クソ傭兵が戦場で目玉焼きを作るっぽい話──うすしお味   作:ヘンなの好き

5 / 5
あらすじ:この作品の評価も行くとこまで行った気がする、よって後は落っこちるのみ
もう原作入りたいので今回は原作一話の頭大作戦。


【IS】第三話

「全員揃ってますねー。それじゃあSHRはじめますよー」

 

 そう言ってにっこりと微笑むのは山田真耶。公立IS学園一年一組の副担任だ。

 成人した女性という割に小柄なため、背後の黒板がやたらと大きく見えるのはご愛嬌ってとこだろう。

 服や装飾品類もややダボついてるがこれは……サイズがひとつズレているのか? それがまた、本人の幼い見た目に拍車をかけている。

 失礼な話、なんだか実年齢よりも若く見られて苦労してそうな人だ、という第一印象だった。

 

「それでは皆さん、一年間よろしくお願いしますね」

 

 と、副担任。

 ここで『はいよろしくお願いしますセンセー』とでも返せば教師の覚えめでたく快適な学園生活が約束されるかもしれんが、この空気の中でそれをするのは流石に悪目立ちが過ぎるというものだろう。

 

「…………」

 

 結局この教室にいる生徒の中から、小柄な副担任に返事をする〝猛者〟はひとりも出なかった。

 

「じゃ、じゃあ自己紹介をお願いします。ええっと、とりあえず出席番号順で一番の人から──」

 

 開幕一番の挨拶がこんな形になってしまい、見ていて気の毒なほどに狼狽える副担任。

 だが、ここはひとつ大目に見てほしい。

 他の生徒からしてみれば、女子ばかりの空間に男子が二名も混ざっているんだ。

 

 ──公立IS学園は女子校である。

 

 女にしか使えないISの専門学校なんだからそりゃ女子生徒しかいねぇよなって、まあそういう事。

 そりゃあ変に緊張もするだろって話だし、異分子たるこっちも正直かなり居心地が悪い。

 〝例外〟って言葉、俺は苦手なんだけどな。だがなっちまったもんはしゃーなしだわ。うん。

 

 だから一夏も、そうこっちを見るな。いくら席が隣同士だからってチラッチラ横見てりゃ嫌でも周囲の目に留まる。

 そんな事より……ほれ。

 今日から共に三年間、机を並べて学ぶ仲間がこれから自己紹介をするっていうんだ。そっちに集中した方がいいと思うぜ?

 

「はい! 出席番号一番、相川清──」

 

 しかしまあ、たまんねぇな。

 今日ほど学校行事──というか入学式を苦痛に感じた事はない。なんなら苦痛は継続してるが。

 基本、IS学園に進学する生徒の大半はそれに向けた授業が多く盛り込まれている学校、言うなれば女子校を経てここに来ているので、男に対して免疫がない。

 そんな彼女らの前に興味の対象がいて、おまけにそれがISを動かせる男とくれば、もう気になる気になる。

 お陰様で俺たちは入学式からずっと、視覚で、聴覚で、意識で、凄まじく気にされてる訳だ。

 これは実際スゴイキツイ!

 

「──はい、ありがとうございます。次は……宇品くんですね、お願いします」

「ああ、はい」

 

 副担任の指名に応えて席を立つ。

 やらかした……。

 なんというか、気もそぞろになっていて直前までの自己紹介が大して頭に入らなかった。

 まあ、それは他も似たようなものか。

 にしても俺が立つのと同時にギュンッと視線が集中する様は見ていて少し、いやかなり笑えてくる。

 どいつもこいつも、ここは一言一句聞き漏らさねぇぞって感じの姿勢だ。

 もっと他のやつの自己紹介もちゃんと聞いてやれよ。高校初日の自己紹介って結構重要イベントぞ。

 心做しか副担任もそわそわと落ち着きがない。おい教師。それでいいのか教師。

 

(それも当たり前、か)

 

 異性のクラスメイトがどんな人間か知りたい、相手の事を理解したい。道理だな。

 今後しばらく、少なくともクラスメイトが慣れるまではこうやって、教室でも俺たちの一挙一動にやたらと注目され続けるんだろう。

 向こう一ヵ月前後はこの客寄せパンダ状態、か。

 ジャイアントパンダといえば中国。鈴音のやつ向こうでも元気にしてっかな……。

 ここにいる連中のせめて半分がアイツみたいなら、俺も一夏も気が楽だってのに。

 と、改めて考えるとなんだか非常に気が重いが、これからここに三年も通うんだからそうも言ってられない。

 

「俺は宇品賢一。君たちより二コ歳上の一七歳だが、ここで一からISの事を学ぶという事情と、元より高校に通っていなかったんで、俺も三年への編入ではなく君たちと同じ一年生からという形になった。まあ、お手柔らかに」

 

 クラスメイトの顔を一通り見渡しながら、欲しがってそうな情報を混ぜつつ短めの挨拶を締めくくる。

 軽く頭を下げれば疎らな拍手がちらほら、そして次第に大きくなっていく。

 なんつーか、もっと話を聞きたいけどここは一応よしとしておこう、みたいな?

