END1 罪と共に
「ここは……」
ついさっきまでロビーで二体の三角頭の怪物と戦っていたんだが……気がつくと、レイクビュー・ホテルの玄関前にいた。
そうか、俺は勝ったんだ。だから今、ここにいる。
風太郎は何気なくアメリカの観光地の一覧が載ったサイトを覗いた。修学旅行前、観光地探しの時に使ったサイトだ。
「やっぱりそうだったか」
そのサイトからサイレントヒルの項目だけが消えていた。いや、始めからそんなものは無かった。思った通りだ、あれは風太郎たちをこの町に招くための幻だったのだ。
「もうここに用は無いな……」
ボソッと呟き、風太郎はトルーカ湖のすぐ前に立つ。そして、携帯電話を取り出して一花と四葉にメールを送った。
『町を囲っていた壁は消えた。たぶん化物ももういない。早く宿泊先のホテルに帰れ。お前たちの居場所はわからなかったから一人で向かっているところだ』
修学旅行の宿泊先のホテルに早く戻るように伝えた。とっくに日にちが変わってしまって、どのみち先生からはこっぴどく叱られることに変わりはないが、少しでも早く帰るに越したことはない。
だが、風太郎は嘘をついている。風太郎はホテルに帰るつもりはない。行くべき場所が他にあるのだ。罪深い存在として……。
けれど、いざとなるとなかなか、あと一歩を踏み出すことができない。三角頭に勝利して決心がついたつもりだったが、そう簡単には勇気がわいてこなかった。
しかし、ふと思った。二乃と三玖、五月は、彼女たちからすれば得体の知れない怪物に殺されたのだ。とても怖かったに違いない。息の根を止められた顔がどれも戦慄に満ちていたのが何よりの証拠だ。
そうだ、あいつらの方がずっと怖かったはずだ。それに比べれば……。一体俺は何を怖れていたんだろう。自らの意志で大切な人を失うこと以上に怖いことなんて、この世にありはしないのに……。
やっと決心できたよ。最初からこうすればよかったんだ。
風太郎は行くべき場所へのあと一歩を踏み出した。微笑みながら。
フータロー君! どこにいるの!?
上杉さん! いたら返事して下さい!
一花と四葉の声が聞こえた気がした。どうやら俺のことを探し回っているみたいだ。だが、俺はもう戻らない。
(一花、四葉。お前たちなら、俺がいなくたってできるはずだ。自分を信じるんだ。
二乃、三玖、五月。俺が言うのも何だが、お前たちは天国で幸せに暮らしてろよな)
碧色に濁った視界を黒く染めながら、俺は五人への最後の言葉を心の中で唱えた。