クソ傭兵が戦場で目玉焼きを作るっぽい話──うすしお味 作:ヘンなの好き
ACVDストミだけ抜くと10しかないから、IS編進めつつ適当なとこで挟むスタイルでいくよ。
とりあえず今回は記念すべき第一話、AC編でストミ01をさらっと流します。
【ACVD】01 DIRTY WORKER
俺に言わせれば、最後まで立っていられるAC乗りの絶対条件は大きく分けて三つ。
戦場を支配する技量、時の運、そしていかにACと心を通わせられるか。
最初の技量はいうまでもないだろう。相手より優れている方が勝つ、ただそれだけの事だ。
次に運。戦場にいれば、そうとしか説明できない力を感じる時もあるだろうな。
──で、最後。機械に心なんて馬鹿な話だと鼻で笑うやつもいるが、そういう連中は笑ってる間にサインズの名簿から消えていった。
実際、機械に心はない。あくまで乗り手の有り様についての話だ。
自分が戦場で命を預けるパートナーに全幅の信頼をおけない、自信の持てない乗り手にACは応えちゃくれない。
戦闘で動きに余計な迷いが生じれば敗北に直結する。そして戦場での敗北は死亡とほぼ同義だ。
ACのコアは頑丈に作られているが、壊せないのとはまた別の話。
コアのへしゃげたACをサルベージしていると、つくづく命の軽い世界観だとゲンナリさせられる。
三大勢力の睨み合いに、彼らを煽り散らかす財団、そして火種に乾いた薪をくべるサインズ。
この荒れ果てた大地で、心に余裕のない傭兵が長生きするのは難しいもんだ。
死に急ぐやつはどうやったって早死にする。
……だが、かといって臆病なやつが生き残れる訳でもない。
いや〜、困っちゃいますねぇ。
「ほんと、なんでこんな事になってんだか」
鉄に錆と火薬、あと
この状況についていま俺が言えるのは、
1.風呂でうっかり寝落ちしたと思ったら、現在の活動拠点である地下ガレージにいた。
2.搭乗中のACは最初からガレージに入っていたし、なんならゲームと同じ感覚で動かすこともできる。
3.大卒が精々の俺に変態ミグラント並のAC知識がある、未知の技術が手に取るようにわかる。
──ざっとこんなところだ。
うん、なんもわかってねぇな! ちくしょうめ!!
冗談はさておき、最近、財団が武器内蔵型の特殊腕を開発したらしいという風の噂から、ストミの開始前か最序盤だろうという事くらいはわかっている。
その辺の情報や金策のためとはいえ、サインズに傭兵登録したのは早まった選択だったかなぁ、今となってはそう思わないでもない。
基本的に俺の稼ぎはACと輸送ヘリを使ってのサルベージ、スカベンジング&レストアによる中古パーツ売買、格安チューニングや改造で別に傭兵活動じゃないのだ。
もちろん傭兵になってしまった以上は仕方なく依頼を受けることもあるし、仕事を請け負ったら報酬分くらいは働いて帰るようにはしてる。
ぶっちゃけ依頼を受けるのはごく稀で、対AC戦は片手の指で数えて余る程度だ。
つまり傭兵としての名声はあってないようなもんだし、サインズの名簿に残り続けていればいずれ財団の計画によって修羅と化した主人公くん(ちゃん?)と黒い鳥の座をかけたデスマッチ、なんてエラい目に遭わされる。
向こうはやべーネクストもどきを銀行呼ばわりしてボコすようなイカれたやつだぞ、冗談でも勘弁してくれ。
そんな訳で、俺にとってサインズはもとより傭兵業は百害あって一利なしってもんだ。
「だから、俺は稼ぐだけ稼いでさっさと早期リタイアする!」
財団の悪巧みや主人公に一切関わることなく、俺は俺の好きなように生きて好きなように死ぬ!
雨だろうが関係ねぇぜ、三大勢力から搾れるだけ搾り取って傭兵辞めたらァ!!
