Silent Hill〜五等分の罪〜   作:仙豆大名

6 / 18
第6話 遭逢

 古新聞を読み終えた風太郎は、アパートの中へと入っていく。中は暗かったので、携帯電話の画面の光で闇を照らした。一階の住居スペースには入れなかったので、二階へと上がって住居スペースの扉を開けた。

「っ!? ここもか!」

 二階の住居スペースの廊下は化物に占拠されている。クネクネにマネキンもどき……。二階はいったん後回しにし、三階へと上がった。恐る恐る住居スペースの出入り口の扉を開けて覗くと、廊下には化物がいないようだった。気配も感じないし、足音も聞こえてこない。

 とりあえず、部屋番号順に訪ねてみよう。301号室の扉をノックして声をかけてみるが返事が無い。鍵は開いていて、中を覗いてみるが誰もいないようだ。302号室も返事が無く、ここは鍵が閉められていた。303〜306号室にも招き入れられることはなかった。

 307号室の扉を前にした時、中から物音が聞こえてきた。ようやく住人のいる部屋まで来たかと悦に入た瞬間、悲鳴が響いた。まさか、この部屋の住人が化物に襲われているのか!? ドアノブを回すと鍵が開いていた。風太郎は急いで部屋の中に入り、銃を構えた。

「大丈夫か……っ!?」

 しかし、その瞬間、風太郎の背筋が凍りついた。咄嗟に玄関脇のクローゼットの中へ身を隠し、携帯電話からの明かりを消した。危うく気づかれるところだった。

 見るのが怖いが見ずにはいられず、風太郎はクローゼットの格子の隙間から覗き込む。三体の化物が2対1で争っていたのだった。二体側はマネキンもどき、もう一体は初めて見るやつだ。

 奇妙な三角錐の頭を持ち、それは年月と風雪で腐食した鉄にこびりつく赤錆のような色をしていた。そして、袖を排除したトレンチコートのような形状の白い衣装を纏い、足には膝まであるロングブーツを履いている。

 悪魔だ。と、風太郎は思った。不意に、あの新聞の記事の中にあった文字が思い出された。赤い悪魔……。三角頭のそいつは、化物というより悪魔と呼ぶに相応しい。

 マネキンもどき二体をものともせず、「三角頭」は圧倒的な強さである。細身のくせに桁違いの腕力で、二匹を重ねて折り畳み、その息の根を止めた。二匹のマネキンもどきは、折り重なった姿のまま動かなくなった。

 風太郎の全身が震える。どっと冷や汗が流れる。これまでに会った化物は、恐怖こそ感じるが、ここまで怖気付く程ではなかった。だが、コイツは違う。格が違いすぎる。奴の視界に入った時点で死んだも同然のような感じがする。大袈裟だと思うかもしれないが、決して大袈裟ではない。

 三角頭が部屋から出ようと、出入り口に向かって歩き出す。そして、風太郎が隠れているクローゼットの側を通ろうとする。

 

 怖い、怖い、怖すぎる……。息を殺し、気配を消す。

 

 コツ、コツ、コツ、コツ……。クローゼットを通り過ぎて、ようやく部屋の中から消えた。なんとか見つからずに済んだ。

 生きた心地がしなかった。何故あいつに限ってここまで恐怖を感じたのだろうか? 他の化物よりも強いから? ただならぬオーラを感じたから? もはや自分でもわからなかった。

 

 化物が部屋を出て行ってから、少なくとも10分は経った。さすがにもう大丈夫だろうと風太郎はクローゼットの中から出た。あの三角頭の足音はもう聞こえない。

 安堵して、緊張していた身体の力が抜けて床に座り込み、惨殺されたマネキンの死体をボーッと見つめた。

 

 

 五月とはぐれてしまった二乃。何度か五月に電話をかけるがつながらなかった。きっと化物から逃げるのに必死になっているのだろう。これ以上かけても埒が明かないと踏んだ二乃は、電話は諦めてただひたすら五月の無事を祈った。

