第2話のタイトルを変更しました。一つだけ英語なのはどうもしっくりこなかったので……。
アパートの探索を中止した一花と三玖は最初の計画通り、ローズウォーター公園に向かい、偶然その途中で抜け道を見つけられないかと歩いていた。だが結局見つからず、何も収穫がないまま公園に着いてしまった。
「ねぇ一花、少し休憩したい」
「ずっと歩きっぱなしだったもんね。ここには化物がいないみたいだし、あそこのベンチに座ろうか」
長い間歩きっぱなしで脚が疲れた二人は、公園の東側の出入り口付近にあったベンチに腰掛け休憩することにした。公園には化物の姿が無かったのでちょうどいい。
「ねぇ、一花……。私たち、ここから出られるのかな?」
「きっと大丈夫、何とかなるよ……」
三玖は自分たちが本当にこの町から脱出できるのか不安になっていた。一花は三玖を励まそうとするが、自分の言葉に確信を持てず自信が無い様子である。
「帰りたい……。六人全員で生きて帰って、またみんなと勉強したい……」
三玖が半べそをかいて口ずさむ。一花はそれを黙って聞くことしかできなかった。
しばらくの間、二人は黙り込んだまま座り続けていた。いつの間にか40分近く経っていた。
「少し休み過ぎちゃったね。そろそろここから出ようか」
一花の言葉を合図に三玖も立ち上がる。スマホの画面を確認すると、二人のスマホにメールが届いていた。姉妹たちに向けて一斉送信された風太郎からのメールだった。メールを見ると、次のような文が書かれていた。
『落ち着いて読んでほしい。二乃が殺された。犯人は三角頭の化物だ。でかい刃物を持った悪魔だ。地面を引き摺るような音が聞こえたらすぐに逃げろ! 絶対に戦おうとするな! 俺たちには勝ち目が無い』
二人は愕然とした。自分たちには勝ち目が無いという悪魔。大きな刃物。そして何より、二乃が死んだという事実……。
二人は、メールの内容を受け入れることができなかった。自分たちの大好きな姉妹の一人が死んだという知らせを急に受けたのだから無理はない。
「嘘だよね……?」
「フータローに確認してみる……」
三玖はメールの内容について確認するために、風太郎に電話をかけた。
『フータロー、二乃が殺されたって本当なの……?』
『フータロー君、嘘だよね……? 嘘って言ってよ!』
一花は思わず声を荒げた。二乃の死を否定したかったのだ。だが、期待していた返事がされることはなかった。
『本当だ。アパートの前に遺体があるんだが……上下に真っ二つにされていて、首を切り落とされている』
あまりにも無残な二乃の状態を知らされて二人は絶望した。
「酷い、酷すぎる……。許せない」
「私も……。でも、私たちには倒せない」
一花と三玖は涙しながら悪魔に対して怒りを抱いた。だが、三玖の言うように自分たちにはそいつを倒すことができない。大事な人の命を奪われたというのに何もできない自分たちが惨めと思い落胆していた。
「とにかく、抜け道を見つけよう。また犠牲者が出る前に」
少しだけ冷静さを取り戻した三玖の発言により、一花も気を切り替えて公園を後にした。
今度は町を適当に歩き回ってみることにした。来た時とは反対側の出入り口から公園を抜け出した二人は、ある物音を耳にした。
「何、この音?」
「何かが地面に引き摺られるような……っ! 一花、早く逃げなきゃ! フータローが言ってた音だよ!」
金属が地面のコンクリートを擦るような音……。悪魔だ! 悪魔が近づいてきたのだ! 二乃みたいに二人を八つ裂きにするために……。
メールの内容を思い出して走り出す一花と三玖。ふと後ろを振り向くと、交差点から現れた悪魔のものであろう人影が二人のいる方とは逆側へ曲がっていくのが一瞬見えた。どうやら気付かれずに済んだようだ。
「さっきの人影、右手に何か大きいものを持ってた」
「たぶん、フータロー君が言ってた刃物のことだよ。見た感じ、刃渡りは私たちの身長以上あると思う。厄介だね、この町を出るまでずっと追われっぱなしだなんて」
「他の化物と同じで足は遅かった。逃げるのにはそこまで苦労しないと思う」
「でも油断はできないよ。強さが桁違いらしいし、二乃が殺されてるからね……」
一方、四葉と五月はある場所に向かって歩いていた。歴史資料館だ。二人は、抜け道の在処はもちろんだが、この町の異変についても気になっていた。もし、過去にも似たような異変が起きているならば解決の手がかりが残されているかもしれない。そして、異変の解決によって町を囲む壁が消えて脱出できるのではないかと踏んだのだ。
歴史資料館へ行く途中には、クネクネやマネキンが立ちはだかっていた。四葉は拳銃を使って応戦するが、まだ武器を持っていない五月は四葉の身体にしがみついているだけにすぎなかった。
ある程度の数の化物を倒し、スペースを確保した四葉は、五月の手を引っ張ってそのスペースを走り抜けた。