 嬉しくて涙がちょちょぎれるぜ……。

 俺が着席すると、副担任が次の生徒にバトンを渡す。

 すると次の番号のやつが自己紹介を始めるのだが、周囲の連中はもれなく俺を見てやがる。

 

(勘弁してくれ……)

 

 これで成績なんて落としてみろ、よそ見の言い訳に使われるなんて真っ平御免だ。

 一夏、お前は後でお話な。

 気を抜くと吐き出しそうな溜息を肺の中に押しとどめつつ、俺はそっと目を閉じた。

 そも、なんでまた俺が高校に──それもIS学園なんぞに入学して、わざわざ一年生から出発する羽目になったのかと言えば、だ。

 

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

「やっほ、社長サン」

 

 それは、まだ寒さの厳しい三月上旬の事だった。

 

「ああ、おはよう博士。今日もいい天気だな」

「うんうん。でも、晴れでも雨でも私たちにはあんまり関係ないよねー」

「うわ出た引きこもり発言……。たまには外出て日光浴しろよ」

「ほいほーい」

 

 先月の一件からうちに博士が入り浸るようになったのはまだいいとして、いやよくはないが。

 こそこそと資材を地下に運び込んだり、工作に勤しむのはさすがに会社の中で寛ぎすぎだろう。

 そんでもってあれか、知らん間に住人が増えてるのはツッコミ待ちか?

 あのガキどっから連れてきた、つか誰の子だ。他人様の子供拐かしてきたってんじゃないだろうな?

 初日で状況に慣れて出てきた暗黒飯(飯……?)を食う俺も相当だが、目の前のこいつも大概どうかしてる。

 

「にしても、あんたが社長室(ここ)に顔を出すなんて、珍しいじゃないか。……何かあったのか?」

 

 で、そんなやつが今日に限って出社と同時に地下から社長室まで顔を出してきたんだ。

 何を言い出すものやらと、俺はそっと身構えた。

 

「いやー、最近はくーちゃん共々ここで色々とお世話になってるからねぇ?」

「何かと思えば……世話してるのはエサソンだ。礼なら彼女たちに言ってやれよ、喜ぶぞ」

「まあまあ、そーなんだけどね?」

 

 なんだよその、そうじゃないんだよなー、みたいな顔は。

 実際、 この自由人がコスプレしてるような居候に嬉々として奉仕しているのはエサソンで、俺はただ博士の勝手を黙認しているだけでしかない。しかもその理由はわざわざ追い出すのが面倒臭いからだ、単純に。

 そんなんでお礼と言われても、なあ?

 

「社長クンだってわかるでしょ。ほら、ごちゃごちゃ言われないありがたさってやつ」

「あれはあれで、連中は至極真っ当な反応してるだけなんだがな……」

「あんなの困った時のカミサマと一緒じゃん。私たちには関係ないよ」

 

 博士はいーっと健康的な白い歯を見せるように変顔をする。

 こっちはそのカミサマが作った秩序に一応従うフリくらいしてるのだが、あくまで同類としてカウントするつもりらしい。なんてやつだ。

 

「そんな訳でこの天ッ才こと私、束さんが社長クンにお礼を用意してみましたの巻!」

「博士が、この俺にィ?」

「おふこーっす!」

「わー、うれしーなー」

 

 驚くほど白々しい声が飛び出す。

 嬉しいか嬉しくないかで言えば、もちろん気持ちは嬉しい──が、どうしても素直に喜べないのは何故か。

 言うまでもない。どう考えても怪しすぎる。

 こいつの事だ、絶対に普通のお礼なんかじゃないだろ。もうこの空気でわかるぞ。

 博士は俺の言葉に何度か頷くと、じりり、とにじり寄ってきた。

 そして、僅かに身を引いた俺の手をしっかり握る。

 

「んもう、喜ぶの早いって。用意したプレゼントは地下にあるから、これから見に行くよ!」

「……ここに運べないようなモノなのか、それ」

「んっふっふー、それは観てのお楽しみー」

 

 うっわ、すげー不安。

 