 二乃は、ある住宅の門の、鉄格子の欠片である鉄棒を武器として持っていた。鉄棒の長さは、自分の手首から肩までの長さよりも少し長く、化物に抵抗するには十分なリーチだ。

 現在、彼女は辺りに化物がいない通りの建物の壁を背もたれにして座り込み、休憩していた。鉄棒を振るい続けたことによる腕や肩の疲労を回復するために、また、マップを見て自分の居場所や近くの構造を確認するためだ。

 休憩しながら、とある人物に電話をかけた。

『もしもし、どうしたんだ?』

『フー君、今どこにいる?』

『アパートだ。ウッドサイド・アパートっていう名前だ』

『今からそっちに行きたいんだけど、いいかしら?』

『ああ、待ってるよ。ところで、二乃はたしか五月と一緒だったよな? もし、まだ武器を見つけてないなら二人分こっちで探そうか?』

『私は武器を持ってるわ。ただ、五月とはぐれてしまったの。電話をかけてみたけどつながらなかった。きっと化物から無我夢中で逃げてるんだと思う』

『ということは、今二乃と五月は一人っていうことか!? 二乃、今お前がいる所とウッドサイド・アパートってどのくらいの距離だ!?』

『えーと、そこまで離れてないわ。たぶん、普通に歩いても5分はかからないと思う。私のいる場所は口では説明しずらいから、こっちから向かうことにするわ』

『わかった。合流した後に五月を探そう。一人でいるのは危険だ。気をつけてな』

『ええ』

 二乃は場所がわかりやすい風太郎の下へこちらから向かうことにした。通話を終え、急いで風太郎の待つ場所へと向かう。幸いにも、進行方向の通りには化物がそれほどいなかったので、かわして進むことができて無駄に戦わずに済んだ。

 途中、四葉から電話がかかってきた。五月と合流したこと、これから二乃の場所へ向かいたいという内容だ。二乃は風太郎のところへ向かう途中であることを伝えた。四葉と五月は二乃が無事であることと風太郎に会いに行こうとしていることに、二乃は五月が無事であることに胸を撫で下ろした。

 二乃は再び風太郎に電話をかけ、五月が四葉と合流していることを伝えると二乃と同じようにホッとしている様子だった。

『じゃあ、俺はお前を待ってる間にもう少しアパート内を回ることにする。アパートに着いたら連絡してくれ。すぐにそっちへ向かう』

『わかったわ』

 二乃は、五月を四葉に任せ、風太郎と行動を共にすることにした。

 駆け足で通りを渡ること約3分。アパートの姿が見えてきた。二乃はアパートまで来たことをメールで知らせるために、スマホを取り出そうと制服のポケットに手を伸ばす。その時、何かが地面に引き摺られるような音が響いてきた。その方向へ視線を向けると、アパートの敷地の出入り口付近から、右手に持った巨大な何かを地面に引き摺りながらこちらへ歩いてくる人影が見えた。

「あれは!」

 その人影の形は、濃い霧のせいでぼやけているが、二乃は一目見て確信した。あの背丈、細身だがどこか頼もしさを感じるシルエット……。風太郎だ!

「フー君!」

 自分の意中の人との対面に、二乃は胸を弾ませながら、飛び込む勢いでその人影の下へ走って行った。




クリーチャー解説
・三角頭
 風太郎がアパートの307号室で目撃した化物。袖を排除したトレンチコートのような形状の白い衣装を纏い、足には膝まであるロングブーツを履いており、ピラミッドを彷彿とさせる三角錐状の赤い兜を被っている。
 細身だが力強い。

※三角頭は、本ストーリーにおける重要なキャラクターで、ストーリーが進むにつれてどんどん情報が追加されていくという形にしたいと思います。そのため、情報が追加される度にキャラクター紹介で記していくという感じになります。

読者様に質問です。「五等分の花嫁(アニメまたは漫画)」、「サイレントヒル2(ゲームまたは小説)」についてです。当てはまる方を選択してください。

  • 五等分の花嫁を知っている。
  • サイレントヒル2を知っている。
  • どちらも知っている。
  • どちらも知らない。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。