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
てな訳で、本日は久々にサインズから猛烈なラブコールという名の斡旋を受けてやって来ました
砂、鉄屑、錆、倒壊したビル郡、鉄屑、砂、崩れた高架、砂、鉄屑、砂、砂、砂!!!
とまあ、このエリアをわかりやすく解説するとこんな具合である。
しゃーない。本当に砂と鉄屑しかない『死んでる土地』なんだから。
つっても俺は好きだぜ、というか嫌いになれない。
緑豊かな世界に生きてた人間としてはどこもかしこもなかなかショッキングな光景だが、廃棄品回収を基本的な生業とする身としては結構な掘り出し物を発見することもままあるので、ぶっちゃけ砂漠も悪くないのだ。
クソ暑いのと埃っぽいの、あとついでにそこらをブンブン飛び回るヘリさえ気にならなければ、わりと素面で宝の山と言い切ることさえできるだろう。
なんなら、俺のACも掘り出したレア物なんかを流用しつつ手を加えてるんだから、こういうとこの物漁りは疎かにしちゃいけねぇや。
ちなみに、今回の狙いは砂漁りではなくヴェニデの防衛型とシリウスの高機動・偵察型がメイン。
どちらも無力化したてで鮮度抜群。さあジャンジャンバリバリ稼いでいくぜー!
『らーらーらー、らーららー、ふんふんふー……』
…………。
『聞こえる? ミッションを確認する』
『──、──』
稼ぐぜー?
『だーだーだーんーんんー……』
『前方に、二つの部隊がいる。片方はヴェニデの境界警備部隊、もう一方はシリウスの偵察部隊、両者の睨み合いは、二日前から──』
うんまあ、知ってるさ。知ってるし、なんなら聞き慣れた声と内容だ。
ラジオから延々と垂れ流され続ける懐かしの曲、通信機から漏れてくるなんとも言えない鼻歌。
こちらの真横に位置取る大型のヘリには、まるまると太ったコウノトリのエンブレム。
こちら──運び屋御用達の多目的大型ヘリコプター。この時代における最もポピュラーなAC輸送機で、機体の腹の下にACを露天懸架し、ロッキングアームを解放してACを投下する形式が一般的。
サイドバイサイドローター式で、胴体の左右にエンジンを載せた大型のコンテナブロックを有する。
またこのコンテナはACのパーツ及び弾薬類を格納できるほどの大きさがあり、簡易的なガレージとしても機能するスグレモノなのだ。
……なお、お隣のヘリはエンジンブロックの下面にミサイルランチャーもしくはロケットランチャーと思しき武装を懸架している。ワー、スッゴイジュウブソウダナー、ドコデソンナノツカウンダロナー。
『依頼は、この両者のどちらかに攻撃を仕掛け、戦端を開かせる。そしてその後、両陣営を全滅させる』
依頼主はサインズ経由なので不明だが、恐らくEGFだろう。エバーグリーンファミリー──三陣営のうち、先ほど名前の挙がらなかった最後の陣営だ。
ちなみに我々の周囲でブンブンやってる数機の小型ヘリは依頼主から回されてきた見届け役。要するに俺らがちゃんと仕事するか監視しに来た暇人共って訳よ。
『私たちに与えられた情報は、これで全部。──そうよね?』
「ああ、その内容で間違いない」
概ねは。俺の場合はその内容に、とりま新人傭兵のサポートよろ、みたいな雑な文言が加えられる。
……そう、依頼内容は新人傭兵のケツ持ちくらいなもんだったんだ。本当はな。
『ハッハッハ──なんだそりゃ!? 毎度毎度、ロクでもないな!』
「天下の三大勢力つったって、どこも慢性的な人手不足なんだろ。工作にお抱えの戦力絞り出すのが惜しいってんで、わざわざ匿名性の高い傭兵斡旋組織なんかを通して、俺たちみたいな雑な扱いしても金さえ出しゃ動く駒を使うしかないのさ」
『確かにな。それもご時世か、使い捨ての傭兵の』
ほんと、嫌になる。命の扱いが軽いったらねぇの。
『少しは静かにして、ファットマン。……貴方もよ、ファイアスターター。二人とも仕事する気あるの?』
え、俺も? いやまあ、さっきから一言も喋ってない僚機のパイロットと比べりゃあペチャクチャとうるさい方かもしれんが。
にしても、主人公くん(ちゃん)ってやっぱり無口なのね……。これもゲーム準拠ってやつなのか?