「えっちゃん、地下までお願い!」

『かしこまりました。間もなく、二番、エレベーターが到着します。』

「……ボタン使えよ」

 

 すっかり我が社で手抜きを覚えた博士に連れ出されて、哀れな子牛はドナドナとエレベーターに乗せられる。

 ここまで張り切られては、抵抗もするだけ無駄というものだろう。

 と思った俺は、ほとんどされるがままだ。

 

「──あ、そだ社長クン」

 

 俺が半ば死んだ目をしてるのにまるで気づかない博士は、ポンと手を叩き、目を丸くしてこちらを見た。

 そしてその宝石みたく無駄に綺麗な瞳を輝かせ、ニヤリと笑う。

 

「キミと束さんは、〝シンユー〟だからね?」

「ああ?」

「へへー」

 

 またコイツは。なんか妙に含みのある言い回しを繰り出してきたな。

 ていうかシンユーって何だシンユーって。片方から一方的に宣言するもんだったか、これ。

 笑っても誤魔化されんぞ。

 

「お前、またなんかやったな?」

「え、なんにも?」

「ウソをつくなウソを」

 

 あからさまなウソを追求する俺に、博士は懸命に目を逸らした。

 

「んー、知らないなー。束さんウソツカナーイ」

『お待たせいたしました。間もなく地下、五階。立ち入り禁止区域です。』

「あ、ほら着いたよ。ゴーゴー!」

 

 エレベーターから飛び出し、

 

「お待たせー、くーちゃん」

 

 博士は暗闇に包まれた空間の中、ポッ、と頼りないライトを手にした少女に駆け寄る。

 

「束さま」

「社長クン連れてきたよー」

「ああ。おはよう、クロエ」

「おはようございます。社長さま」

「……ケンイチ、な」

 

 役職呼びはどっかのAIだけで十分だ。それか博士。

 少女は俺に向かって会釈すると、()()()()()()()()、博士を見上げた。

 

 ──クロエ・クロニクル。

 

 博士がある日唐突に連れてきた子供で歳は不明。見たところ恐らく一二かそこら。

 それほど背丈が低く、どこもかしこも細っこい。腰まである銀髪が特徴的。

 両目を常に閉じている理由はあえて触れないようにしているが、別に盲目って訳じゃないんだろう。

 居候するようになってからは何かと飯を作って出してくれるものの、料理の腕前は辛うじて食えるレベルだ。

 不味いも美味いもない、これは一応食える、ただそれだけである。

 

「会場に集まりの皆さま、お待たせ致しました!」

「わー」

「なんか始まったぞ」

「社長クンにありがとうプレゼント、お披露目のお時間がやって参りました!」

「ぴゅーぴゅー」

 

 コトッ、博士が小さな端末を手に取る。

 クロエも顔を僅かに照らすくらいでしか役に立っていないライトを消し、一帯は完全な真っ暗闇となった。

 

「それじゃ、ちゅーもーっく!」

「でれれれれれ、でんっ」

「スイッチオン!」

 

 ……ツッコむ暇もない。

 脱力しそうな空気の中、ある一点がライトアップされる。

 暗闇の中から現れたのは、人が鎧のように纏うのを前提とした、スリムなシルエットのパワードスーツ。

 それは、確かにISだった。

 

「博士……こいつは……」

「んふふ、驚いた? ねえねえ、驚いたでしょ?」

 

 ああ、本当に驚かされた。

 

「これはね、〝IS F/AC〟だよ!」

 

 なるほど、間違いない。

 目の前のこいつはISであるのと同時に、確かにACでもあった。

 全身装甲(フルスキン)という世にも珍しい装甲が全身をカバーしている特徴を活かし、有人ロボであるACのデザインを違和感なくISに落とし込んでいる。

 

「へへ、どう? どう? けっこー面影感じるでしょ?」

「……ああ」

 

 加えて言えば、こいつはそこらのACをモデルにしてる訳じゃない

 このISが懐かしの愛機、パイロマニアをその原型としている事は、火を見るよりも明らかだ。

 

「執務机からよく見える位置に、ショーケースに入れて飾られてる模型があるでしょ」

 

 博士は自慢げに、今回の種明かしをする。

 

「社長室の玩具はみんなそこら辺に直置きしてるのに、あれだけ大切に保管されてるからひょっとしたら社長クンにとって何か思い入れのあるモノなのかなーって、束さん思ったんだ」

 

 この様子だと大正解だったみたいだね、と満足気に笑う博士。

 その通りだ。恐らく博士が考えてる倍以上の思い入れが、アイツにはある。

 

