪物だった。

 

 

 床に跪き、風太郎は叫ぶように呻いた。耐えられない現実だった。知ってはいけなかった。いや、知らなければならないが知りたくなかった。

 背後でドアが開く音など耳に入らなかった。

「フータロー君?」

一花に声をかけられたのにも気づかず、悲嘆に暮れていた。一花は風太郎の後ろから話しかける。

「ごめんね、なかなか出てこなかったから気になったんだ」

 そばに寄ってきて、風太郎の顔をキョトンと見つめた。

「フータロー君……泣いてるの? まさか、あの手紙にあった知ってはいけない真相を見て?」

「お前たちに謝らなければならない」

「え?」

「二乃と五月は……俺が殺したんだ」

 一花がまじまじと風太郎を見つめる。そして、泣きながら風太郎の頬を平手打ちした。

「ばか! なんでそんなことしたの! 人殺し! 返して、二乃と五月ちゃんを返してよ! あの時のこと、まだ恨んでたの!? 二人とも心を入れ替えて、フータロー君に付いて来たっていうのに……」

 一花の声が次第に小さくなっていく。少しの間硬直した後、部屋の出口に向かって走りドアを開けた。涙ぐんだ目で風太郎を睨みつけ、出ていった。

「一花、ごめんよ……」

 取り残された部屋で風太郎はつぶやいた。共に泣いてくれた一花をありがたく思った。

 できれば一花と三玖、四葉にすべてを打ち明けたい。けれど、理解してもらえないだろう。仲良しでずっと一緒だった姉妹のことだ。よけい傷つけるだけだ。

 

 

 

「みんな早く次の場所に向かおう」

 部屋を後にした一花は三玖と四葉にそう言い、足早に去っていく。

「ちょ、ちょっと待ってよ。次の場所ってどこ? それに上杉さんは?」

 四葉が慌てて質問する。だが、一花はそれに答えようとせずひたすら歩いていく。三玖と四葉は走り出し、一花を追いかけた。

「待って、一花。フータローがどうかしたの? 人殺しとか聞こえてきたけど……」

 一花に追いつき三玖が問いかけた。

「フータロー君は……」

 一花は、風太郎が二乃と五月を殺した犯人だと訴えようとした。だが、途中で声が途切れた。

 思うところがあるのだ。さっきはつい取り乱してしまったが、風太郎はそんなことをする人間ではないはずだと。そもそも、二乃はどうかは知らないが、五月に関しては三角頭の怪物が手に掛けたところを見ている。

 もしや、三角頭の怪物を生み出したのは実は風太郎だったのか? でも、そうだとしてもそれは風太郎だけが悪いと言えるだろうか? 風太郎の心に闇を募らせた者、いわゆる「苦悩の根源」のせいでもあるのではないだろうか?

 

「一花!」

 四葉がなにやら深刻な様子で呼びかけた。

「三玖がどこかに行っちゃったの」

 辺りを見回すと、ついさっきまで共に話していた三玖の姿が消えていた。

「どこ行っちゃったの? とにかく近いところから探そう!」

 

 

 

「どこ、ここ……」

 ついさっきまで一花と四葉と一緒に行動してたのに、気づいたらどこか知らないところに飛ばされてた。ここがレイクビュー・ホテルなのは間違いない。……だけど、まるで廃墟みたいな景色に豹変していた。

 とにかく一花と四葉、フータローを見つけなくてはならない。私は変わり果てたホテルの廊下を歩いていく。

 廊下の曲がり角から足音が聞こえてきた。一花たちではないかと思い、その音に向かって走った。

「一花、四葉、フータロー! ──っ!?」

 違った。三角頭の怪物だった。そんな、ここまで追いかけてくるなんて……。私は逆方向に向かって走り出した。あいつに捕まったら確実に殺される。

 何かおかしかった。その怪物の服装には二乃や五月のものであろう返り血が付いていなかった。新しく生まれたの?

 怪物から逃げていると、その先の方からも足音が聞こえてくる。

 最悪だ。反対側からも三角頭の怪物が現れた。私は二体の悪魔に挟まれてしまった。

 

 嫌だ。誰か助けて……。

 一花、四葉。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フータロー。




 次回、本ストーリーについての解説を後書きに記載します。
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