『マギー、俺はもう、いつ運び屋を引退するか。最近はそれしか考えてなくてさ』
『じゃあそれは明日にして、今日は仕事がある』
『明日は雨らしい、辞めるのは晴れた日って決めてる』
『……速度上げ、低空で突入して切り離し』
マグノリア・カーチスがため息混じりに続け、同時に俺たちを運ぶヘリもグンッと加速&下降を始める。
監視役共も散開して後方へ。こいつらはこいつらで、作戦終了まで適当に暇でも潰してるんだろう。
『シリウス部隊後方に投下後、ただちに上昇。──オペレーティングシステム、起動準備!』
隣のヘリからACが投下され、俺もそれに続く。
ノコノコとここまで来ちまったんだ、やるっきゃねぇか?
「仕事だ、起きろエシル!」
《おはようございます。メインシステム、スキャンモードで起動。──プロトコル04》
これは余談だが、個人で傭兵やってる俺のヘリは完全無人機だ。
コクピットにかなりの手を加え、夜なべして専用に構築したAIを搭載し動かしている。
俺が降りたのを下部センサーで確認し、無人ヘリはファットマンの輸送ヘリを追いかけ上昇&離脱。
こっちはこっちで、降下しながらブースターを点火して速度と位置を調整、意識もお仕事モードに切り替えていく。
通常兵器とはいえ相手さんの火力はそれなり。ACだろうが油断すれば死にかねん。
そうでなかろうが、被弾して機体に傷が入ればそのぶん修理費がかさむのよ。──さて。
落ち着いたところで、今の状況を改めて確認しよう。
昨晩サインズから
依頼内容は至ってシンプル。先ほどカーチスが解説した通りの内容に加え、なにやらシリウス側に攻撃隊の動きがあるとのこと、ついでに
ヴェニデ境界警備部隊とシリウス偵察部隊の小競り合い? あれなんかどっかで聞いた事あるような話だなと思いつつも、この手の依頼はよくある話だしそもそも史実にストミ限定の僚機なんて登場してなかったしで、そん時の俺は特に深く考える事もなかった。
……で、まあそれがよくなかったんだな。
今朝早くから移動を開始し、昼前に合流ポイントで僚機陣営と落ち合う、そしたらどうだ。
どっかで見た、いや見慣れたエンブレムの輸送ヘリに顔は知らんがよく知った声。
そこには懐の広そうなじいさんに気の強そうな隻腕の美女、おまけに全く喋らないパイロットスーツ&フルフェイスヘルメット被ったやつというやべートリオが待っていた。
肝心の初期機体さんは何故かジャンクの寄せ集めではなく真っ当な中量二脚で、ファットマンが言うにはどうも以前にうちの店でパーツを買い揃えたらしい。
確認してみるとなるほど、確かにうちの取り扱いコードが刻まれているパーツだった。
店はAI管理で輸送サービスもほぼ無人機に一任してたからなぁ……俺の仕事? そりゃあ細々とした事をちびちびと。
なんてまあ、それはともかく俺が彼らの僚機として斡旋されたのはそういう縁あっての事だったようだ。
「いや、とりあえず今は切り替えてかねぇとな」
《敵機沈黙。右腕残弾90%、エネルギー80%──》
戦端は既に開かれている。真っ先に両陣営の中央へと突っ込んで行ったのは我らが主人公、僚機の方だ。
事前にそう示し合わせた訳でもないが、結果的に僚機が撹乱して俺が各個撃破という形になっていく。
戦闘は一旦始まってしまえば後はあっという間だ。こと相手が通常兵器なら尚更早くカタがつくというもの。
シリウスの高機動・偵察型を右腕のライフルで叩き落としつつ、無駄に硬いヴェニデの防衛型は蹴り飛ばして沈黙させる。
後で回収する事を考えて立ち回ると、これくらいの塩梅が壊し過ぎないで済むのだ。
《マイパートナー、敵に増援部隊。対応を──》
最後の防衛型にとどめを刺すのと同時、設置していたリコンで感知した情報をエシルが告げる。
話に聞いていたシリウスの攻撃部隊か。ヴェニデの警備部隊が全滅するのを待って漁夫の利を狙ってきたな?