「その、なんて言えばいいのか。まさかこんな贈り物を用意してもらえるとは思わなかったな……」

「うん、うん。満点のリアクションだね。ささ、これはもう社長クンの物だよ、好きにしちゃって!」

 

 ごくり、と喉を鳴らす。

 こういうのってやっぱロマンあるし、興奮するよな。

 まあ、所有者が男の俺じゃ本当にカッコイイ置物にしかならんのだが。

 ライトアップされ、鈍色に輝く装甲に俺はするりと手を伸ばし、そして滑らかな表面に触れた。

 すると同時、

 

「──!?」

 

 ドクンッ、と不意に強い鼓動を感じた瞬間。

 突然、目の前のISが動き出し、その巨大な手で俺の腰を鷲掴んでいた。

 おいおいおい、オイ!? なんだっこれ!!?

 

「っぐ……オイ、篠ノ之束──?!」

 

 なんのつもりだ、くらいは言ってやりたかったが。

 しかし結果として、騙したのかオマエ、とは続かなかった。

 動揺、焦り、怒り……腹部の強い圧迫感を除くそれらは、俺が博士のいる方向を見た時点で引っ込んでいた。

 

「た、束さま?!!」

「ど、どどど……どうしよう!? え、なんで? なんで!!?」

「…………」

 

 ああ、うん。そうか。

 この状況が博士らにとっても想定外なのはよくわかった。そう取り乱されちゃあな。

 お陰で頭も冷えた。……いや、本当に血の巡りが悪くなってるのか。

 しかし、こいつは……なんだ?

 俺は冷静になったついでに、いまの状況を整理してみる。

 拘束された時点で最悪、ひと思いに握り潰される事も覚悟するが、無人のISは一向に動く気配がない。

 が、かといってこの力で掴まれてる以上、悠長にはしてられなさそうだ。

 

(……いかん)

 

 不味いな。いよいよもって、顔面から血の気が引いてきてやがる。

 嫌な寒気を感じる反面、俺の意識は妙にはっきりとしていた。

 ……まあ、無理やり覚醒させられてるって感じだが。

 目の前のコイツに鷲掴まれた瞬間からずっと、頭ん中にIS側から情報が山ほど送り込まれている。

 操縦方法やら活動可能な時間やら、アーマー残量にエネルギー残量、出力限界……と、どうも俺にISを()()()()()()()()()()ようだ。

 

「クソ……なんだってんだよ……っ」

 

 言葉を吐き捨てる。

 思わず悪態が口をついて出るほどに、俺は地味に追い詰められていた。

 ここまでヒヤリとさせられるのは正直、かなり久しぶりだ。

 それこそ、俺がまだ傭兵やってた頃に取り引き相手に金を出し渋られた挙句逆上されて、ACで店の中に乗り込まれた時以来だな。

 金ないならないでお手伝いミッション数回で許してやるって言ってやったのに、それで逆ギレするやつがあるかよ。

 さて、あの時はどうやって修羅場を凌ぎ切ったんだったか。

 なあ考えろ。考えるのをやめるな、俺。

 ……ああクソ、ダメだ。

 チラッチラと視界の隅に写り込む情報の羅列が猛烈にやかましい……!

 さっきからなんなんだ、コイツは。

 俺にくたばってほしいのか? それともパイロットになってほしいのか?

 

(殺すのか生かすのか、はっきりしやがれ……!)

 

《マ……》

 

「……あ?」

 

《マイ……パートナー……?》

 

 ──懐かしさを感じる、か細い声。

 忘れるはずもない、俺をパートナーと呼ぶのは()()()()()()()と登録した、相棒くらいなものだ。

 

「お前……エシルか?!」

 

 妙な確信があり、俺は思わず目を見開いた。

 こちらの返事に呼応してか、情報の渦がサッと引く。

 ピロピロと電子音が鳴り、視界の中央に〝おはようございます〟とパラメータが浮かび上がる。

 どれもこれも懐かしの、聞き覚え、見覚えのある馴染み深いものだ。

 

《おかえりなさい、マイパートナー。メインシステム、パイロットデータの認証を開始します。》

 

 無人のISがグンと立ち上がり、同時に視界が眩い光に包まれた。

 

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 




兄夫婦のお宅でサンタさんになってきました
甥姪が可愛い、そして投稿は盛大に遅刻する
みんなスマンな、年末年始も多分遅刻ぞ
実家で祖母の手伝いするからさ……うん

しかしこれからもどうぞよろしくお願いしたい
相変わらずモチベーション維持にお気に入り、評価、感想もお願いしたい
君達、感想欄Gロッソで僕と握手!

なお我が甥姪は僕握を知らない世代。悲しいなぁ。
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