歴史資料館の手前で、鉄柵の欠片の鉄棒と銃弾が落ちていた。四葉は、自分が持っていた拳銃に銃弾を詰めると五月に渡し、代わりに鉄棒を手に持った。怖がりな五月には遠距離での攻撃をさせる方が良いと思ったからだ。
歴史資料館の入り口まで辿り着いた二人だったが、扉には鍵が掛けられていた。
「げっ、鍵が掛かってる」
「そんな、せっかくここまで来たのに。休館日だったのでしょうか?」
目的地まで辿り着いたはいいものの、中に入ることができずに途方に暮れていた。仕方なくその場を後にし、次の目的地を決めるために地図を見ようとスマホを取り出した。
画面を開くと、風太郎からメールが来ていることに気づいた。メールを開いた瞬間、二人は呆然とした。真っ先に、二乃が殺されたという文が目に入ったのだ。後ろに三角頭の化物とやらの説明が続いていたが、全く頭に入ってこなかった。
五月は風太郎に電話をかけ、メールの内容の真偽を確認しようとした。ただ、事実であることは薄々わかっていた。彼は冗談でそんなことを言うような人間ではないからだ。
『上杉君、本当なんですか? 二乃が殺されたって……』
『ああ。メールに書いてある通り、三角頭の化物にやられたんだ』
『二乃……そんな、二乃が!?』
五月はその場に膝から崩れ落ち、号泣した。四葉もその知らせを受けて動揺していた。
まともに会話ができなくなった五月に変わり、四葉が風太郎に問いかける。
『上杉さんは大丈夫だったんですか!?』
『それが……一度は追い詰められたんだが、殺さずに引き返して行ったんだ。もしかしたら、お前たち姉妹を皆殺しにした後で俺を狙うつもりなのかもしれない』
『えっ、どうして……?』
『明確にはわからないが、俺に恐怖心を植え付けて楽しんでいるんだろう。俺にはそれしか考えようがない』
『上杉さん、今どこにいますか? 私たちは歴史資料館の近くにいます』
『俺はサンドフォード通りへ通じる橋の付近にいる』
『ということは、すぐ近くですね! 一人は危険ですし、私たちと三人で行動しましょう!』
『ああ、そこで待っててくれ。こっちから向かうよ』
ウッドサイド・アパートを後にした風太郎は、サンドフォード通りへ向かおうとしていた。歴史資料館のすぐ近くの橋を渡って辿り着ける場所だ。
新しく入手した鉄パイプを振るい、行く手を阻むクネクネやマネキンの相手をする。クネクネやマネキンならすっかり見慣れてしまい、戦い慣れて、脅威に思う相手ではなくなった。
風太郎にとって、そいつらへの感情は恐怖ではなくイライラに変わっていた。鉄パイプで叩きのめすたびに心が晴れる感じさえしたのだった。何度も足止めされることが億劫になったからであろうか? それとも二乃を殺された腹いせだろうか?
片っ端から化物を倒していると、マネキンが一体逃げて行くのが見えた。深追いをする必要は無いし、むしろかえって危険なのは承知のはずだ。次の機会に仕留めればいい。……しかし、風太郎はそうしなかった。逃げて行くマネキンにダッシュで追いつき、鉄パイプで殴りまくった。
何故そんな愚かしい選択をしたのか自分でもよくわからない。衝動的にそうしてしまっていた。せっかく相手をしてやっているのに逃げ出すという無礼な態度が許せなかった。
ハッとなって荒ぶった感情を押し殺した。誰かから電話がかかってきていた。電話の相手は三玖だった。内容は二乃の死についてだ。三玖と一緒にいた一花が嘘だと言って欲しいと声を荒げた。だが、その通りにしたところで二乃は生き返らないし、紛らわしくなるだけだ。事実を淡々と話すしかなかった。
ようやく橋の前まで来た。橋の向こう側でも何も見つからなかったらどうしたものかと心配していたが、杞憂だった。悪い意味で……。
橋が壊れていたのだ。崩落した橋の前で風太郎は茫然と立ち尽くした。戦争でも起きたのだろうか。化物の存在といい、やはりただ事ではない。
気落ちして俯いていると、橋の支柱に釘で留められた紙が目に入った。紙を引きちぎり、裏を見てみると町の地図が描かれていた。風太郎が持参したものよりも範囲が狭いものだ。ある地点にバツ印が描かれている。「ブルックヘイヴン病院」だ。
バツ印にはいったい何の意味があるのかと考えていると、今度は五月からの電話がかかってきた。おそらく、三玖の時と同じ内容だろう。
電話に出ると、案の定二乃の死について聞かれた。二乃と特に仲が良かったであろう五月のためを思い、遺体の状態には触れないでおいた。バラバラにされたなんて聞いたらどうなることやらと懸念したのだ。
五月の泣き声が響く中、今度は四葉が話しかけてきた。風太郎と合流したいとのことだ。お互いの居場所がちょうど近かったため、風太郎は四葉に歴史資料館で待つように伝え、そこへ向かった。
読者様に質問です。「五等分の花嫁(アニメまたは漫画)」、「サイレントヒル2(ゲームまたは小説)」についてです。当てはまる方を選択してください。
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