「ああ、わかった。向かおう」
大方、先の戦闘で俺らがそこそこ消耗してるものと見越したんだろう。舐められたもんだ。
こちらも機体を反転。増援の位置から先に対応しに向かった僚機の応援に、
《──いえ。僚機が増援部隊を殲滅。作戦終了、システムを通常モードへ移行。お疲れ様でした》
「……わお。さっすが、やるねぇ……」
──応援に向かおうとしたが、そこには既に壊滅した部隊と、ギリまだ生きてる僚機の姿が。
さすがに無茶したらしく僚機は見事にボロボロ。ありゃあ修理費がヤバそうだな。
未来の黒い鳥といえど、操縦の腕はまだまだルーキーの域を出ない感じか。
それでもまあ、この短時間で増援を片すってのはちょいと目を見張るもんがある。
……死亡フラグ、立っちまったかなぁ俺。
『スキャン完了、敵影はない』
エシルに少し遅れて、ファットマンから通信が入る。
『いつも通り、レポートは依頼元に送信しておくから。おつかれさま』
『──、──』
ん、ああ? 今、なんか言った……のか? ダメだわからん。
『どういう話だったのか、なにもわからんかったな。それもいつも通りか?』
「少なくとも、EGFの人手不足を肩代わりさせられた訳じゃなさそうだ」
というのも今の増援、シリウスではなくEGFの部隊だったのだ。事前に知らされてた情報と違うってのはこの世界じゃ最早ご愛嬌だ。
連中は完全に攻撃しにきていたので、これがAC名物の『騙して悪いが』でないなら、最初から俺のアテが外れて今回の依頼主は別にいたって事なんだろう。
で、まあ順当に考えれば依頼出したのどっかで見てる財団だよな。俺最初にドヤ顔であーんな事言ってましたけど? うわ恥ずかしッッ。
『いまのやり方はそういうものでしょ? 知らなくていい事は知らなくていい、なにひとつ』
『そういうのが気に入らんのだろ、マギー。お前が、傭兵だった頃から』
『──、──?』
『……次の仕事がある、帰りましょう』
あ、やべ。もう切り上げか?
「おっと、ならここで知っておくべき事があるぜ。なんと本日限りの大セール。うちの在庫がここだけ各20%引き、そこのボロボロパーツを下取りに出せば更に10%引き。おまけに一式購入で今回消費した弾薬の補充も無償で受けてやろう」
『……在庫のリストは?』
「今そちらの端末に送信した。輸送はいつも通りサービス、アセンブルと調整は別料金だがそちらには設備があったな?」
なにはともあれ隙あらばセールス。これも早期リタイアのため活動資金のため。
今回の件でなんか変なフラグ立った気もするが、俺はさっさと傭兵引退してのんびりセカンドライフ送るのじゃ。
あ、財団さんはさっさと主人公くん(ちゃん)にJ共々ボコられてください。
後でレアなパーツ掘っくり返すんで。特殊兵器の起動とか、そこんとこ諸々よろしく。
『ええ、パーツを運んでもらうだけで結構よ。後はこっちでやるわ』
「わかった。まあ、そこの傭兵とよく相談して、のんびり決めてくれや」
『……そうさせてもらう。とりあえず、今回はどうも』
「いや、こちらこそ。楽な仕事だった」
もう会いたくはないがね。
仮に次があるなら、そん時はあくまで店主と客だ。
よかったら仲良くしてください。